チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

Cake ケーキ ~悲しみが通り過ぎるまで~

ダニエル・バーンズ監督作「Cake ケーキ ~悲しみが通り過ぎるまで~」("Cake" : 2014)[BD]

事故で心身共に重い後遺症を負った女が、絶望の縁から再生への道のりを模索する様を描くドラマ作品。

事故で重傷を負い、回復後も慢性痛に苦しむ弁護士のクレアは、同じく慢性痛で境遇の似た者達が集う支援グループに参加する。ある時、グループの一員のニーナが飛び降り自殺を図り、若くして急逝する。クレアは生前のニーナを快く思っておらず、グループで悪態を付き、皆の顰蹙を買う。その後、クレアはグループの座長アネットから脱会を勧められる。

クレアは事故以来、夫ジェイソンと別居しており、世話焼きの家政婦シルヴァーナの手助けを受けながら生活するが、慢性痛を緩和する為に鎮痛剤に依存する。またクレアは事故で息子を亡くしたショックで、精神的にも後遺症を負っており、移動は専らシルヴァーナの運転に頼るものの、車内から窓外を見る事を激しく拒絶し、走行中は常にシートを倒す。シルヴァーナはそんなクレアの気持ちに寄り添い、常にその身を労るが、クレアが息子の思い出を手放そうとしている様を見て心配する。

ある夜、クレアはニーナに自殺を促される悪夢を見て、飛び起きる。クレアは事故以来、プールでインストラクターと共にリハビリを行うが、インストラクターはクレア自身が前向きに取り組まない為に、改善が見られない事を指摘する。クレアはニーナの悪夢を思い出し、希死念慮を抱く。

クレアはシルヴァーナの付き添いで、ニーナが身投げしたフリーウェイを訪ね、その瞬間を目撃した警備員からその時の状況を聞く。クレアは実際にその現場まで行き、下を見下ろすと、その瞬間のニーナの気持ちに思いを巡らせる。クレアはアネットに再会すると、グループの脱会を迫られた事を責め、訴訟を仄めかして、ニーナの住所を聞き出す。ニーナの家を訪ねたクレアは、夫ロイに小さい頃に住んでいた家だと偽り、屋内の様子を覗う。ロイはアネットから連絡を受けており、クレアに嘘を演じる理由を問うが、クレア自身もその理由が分からないと答える。

鎮痛剤を過剰に服用する事で所定量を切らしたクレアは、より多くの鎮痛剤を入手すべく、メキシコのティファナの薬局へ連れて行く様にシルヴァーナにせがむ。ティファナで訪れた薬局の医師は、クレアの提示した大量の鎮痛剤リストに驚きながらも応じるが、処方箋無しでは国境で没収されると告げ、マリア像の中に忍ばせる。2人は帰路に就くが、国境の検問で不審感を抱かれ、足止めを食らう。クレアは同じく弁護士のジェイソンに裏で手を回してもらい、検問を抜ける。帰宅したクレアを、ジェイソンが待つ。荷物を引き取りに来たジェイソンは、クレアの身を心配する。クレアは弱音を吐き、眠りに就くまでの間、寝室で付き添いを請う。

翌日、クレアは再びロイの元を訪ね、ニーナの墓参りに同行すると、ロイが墓の上の木にウィンドチャイムを取り付けるのを見守る。クレアはロイがニーナの死で深く傷つき、また静かに怒りを抱いている事を知る。その後、クレアはロイを自宅に招き、添い寝をしてもらう。翌夜、クレアは一人では寝付けず、タクシーでロイの元を訪ねると、ロイの隣で眠りに就く。夢の中にニーナが現れ、クレアが他人を利用している事を罵ると、身投げする時の様子を語る。

翌朝、ロイの息子ケーシーが訪ねてくる。ケーシーは翌週に誕生日が近づいている事を明かし、凧をせがむ。クレアはロイ達と共に、再びニーナの墓参りに同行する。その後、3人で入ったレストランで、クレアはニーナの幻覚を見る。クレアは嘲笑うニーナを詰り、我に帰ると、ロイに断りなく帰宅する。

程なく心配してやってきたロイを、クレアの代わりにシルヴァーナが招き入れる。ロイは眠っているクレアの傍で付き添う。クレアが目を覚ますと、ロイはニーナの遺書の存在を明かし、「許して」とのみ記された文面を見せる。ロイはシルヴァーナからクレアの遭った事故について知ったが、自分とケーシーの事で手一杯だと告げる。クレアは同情される事を拒む。ロイが帰った後、シルヴァーナはロイを明後日の昼食に招き、ロイが了承した事をクレアに明かす。クレアはリハビリに前向きに取り組み始め、インストラクターに痛みを素直に打ち明ける。更にアネットに贈り物と称してウォッカを持参し、謝罪する。

クレアは久しぶりに女化し込み、ロイとケーシーを招く。クレアはケーシーがプールで泳げるようにと息子の水着を貸し与える。ロイは怒りを感じるばかりの支援グループを抜け、仕事へ復帰する意向を告げ、更に引っ越しをする予定を明かす。ロイはクレアが引っ越さない理由を問い、留まれば幽霊の気配や思い出に苦しむだけだと説く。クレアは鎮痛剤を断とうと決意し、ロイ達と食事を囲む。その最中、突然、事故の加害者の男が訪ねてくる。男は法廷で述べられなかった謝罪の言葉を告げるが、激昂したクレアは男に殴りかかり、ロイに制止される。

精神が不安定な状態に陥ったクレアは、鎮痛剤を過剰に服用した後、トイレで嘔吐し、昏睡する。シルヴァーナの発見により、クレアは病院に搬送され、治療を受ける。夢の中でニーナがケーキを携えて現れる。ニーナは生前、グループセラピーの中で、「痛みが無かったら何をしたい?」という問いかけに「息子の誕生日にケーキを焼く」と答えた事に触れ、それを聞いてクレアだけが泣かなかった理由が分かると告げる。クレアは聖人ぶるニーナが嫌いだった事を明かし、自殺をやり遂げた事を讃える。ニーナはクレアにケーキに灯した火を吹き消すように促すと、窓から飛び降りる。その瞬間、クレアは夢から覚め、パニックに陥る。

回復を果たし、退院したクレアは、かつてジェイソンと訪れたリバーサイドのドライブイン・シアターへ連れて行く様にシルヴァーナにせがむ。夜、映画の鑑賞中、クレアは車を抜け出し、フェンスの切れ目から線路に侵入する。そこに現れたニーナの幻覚に、クレアは薬が無いと辛くて耐えられないと訴える。クレアはニーナと共に線路に横たわると、最期の思いを語る様に促され、自分が良い母親だったと告げる。そこへ心配をしたシルヴァーナが駆け付け、クレアの意図を知る。シルヴァーナは呆れ、憤慨するが、それでも心配して祈ってしまうと打ち明ける。

離れている間に車が盗まれてしまい、2人はタクシーでモーテルに着く。クレアは遠慮するシルヴァーナと共に眠りに就く。レンタカーで帰路に就こうとしたその矢先、ボイシから家出してきたという少女が乗り込んでくる。クレアはロスに行き、女優になりたいというその少女を同乗させる。クレアはファッジケーキを100ドルで作るように頼み、少女を自宅に招き入れる。クレアはジェイソンからのメッセージを付した、息子の写った壁掛けの写真を見つけ、感涙する。

仮眠を取り目覚めたクレアは、少女が財布を盗んで消えた事を知る。頼んだファッジケーキは完成しており、クレアはシルヴァーナと共にその出来栄えに感心する。クレアはケーキをロイの家に持ち寄り、ケーシーの誕生日プレゼントの凧と共に添える。その後、クレアはシルヴァーナと共に息子の墓を訪ね、墓の上にウィンドチャイムを取り付ける。車に戻ったクレアは、意を決してシートを上げる。

 

 

ジェニファー・アニストンが自らプロデュースし、主演も務めた渾身の一作。ストーリー性の高いドラマだが、核心部分である、クレアが遭遇した事故とその被害については敢えて明確に描かず、想像で補う様な作りになっている。更に支援グループに同席し、自殺したニーナが夢に現れては、クレアを苛ませる為、その理由が判るまではミステリーの様な雰囲気も醸し出し、なかなか面白い作りになっていると思う。アニストンはすっぴん同然で、その上、事故で負った傷がリアルに表現され、更に役作りで体重まで増やしており、もう別人の様だ。息子を喪い、絶望の淵に陥った痛々しいまでの女の姿を見事に演じきっている。終盤の感涙シーンはヤバかった。この前に観た「モンスター上司2」で演じていたセックス狂いのジュリアと比べると、この女優のポテンシャルを思い知らされる。しかし、アナ・ケンドリックも売れっ子で良く見かけるなぁ。低予算系ではあるが、心に残る良い作品だった。

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