チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

リヴィッド

ジュリアン・モーリー,アレクサンドル・バスティロ監督作「リヴィッド」("Livide" : 2011)[DVD]

寝たきりの老婆の屋敷に隠された宝を探すべく、屋内に侵入した男女が、恐ろしい秘密に遭遇する様を描く超常ホラー作品。

時はハロウィン。訪問看護研修の初日を迎えたリュシーは、指導係ウィルソンと共に老人達の家を回り、処置を行っていく。町外れの森に囲まれた古びた屋敷に着くと、ウィルソンはリュシーに車内で待つように告げ、屋敷の中に向かう。リュシーは興味本位でウィルソンの後を追う。

屋敷の最上階の部屋に入ったリュシーは、植物状態で眠るデボラ・ジョセルの姿を目の当たりにする。ウィルソンはジョセルが厳格なバレエ教師として人気だったと明かす。窓を開け、空気を入れ替えたリュシーに、ウィルソンは本棚から本を一冊選ぶように促す。リュシーが適当な一冊を選んで開くと、中から蛾が飛び出す。リュシーはジョセルが輸血されている理由を問うが、ウィルソンは分からないと答える。ウィルソンはジョセルの一人娘が生まれつき口が利けずに早死した事、ジョセルが屋敷で死にたいと遺言を残した為、意思が尊重され施設に入らない事を明かす。更にウィルソンは、ジョセルが大金持ちで、屋敷のどこかに宝があるらしいと告げる。処置が済むと、2人は屋敷を後にする。その日の業務が終わると、リュシーはウィルソンと別れ、港で漁師の彼氏ウィリアムと落ち合う。

リュシーはウィルソンと共にバーに寄り、屋敷の老婆と隠された宝について話す。ウィリアムは目の色を変え、金を手に入れて人生を変えようと提案する。ウィリアムは一生を漁師で終える事に不満を抱いており、薄給で働くウェイターで親友のベンにも同意を求める。リュシーはウィリアムの不誠実さに呆れて帰ろうとする。ウィリアムはリュシーの母が自殺し、父が夜も働き詰めで大変だろうと同情し、再考を促す。一方、ウィルソンは少女を誘拐して殺すと、浴槽で血液を抜く。

夜、帰宅したリュシーは、母の死から8ヶ月足らずで父が女を作っている事を知り、父を責める。思いつめたリュシーは、ウィリアムに連絡し、屋敷で何も壊さないという約束をさせ、宝探しの提案に応じる。その後、再び集まった3人は、車で屋敷に向かい、敷地の傍で降りる。30分程歩いたところで、リュシーは鬼火を見つけ、捕まえる。程なく、3人は屋敷に到着する。正面の扉は施錠されており、ウィリアムは密かに裏の窓の格子を外し、リュシーとベンを呼び寄せる。リュシーとベンは躊躇するが、強引なウィリアムに促され、中へ忍び込む。

3人は廃屋と化した物置を抜け、屋内の古い調度品を物色しながら、上の階を目指す。屋敷で唯一施錠されている部屋に宝の存在が疑われ、リュシーは昼に見たジョセルのペンダントが鍵だと思い出し、3人は最上階のジョセルの部屋に向かう。部屋に着くと、リュシーは眠っているジョセルから鍵を取り外す。

施錠されたドアと鍵が合わない事が判ると、ベンは力ずくでドアを開ける。リュシーは約束と違うと非難するが、ウィリアムはもう後戻りできないと説得し、部屋の中へ入る。3人はそこで目を綴じられたバレリーナ姿の少女の死体を発見する。リュシーはそれがジョセルの娘で、宝が彼女だと悟る。少女の立つ台座の穴に鍵を挿して回すと、台が回り始める。ウィリアムが憤慨して娘を殴りつけると、上階のジョセルの部屋から音が聞こえてくる。怯んだ3人は屋敷からの脱出を図るが、入り口の窓に格子が付けられ、閉じ込められる。リュシーはジョセルの部屋に窓があった事を思い出し、3人は再び部屋に戻るが、ジョセルの姿は消え、窓も開かない事を知る。ベンは部屋の鏡に触れた途端、忽然と姿を消し、出口の無い手術室に移動させられる。そこにバレリーナ姿の3人の少女が現れ、ベンを惨殺する。

ウィリアムは必死に脱出しようと試みるが、リュシーはジョセルと娘アナの写真を発見し、アナの部屋に向かう。リュシーは部屋の中で、人形の間に腰掛けるジョセルと遭遇し、手を差し出す様に促される。リュシーはジョセルにアナに纏わる過去を見せられる。

ジョセルはレッスン生の少女達に厳しい特訓を課すが、その最中、アナはレッスン生を襲って血を飲む。アナはジョセルの制止を振り切り、屋敷の外に出ると、日光に晒された事が原因で、激しい拒絶反応を起こす。ジョセルはアナを救うと、夜中の外出をも禁じる。

リュシーが目覚めると、そこにジョセルの姿は無く、程なくしてウィリアムの叫び声を聞く。ウィリアムはベンに襲われるも辛うじて撃退する。そこへジョセルが現れ、ウィリアムを殺すと、その血を飲む。リュシーはウィリアムの元へ向かおうとするが、ジョセルの接近を知り、アナの死体のある部屋に逃げ込む。リュシーは、ジョセルが苛虐の末、アナの背骨を折った事を知り、アナが壊れただけで生きていると察知する。突然、アナが動き始め、リュシーに襲いかかる。リュシーはアナの首を噛みちぎって撃退するが、そこへウィルソンが現れ、リュシーを気絶させる。ウィルソンはかつてジョセルのレッスン生で、アナの「修理」にも立ち会っていたのである。

ウィルソンにより手術室で拘束されたリュシーの前に、ジョセルがアナを運び入れる。ジョセルはリュシーの腹部を爪で切り裂くと、蛾の幼虫を中に詰め込み、更にアナの首元の傷にも幼虫を詰め込む。次にジョセルはリュシーの目を綴じ付ける。その寸前、リュシーは母の幻覚を見る。リュシーとアナ、それぞれの口から蛾が孵り、飛び出すと、互い違いの口から体内へ入る。

その後、アナの魂はリュシーの体に移り、アナは人間として生まれ変わる。ジョセルがアナに踊る様に命じると、アナはハサミでウィルソンを殺し、ジョセルの喉元を切り裂く。アナは人形と化したリュシーの元に向かい、綴じ付けられた目を解くと、自らの手を切って血を与える。アナはリュシーを連れて屋敷からの脱出を図るが、ジョセルが息を吹き返し、アナに襲いかかる。アナはリュシーと二人がかりでジョセルの頭部を引きちぎって殺す。外に出ると、リュシーは再び鬼火を見つける。アナは、夜の屋敷が現実と隔絶された異世界であり、出て行けない事を知る。2人は一緒に朝の訪れを待つ。

翌朝、アナは黒衣で体を覆ったリュシーを海岸へと連れ出す。リュシーは崖から昇天し、アナはその様子を見届ける。

 

 

序盤はどんな系統の話なのか予想もつかなかったが、途中でこれが一風変わったヴァンパイア作品なのだと分かった。雰囲気満点の古びた屋敷で、酸素吸入と輸血を受け、寝たきり状態の老婆。指導係が明かす屋敷に隠された宝の存在。宝に釣られて、やってくる若者達。なるほどと膝を打つ展開。回想されるヴァンパイア母子のおぞましい過去から、ようやく老婆の狙いが分かる仕掛け。どれもオリジナリティがあって面白い。「屋敷女」共々、この監督の作品からはホラーに対する独特な美学を感じる。単純にグロさ極まる演出に留まらない、耽美の世界観を追求している、そんな印象。フレンチホラー恐るべし。

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