チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~

フィリップ・ファラルドー監督作「グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~」("The Good Lie" : 2014)[DVD]

ケニアのキャンプを経て渡米したスーダン難民の子供達「ロストボーイズ」が、不慣れな生活に戸惑い、郷愁に直面しながらも、力を合わせて困難を乗り越えていく様を描くドラマ作品。

1983年にスーダンで内戦が勃発すると、北軍が南部の村を破壊し、1987年までに数千人の孤児がアフリカ大陸を歩いてエチオピアやケニアに辿り着いた。13年後、アメリカが3600人の難民を受け入れ、彼らはスーダンのロストボーイズと呼ばれた。

スーダン南部の村、バハル・アル・ガザールは、ある日突然、北軍の襲撃を受け、村は破壊され、村人の多くが殺される。最年長のテオを筆頭に、妹アビタル、弟マメールら六人の子供達が辛うじて難を逃れる。テオは皆を率いて、長老に教わった言葉通りにエチオピアを目指し、東へ260マイルの距離を歩き始める。道中、最年少の子が命を落とす。

一行はエチオピアから引き返してきた難民の大群と遭遇し、その内の一組の兄弟ジェレマイアとポールと行動を共にする様になる。一行は難民と共にケニアを目指し、南へ570マイルの道のりを歩き続ける。道中、川に差し掛かると、テオはその先の道が危険だと察知し、難民の列を離れて川を渡る事を決断する。一行は布で綱を作り、命がけで川を渡り始めるが、そこに兵士が現れ、子供達を襲撃し始めると、泳げない為に怯んだガブリエルが殺される。

川を渡りきった六人は一路ケニアを目指して歩き続ける。人気の無い草原に差し掛かると、マメールの提案で、病に罹った年少の弟ダニエルを休ませるべく、一行はその場で夜を明かす。

翌朝、兵士達が現れ、マメールの存在が察知されてしまう。その時、咄嗟にテオが立ち上がり、マメールの代わりとなって連れ去られる事で、身を挺して皆を守る。マメールは自責の念に苛まれるが、皆にチーフに任命され、テオの代わりに一行を先導する。

一行はケニアの国境までの道のり785マイルを歩き続け、ついにカクマ難民キャンプに到着する。救護テントでの治療も虚しく、ダニエルが息絶えると、四人はダニエルを埋葬して静かに弔う。

13年後、四人は尚もキャンプでの暮らしを余儀なくされ、やがてキャンプから出る希望が薄れていく。医師を志すマメールは、キャンプ内の病院で医師に師事し、助手を勤めながら日々を過ごす。ある日、アメリカの難民受け入れリストの中に四人が含まれ、カンザス・シティに移住できる事になり、四人は歓喜に湧く。

2001年春、難民一行は機を乗り継ぎ、JFK空港に降り立つ。ところが手違いがあり、四人の内のアビタルのみ、移民局の規則に引っかかり、カンザス・シティに受け入れ先が無い事が判明し、一人だけボストンに移る事が決まる。マメールは責任者に掛け合うも、為す術が無く、一緒に暮らす方法を探す事を誓ってアビタルと別れる。

カンザス・シティに到着した三人は、空港で福祉団体の定住支援センターのパメラを待つ。ところがパメラはトラブルに見舞われて迎えに行けなくなり、三人の仕事を世話する予定だった職業紹介所のキャリーが、急遽、代わりに迎えに行く事になる。

キャリーは三人を空港で迎えると、用意されたアパートへ送り届ける。三人はアパートでパメラと会い、部屋の設備の基本的な説明を受ける。マメールはアビタルと一緒に暮らしたいと懇願するが、パメラは規則で例外が認められないと理解を求める。三人は右も左も分からないまま、手探りでアメリカでの暮らしを始める。

翌日、キャリーはファミレスを営む男友達に頼み込み、引率した三人に面接を行わせるが、初歩的な生活常識すらままならない三人を雇うのを拒まれる。キャリーはその足で上司のジャックが営む牧場を訪ね、協力を請う。ジャックは三人の人となりを覗うと、手先の器用なポールを組立工場に、マメールとジェレマイアをスーパーに雇い入れてもらう様に手配する。

早速、スーパーの店員として雇われたマメールとジェレマイアは、商品の扱い方や陳列の仕事を教わる。二人は賞味期限が近いというだけで、食品を廃棄する様に上司から命じられ困惑する。一方、ポールはシャワーヘッドの組立工場でその腕を見込まれる。三人は勤務初日を無事終える。

翌朝、マメールは仕事の紹介のお礼にオレンジを持参し、キャリーの自宅をアポ無しで訪ねる。キャリーはマメールが無断で侵入した事に困惑するが、マメールは屋内の散らかり具合を見て、夫がいない理由だと指摘する。その後、キャリーはネットでスーダン難民に関する情報に当たり、マメール達の境遇について初めて知る。

三人はそれぞれ働いて得た金で、アメリカへの渡航費を返済する。時を同じくして同時多発テロが発生し、移住プログラムが中止となり、アビタルを呼び戻す事も難しくなる。

マメールは夜間警備の仕事を掛け持ちし、学校へ通い始める。一方、ポールは職場の同僚に誘われ、大麻に興じる様になり、徐々に身持ちを崩し始める。ジェレマイアは、ゴミ箱を漁りに来た貧困者に新しい食料品を分け与えた事で、上司に咎められ、嫌気が差して自ら辞する。キャリーは世の中には理不尽な事もあるが、それを我慢しないとやっていけないとジェレマイアに諭し、別の仕事を探し始める。

マメールは学校でハックルベリー・フィンのグッドライについて学ぶ。ある夜、マメールは帰宅したポールの様子がおかしい事に気付いて指摘するが、ポールはマメールの節介を嫌うと、アメリカにおける難民の如何ともし難い境遇を嘆く。

マメールとポールはそれぞれ仕事を続け、予てから信仰深いジェレマイアは教会に通う様になる。ある日、ポールは同僚に腕の傷痕について尋ねられ、その昔、兄弟をライオンから救った時に負ったものだと明かす。その後、ポールは郷愁に駆られる余り、工場から無断で帰宅する。工場から連絡を受けたキャリーは、ポールに事情を尋ねるべく、アパートへ赴く。マメールはポールが何日も戻らず、変わってしまった事を伝える。

アビタルを慕うポールは、公衆電話から交換に強引にアビタルの連絡先を聞こうとするも拒まれ、我を失って電話を損壊した事で、警察に連行される。マメールは、解放されたポールに、祖国の兄弟に貰った人生を大事にする様に説く。ポールはテオの死がマメールの責任だと詰る。キャリーは二人を仲裁しようとするが制止され、二人は取っ組み合いの喧嘩を始める。マメールはポールに殴られると、その場を立ち去る。

雪がちらつく中、マメールはジャックの牧場に辿り着く。ジャックはマメールを家の中に招き入れ、事情を尋ねる。マメールはテオが自分の代わりに連れ去られた事を伝え、自分が許せないでいる事を明かす。ジャックはかつて軍に所属し、戦地に派遣された事を明かすと、兵士も普通の人間であり、想像を絶する状況の中で難しい選択を迫られると説き、テオは自分でその道を選び、マメールは従うしか無かったのだと諭す。翌朝、キャリー、ジェレマイアと共にポールが迎えに訪れ、二人は和解する。

キャリーはアビタルを呼び戻す為に一肌脱ぐ決意をし、移民局に掛け合う。責任者のリードは、スーダンテロ支援国家に指定されており、州の移動も難しい事を明かすが、受け入れ先が無いという理由ならそれを探せば良いと、キャリーに提案する。キャリーは自宅を受け入れ先にする決断をパメラに伝え、協力を依頼し、二人で散らかった屋内の大掃除をする。

クリスマスにアビタルを呼び戻し、四人はキャリーの自宅で暮らし始める。新年にはロストボーイズが一同に介し、誕生日祝い(難民の多くが誕生日不明の為、便宜的に1月1日が誕生日とされている)のパーティを開く。ある夜、キャリーは妹が二年前にガンを患い、転移で程なく亡くなった事をアビタルに打ち明ける。

ある日、四人の元にケニアのキャンプから、移住者を調べて弟妹の事を探している男に関する手紙が届く。マメール達はテオの生存を確信すると、キャリー、ジャックと共に移民局を訪ね、リードに掛け合う。リードは911以降、キャンプからの便が止まっていて、数千人の難民が出国待ちしている現状を伝える。キャリーとジャックはそれぞれテオの支援を後押しすると訴えるが、リードは移民が目的の偽物の可能性を示唆する。マメールが真偽を確かめに行きたいと主張すると、リードはナイロビで各国の大使館を巡り、事情を話して庇護を求める様にマメールに勧め、運良くビザが発給されれば、テオの入国手続きに応じる事を約束する。

 マメールは単身ケニアに渡ると、カクマキャンプを訪ねるが、名簿にはテオの登録が無い事を知り、宛もなく10万にも上る難民の中からテオの捜索を始める。程なくして、マメールは知人ジェームズと再会し、捜索の協力を請う。

翌日、ジェームズがテオを見つけ出し、マメールはテオと再会を果たす。マメールはテオを診察し、リウマチ熱で心臓が侵されている事を知り、更にテオの背中に大きく切りつけられた複数の古傷を見つけ、テオが経験した壮絶な境遇を悟る。

マメールはナイロビへ赴き、テオのビザ発給の為に各国大使館を奔走するが、不振に終わる。マメールはテオに嘘を付き、ビザが取れた事を伝えると、共に空港に向かう。搭乗手続きを目前に控えたところで、マメールはテオに事実を打ち明け、自分に成り済まして渡米する様に促すと、自らはキャンプに残って病院で働く決意を告げる。マメールはそれをグッドライと呼ぶと、テオに貰った命の恩返しがしたいと告げ、テオを見送る。

ジェレマイアは聖職者となり、教会でスピーチを行う。ジェレマイアはその中で、祖先の教えと兄弟姉妹の絆を説き、ロストボーイズがもう迷うことは無く、自分を見つけたのだと主張する。その最中、キャリーはマメールから連絡を受け、その決意を聞いて納得する。テオがアメリカに降り立つと、アビタル、ジェレマイア、ポールが出迎え、再会を喜ぶ。

渡米したロストボーイズは、市民権を得て多くの者が大学を卒業し、教師や社会福祉士、エンジニアとなり、軍隊に入った者もいる。

 

 

渡米したスーダン難民が不慣れな都市型生活に苦慮しながらも、兄弟姉妹と手を取り合って、また福祉の協力を得ながら、克己していく様を描く、なかなか心温まる作品。穿った見方をすれば、米国の作品だけあって米国を称揚する内容ではあるのだが、スーダン難民についてこれまでほとんど関心すら抱くことなく生きてきた自分の様な者にとっては、考えさせられる事が多かった。主演はネームバリューから言ってキャリーを演じるリース・ウィザースプーンだが、実際にはマメールを中心にした兄弟達の物語である。元々インフラも無い様な小さな村で暮らしていた子供達が、世界一の先進国で生活を始めるのだから、それはもう何一つ分からない事だらけで、本作に登場する兄弟は最初は電話すら知らなかった。マックや宅配ピザを食べている時の彼らの様子が興味深かった。彼らの面倒を見る事になるキャリーは、ちょっとだらしく汚部屋に住んでいる様な女なのだが、情には厚く、最終的には兄弟達を引き取る事にする。結婚はどうするつもりなのか気になったが、まあそれはそっとして置こう。印象深いシーンも多く、全体的に面白かった。

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