チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

夢、死ね!若者を殺す「自己実現」という嘘

中川淳一郎 著「夢、死ね!若者を殺す「自己実現」という嘘」(2014)

著者の筆致は嫌いじゃないのだが、このタイトルはかなり酷い。2chのニュース系スレ並に完全な釣りタイトルである。導入こそ、夢見る夢子ちゃんである就活生諸氏を念頭に置いた、地に足の付かない自己実現系妄言レベルの夢を抱く事を戒める論調なのだが、本書の大半は、いわば著者の経験に基づく仕事論に紙幅が割かれており、タイトルから受ける印象とはまるで異なる。

著者は博報堂を退職した後、ライターに転身し、ネットニュース編集者として辣腕を振るっている、言わずと知れたキャリアの持ち主で、博報堂在籍時代、あるいは駆け出しのライター時代にこんな事やあんな事があった、と終始こんな武勇伝ばりの経験談が続くだけで、実に退屈である。そこから導かれる結論は、仕事は良い!人生はやっぱり仕事が全て!仕事が人間を成長させる!ワーク・ライフ・バランスなんて二の次!とこんな具合で辟易する。なんとこの本自体が、自己実現を迫るキャリアポルノそのものだったのである。サブストリーム目線で、メインストリームの滑稽さを叩いているに過ぎない。要は人脈、コネ、コミュ力さえあれば、あとはどうにかなるってハナシだ。

稀有な一成功者の弁として、人生に希望を抱く大学生、高校生辺りが読む分には、参考になるところもあるかも知れないが、疲弊した社会人にはああさいですかと唾棄したくなる一冊である。著者の「縁の切り方」は面白く読めたのになぁ。