チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

バベル

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作「バベル」("Babel" : 2006)[DVD]

3ヶ国を舞台に、それぞれの登場人物における、意思の疎通の齟齬から生じる出来事の行方を描くドラマ作品。

モロッコ

過去のある一件を境に、問題を抱える米国人夫婦リチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)。2人はその冷え込んだ関係を改善すべく、2人の幼子をシッターのアメリアに任せ、モロッコに観光旅行に来ていた。しかし、旅行を楽しむ様に促すリチャードとは裏腹に、スーザンは乗り気では無かった。ツアーバスに乗り、人里離れた丘陵地帯を移動している途中、バスが狙撃され、スーザンが重傷を負ってしまう。狙撃したのは、その土地に暮らす少年ユセフで、父アブドゥラから借りたライフルで兄アーメッドと共に、ヤギを襲うジャッカルを追い払っていたのだが、腕試しに狙った一発がバスを直撃したのだった。バスの乗客達はテロリストに襲撃されたものと思い込み、車内は騒然となる。リチャードは病院へ直行する様に指示するが、車で4時間の距離と知らされ愕然とする。ツアーガイドのアンワーは最寄りの村で応急処置する様に勧め、リチャードは同意する。しかし、乗客の多くはテロの脅威に怯え、先に進む様に要求し、リチャードと対立する。アンワーの協力を得て、リチャードはスーザンを村の民家に担ぎ込んだものの、失血が多く、危うい状態だった。リチャードは大使館に連絡し、医者の手配を要請するが、米国・モロッコ間の政治的な問題が障害となり、遅々として話が進まない。アンワーが連れてきた獣医の手で、止血はできたが、スーザンの予断を許さない状況が続く。しかし、バスはリチャードらを残し、村を出発してしまい、リチャードは途方に暮れる。地元警察は銃撃犯の捜索を行い、地元ガイドのハッサンから、日本人から譲り受けたライフルをアブドゥラに売ったという供述を得る。逃走中のアブドゥラ父子を発見し、警察が発砲すると、ユセフがライフルで応戦してしまう。銃撃戦でアーメッドが死に、ユセフは投降する。リチャードは夫婦の間で蟠りとなっていた、末っ子サムの死について、スーザンに真実を告げ、2人は打ち解け合う。その頃、米国人狙撃事件は、全米メディアが一斉に報じ始めた事で、国際問題と化していた。ようやく村にドクターヘリが到着し、都市の病院に搬送されたスーザンは緊急手術を受ける。リチャードは自宅に電話をかけ、無邪気な子供の声を聞くと、慟哭する。

メキシコ、アメリカ

カリフォルニアのリチャードの自宅で、長らくシッターとして雇われているアメリア(アドリアナ・バラッザ)は、リチャードから電話でスーザンの容態を聞き、夫婦の幼子の兄妹マイクとデビーの様子を伝える。アメリアはその日、メキシコで暮らす息子の結婚式に出席する為に、休暇を取る事になっていたが、代わりのシッターが見つからなかった為に、リチャードから半ば強引にその日の業務を依頼される。アメリアは息子の結婚式を不意にするわけにはいかず、マイクとデビーを連れて、甥のサンティアゴと共に息子の待つメキシコの町へ向かう。無事国境を通過し、町に到着したアメリアは、マイクとデビーの世話もそうそうに、息子の結婚を盛大に祝う。夜が更けると、泊まる様に促す息子に後ろ髪を引かれる思いで、アメリア達は米国へ向け出発する。アメリアはサンティアゴの酒酔いが気掛かりだった。国境の検問で車は制止され、身元の確認が入念に行われる事になると、不法労働者のアメリアは気が動転する。案の定、サンティアゴの飲酒が疑われ、連行が決まるや否や、サンティアゴは検問を強引に突破し、警察の猛追を受ける。サンティアゴは真夜中の砂漠の荒野で、アメリアと幼子達を降ろすと、車で逃走していく。荒野のど真ん中で現在地も分からぬまま、アメリアは幼子を連れ、途方に暮れ彷徨う。夜を明かし、炎天下の中、尚も歩き続ける内に、デビーの具合が悪くなる。アメリアは幼子を木陰に休ませ、1人で助けを求めに向かい、国境警備隊と遭遇する。アメリアは不法入国者として逮捕される。その後、マイクとデビーは奇跡的に無事発見されるが、アメリアはメキシコに強制送還される。

東京

ろう者の女子高生・千恵子(菊地凛子)は、父ヤスジロウ(役所広司)と2人で高層の高級マンションで暮らしていた。千恵子は多感な時期でもあり、自身がろう者である事で、他人に差別的に扱われるのが我慢できず、時として彼女なりに刺激的な方法で反抗して見せた。ある日、マンションに2人の刑事が父を訪ねて来る。千恵子は父の不在を伝えたものの、内心動揺する。後日、千恵子は親友に、同世代の男友達を紹介され、ハメを外して一緒に遊ぶ。男に勧められ酒やドラッグを飲み、弾けた気分で、夜のクラブに繰り出したものの、千恵子は途中で我に戻り、友人を置いて1人で帰ってしまう。帰宅した千恵子は、先日訪ねてきた刑事の1人、真宮(二階堂智)を呼ぶ。千恵子の母は自殺で亡くなっていたのだが、千恵子は、母の死に父が関与していると、真宮が疑っているのではないかと思っていた。千恵子は母がバルコニーから飛び降り自殺を図った事を説明し、父の無実を訴える。しかし、それは千恵子の誤解で、真宮は別件で父に話を聴きに来た事を打ち明ける。モロッコで米国人が銃撃され、犯人が使用したライフルの名義がヤスジロウとなっていたからである。千恵子はそれを聞くと、突如、全裸となって真宮の前に現れ、誘惑する。真宮は困惑しながらも、千恵子を落ち着かせ、優しく諭すと、千恵子は真宮にメモを託す。真宮はマンションを出る際に、ヤスジロウと遭う。ヤスジロウは妻が銃で自殺を図った事、千恵子が第一発見者だった事、既に何度も警察に事情を説明してきた事を真宮に伝える。真宮は飲み屋に立ち寄り、千恵子のメモを開く。ヤスジロウはバルコニーで裸の千恵子を発見し、抱きしめる。

 

モロッコ、メキシコ(~カリフォルニア)、東京の3つの国で起きる出来事が、ザッピング形式で進行してゆくのだが、やがてそれらが互いに関連していながらも、時系列が異なっているという事実が明らかになっていくという作風。バベルというのは、旧約聖書の創世記に登場する、まさにあのバベルの塔の事で、本作の主旨は、神が人間の言葉を乱し、通じない様にした事で、人間に塔の建設を諦めさせたという記述に基づくらしい。そういう予備知識を頭に入れておかないと、作品を一通り観て感じた以上に理解は深まらないんじゃないかなと。なかなかどうして難しい。モロッコとメキシコのパートは直接リンクしているから、その関係性はすぐに分かるのだが、東京パートはあたかも別作品の様な世界観だから、最初は戸惑う。千恵子役の菊地凛子が、序盤からヘアをガッツリ見せるシーンがあり、思わず面食らってしまった。そして終盤にはフルヌードだからこれまた驚く。母の死が千恵子の精神を歪めたのだとは思うが、真宮に手渡したメモを含め、僕にはその真意が掴めなかった。3つのエピソードはそれぞれが重厚なドラマで見応えはある。

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