チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

パンドラム

クリスチャン・アルヴァート監督作「パンドラム」("Pandorum" : 2009)[BD]

荒廃した地球を出発し、新天地となる惑星を目指す宇宙船内で、奇病に侵食されたクルー達によるミッションの帰趨を描くSFスリラー作品。

2153年、地球の人口は243億人に達し、世界的に水と食料不足が慢性化する。この年、地球に酷似した惑星タニスに探査機が到着する。2174年、地球上の限られた資源を巡る争奪戦がピークに達し、人類のタニスへの移住計画を課せられた宇宙船エリジウムが打ち上げられる。

ある時、技術班のバウアー伍長は、技術室のポッド内で冷凍睡眠から突然覚醒する。バウアーは長期の冷凍睡眠により、記憶障害を患い、自らが課せられたミッションについて、部分的にしか思い出せず、混乱する。程なくして、隣のポッドのペイトン中尉が覚醒し、同じく記憶障害の症状を呈す。船内は電力の供給が途絶えており、2人は現在の船内及び他のクルー達の状況、更に目的地すら分からず、対応に苦慮する。ペイトンは扉に何者かが出ようとした痕跡を見つけ、奥に司令室があるはずだと推察し、補助電源を起動し、他のクルーとの連絡を試みる。船内には過電流が生じており、その都度、システムが再起動する為に、バウアーは原子炉の故障だと推察する。もう一つのポッドからクーパー少尉が消えているのを発見すると、バウアーは換気口を掻い潜り、外部の探索に向かう。ペイトンは自分とバウアーがチーム5である事から、各チーム2年毎の交代で、地球を出発してから8年が経過したと推測する。

換気口を伝い、縦穴から落下した先で、バウアーはクーパーのミイラ化した死体を発見する。荷物入れから脱出すると、無線に障害が生じ、ペイトンと交信できなくなる。通路に出たバウアーは、女と遭遇する。逃げ出す女を追跡した先で、惨殺死体を発見したバウアーは、不意を突かれて女に襲われる。何かを恐れる女は、バウアーをナイフで脅し、靴を脱ぐ様に命じて去る。そこに得体の知れぬ凶暴な人型生物が現れ、死体を奪う。バウアーは咄嗟にその場から逃げ、生物が死体を食らう様子を目撃する。通信が回復すると、バウアーは生物の事をペイトンに報告する。記憶が回復し始めたペイトンは、船が通常の輸送船と違い、地球にはもう戻れない事、6万人の乗員と共に惑星タニスを目指している事を思い出す。バウアーは恋人との記憶の一部を取り戻すが、なぜ地球に置いてきたのか、思い出せずに困惑する。

ペイトンはバウアーに司令室に向かう様に命じる。バウアーは武器庫に到着すると、暴動鎮圧銃を見つけ、装備する。バウアーは、司令室への非常ドアを開けるには、原子炉を再起動し電力を確保する必要があると、ペイトンに伝える。徐ろに、バウアーはパンドラム(軌道機能不全症候群)の兆候を自覚し、ペイトンに経験の有無を尋ねる。ペイトンは過去に経験した宇宙船エデンの惨劇を話す。それはかつて、航行中のエデンにおいて、ある士官が冷凍睡眠の後にパンドラムを患い、船が呪われていると思い込み、クルー全員を睡眠カプセルのまま船外に放出し、5000人が死亡した事件である。

バウアーは、通路で昏睡したチーム6のシェパードを発見し救出する。シェパードは、バウアーが救助隊で無いと知ると、激しく落胆する。生物を恐れるシェパードは、臭いを油で消して逃亡する。生物の群れに感知され、バウアーも逃走するが、逃げ込んだ先でシェパードは生物に捕まり、餌食にされる。バウアーはそこへ突如現れた男に危ういところで助けられる。

その男、農業部門のマンとは言葉が通じないものの、バウアーはマンを味方として理解し、原子炉を目指す。一方、ペイトンにもパンドラムの兆候が現れ始める。コンテナ室に着いたバウアーは、再び女に襲われる。そこへマンが現れ、女と格闘を始める。バウアーは威嚇発砲し、2人を止めると、互いに協力すべきだと説く。その女、ナディアとマンと共に原子炉を目指そうとした矢先に、生物の追跡に遭い、バウアー達はナディアに導かれ、生態系開発室へと逃げこむ。ナディアはエリジウムが本物のノアの方舟だと説き、船内に地球と同じ生物圏を備えている事を明かす。バウアーは地球からタニスまで123年かかる事を思い出す。一方、ペイトンが室外に通じる出口を探していると、配線に埋もれたギャロ伍長を発見し、救出する。

睡眠室に到着したバウアー達は、ポッド内の人間が生物に食われ、ほとんどカラになっているのを目の当たりにする。不意に床が抜け、バウアーとナディアは汚水溜まりに落下する。そこには夥しい数の人間の死骸があり、2人はその一帯が生物達の根城だと察する。3人が先を急ごうとすると、生物の襲撃を受け、総出になって殺し、逃走する。ペイトンはギャロがチーム4で、司令室から来た事を知り、血塗れで取り乱している理由を尋ねる。ギャロは上官がパンドラムを患った為に、やむを得ず、手にかけたと釈明する。

バウアー達は逃げ込んだ先の倉庫で、コックのリーランドと遭遇する。リーランドが随分前に覚醒し、船内の事情に詳しい事を明かすと、バウアー達はそこで束の間の休息を取る。ナディアは、生物について、冷凍睡眠中に投与される栄養剤に環境適応作用があり、それが原因で突然変異したと推測する。ペイトンは不安定なギャロに鎮静剤を打ち、落ち着かせようとする。ギャロはパンドラムが精神的ショックによりもたらされ、誰でも発症し得る病だと告げる。

リーランドは地球を発ってから、これまでの船内の経緯をバウアー達に説明する。出発時、起きているのは3名のクルーだけで、途中までは順調だったが、程なくして指揮官と少尉がパンドラムを発症した。そこへ地球からの最後の通信が届いた。「残るのは君たちだけだ。幸運を祈る。神のご加護を。成功を願う。」その直後、地球は何らかの原因で忽然と消滅した。少尉と指揮官は目的を失うと暴走し始め、無秩序に殺し合いを始めた。残った1人は、王を気取り、睡眠中の乗客を使ってサバイバルゲームを始めた。その後、ゲームに飽きると、王は再び眠りに就いたのだった。

ひと通り、話を聞かせ終わると、リーランドはバウアー達に罠をかけ、逆さ吊りにする。ペイトンもまたギャロから経緯を聞き、ショックでパンドラムが進行する。バウアーは原子炉が過電流で限界に近づいており、直に停止すると訴え、船を直すのが先決だとリーランドを説得する。解放されたバウアーはペイトンと交信し、原子炉のデータにアクセスすると、完全停止まで47分足らずだと知る。バウアー達はペイトンの誘導で、原子炉を目指す。

ギャロはバウアーに再起動は無理だと、ペイトンに止めさせる様に促す。バウアーは、クルーが死に絶えた睡眠室に立ち寄ると、地球で恋人と別れ、失望した為に、ミッションに志願した事を思い出す。ナディアは生き残るのが使命だとバウアーを励ます。バウアーはそこで更に、ペイトンに関する重大な真実を思い出す。

ギャロもまたパンドラムを発症し、バウアーが原子炉を危険に晒すと主張すると、ペイトンに止める様に訴える。バウアー達は原子炉に到着するも、周辺一帯に生物達が群れをなして眠っているのを目の当たりにする。ペイトンは正気を失ったギャロに鎮静剤を打とうとするが、ギャロは鎮静剤を奪い、ポッドで船外へ脱出させる様に命じる。ペイトンはギャロをポッドに閉じ込めると、脱出できぬ様にセットする。バウアーは生物の群れを掻い潜り、原子炉の再起動に成功すると、船内のシステムが復旧する。バウアー達は司令室へ向かうが、その途中、生物達の追跡に遭い、マンが格闘の末、殺される。

ペイトンは司令室へ向かおうとした矢先に、精神が錯乱し始め、ポッドを破って襲いかかってきたギャロと格闘する。実はギャロはペイトンの出発当時の姿であり、ペイトンは老いたギャロが創りだした人格だったのである。ペイトンは自分自身に鎮静剤を打つ。そこへリーランドが到着すると、ペイトンは鎮静剤でリーランドを殺し、司令室に入る。バウアーとナディアは生物の追跡から辛うじて逃れ、司令室に辿り着く。

記憶障害が完全に回復したバウアーは、ペイトンがギャロである事を見抜く。ペイトンは神も法も秩序も無い船内で、裁く事の無意味さを説くと、モラル無き世界こそ究極の自由だと称し、パンドラムが悟りの境地だと開き直る。バウアーはペイトンに蛮行の責任を取るように迫り、強引に歯を抜き取る。その時、バウアー達は船が地球を出発してから923年経過しており、既にタニスの海に不時着している事を知る。

バウアーはショックで正気を失いかけ、生物に襲撃される幻覚に襲われる。ナディアがペイトンに追い詰められると、バウアーは幻覚に向けて発砲する。衝撃で生じた破片が天窓を破損し、海水が船内に浸入すると、バウアーはナディアを救出し、2人でポッドに入る。ポッドは船外へと射出され、2人は海上に脱出する。船内に残る生存者のポッドも船体破損に伴い、緊急射出され、海上へ脱出する。生存者数1213名、惑星タニスで人類の新たな歴史が始まる。

 

 

B級かと思いきや、予想以上にハードSFな内容で、製作費の割にはかなりよく出来ている印象。人類は荒廃した地球を捨てて、宇宙船エリジウムで新天地となる惑星タニスを目指す。この辺はSFではままありがちな設定。パンドラムとは劇中で軌道機能不全症候群と説明される、よく分からない病気なのだが、端的に言えば狂人化してしまうという事らしい。孤立無援の宇宙船内でクルー達がパンドラムに罹患し、互いに殺し合った挙句、相当の時間が経過した後の話である。更に良くわからないのが、船内に蔓延る異形の人型生物達で、具体的にどんな経緯で彼らが発生したのかはほとんど語られない。突如目覚めたクルー達は、パンドラムと謎の生物、双方に怯えながら、タニスへの移住を賭けたミッションを完遂すべく奮闘する。しかし実は、地球を出発してからほぼ一世紀経っており、とうの昔にタニスに到着していた事が明らかになる!これはなかなか意表を突いたオチだった。それにしても、地球が突然消滅するってのは、ちょっと強引すぎるかなと。

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