チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

残穢 -住んではいけない部屋-

中村義洋監督作「残穢 -住んではいけない部屋-」(2016)[BD]

怪談作家が、大学生から部屋で生じる奇怪な現象の体験談を寄せられたのをきっかけに、そのマンションが建つ土地の歴史を遡る内に、人を死に追いやる穢れの連鎖に肉迫していく様を描くミステリー・ホラー作品。

 

ミステリーやホラーを専門に扱う作家の小松は、怪談雑誌に連載を持っており、読者から募集した奇妙な体験談を元に、毎月短編小説を発表しつつ、同じジャンルを専門とする作家の夫と都内のマンションで生活している。2012年5月、小松は、都内の大学で建築デザインを学び、ミステリー研究会の部長を務める学生の久保から手紙を受け取る。

久保は入学から2年を過ごした学生寮を離れ、通学に便利な小平市の築十年で5階建ての岡谷マンション202号室に引っ越し、独り暮らしを始めた。間もなく、久保は1LDKのその部屋の無人の和室から、畳を擦る様な奇怪な音を繰り返し聞く様になった。その音は久保が和室に目を向けた途端に止むといい、久保は部屋に何かがいるような気がすると訴えるのだった。

その秋、小松は久保から続報を受け取る。

和室からは尚も擦る音が続く為、久保は体を常に和室に向けている事にした。ある時、久保が引き戸を閉めると、何かが倒れる音に続いて擦る音が聞こえ始めた。久保は意を決して引き戸を開けてみると、着物の帯が畳を擦りながら消えるのを目の当たりにした。久保は着物を着た女が首吊り自殺を図り、帯が垂れ下がっている様子を想起し、過去にその部屋で自殺した人がいるのかも知れないと考える様になったという。

小松は久保のその話が、以前見聞きした話と類似している事に気付き、2年前に同マンションの405号室に住んでいた屋嶋から受け取った手紙を見つける。

2010年6月、屋嶋は引っ越して3ヶ月程経った頃から、和室の畳を擦る様な音を聞く様になった。更に、屋嶋の幼い娘は和室の宙を指差してぶらんこがあると主張し、その後、首吊り死体を模した人形遊びを始めたという。

久保は405号室に既に別の家族が入居している事を確認する。小松は過去に首吊り自殺があったとして、2つの位置的に離れた部屋で音がする理由を測りかねる。久保は303号室の辺見と、マンションの向かいの家に住む益子の両人から話を聞き、過去に首吊り事件が無い事を確認すると同時に、人が居着かない部屋が幾つかあり、405号室と202号室がそれに当たる事を知る。久保はまた不動産屋にも過去に死亡事故の類が無かった事を確認する。程なく、久保の隣の201号室に飯田家が入居する。飯田は久保に挨拶した際、家賃が相場より安い理由を訝る。

半年後、小松夫妻は新居を建てる為の土地を購入する。同じ頃、小松は久保から202号室の前住者の消息に関する知らせを受け取る。

久保は辺見の夫がその男・梶川と顔見知りであった事から、梶川の勤め先の家電販売店を訪ね、梶川が1年前に死んだ事を知った。売り場主任によれば、勤勉で評価されていた梶川は、岡谷マンションに入居した時期を境に、急に人が変わった様に集中力を欠いてミスを連発し、更には無断欠勤する様になったのだという。岡谷マンションを4ヶ月余りで退去した梶川は、別のアパートに入居し、程なく自殺したのだった。久保はアパートの大家・伊藤を訪ねた。伊藤は入居間も無い梶川から、赤ん坊はいるかと聞かれ、怪訝に思った。更に、伊藤は梶川が遺体で発見される前夜に奇妙な夢を見た。梶川の霊が夜更けに伊藤の家を訪ねてきて、理由を明かす事無く、何度も詫びたのだという。翌朝、伊藤は心配になって梶川の部屋に確認に行き、ベッドの柱で首吊り自殺を図った梶川の遺体を見つけたのだった。その部屋には既に次の入居者・山本が事故物件と承知で暮らしているという。

小松は久保の最初の手紙が、梶川の遺体発見より先である事から、和室から聞こえる擦る様な音は、梶川の霊がもたらしたものでは無いと悟る。久保は自らも引っ越すべきでは無いかと不安に駆られる。同じ頃、飯田の妻が久保に、公衆電話からの不気味ないたずら電話が相次いでいる事を明かす。飯田の妻は憔悴した様子で、家賃が安い理由と関係があるのでは無いかと疑う。久保は部屋では無く、マンション全体がおかしいのでは無いかと懸念する。

小松は久保と共に岡谷マンションの向かいの益子家を訪ね、マンションが建つ前の土地の歴史について聞く。それによると、その土地は20年前には空き地で、その一角に小井戸家があった。その家はゴミ屋敷で、独り暮らしの老人が住んでいたが、いつの間にか死んだのだという。小松と久保は町内会長の秋山を訪ね、当時の様子について聞く。秋山によると、小井戸は隙間を執拗に嫌い、ゴミで塞いでいた。1992年7月、秋山が訪ねると、隙間なく詰め込まれたゴミ山の上で病死している小井戸を発見した。遡って1987年のその土地には、小井戸、松坂、根本、藤原の家が立っていた。根本家の老婆は猫がいると言って縁側に伏せって、奇行に及んでいた。藤原家が立っていた場所は人の入れ替わりが多かったが、その内の川原家の高校生の息子が家庭内暴力、放火、方々へのいたずら電話などの問題行動を繰り返していたという。

小松はその土地の住民の流動性が高い事に着目する。程なく、飯田一家が201号から退去する。小松と久保は、地元で古くから写真展を営む田之倉を訪ねる。田之倉によると、根本家は大きな農家でかつては藤原家の土地まで敷地として有していた。一方、小井戸家と松坂家は高野家の敷地だった。高野トシヱは夫と共に娘・礼子を嫁ぎ先に送り出したその夜、和室で首吊り自殺を図ったのだという。小松と久保はトシヱが擦る様な音の原因だと確信する。次に二人は高野家と親しかったという日下部姉妹を訪ねる。姉妹によると、礼子が勤め先から帰郷した頃からトシヱの様子がおかしくなった。トシヱは赤ん坊の泣き声が聞こえる、赤ん坊が床から湧いて出るなどと訴えていた。礼子は勤め先で悪い男に引っかかって妊娠し、結婚の為に堕胎か流産したという噂がり、トシヱはそれを気に病んでいたのでないかという。

小松と久保は梶川が202号室で赤ん坊の泣き声を聞いておかしくなり、小井戸もまた、何かを見聞きして、それから逃れるべく隙間をゴミで埋めていたのだと推察する。久保はいよいよ引っ越す事を決意する。

小松はトシヱの訴えた「湧いて出る」という表現が複数を示唆している事から、本当に礼子の堕胎が自殺の原因だったのか訝る。その話を聞いた怪談作家の平岡は、似た様な話がある事を明かす。それは嬰児殺しの母親が住んでいたといういわくつきの廃屋に、肝試しに入った若者達が、赤ん坊の顔が床から湧いて出る様子を見たというもので、平岡は手繰っていくと根は同じだったという話は業が深いと説く。平岡は、家で産んでは殺し、床下に隠していたというその母親が逮捕された時、床下から発見された遺体は一つだけだった事が不可解だと説き、千葉にあったその廃屋が既に取り壊されている事を明かす。

その後、久保は新しいマンションに引っ越すと共に就職先を決める。一方、小松も完成した新居に夫と共に移り住む。そんな折、小松は平岡から千葉にあった廃屋に関する資料を受け取る。それによると、1952年に嬰児殺しの中村は近隣からの異臭の通報を受け、床下から赤ん坊の絞殺死体の発見に至って逮捕された。中村は過去に重ねた罪についても自供し、以前住んでいた長屋でも毎年の様に子供を産んでは殺し、合わせて7体を埋めた事が判明した。長屋は取り壊されて更地となり、程なくして高野家と根本家の二軒が建ったのだという。

小松はトシヱが長屋の跡地に住んだ事で、その土地に残る穢れに触れ、死へと追いやられ、その後も穢れが移って、災いが連鎖しているのだと悟る。小松は中村の前にも発端となる誰かがいる可能性を疑う。久保のミス研、更に平岡の調査により、長屋が建つ前に吉兼家が立っていた事、吉兼家には私宅監置、いわゆる座敷牢が存在した事が判明する。

明治38年、吉兼友三郎は15歳の時、家族への暴力、放火未遂、「焼け」「殺せ」と命じる声を聞くと訴えるなどした為、精神病と診断され、私宅監置の措置が取られた。友三郎は便所から床下に抜け出し、徘徊していた。一方、中村は床下から聞こえる「焼け」「殺せ」という声に命じられたと供述していたという。

小松と久保は吉兼家の菩提寺の住職・國谷を訪ねる。國谷によると、友三郎は過去帳に記載されておらず、墓にも入っていない為に消息が分からないという。記録に最後に残る三喜は、20歳で吉兼家に嫁いだ後妻で、友三郎と5歳違いの継母だった。三喜は二度の流産を経て、24歳で死んだ。寺は三喜の一周忌に、婦人図一幅という絵を預かって供養した。その絵の顔は時折、ひどく歪むとされたが、戦災で焼失し、國谷自身は見たことが無いという。

平岡は三喜の実家が福岡にある事を知ると、九州出身の心霊マニア・三澤に協力を依頼する。三澤によると、その絵は北九州では有名だが、誰も見た事が無く、顔が歪む時は必ず轟々とした風の音と、炭鉱事故で死んだ労働者達の「焼け」「殺せ」という呻き声が聞こえ、歪んだ顔を見た者には呪いが降りかかるという。三喜の実家の奥山家は福岡で炭鉱を経営していたが、ある時、炭鉱で100名以上が死ぬ火災が発生した。奥山家の当主は強制的に坑道を塞ぐ事で鎮火し、その際に内部に取り残された労働者達が犠牲になった。奥山家は明治終わりか大正の初めに途絶えた。当主は家族や使用人を皆殺しにした後、屋敷に火を放とうとしたが果たせず、山中で首を吊って死んだという。それらの記録は存在しておらず、三澤は呪いについて、話しても聞いても祟られると説く。

小松は雑誌担当者・田村の指摘を受け、九州の炭鉱に纏わる短編を2年前に発表した事を思い出す。その短編の元になった投稿者・真辺は、小学生の時に、没落した炭鉱王の土地を買って建てたという親類の古い家に泊まった。その家には主が買い求めた河童のミイラがあると言われていた。夜、真辺はトイレに起きた際に地鳴りの様な風音を聞き、入る事を禁じられていた部屋の戸を開けると、唸り声と共に這い寄る黒い影を目の当たりにした。その皮膚は焼け爛れていたという。小松と田村は都内に住む真辺に会って話を聞く。真辺によると、家の主・幹男は悪趣味なコレクターで、禍々しい品々を嬉々として集めていた。極めつけは持ち主を祟るという日本刀で、幹男はそれで自殺を図ったのだという。

小松、久保、平岡、三澤は福岡へ赴く。期せずして、小松は持病の肩こりが悪化し、首に原因不明の痛みを生じる。夜、一同は真辺から聞いた廃屋を訪ね、探索を始める。一同は屋内に複数の仏壇、神棚を確認し、やがて鉄扉で隔てられ、壁一面に夥しい御札の貼られた、幹男が自死を図ったと思しき部屋に辿り着く。小松は主がコレクターなどでは無く、呪いから逃れたい一心で神にも仏にも縋り、その末に魔を以って魔を制そうと考えたのだと推察する。一同はそこで探索を切り上げ、帰京する。

その後、奥山家に纏わる、穢れを示唆する怪談が次々に見つかる。同じ頃、飯田が妻子を道連れに無理心中を図る。久保は新しいマンションでも擦る音がする事を小松に明かし、穢れの拡大を恐れ、調査の中止を促す。一方、小松の首の痛みは既往症の湿疹由来によるものだと判明する。

その後、久保は恙無く社会人生活を始め、岡谷マンションに越してから丸2年が経過する。屋嶋、辺見、益子は変わりなく暮らしている事が判明する一方で、202号室は久保の後に住人が3度入れ替わり、空き部屋になる。小松は一連の出来事を短編に執筆する。その矢先に公衆電話から連絡があり、小松は不気味な声を聞く。新居には霊を示唆する気配が生じる。田村の同僚で平岡を担当する河田は、夜、オフィスに一人で残っている時に、焼け死んだ労働者達の霊に襲われる。一方、山本は就寝中に擦る音で目を覚まし、頭上に首を吊ったトシヱを目撃する。一方、國谷は寺に秘蔵する婦人図一幅を持ち出して紐解く。國谷の前で掲げられた絵の女の顔が歪む。

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スポットライト 世紀のスクープ

トム・マッカーシー監督作「スポットライト 世紀のスクープ」("Spotlight" : 2015)[DVD]

長年に渡って繰り返される神父の子供達への性的虐待と、それを隠蔽する教会組織の実態を暴くべく、気鋭の新聞記者チームが奮闘する様を描く史実ドラマ作品。

 

2001年7月、ボストン。ボストン・グローブ新聞社、編集部にて特ダネをスクープする精鋭記者チーム「スポットライト」。チームはデスクのウォルター・ロビンソン(ロビー)、マイク・レゼンデス、サーシャ・ファイファー、マット・キャロルの4人からなり、編集部長ベン・ブラッドリー・ジュニアが統括している。チームの追いかけるネタは全て極秘扱いとされており、4人による長期に渡る粘り強い取材を経て、特設のスポットライト欄に掲載される運びとなる。

チームが目下、建築基準の改竄問題を追跡する最中、新編集局長に、親会社タイムズから派遣されたマーティ・バロンが就任する。紙面の改革を志向するバロンは就任直後の編集会議にて、「ゲーガン事件」に関する記事が半年で2本きりに留まっている理由を問い質し、もっと掘り下げるべきだと主張する。その事件とは、ボストンの教会に在籍する神父ゲーガンが、過去30年の間に6つの教区で転属を繰り返し、80人に及ぶ子供達への性的虐待を行っていながら、教会が事実関係を真っ向から否定しているというものである。被害者側の弁護士ガラベディアンは、枢機卿ロウが15年前から虐待を把握していながら黙殺した証拠があると主張しているものの、その証拠は教会によって封印されている事から、バロンは教会と対立する事を覚悟の上で、会社として裁判所に封印解除の申し立てを行う意向を示すと、ロビーにゲーガン事件を優先する様に命じる。ロビーはチームに対し、会議の決定を伝えると、ライバル紙ヘラルドに察知されぬ様に、確実な情報を掴むまで極秘取材を貫く様に命じる。

ロビーとファイファーは、神父ポーターが10年前に十数人の子供に対して性的虐待を行ったとされる、ポーター事件において被害者側弁護士として訴訟に関わったマクリーシュの元を訪ねる。マクリーシュは時効期限が3年と短く、また被害者が表に出たがらず、更に免責法で賠償額が最高2万ドル程度でしかない為に難儀な案件である事、マスコミを利用したが教会の力に苦慮した事を明かし、ガラベディアンの主張する証拠にも不審感を露わにする。

一方、レゼンデスは、ロウを訴え、山積する案件に忙殺されるガラベディアンを訪ねる。ガラベディアンは教会が自分を監視し、弁護士資格の剥奪を目論んでいる事を明かすと、教会は新聞が勝てる相手では無いと説き、一切の取材を拒絶する。レゼンデスは取材の重要性を説く事で食い下がり、被害者に会わせる様に請うが追い返される。

キャロルは社の記録室に保管されている、当該事件に関する資料を寄せ集める。その資料から、サヴィアノが代表を務める被害者団体SNAP(聖職者虐待被害者の会)の存在と、新たに神父バレットによる虐待事件が判明し、虐待を犯した神父達は皆、教区を数年で転属しており、パターン化している事が強く示唆される。

ロビーは教会側で事件の始末を担った旧知の弁護士サリヴァンに会い、バレット事件の弁護について尋ねる。サリヴァン守秘義務を盾に証言を拒み、事件に近づかぬ様に促す。一方、バロンはロウの元へ、慣例になっている就任の挨拶に訪れる。ロウは新聞と教会が手を携え、町を発展させようと持ちかけるが、バロンは新聞社の独立と不偏不党を主張する。

チームはサヴィアノをオフィスに招いて取材を行う。サヴィアノは神父がその立場を利用して、貧しい子供達の信仰心に付け込み、性的虐待を行っている実態と共に、自らも幼い頃に餌食になった事を明かす。サヴィアノは虐待が信仰をも奪う事から、肉体だけでなく精神への虐待でもあると説き、被害者が往々にして悲惨な人生の末路を辿る事を明かす。更にサヴィアノは語気を荒げ、5年前にも資料一式をボストン・グローブに送ったものの反応が無かった事、ボストンだけで13人の神父が虐待を行っている事を明かすと、虐待が世界中で起きており、その黒幕がバチカンだと主張する。

レゼンデスは再びガラベディアンを訪ね、被害者への取材を申し入れる。ガラベディアンはレゼンデスの熱意に折れ、被害者の一人を紹介する。レゼンデスはその男が幼い頃にゲーガンから虐待されるに至った経緯を聞く。一方、ファイファーは別の被害者を訪ね、その男が幼い頃に神父シャンリーに虐待された経緯を聞く。その男はかつてマクリーシュに会ったものの、訴訟をしても無駄だと諭された事を明かし、マクリーシュが何件も神父による虐待事件の訴訟を担っていた事が判明する。

レゼンデスは1965年から5年間、教会が有する精神療養所に心理療法の研究員として勤め、その後30年間、虐待神父と被害者の研究を行っている元神父サイプと連絡を取る。サイプは自らの研究に基づき、神父の小児性愛に拠る虐待を精神医学的現象と称すと、それを公表したものの教会の中傷運動に遭って潰された事を明かす。一方、キャロルは大教区年鑑で過去の神父の足跡を調査し、その結果、虐待を犯した神父達が「病気休暇」という名目で転属させらている事が判明する。ロビーは年鑑から全ての足跡を洗い出す様にチームに指示する。

ロビーはファイファーと共に再びマクリーシュの元を訪ねると、マクリーシュが名神父に対して何件も訴訟を起こしていながら、裁判所に訴訟記録が無い理由を尋ねる。マクリーシュは守秘義務を盾に口を噤むも、裁判所を通さずに教会と直接示談交渉した事を明かす。その後、ロビーは再びサリヴァンと会うと、大司教区が虐待事件を示談にしてきた件について触れ、何人の事件に関わったのか尋ねるが、サリヴァンは弁護士の倫理規定を盾に証言を拒む。一方、キャロルは年鑑において、「病気休暇」だけが虐待を犯した神父を表す用語では無く、「休職中」「出向不能」「緊急対応」など複数のパターンがあり、更にその神父達の転属が通常より早く、長くて3年である事を掴む。

チームはサイプが研究の末に導き出した、神父全体の6%が小児性愛者だという予想に基づき、ボストンには虐待神父が90人程度存在しており、その全てを教会が把握していると推測する。その後、チームは年鑑を元に転属を繰り返している神父の洗い出しを行い、虐待への関与が疑われる87人をリストアップする。ロビーはサリヴァンに会ってその数を示すが、サリヴァンは事件から手を引く様に促す。次にロビーはマクリーシュに会ってその数を示すと、その内の何人を示談にしたのか問い質すが、マクリーシュは口を噤む。ロビーは児童虐待で儲ける弁護士という趣旨の記事を掲載する意向を示し、証言を要求する。マクリーシュはポーター事件の後に、ボストンだけで虐待神父が20人いる事を掴み、何年も前にそのリストをボストン・グローブに送付したものの、黙殺された事を明かしてロビーを詰る。レゼンデスはかつてサヴィアノがボストン・グローブに送った資料に、なぜ誰も興味を示さなかったのか訝る。

バロンは個々の虐待神父の事件について報じても、ポーター事件同様、一時的な騒ぎになるだけで何も変える事はできないと説き、標的を教会組織に据える事で、隠蔽システムの全貌を暴く方針を立てる。チームは被害者全員のリスト作成に着手し、各被害者に対する取材に奔走する。その結果、被害者家族が教会から秘密を守る様に圧力をかけられており、また、警察署長も事件を把握していながら黙殺している事実が判明する。

ガラベディアンは、かつてゲーガンの虐待を告発して転属させられた神父の再供述を申請する訴訟に、教会側の弁護士が反対訴訟を起こした事に伴い、結果的にボストン・グローブが開示請求している封印された証拠文書が公になっている事をレゼンデスに明かす。レゼンデスは公判の判決を待つ必要が無いとしながらも、教会が文書を隠匿しており、裁判所の記録保管所には無いはずだと説く。レゼンデスは直ちに保管所を訪ね、当該資料を確認するが、全て抜き取られている事を知る。

程なくして、911同時多発テロ事件が発生する。編集部は総力を挙げてテロ事件に集中すべく、チームによる虐待事件の取材は一旦中止を余儀なくされる。数週間が経過する頃、チームは再び虐待事件の取材を再開する。ロビーは出身高校の神父タルボットに虐待を受けた同窓生に取材を行った後、ファイファーと共に高校を訪ね、理事長とボストン大の広報ジャック、ロビーの同窓生コンリーが応対する。ロビーは理事長に事実関係を問い質す。理事長は、当時の理事長が事件を知ってタルボットを転属させたのだと推察する。教会側のジャックとコンリーは事を荒立てまいと図るが、ロビーは被害者が涙ながらに虐待の事実を訴えた事を明かすと、神父が部活の顧問だった為にたまたま彼が餌食になったのであり、誰が被害者になってもおかしく無かったのだと説く。

一方、レゼンデスは取材に復帰するや否や、証拠保管所で機密資料の開示を求め、かつてゲーガンの教区にいた女がロウへ宛てた手紙を入手する。そこから、女は息子7人をゲーガンにレイプされながらも、教会に沈黙を強いられてきたが、その後もゲーガンが教区に留まっている事に耐え兼ね、教会を非難していた事が判明する。また別の手紙では司教補のダーシーが教会に逆らう形で、転属後のゲーガンについて虐待行為が減らせたのかとロウを糾弾していた事が判明する。

レゼンデスはそれらが、ロウが事件を無視した確固たる証拠だとロビーに説くと、他紙に抜かれる前にすぐに報じ、教会による隠蔽に先んじるべきだと主張する。ロビーは報じるに足るのがまだゲーガンだけであり、全体像を暴かねば再発を防げないと反論し、標的はあくまで教会組織だと説く。レゼンデスはそうしている今も子供達が神父に狙われているのだと主張し、激しく反発する。ファイファーは事件を境に教会に行けなくなった事をレゼンデスに吐露する。レゼンデスはかつて失った信仰に、いつの日か復帰する為のよすがを事件で失った事を嘆く。また、ロビーはコンリーの呼び出しに応じる。コンリーは現在の様に国が大変な時こそ、教会が必要であり、少しの悪の為に多くの善は捨てられないのだと説くと、新任のバロンが手柄を立てたいだけだと諭す。

程なく、ボストン・グローブの申し立てが判事に認められ、証拠文書の封印解除の判決が下る。ロビーは既に文書を入手していた事をバロンとブラッドリーに明かすと、ロウの黙殺が明らかでありながらも、手紙だけではロウの謝罪だけで終わってしまう事を危惧し、更なる取材を重ねた上で、ロウのみならず、教会全体を断罪する決意を示す。ブラッドリーは紙面への掲載を、証拠が公になる前の年明け直後に、また、初稿の締め切りをクリスマスに設定する。

期限まで6週間、チームは証拠固めの取材に奔走し、レゼンデスは記事の執筆を急ぐ。締め切り直前の夜、ロビーはサリヴァンの元を訪ね、70人の虐待神父に関する記事を書いた事を明かすと、掲載に当たって教会側の確認を取るべく、その70人のリストを提示する。サリヴァンはロビーを追い返そうとする。ロビーは自分達の町で何かが起きていると知りながら何もしなかった事の責任を説き、ここで終わらせるべきだと諭す。サリヴァンはロビーにもその責任を問い質し、リスト上の神父について全面的に認める。

締め切り当日になり、ロウはボストン・グローブの要請に対してコメントを正式に拒否する。バロンはそれを教会側の態度として記事に添える決定を下す。ロビーはポーター事件の後、マクリーシュが社に送ってきた20人の虐待神父に関する記事を受け取っていながら、当時自らが引き継いだばかりの首都圏欄の埋め草に用いただけで済ませた事を告白し、悔悟の意を示す。

ボストン・グローブは教会と信者による反発を覚悟しながらも、2002年1月6日の日曜版一面に初報を掲載する。その直後から、オフィスに設けたホットラインには、神父による虐待の被害を訴える信者達からの連絡が相次ぎ、チームは総出で対応に乗り出す。その年、スポットライト欄では600本近い虐待の記事が掲載され、その結果、249人の神父が性的虐待で告発された。被害者の数は推定1000人以上とされている。12月、ロウはボストン大司教を辞任すると、カトリック教会最高位と称されるサンタ・マリア・マッジョーレに転属となった。その後、虐待の判明した都市は世界で200に上る。

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ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

リチャード・ロンクレイン監督作「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」("5 Flights Up" : 2014)[DVD]

ブルックリンのアパートで暮らす老夫婦が、他所へ移り住む為に、長年住んだ眺めの良い部屋を売りに出す過程を経て、人生を見つめ直す様を描くドラマ作品。

 

画家アレックスと元小学校教師の妻ルースは、ブルックリンの一角に建つアパートの5階の部屋で40年間暮らし、苦楽を共にしてきた。二人は今では街の住民に愛されているものの、かつて黒人と白人の結婚が多くの州で禁止されている頃に、周囲の偏見や家族の反対に抗って結婚し、程なくそのアパートで暮らし始めたのだった。アレックスがアトリエに使う部屋は見晴らしが良く、二人は窓越しに一望できるブルックリンの街並みをこよなく愛してきた。その一方で、アパートにはエレベーターが無く、老いゆく二人は階段での昇降に不安を募らせる様になった。そこでルースはその部屋を売って、ニューヨークに新たな家を見つけ、移り住む事を発案する。アレックスは眺めを失う事を躊躇いながらも、ルースの意向に理解を示して応じる。

ルースは不動産業を営む姪リリーに代理人を依頼する。部屋の内覧会を翌日に控え、リリーはいかに部屋を良く見せ、高く売るかについて二人に指南すると、100万ドルは固いとの見通しを示す。ルースは尚も消極的なアレックスに対し、100万ドルあればエレベーター付きで絵が描ける物件が見つかるはずだと諭し、内覧会はあくまで様子見だと説く。その矢先に、かつてルースの退職祝いにアレックスがプレゼントし、二人が我が子の様に愛してきた10歳の老犬ドロシーが不調を来す。二人は大事を取ってドロシーを獣医に連れていく。その頃、マンハッタン橋でタンクローリーが事故を起こして立ち往生し、街は俄に騒動の様相を呈し始める。

獣医クレイマーによる検査の結果、ドロシーは椎間板ヘルニアを患っている事が判明する。クレイマーは手術適用の可能性を説き、ドロシーを一晩預かる意向を示す。アレックスは現実的に高額な治療費を使うのは難しく、また延命が却ってドロシーにとって酷かも知れないと説き、蘇生措置拒否書にサインする。ルースはそれに反対し、やれるだけの事はしてやりたいと主張する。一方、タンクローリーの運転手はアラブ系の青年で、事故直後から行方不明になっている事が判明し、テロの可能性が取り沙汰される。

二人は橋の事件が内覧に影響を及ぼす事を心配する。程なく、クレイマーが二人に連絡を寄越し、明朝に手術を行う意向と共に、費用が最低でも1万ドルかかる事を伝える。アレックスは書類を反故にし、助ける為に全力を尽くす様に頼む。ルースはアレックスの翻意に甚く喜ぶ。

翌朝、事件の容疑者がウズベキスタン出身のパミールだと判明し、騒動は更に加熱する。クレイマーは二人に連絡を寄越し、ドロシーの手術が無事に終わったものの、発作を起こした為に今しばらく様子を見る必要がある事を伝える。程なく、リリーが内覧の客達を連れてやってくる。リリーは言葉巧みに物件の魅力を売り込むが、事件が客の心証に影響を与えている事を察知する。アレックスとルースは、部屋に好感を抱く者、辛辣な批判を浴びせる者の双方に出会う。

内覧が終わって間もなく、物件は女のカップルから85万ドルでオファーを受ける。アレックスは事件が収まるまで待てば値が元に戻ると主張し、急ぐ必要は無いと説く。それを受け、リリーは入札額を釣り上げるべく、手を尽くす。ルースはドロシーの容態を心配し、気を揉む。その後、入札合戦が始まり、値が俄に上がり始める。

その夜、二人は旧知の仲で画廊を営むラリー親子と会食する。ラリーは息子ジャクソンに画廊を譲る意向を示す。ジャクソンはアレックスの描く肖像画が時代遅れであり、市場では売れないと説く。ルースはそれに気分を害し、絵は市場では無く、自分の為に描くものだと説く。帰り道、アレックスは絵にしろ、物件にしろ、他人に人生を握られているのだと嘆く。ルースはそれを自分達の手で取り戻すべきだと諭す。二人は早速、新聞広告で物件の物色を始める。

翌日、二人はドロシーを見舞った後、目星を付けた物件の内覧会を訪ね回る。ルースは9階建のエレベーター付きアパートの一室を気に入る。その物件はアトリエに充てがうのに相応しい採光に恵まれながらも、高層アパートの真向かいに面しており、アレックスは前のめりなルースの意を汲み、眺めを諦める事を決意する。二人は代理人ミリアムに購入の意志を伝え、オファーの期限を二時間後に切られる。ルースはリリーを介さずに自力で入札に挑む事を提案し、アレックスは93万ドルを提示する様に促す。一方、パミールに現金を強奪されたというウェイトレスの話が、金目当ての狂言だった事が判明する。

二人は程なく、ミリアムから落札の連絡を受け、期限までに小切手を持参する様に求められる。アレックスは待つべきだと主張するが、ミリアムは入札を再開すると牽制する。ルースはチャンスをふいにしてしまう事を危惧する。そこにリリーがやってきて、二人の物件の入札が堅調に進んでいる事を報告する。ルースは無断で内覧会に行って物件を落札した事を明かして詫びると、リリーにミリアムとの交渉を一任する。リリーは二人の物件の入札を確定させてから、小切手を持参する運びに調整する。

その後、女カップルが最終入札額に手紙を添えて持参する。その額が95万ドルと分かると、他の客が96万ドルを提示する。ルースはカップルの手紙を読んで心を動かされ、カップルの方に住んでもらう事を希望するが、アレックスは1万ドルの大きさを説く。程なく、二人はクレイマーからドロシーが歩いたとの報せを受け、喜ぶ。

ミリアムが示した期限が迫り、二人はリリーと共に、物件へ保証金の小切手を持参する。物件を売り出した夫妻は落札額に不満を抱き、入札の再開を希望する。リリーはそれが違法行為だと説き、窘める。アレックスは小切手にサインしようとする。その時、報道でパミールが警察に包囲され、投降する様子が伝えられると共に、事件がテロとは無関係で、パミールが現場から逃げ出しただけだったという可能性が指摘される。アレックスとルースはパミールに同情するが、売り主夫妻は事件のせいで売値が下がった事に憤り、悪罵する。アレックスは入札に振り回された挙句、売り主に売値で責められている事に気分を害し、サインを拒んで帰ろうとする。ルースはアレックスを止めようとするが、アレックスはひざまずく容疑者を見て、自分達も事件でから騒ぎしていた人達と同じだと気付いた事を明かすと、これまで良い人生だったのになぜ引っ越す必要があるのかと問う。ルースはアレックスに同調し、二人ならどこでも良い人生を過ごせると説く。二人はその場を後にすると、リリーに引っ越しを止めた事を伝える。リリーはあの物件に永遠には住めないと説き、翻意を促すが、アレックスはどこに住んでも同じだと説く。リリーは苦労が無駄骨に終わった事に憤り、二人を罵って別れる。

その後、ドロシーは退院し、二人は元通りの生活を取り戻す。アレックスは部屋の階下に、かつての自分達と同じ様な若いカップルが入居するのを見て、目を細めると共に、一連のから騒ぎが夫婦らしさを取り戻す良い経験だったと振り返る。

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