チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

しわ

イグナシオ・フェレラス監督作「しわ」("Arrugas" : 2011)[DVD]

ある熟年男性の老人ホームへの入所を通じて、ホーム内で暮らす男女の悲哀を描くアニメ・ドラマ作品。

現役当時、銀行の支店長を務めていた熟年世代のエミリオは、加齢と共に認知症の症状が現れ始める。手を焼いた息子夫婦は、エミリオを老人ホームに入所させる。当のエミリオは症状の自覚が薄かったが、不本意ながらも従う。

入所直後、エミリオは同室のミゲルと挨拶を交わす。ミゲルはエミリオからホームへ支払う管理手数料を徴収し、ホームの案内に誘う。エミリオはミゲルに連れられ、メインサロン、図書室、娯楽室、ジムなどひと通り見て回り、プールに辿り着く。ミゲルはそれが施設をよく見せる為のお飾りのプールで、誰も使用したことが無い事を明かし、利用者第一号になる様にエミリオに勧める。途中、認知症が原因で、息子に迎えに来てもらおうと常に電話を探しているソルと出会う。ミゲルはソルから電話の料金を取り、適当にあしらうと、エミリオにいつもの事だと嘯く。エミリオは、ミゲルの事をお調子者でずる賢い人物だと警戒する。ミゲルは2階が介護老人専用だと説き、見ないほうが良いとエミリオに告げる。

夕食時、エミリオはミゲルに加え、アントニア、モデストとドローレス夫妻と同席する。食事が終わり、職員から薬が配布されると、ミゲルはここでは食べて寝るだけだとエミリオに告げる。就寝時間となり、エミリオは財布と時計をベッド脇に並べて置き、眠りに就く。

翌日、ミゲルはソルの弱みに付け込んでいる事をアントニアに詰られる。ミゲルは、ソルの元に毎月仕送りが来ても使い道が無く、電話しても迎えが来ないと反論し、希望を与えて金を受け取っているのだと主張する。エミリオは、アルツハイマーを患い、本来2階行きのモデストを介助する為に、健康なドローレスが付き添いで入所している事を知る。一方、アントニアは家族に迷惑をかけたくないから入所したと主張するが、ミゲルはそんなアントニアに、大勢いるはずの親族が誰も会いに来ないと言い放つ。ミゲルは結婚していないが、後悔しておらず、自由気ままに生きてきた為、会いに来る人がいなくても悲しむ事がないと、エミリオに明かす。認知症により、窓の外を眺め、旅行気分のロサリオに、ミゲルが検札と称して金を受け取るのを、エミリオは不快な面持ちで見守る。

水曜日の朝、エミリオはミゲルに運動の日だと伝えられ、目を覚ます。その時、財布が無くなっている事に気付き、ミゲルを疑う。入所者が集まり、インストラクターと共に、軽い運動を行っている最中、エミリオは「ボール」という言葉が理解できなくなっている事に気付き、当惑する。忙しくなく動き回っている入所者を眺めるエミリオに、ミゲルはそうしていないと気を紛らわせないのだと教える。その中にいる、火星人を怖がって独りにならないカルミーニャを差し、妄想こそ若さを保つ秘訣だと言い放つ。エミリオは我が事の様に憤慨するが、ミゲルは綺麗事はここでは通用せず、いかに沈没せずにいられるかだと説く。エミリオは若い頃に水泳に興じていた事をミゲルに明かし、所内のプールで泳ぎたいと告げる。

クリスマスの朝、目覚めたエミリオは時計が無くなっている事に気付き、ミゲルが盗んだはずだと詰め寄る。ミゲルは呆けたのを自分のせいにするなと突き飛ばし、勝手に探せと部屋を出る。エミリオはミゲルの所持品を漁る内に、大金と大量の錠剤が入った箱を見つける。そこへミゲルが戻り、口外したら許さないと告げる。エミリオは孫を連れて訪ねてきた息子夫婦と再会するが、孫に関する記憶が曖昧な事に気付く。その夜、エミリオはひょんな事からモデストと自分の薬が同じだと知り、自らの症状を心配する。

その後、エミリオは医師に薬について尋ねるが、的を射ず、入所者の様子を覗う為に二階に上がる。そこで症状の進んだ要介護者達を目の当たりにしたエミリオは、ショックを受け、自らがアルツハイマーだと自覚する。ミゲルはエミリオに症状は急に進行しないと諭し、心配しないように宥めると、隠してある薬がいざという時の為の備えだと打ち明け、自分を騙すか、現実と向き合うかだと告げる。それを聞いたエミリオは、咄嗟にプール室に向かい、服を着たままプールに飛び込む。ミゲルは慌ててエミリオを助けに向かうが、エミリオは泳いでいるだけだと告げる。自分のしたい様にするだけだと呟くエミリオに、ミゲルは自分達はきっと大丈夫だと答える。

それからミゲルは、次第に身の回りの事が覚束なくなり始めたエミリオが、二階に行かずに済む様に甲斐甲斐しく世話をする様になる。医師の問診日、ミゲルは一計を案じ、問診を中止に追い込み、エミリオの症状が医師に知られぬ様にし、エミリオの二階行きを防ぐ。程なくして、モデストの症状が悪化し、ドローレスと共に2階に移る。

ある朝、エミリオは靴下が盗まれたと主張し、家に帰ると喚き出す。ミゲルは職員に見つかると、エミリオが2階行きになると心配し、機転を利かせて、その場をやりすごす。

その夜、ミゲルはエミリオを連れ、ホームから脱出を図り、それに気付いたアントニアも付いてくる。ミゲルは金を使って新車のオープンカーを手配し、免許を失効していながら、唯一運転できるエミリオに運転を任せ、3人は夜の町に繰り出す。しかし、エミリオは運転を誤り、車道から脱線し、横転事故を起こす。ミゲルとアントニアがそれぞれ軽傷を負った一方、エミリオは2階で治療する事になり、麻酔と入院のショックでアルツハイマーの症状が進行してしまう。ミゲルはホームの責任者から叱責される。エミリオがいなくなった部屋で、ミゲルは錠剤に手を伸ばすが、誤ってこぼしてしまう。エミリオのベッド下を覗き込んだミゲルは、靴下で括りつけられた財布と時計を発見し、項垂れる。

その後、ミゲルは心を入れ替え、入所者から金をせしめるのを止め、親身に接する様になる。更に、二階に移ったエミリオの世話役を担い始める。

 

 

スペインの老人ホームをテーマにした社会派アニメ作品だが、日本発のアニメと言っても通じそうな内容と画のタッチで親近感を抱いた。エミリオの様に、自分では呆けていないと信じたくても、症状の進行には抗えない様子が悲哀に満ちている。認知症になると、こうして自我が少しずつ、或いは一足飛びに失われていくんだろうか。そうなる前に、薬で逝ってしまおうというミゲルの気持ちは、とても良く分かるなぁ。ホームで暮らすシニア男女の抱える症状もそれぞれ異なっていて、僕には現場のリアルは分からないが、介護している人からすれば、あるあるな感じかも知れない。

f:id:horohhoo:20150624174611j:plain

f:id:horohhoo:20150624174615j:plain

f:id:horohhoo:20150624174618j:plain

f:id:horohhoo:20150624174621j:plain

f:id:horohhoo:20150624174624j:plain

f:id:horohhoo:20150624174627j:plain

f:id:horohhoo:20150624174631j:plain

f:id:horohhoo:20150624174634j:plain