チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ペコロスの母に会いに行く

森崎東監督作「ペコロスの母に会いに行く」(2013)[DVD]

中年男が、認知症を患う母の世話に苦慮しながらも、寄り添い理解していく様を描いたコメディ・ドラマ作品。

長崎に生まれ住む団塊世代の岡野雄一(岩松了)は、男やもめのしがないサラリーマンでありながら、自らをハゲ頭から擬えた「ペコロス岡野」と称し、漫画を描き、音楽に興じる生活を送っていた。雄一は、父の死以後、ボケ始めた母・光江(赤木春恵)の世話に苦慮しており、出先で母に関する連絡を受け、飛んで帰る事もしばしばだった。光江の認知症の症状は日に日に進行し、いろんな事を忘れていくため、最近、東京から帰ってきた息子のまさきと共に、代わる代わる光江の面倒を見る様になっていた。

雄一は外回りの営業を度々サボっては、趣味の音楽に時間を費やしていた為、一向に実績が上がらず、会社をクビになってしまう。光江は昔の事は良く覚えている為、いまだに夫が生きていると思い込み、付近を徘徊したり、また、雄一の帰りを何時間も駐車場で待つなどし、近隣の人に心配される様になった。雄一は光江に外出しない様に再三言い聞かせるが、光江に悪気は無いため、雄一は困り果てていた。雄一はいよいよ光江を施設に入れる事を考え始める。

ある夜、光江は不意に幼馴染のちえこの事を思い出し、手紙を書き始める。雄一は光江の下着を買い増しても頻繁に無くなる事を奇妙に感じていたが、ある日、タンスから溢れかえる程の汚れた下着を発見し、驚愕する。翌日、雄一が世話になっているケアマネに相談すると、光江の症状が進行している事を指摘され、施設に入れる事を勧められる。雄一はまさきと共にグループホームを見学した上で、入所させる事を決断する。ホームにはそれぞれに症状の度合いの異なる老人達が入所しており、人当たりの良い真面目な職員達が世話に当っていた。意を決して光江をホームに預けたものの、光江は雄一と離れ離れになる事を嫌がった為、雄一は罪悪感で居た堪れなくなる。後日、雄一は、光江の妹のすずことよしのを連れ、ホームに訪れる。雄一はすずことよしのもボケ始めているのを察する。

幼少期を天草で過ごした光江は、長崎に移ったちえこの事を気に掛けていた。程なくして、長崎に原爆が落とされると、光江はちえこの安否を知りたいと願う様になる。大人になり、夫と共に長崎に移った光江は、人伝に花街を訪れ、ちえこの姿を探す。光江はそこですれ違った女にちえこの面影を見た様な気がした。光江はちえこが生きていると確信し、初めて手紙を出すが、返事は来なかった。その時の記憶と混濁し、光江は再び手紙を書き、ちえこに届ける様にとまさきに託すが、まさきは困惑する。

雄一は、ホームで同じく認知症の母を持つ本田(竹中直人)と出会い、親しくなる。雄一はハゲ頭のせいで、本田の母に別人と勘違いされ、とても慕われていた。一方、本田は母に息子として認識されず、やりきれぬ思いを抱えていた。雄一は馴染みの喫茶店のマスターを交え、本田とバーで親交を深める。雄一はステージで自慢の歌を披露する。

無職になった雄一は、ホームに足繁く通いながら、エロ記事のライター職にありつく。ある日、仏壇の手入れをしていた雄一は、引き出しから再び母の下着を発見し驚く。その下に、古いランタンフェスティバルのチラシと懐かしい写真の数々を発見する。雄一は父の酒乱ぶりを思い起こす。父は給料日の夜には金を使い果たし、泥酔して帰る事がしばしばで、その上、家の中で暴れた挙句、光江を殴る事もあった。雄一は父を憎んではいなかったが、幼心に光江の気苦労は良く分かっていた。

ある日、光江の元を訪れた雄一は、光江に息子と認識されない事に酷くショックを受ける。雄一は職員に、症状には波がある事を聞く。雄一は昔、光江、父、まさきと共に行ったランタンフェスティバルに光江を誘う。

雄一はすずこ、よしの、まさきと職員のさとと共にランタンフェスティバルに訪れる。現地で母を伴って来ていた本田と出会う。連れ立って歩いている内に、すずことよしのがはぐれ、一同は探しに向かう。雄一が少し目を離した途端に、今度は光江がいなくなってしまう。光江はちえこから届いた返事を思い出していた。

再び花街を訪れた光江は、既にちえこが原爆症で死んでいる事を女将から知らされる。返事の手紙は女将がちえこの遺品から見つけ、代わりに光江に出したのだった。手紙の中で、ちえこは光江に対し「なにがなんでも、生きとかんばならん。」と痛切に訴えかけていた。

光江はその手紙を読んだ時の光景が、現在と交錯し、幼い頃、ちえこと共に歌った唄を口ずさむ。光江を発見した雄一は、その姿から光江の気持ちを察する。それ以後、雄一は光江の症状が進行していくのを後ろ向きに捉えないようにし、光江に寄り添いながら過ごしていく。


介護関連の番組で扱っているのを見て、この度鑑賞。ペコロスと同世代で、要介護の親を持つ人には、かなり共感できそうな泣き笑いの人生コメディである。認知症を患う人は現在進行形の物事は容易に忘れてしまいがちな反面、過去の記憶に関しては、しっかり残っていたりするらしい。雄一の母親・光江も、夫や幼馴染のちえこと過ごした思い出の中に生きている状態で、雄一を困らせてしまう。雄一は遊び人気質でありながら、断腸の思いで光江をホームに入れた後も、ホーム任せにせず、頻繁に光江に会いに行く、母親思いの気の良いおっさんである。幸か不幸か、僕は介護とは無縁の生活が確定しているから、認知症やホームの内実の類の話題とは疎遠になりがちで勉強にはなる。本田が一見して明らかにヅラで、登場する度にハゲネタをチラつかせるのが可笑しかった。

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