チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

オペラ座/血の喝采

ダリオ・アルジェント監督作「オペラ座/血の喝采」("Opera" : 1987)[DVD]

急遽、代役から主演を務める事になったオペラ女優が、連続殺人事件に巻き込まれる内に、過去の忌まわしい記憶と対峙していく様を描くスリラー作品。

オペラ「マクベス」の公開を目前に控え、演者とオーケストラが劇場に集い、リハーサルが行われる。マクベス夫人を演じるマーラは、演出に用意されたカラスの存在を忌避し、悪態を付くと、勝手にリハを切り上げ、舞台を後にする。ところがマーラは劇場から外に出た途端、車に跳ねられ重傷を負う。そこでマーラの代役ベティの出演が急遽決定する。

その直後、自宅に控えるベティに何者かが電話をかけ、マクベス夫人の役でデビューが決まった事を明かし、喜ぶように促して切る。程なく、ベティのアパートに親友ミラとバルディーニら舞台関係者が訪れ、マーラの事故によりデビューが決まった事をベティに伝えると、1時間後に控えた舞台の準備を始める様に促す。困惑するベティは、自分がマクベス夫人には若過ぎ、適任では無いと躊躇う。バルディーニは一躍スターになれると称え、ミラは同じく女優で亡くなったベティの母も喜ぶはずだと諭す。ベティはマクベスが不幸を招くという古くから伝わる噂を持ち出し、尚も出演を渋るが、演出家マークは大舞台でデビューできるチャンスだとベティを激励する。

開演時間が近づき、劇場を客が埋め尽くす中、舞台袖では慌ただしく準備が進められ、ベティはいよいよ舞台に上がる。ベティがマクベス夫人を好演する最中、劇場の上の階から突然ライトが落下する事故が発生し、劇は一時中座するが、マークはベティに続行を促し、無事にその日の公演を終える。

事故はあったものの、ベティによる初演は大盛況を博し、スターの誕生だと評される。楽屋に戻ったベティの元に、一輪のバラを携えてファンと称するアランがやってくる。アランはベティにサインを求め、警部である事を明かすと、訝るベティにその声に魅了されたと弁明して立ち去る。その後、恋仲で助監督のステファノがやってきて、ライトの事故で裏方が死に、その為に警察が来ているのだと伝える。ベティは打ち上げパーティにステファノの同行を請う。その時、マーラから得体の知れない瓶入りの液体が届き、不審に思ったベティはそれを流しに捨てる。

その夜、関係者が出払った楽屋裏に何者かが侵入し、ベティの衣装が切り刻まれ、更に舞台用のカラスが惨殺される。パーティを終えたベティはステファンの家で夜を共にする。ベティが一人になった隙を見計らい、フードを付けた男が現れ、ベティに襲いかかる。男はベティを柱に縛り付け、更に下眼瞼に針を貼り付けると、目を閉じたら上瞼を貫く様にし、よく見ておくようにベティに告げた後、戻ってきたステファノをベティの目前でナイフで惨殺する。その後、男はベティの拘束を解いて立ち去る。

ベティは大雨の中を、ステファノの屋敷から逃げる様に飛び出し、電話ボックスから通報する。その直後、ベティはマークと遭遇する。マークはベティを車に乗せると、自宅まで送り届け、事情を聞く。ベティは起きた出来事が、子供の頃に見た悪夢と同じで、いつも黒いフードの男が現れたと明かす。マークは施錠をしっかりする様にベティに告げて、帰宅する。その後、ベティは室内に何者かの気配を感じ、更に無言電話が掛かって来た為、役を受けなければ良かったと悔やむ。

翌日、アランがステファノ殺害の件で劇場へ捜査にやってくる。カラス担当のマウリツィオは、カラスが三羽殺された事を明かし、カラスを嫌っていたマーラの関与を疑うが、バルディーニはそれを否定する。マウリツィオはカラスがやられた事を忘れず、いつか復讐すると説く。バルディーニはマクベスが不幸をもたらすのは有名な話だと告げ、呪いを示唆する。

一方、衣装担当のジュリアは、二日後の舞台に間に合わせる為に、衣装室で損傷した衣装の修繕に取り掛かる。ベティはアランの聴取を避け、ミラに連絡すると、何者かに狙われている事を明かし、相談に乗る様に請う。ジュリアは修繕中に、衣装の装飾部に不可解な金のブレスレットが絡まっているのを見つけ、ベティに尋ねるが、ベティも関知しない物だと分かる。ジュリアはブレスレットのプレート部に小さく刻印された文字を読むべく、ルーペを探しに向かう。ベティが一人になった途端、フードを付けた男が現れ、ベティに襲いかかる。男はベティをガラスケース内に縛り付けると、再び目元に針を貼り付ける。その後、戻ってきたジュリアをハサミで惨殺すると、ブレスレットを回収し、いつでも命を奪ってやると告げ、ベティの拘束を解いて立ち去る。

ベティは劇場から逃げ出し、警察署に駆け込むと、そこでアランと遭遇する。アランはベティの手首に付いた拘束の痕に気付き、ベティが事件に関与している事を知ると、ステファノの件を黙っていた理由を問い質す。ベティは想像を超える恐ろしさで忘れたかったと告げる。アランは犯人を捕らえて、ベティを救う意志を伝えると、捜査への協力を求めるが、ベティは男が顔を見せないから手掛かりが無い事を伝え、ジュリア殺害の件も打ち明ける。一人になるのを怖れるベティに、アランは部屋に戻って施錠した後、助手のソアベを待つように命じる。

帰宅後、ベティが目薬を差したところへ、ソアベがやってくる。ベティはソアベを疑わずにドアを開けると、目薬が滲んで顔を確認せぬままに居間に招き入れる。ベティが寝室で休んでいると、程なくしてミラがやって来る。ミラが下でソアベに会った事を聞き、怪訝に思ったベティは居間を確かめると、ソアベの姿が消えている事を知る。その直後、停電が生じる。二人はキッチンに逃げ込み、ミラは包丁を手に取る。その時、玄関口に刑事が訪れた為、ミラが覗き窓で誰何し、ベティは居間に電話を掛けに向かう。ミラは刑事に顔を見せる様に命じた直後、男にドア越しに発砲され殺される。

ベティは寝室から外に脱出した様に見せかけ、屋内に身を隠し、男の様子を窺う。突然、腹部を刺されたソアベと遭遇し、更にそこにフードの男が現れた為、ベティはソアベの銃を発砲し、男を退け、屋内を逃げ惑う。その時、別室に住み、ベティのファンを自称する少女アルマが通気口から現れ、ベティを自分の部屋に誘う。ベティはアルマと共に身を隠し、通気口を追ってきた男をやり過ごす。

ベティは夜の街の雑踏を抜けると、身を隠すべく劇場へ赴き、マークと遭遇する。マークは舞台を見に来るはずの犯人を見つける方法を思いつき、その為に演出を変更した事を明かす。ベティは楽屋で眠りに就き、その間に、自分の母とフードの男が登場し、若い女達が陵辱され、虐待される悪夢に苛まれる。ベティはそれが夢なのか現実なのかの判別が付かずに困惑する。

翌日、ベティは再び舞台に立つ。マークの合図と共に、公演中に突然、カラス達が会場に放たれ、客席の上を舞う。カラス達は客席にアランを見つけると、一斉に襲いかかり、左目を啄み出す。咄嗟にアランが発砲した事で、観客達は一目散に劇場から逃げ出す。

楽屋に逃げ込んだベティをアランが襲撃し、舞台裏に連れ込む。アランはベティがベティの母親とそっくりだと告げると、ベティの母親から残虐な殺しと責め苦のゲームを教わり、愛していた彼女の奴隷として命令を受け、女を虐待していた事を明かす。アランはベティを椅子に縛り付けると、マーラを排除したのも自分の仕業だと明かす。アランはベティの母親としていた事をベティとやり直したかったが、台無しになった事を嘆くと、ベティに目隠しをし、自分は死ぬべきだと告げ、ガソリンを撒く。その後、アランはベティに銃を持たせると、ベティの母親を絞殺した事を明かし、血を求め続けた貪欲な女だと罵る事で、ベティに自分を撃つように促す。ベティが発砲すると、アランの手元から火の付いたマッチが落下し、一気に燃え広がる。ベティは銃で拘束を解き、脱出を図るが、ドアが施錠されており苦慮していると、そこへマークと消防隊が駆け付け、ベティを救出する。

しばらくした後、ベティはマークと共に次の公演までの余暇を山奥の別荘で過ごす。時を同じくして、ニュースでアランの焼死体と思われていた物がマネキンであり、逃亡の時間稼ぎをする為の細工だった事が判明し、国際警察も協力して捜索している事が報じられる。マークはそのニュースを見た直後に、屋内でメイドが殺されているのを発見し、外にるベティに逃げる様に命じる。逃走を始めたベティの前にアランが現れると、マークが捕らえようとするが、逆に刺殺される。ベティはマークを殺して欲しかったと欺く事で、アランに一緒に逃亡を促す。アランが気を許した隙に、ベティは不意を突いてアランの後頭部を岩で殴ると、そこへアランを追跡していた警察隊が駆け付け、取り押さえる。ベティは自分が母とは全く違うとアランに言い放つ。ベティは自分が自然を愛でる異質な存在だと悟る。

 

 

ダリオ・アルジェントの作品はまだ観始めたばかりだが、これはサスペリアPART2並に派手目な演出手法が用いられていて、それだけ取っても面白おかしい作品。やはり一番の見所は犯人の男がベティの下眼瞼に針を貼り付けて、自らが犯す殺人を片時も見逃さない様に強いる場面で、最近のスタイリッシュなスリラーだとなかなかこんな度肝を抜く、ともすれば笑ってしまう様な演出はしないだろう。でも、当時はこれが手放しで受け入れられただろうし、今見ると逆にとても斬新に感じる。この監督らしいスプラッター作品並の惨殺シーンも非常に良い。CGとか使わずにこんなにガチっぽく殺しを魅せる事ができるのが凄い。オチの後に更にオチがあるという、推理サスペンス的な展開の妙も痛快だった。こうやって発掘良品としてリマスタするだけで、面白さが増す作品は山程あるんだろうな。

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