チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

プレシャス

リー・ダニエルズ監督作「プレシャス」("Precious: Based on the Novel Push by Sapphire" : 2009)[DVD]

ハーレムに生まれ、虐待を受けながら育った少女が、教育を受ける機会を手にし、辛い現実を乗り越えていく日々を描くドラマ作品。

1986年、17歳の少女プレシャスはハーレムの一角にあるアパートで、フードスタンプを受給する母メアリーと2人で暮らしていた。極度に貧困な生活の下、プレシャスは両親から日常的に虐待を受けながら育った為に、若くして現実に絶望していた。更に父親からの度重なるレイプが原因で、早くも第一子の出産を経験しており、現在も第二子を身篭っていた。第一子のモンゴはダウン症を患っており、高校生のプレシャスはモンゴを施設に預けるよりほか無かった。またプレシャスは高校でも、その容姿がしばしば生徒らの嘲笑や侮蔑の対象となる事があり、自身の居場所を見出だせないでいた。そんな時、プレシャスは日常的に、華やかな舞台で活躍する自分の姿を妄想するなどして現実逃避を図り、自我を保っていた。

ある日、プレシャスは校長に呼ばれ、妊娠の件を咎められる。結果的に退学処分となったプレシャスは、母親に勉強するより福祉の世話になる様に強要される。プレシャスは数学の成績が高い事を校長に評価され、代替学校の"Each One Teach One(EOTO)"で学び、高卒資格を取得する様に促される。プレシャスはEOTOに申し込み、教師レインの下、それぞれ問題を抱える5人の級友達と共に、勉学に励んでいく。レインは教育熱心な人格者で、読み書きのできないプレシャスの苦悩を理解し、親身になって指導に臨む。プレシャスは初めて本音で向き合える大人と出会い、人生に希望を見出していく。しかし、メアリーはプレシャスがEOTOで勉強を続ける事に真っ向から反対する。

プレシャスは福祉局でソーシャルワーカーのワイスに自身の境遇について相談し、助言を求める。メアリーはプレシャスの行為がフードスタンプの打ち切りに繋がりかねないと考え、戒めるように更に厳しくプレシャスに当たり始める。プレシャスはEOTOで級友達と勉強を続けていたが、ある日、陣痛が生じ、病院に搬送され、そのまま第二子を無事出産する。アブドゥルと名づけたその子と退院する日まで、プレシャスはレインと文通でやり取りし合い、より親交を深めていく。

退院したプレシャスはアブドゥルを抱え、メアリーの待つアパートに帰る。メアリーはフードスタンプが打ち切られた事でプレシャスを恨んでおり、アブドゥルを放り投げると、プレシャスに暴力を振るう。プレシャスはアブドゥルを抱えたまま、アパートを飛び出し、EOTOに駆け込む。レインは帰る場所を無くしたプレシャスの為に福祉施設を探すが、相応しい場所が見つからず、レインの自室に泊まらせる事にする。

プレシャスのEOTOでの頑張りが市長に評価され、EOTOの関係者らとパーティが行われる。しかし、プレシャスが喜んだのも束の間だった。翌日、メアリーと面会したプレシャスは父親がエイズで死んだ事を知らされる。検査の結果、父にレイプされていたプレシャスもHIV陽性である事が発覚する。プレシャスはレインにHIVを打ち明け、それでも勉強を続け、大学を目指したいという希望を告げる。プレシャスの成績は目を見張る程に向上していた。

再び、福祉局を訪れたプレシャスに、ワイスはメアリーがプレシャスと子供達と一緒に暮らしたがっている事を告げ、プレシャスにメアリーとの面談を提案する。後日、ワイス立会の下、プレシャスとメアリーの三者面談が行われる。メアリーは自分がいかに不遇に見舞われてきたか、プレシャスを夫の虐待からどれほど守ってきたかなどを涙ながらに語り、プレシャスに再び一緒に暮らす様に懇願する。しかし、プレシャスはそんなメアリーを哀れに思い、絶縁する事を誓うと、モンゴとアブドゥルを連れ、その場を去る。プレシャスは新たな人生を歩み始めるのだった。

 

ニューヨーク市ハーレムという主に黒人が集う地域が舞台となっている本作。社会的には80年代と言えば、極度に貧困や犯罪が蔓延した時代に当たるらしいが、現在はかなり改善している様だ。プレシャスはそんな当時のハーレムを象徴するかの様に、不遇過ぎる環境で生まれ育ち、将来に希望など到底見出だせない状況下で暮らしていた。父からは繰り返されるレイプで子供を妊娠させられ、母からは言葉と暴力による虐待が日常茶飯事だった。挙句、高校まで退学となり、母と同様の人生を歩む事を余儀なくされるのかと、絶望しかけた時に出会ったのがEOTOで、心優しい教師レインだったと。この出会いがきっかけとなって、プレシャスの暗黒に覆われた人生に光明が差すワケだ。リアルな人物背景には本当に鬱々とさせられるのだが、教育や福祉が適切に機能すれば、岩盤を穿つ様に、困難も打開に導けるのだという希望を見い出せる、ステキな作品。こういうのを見ると、いかにアウトリーチが大切か痛感する。ところでマライア・キャリーが出演しているというから、どれかと思ったらワイス役だった。黒髪で地味メイクだとまるで印象が違うが、声を聴いたら判った。

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