チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ラースと、その彼女

クレイグ・ガレスピー監督作「ラースと、その彼女」("Lars and the Real Girl" : 2007)[DVD]

人形を恋人と思い込んでしまった男が、真実の愛に触れ、人形から解放されていく様を描くコメディ・ドラマ作品。

人付き合いの苦手なラースは、田舎町で兄夫婦ガスとカリンの住まう家に併設されたガレージを住居にして暮らしていた。ラースはその性格上、人との関わり合いを避けがちで、とりわけ女を敬遠するところがあったが、根は真面目な勤め人であった為に、人々からは変わり者と思われながらも好感を持たれていた。しかし、ラースも歳頃の男であり、仕事以外は独りでガレージに篭もりっきりである状態を兄夫婦は心配していた。とくにカリンは、事ある毎に食事に招くなどし、ラースの事を気に掛けていた。

ある日、ラースは同僚の男が見ていたポルノサイトで、「リアルドール」というラブドールの存在を知る。それは「解剖学的に精確な」人形だった。半年後、ラースのガレージに大きな荷物が届くと、その夜、ラースは兄夫婦の元を訪ねる。彼女を紹介するというラースに、ガスとカリンは驚くと同時に喜ぶ。しかしそれも束の間、ラースが連れ込んだのは、なんとリアルドールだった。ラースはネットで知り合ったという「その彼女」をビアンカと呼び、ブラジルとデンマークのハーフで宣教師をしており、車いすで生活しているなどと、さも本当の人間であるかの様に兄夫婦に紹介する。ラースが冗談抜きで真剣に人形を紹介し、また人形に語りかけている仕草を見た兄夫婦は、ラースはいよいよ気が触れてしまったのだと当惑する。

兄夫婦はラースの精神状態を医者に診てもらう必要があると確信し、表向きはビアンカの症状を診てもらうという理由で、馴染みの医師ダグマーの元にラースとビアンカを連れて行く。ダグマーは、人間を扱うようにビアンカを診断し、週に一度診療に訪れる様にラースに告げ、ラースの経過を観察する事にする。また兄夫婦に対しては、ラースを病人扱いするのでは無く、当面は話を合わせ、暖かく見守る様に諭すのだった。兄夫婦はそれ以後、甲斐甲斐しくビアンカの世話をしながら、ラースの様子を見守っていく。

狭い田舎町である為に、ラースとビアンカの関係は住民や職場の同僚達に知れ渡り、ラースは最初の内は好奇の目に晒されるが、心優しい住民達は、ビアンカを本当の人間の様に扱う事で、ラースを気遣う。ダグマーは週一の診断で、ラースが人から肌を触れられる事に、極端な拒否反応を示す症状を発見する。それは、ラースの誕生と同時に母が亡くなった事に起因する、心理的な物だった。

ところで、ラースの職場にはマーゴという新人の若い女がおり、密かにラースに思いを寄せていたのだが、ラースがビアンカに執心するのを見て、気を紛らす様に他の男と付き合い始める。これまで女とは一線を画し、生きてきたラースだったが、マーゴが他の男と一緒にいるのを見て、ラースの心情に微かな変化が芽生え始める。ビアンカは町の住民が仕事を任せると称して、連れ出す機会が増えると、ラースは独りでいる事が多くなったが、そうする内に次第に、ラースはビアンカの意思を計り兼ねる様になる。そんな時、ラースはマーゴが彼氏と別れたという話を聞く。

ビアンカがいない夜、ラースはマーゴの誘いでボーリングに興じるが、彼の心の中にはまだビアンカを思う気持ちがあった。ところが翌朝、ラースはビアンカの声が聞こえなくなり、死んでしまったのだと思い込む。救急車でダグマーの元へ搬送されたビアンカはかろうじて一命を取り留めたものの、もう長くはもたない(という事になった)。ラースは、最期は自宅で一緒に過ごしたいと希望する。兄夫婦はラースとビアンカを湖の畔に連れ出し、二人きりの時間を過ごさせる。程なくしてビアンカはラースの胸の中で息絶える。ビアンカは教会に集まった住民達が暖かく見守る中、本物の人間の様に葬られる。ビアンカとの別れを経たラースの傍らには、彼を慕うマーゴがいた。ラースの拒否反応はビアンカの死と共に解消されていた。

リアルドールと一緒に並ぶライアン・ゴズリングを見て、完全に出オチ感ありまくりのおバカ系コメディかと思ったのだが、意外にこれがなかなかドラマチックな恋愛作品だった。過去にわだかまりがあって、色恋沙汰とは距離を置いてきたこじらせ系男が、突如リアルドールにハマってしまうという設定なのだが、リアルドールなのにエロ要素は皆無。こじらせすぎて、あっちの世界に逝っちゃったのかしらと心配するのは当然で、兄夫婦もラースを気遣うのだが、ラースはビアンカを本当に人間と思い込み、嬉々として会話をしているのである。冷静に考えたら軽くホラーだ(笑)しかし、ラースの心の中にマーゴに対する思いが芽生え始めると、逆にビアンカへの執着が消えていくのよね。ラースの脳内に構築した世界をいかに自然に消滅させていくか、この辺の展開はなかなか面白いと思う。イケメソキャラじゃないゴズリングもイイね。

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