チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

トランストリップ

バスティアン・スィルバ監督作「トランストリップ」("Magic Magic" : 2013)[DVD]

休暇を共に過ごす為、従姉妹の元を訪れた女が、見知らぬ土地で孤立感に苛まれ、次第に倒錯していく様を描くサイコスリラー作品。

米国人のアリシア(ジュノ・テンプル)は休暇を共に過ごす為に、チリに住む従姉妹の大学生サラ(エミリー・ブラウニング)の元を訪れる。サラは彼氏のアウグスティンとその姉バルバラ、そして友人のブリンク(マイケル・セラ)らと共に、休暇を過ごす別荘へ向かうところだった。別荘へは車でおよそ12時間のドライブだった。サラと2人で過ごすとばかり考えていたアリシアは、別荘行きを渋るが、サラに説得され同行する。別荘までの道中、サラの電話に連絡が入る。大学で試験を受ける必要が生じた為に、バスでサンティアゴに戻らなければならないという。アリシアは、面識の無い他の3人と共に見知らぬ土地に向かう事に不安を抱き、サラに翻意する様に訴えるが、サラは翌日には合流すると約束し、アリシア達と別れる。

更にドライブは続き、その後ボートに乗り換え、4人は別荘に辿り着く。別荘は小奇麗で快適だったが、バルバラアリシアに好意的ではなく、またブリンクはその言動が不快であった為に、アリシアは気が休まる時が無かった。更に、ブリンクとアウグスティンはスペイン語でやり取りする事が多く、アリシアの猜疑心を一層募らせた。また、別荘付近は携帯の電波が入りにくく、サラとも連絡が付かず、アリシアは次第に孤立感を深めていく。アウグスティンとブリンクはアリシアを遊びに連れ出すが、その間もアリシアの不安感は増すばかりで、夜になってもアリシアは眠る事ができず、それ以後、彼女は深刻な不眠に苛まれていく。

サラが別荘に到着した時には、アリシアは精神状態が不安定になり始めていた。アリシアが眠れない事を打ち明けると、バルバラ睡眠薬の代わりに筋弛緩薬を与える。日中、サラ達3人と共に屋外で過ごしたアリシアは、別荘に戻るとアウグスティンに催眠療法を試してもらう。アリシアがいとも容易くトランス状態に入った事に、3人は驚く。演技だと疑ったブリンクは卑猥な命令をするが、アリシアはそれに躊躇う事無く従った為に、ブリンクは勢いに任せて、暖炉の火に顔を入れる様に命令する。アリシアが火に手をかけた瞬間、我に帰るが、右手に火傷を負ってしまう。病院までは車で5時間以上かかる為に、バルバラが応急処置をして、その夜は様子を見る事になった。アリシアは火傷の痛みで更に眠れなくなり、やがて幻覚や幻聴に苦しみ始める。倒錯したアリシアには奇行が目立ち始め、サラ達の手を焼く様になる。夜中、アリシア夢遊病の様に徘徊し、眠っていたブリンクの顔面を股間に押し付ける行動に出る。

翌日、3人はアリシアを連れて屋外に繰り出すが、その途中でブリンクはアリシアを押し倒そうとする。アリシアが自分を誘っているに違いないと錯誤したのだった。アリシアはいよいよ錯乱状態に陥り、その夜、別荘を1人で抜け出す。サラ達は暗闇の中、懸命にアリシアを捜索する。サラとブリンクがアリシアを発見するやいなや、アリシアは崖から海に向かって飛び込む。救出されたアリシアは、アウグスティンの知人の家に担ぎ込まれる。アウグスティンがアリシアの症状を説明すると、知人は治療できる者を知っているといい、そこへアリシアを運ぶ。ところがその者とは祈祷師で、アリシアに施すのは治療ではなく、まじないにも似た儀式だった。アリシアに薬草を飲ませ、怪しげな儀式が行われる様子をサラ達はただ見守る事しかできない。その間にもアリシアは徐々に弱っていき、やがて息絶えてしまう。祈祷師はアリシアは救われたのだと主張する。サラ達はその場からアリシアを連れ出し、大急ぎで病院に向かう。アリシアの生死は分からない。

 

久しぶりになかなかの鬱映画だった。スリラー作品とだけ知っていたのだが、どういうハナシでどう展開するのか、全く先読みできないので、文字通りのスリルは味わえた。アリシアは元々感受性が極端に強いなどのメンヘラ属性があったのか、或いは不慣れな環境と見知らぬ人間に囲まれながら過ごす内に、精神が参ってしまったのかはよく分からないところだが、不眠に陥り、幻覚や幻聴に苦しむ様になる。ブリンクが飲ませた酒も暗示を強化したのかも知れない。サラは従姉妹なので、アリシアに親身になって寄り添うのだが、ブリンクはクリーピーで不気味な男、アウグスティンは当たり障りのない優男、バルバラは端から好意的では無い女だから、赤の他人のアリシアにとってはややツライ環境ではある。不眠がアリシアの倒錯を加速させ、いよいよ奇行に及ぶ様になり、なぜか祈祷師の元に連れて行かれて衰弱死する。実は、サラはこの休暇中に、アリシアをブリンクとくっつけようという魂胆だった様だが、それがこんな壮絶な悲劇で・・・っていう、まるで救いの無いENDである。人里離れた別荘で、男2人が歳頃の女を陵辱する様な展開を予想していたが、そんなヌルい作品じゃなかった。マイケル・セラがなかなかのキモさを醸し出していて、いい味出してるんだよな。

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