チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

キック・オーバー

エイドリアン・グランバーグ監督作「キック・オーバー」("Get the Gringo (How I Spent My Summer Vacation)" : 2012)[BD]

米国で大金を強奪し、メキシコで逮捕された男が、悪名高い刑務所に収監された後、大金を取り戻して脱獄を模索する様を描くアクション・スリラー作品。

二人組の男が強奪した金を携え、車で米墨国境沿いの道を逃走し、米墨双方の警察が国境を挟んで車を追走する。主犯の男が逃走車を運転し、もう一人の男は撃たれて致命傷を負っている。主犯の男はメキシコへの逃亡を企て、車で決死のジャンプを図って国境の柵を強引に突き破り、メキシコ領内で停車する。米国側の警察はメキシコの警察に対し、米国領内に着地した事にして処理する様に提案する。メキシコ側の汚職警官バスケスは、逃走車の中に大金を見つけると、提案を突っぱね、メキシコ側で処理すべきだと主張する。結局、二人組はメキシコ側の警察に逮捕されるが、憤慨した米国側の警察はバスケスに二人の容疑について教えずに去っていく。バスケスは主犯の米国人の男、蔑称グリンゴが身分証を持っておらず、名前を問い質すが、グリンゴは意に介さず、素性を明かすのを拒む。もう一人の男は息絶える。

グリンゴは容疑不詳のまま、悪名高い刑務所「エル・プエブリート」に収監され、金はバスケスにより回収される。グリンゴは大勢の囚人達でひしめき合う拘置所に入れられた後、程なくして、「小さな町」と称される一般房へ移動となる。グリンゴは、一般房が場末の盛り場の様相を呈しており、囚人達によりスラム的な経済活動が行われているのを知る。グリンゴはひとしきり内部を探索し、拘置所で自分を殴った男を発見すると、トイレに入った隙を突いて襲い、金と時計、銃を奪う。

翌朝、グリンゴは他の囚人達と共に、ゴミの分別作業に駆り出される。そこに所外から男達と共に看護師がやって来て、グリンゴは理由も知らされずに強制的に採血される。

グリンゴは所内の様子を観察する事で、所長以外の何者かが囚人達を支配していると察知すると、所内での支配関係を探り、大柄な男カラカスと小柄な男カルナルが主従関係にある事を知る。更にグリンゴは、離れの建物を専有し、囚人とは思えぬ華美な暮らしをする男ハビの存在に気付き、カラカスとカルナルはハビの手下だと知る。グリンゴは所内での地位を高める方法を模索する。

グリンゴは、囚人達から金を取ってヘロインを注射する注射屋に大金が集まっている事を知ると、近所のタコス屋に火を付けて火事を起こし、その騒ぎに乗じて首尾良く注射屋から金を盗み出す。ところがグリンゴは、その直後に出会った10歳の少年に一部始終を目撃していた事を知らされ、口止め料としてタバコを要求される。少年は母親と暮らしており、父がヤクの売人だった事を明かすと、刑務所には囚人以外は出入り自由であり、金さえ払えば家族と住める事を教える。更に少年は自らが学校に行かなくても良い、特別待遇の身である事を明かす。

グリンゴを訪ねて、米国領事館の男がやって来る。領事館の男はグリンゴに指紋が無い事から、犯罪のプロだと察知し、命が狙われている事を警告して情報の提供を求めるが、グリンゴは男が金を狙っているのだと疑い、まともに取り合わずに追い返す。

グリンゴは所内で賃貸業を営むカルナルから部屋を借り、住処を得る。その夜、グリンゴはA級房で特別な囚人達が軍や警察幹部を招いて豪勢なパーティが行っている様子を見て、所内の階級を知る。房内から出てきた少年の母親の憂鬱そうな様子をグリンゴが見つめていると、突然母親に殴られる。

翌日、グリンゴは少年と再び遭遇し、支配者ハビについて尋ねる。少年はハビが刑務所を自由に出入りできるものの、出獄はせずに所内に留まっており、いつかハビを殺したいという意志を示す。更に少年は、母親がハビの元で仕事をしており、カラカスがハビの兄で、カルナルがいとこだと明かす。グリンゴは採血の件について少年に尋ねるが、少年がタバコをせびると、それを拒む。一方、領事館の男はバスケスが高級車を所持し、女遊びをするなどの放蕩ぶりの様子を窺う。

グリンゴはハビの動向を窺う。ハビは少年が他の少年に虐められているのを見て、カラカスに助けさせる。少年は鋭利な工具でハビを殺そうと企み、背後に迫るが、グリンゴはその工具では無理だと制止する。グリンゴは少年に特別待遇の理由を問い質し、少年の父がハビに殺された事を知る。少年は、7歳の時に両親が薬物売買の罪で15年の服役を科せられた為にやって来たが、肝臓の病を患うハビは少年の父の肝臓が適合する事を知ると、殺して奪ったのだと明かす。ハビにはいつかまた肝臓が必要となる為に、入所者には採血で適合の有無を確認しており、現在のところ少年のみが特別待遇だという。グリンゴは14歳の時に、母に虐待する父親にバットで暴行を働き、刑務所入りした事を明かすと、殺し損ねたのが失敗だと説き、仕留めなければ逆に殺られると警告する。グリンゴはかつて米陸軍スナイパーだった事を明かすと、少年を観測手役に任じ、ハビの動向を探らせる。一方、領事館の男は米国からグリンゴと奪われた金を追ってやってきた刺客の二人組と接触し、協力する意志を示す。

グリンゴは、ハビが主催するプロレスを少年と共に観戦し、その途中で少年の母親と再会する。母親は息子の愚かな行為を止めてくれた事の謝意をグリンゴに伝えると、人に心を開かない息子がグリンゴといると楽しそうだと話す。母親はグリンゴを自宅へ誘うが、バスケスが面会にやって来た為にグリンゴはそれに応じる。バスケスグリンゴを逮捕した時に一緒にいた二人の警官が拷問されて死んだ事を明かすと、200万ドルの強奪金の出処を問い質す。バスケスは刺客がやって来るのも時間の問題だとグリンゴに警告するが、グリンゴは金を回収したバスケスの方が危険だと指摘し、金を安全な場所に隠して、すぐに逃げる様に命じる。グリンゴは金を取り戻すべく、策を練ると、少年に指示を出して陽動作戦に臨み、カルナルから金を密かに奪う。

グリンゴは少年の母親に自宅に誘われる。母親は亡き夫の客だったが、いつしか製造や袋詰を手伝う様になり、薬物所持で収監された事を明かす。グリンゴは結婚していた妻が元相棒バーンズと駆け落ちした事を明かす。母親はハビの肝臓が超希少なボンベイ型であり、いつしか少年の肝臓が奪われる日が訪れる事を憂うが、グリンゴはそれを阻む意志を示す。

カラカスは金集めの悪いカルナルの怠慢ぶりを見かねて、役立たずだと罵る。カルナルは市場で金を何者かに盗まれたと釈明するが、カラカスは金を回収する様にカルナルに命じる。カルナルは手下の進言からグリンゴの関与を疑うと、少年の自宅を訪ね、グリンゴが手下から盗んだ時計を所持していた少年を問い質す。グリンゴは手下の男の追跡を察知すると、トイレに逃げ込み、隠しておいた銃で射殺する。カルナルは助けに入った少年の母親をレイプしようとするが、そこにカラカスが現れて制止する。逆上したカルナルはカラカスを殺そうとするが、そこにグリンゴが駆け付け、カルナルを射殺する。

ハビはカルナルの死を知ると激昂し、拘束したグリンゴを殺そうとする。グリンゴはカルナルがカラカスを殺した後、ハビも殺すはずだったと告げ、その上、更に少年を救った事で、ハビの命を二度救ったと必死で主張し、解放される。ハビは、所長さえもグリンゴの素性を掴んでいない事を知ると、新入りのグリンゴが肝臓の件や家族関係を知っている事を訝り、殺す前にグリンゴを送り込んだ相手と正体を探る様にカラカスに命じる。

一方、グリンゴは領事館の男から連絡を受け、分前次第で釈放を手伝うと提案される。グリンゴは意に介さず、金に近づく為に一計を案じる。グリンゴはカラカスと接触すると、バスケスが自分を刑務所に入れて大金200万ドルを横取りした事を明かし、僅かな斡旋料を貰えれば残りの金を提供すると提案する。カラカスは手下にバスケスの身柄と金を持ってくる様に命じる。

その頃、グリンゴから金を奪われたマフィアのボスのフランクが、手下を通じてバスケスを自宅で拘束しており、拷問にかける。バスケスは金を使い込んで170万ドルしか残っていないと弁明する。そこにカラカスの手下が急襲を仕掛け、フランクの手下とバスケスを殺すと、金を回収する。オンライン回線でその様子を見ていたフランクは、ハビの関与を知ると憤慨し、次の手を打つ。

カラカスは金がサンディエゴのフランクから盗まれていた事をハビに報告する。一方、フランクにより送り込まれた刺客の男三人組が、総領事の男を買収して刑務所内に潜入する。刺客達は市場にいるグリンゴの前に姿を現すと、囚人達が行き交う中で銃撃を始める。カラカスが手下を率いて応戦すると、グリンゴも加勢し、刺客達を撃退するが、多くの死傷者が出る。

ハビはグリンゴが何者なのか問い質すが、グリンゴはバーンズの名を騙り、騒動について詫びると、自分ならフランクと接触できると主張し、出獄させてくれたら始末しに行くと提案する。ハビはそれに応じ、フランクを殺した後、もう戻って来ぬ様に言い渡すと、少年と母親に接触しないようにグリンゴに命じる。グリンゴは支度金と武器の提供を受けると、出所する。

所長は騒動をきっかけに、政府が不意打ちで兵を動員し、刑務所を閉鎖しようと目論んでいる事をハビに伝える。カラカスはほとぼりが覚めるまで刑務所の外に身を寄せるべきだとハビに促すが、ハビは移植前に所を離れる事を拒み、手入れ前に至急手術を行う為に、救急車とバリケードを手配する様にカラカスに命じる。更にグリンゴに48時間の猶予を与え、フランク殺害の成否を問わず、グリンゴを始末する様に命じる。

グリンゴは米国入りした後、造船事業のカウフマン事務所にクリント・イーストウッドを騙って連絡し、カウフマンを欺いてアポを取る。グリンゴは尾行の存在に気付くと、罠にかけて始末する。一方、少年の母親は所内に医師の姿を発見し、移植手術が行われる事を察知すると、息子を隠し部屋に匿う。母親はハビに拘束されると、電気椅子に掛けられ、少年の居場所を追求される。

その後、グリンゴはカウフマンを騙って、フランクの代理人と接触すると、言葉巧みに欺く事でカウフマン事務所でフランクと会うアポを取る。母親の身を案じた少年は、ハビの前に姿を現すと、自分の肝臓に工具を突き刺す。少年は至急、医師の処置を受ける。

グリンゴイーストウッドの代理人バーンズと称して、カウフマン事務所でカウフマンと会うと、昏睡させて隠す。程なくフランクを迎えたグリンゴは、隙を突いて手榴弾でフランクを爆殺する。カウフマンは難を逃れる。

一方、少年が一命を取り留めると、ハビは今夜手術を決行する様に医師に命じる。グリンゴは領事館の男のアパートを急襲し、今夜の手入れで刑務所が閉鎖され、突入の最中に移植手術が行われる事を男から知らされる。グリンゴは男から総領事証と金を奪い去ると、刑務所へと急ぐ。

夜になり、刑務所に軍の兵士が集結すると、ハビは医療室の警備を固めさせ、手術に臨む。刑務所に到着したグリンゴは、軍の突入に乗じて所内に侵入する。グリンゴはハビのアジトで金を発見するが、そのまま脱出する事を躊躇い、医療室へ向かう。

グリンゴは医師に少年から摘出した肝臓を元に戻す様に命じる。そこに銃を持ったカラカスが現れると、グリンゴは開腹中のフランクに銃を突き付け、少年の母親を連れて来る様に命じる。所内では軍により、囚人達の強制移動が行われる。

程なくして、カラカスは手下を率いて医療室に現れるが、グリンゴはフランクを盾にして手下を撃退すると、カラカスは少年の母親を人質に取る。グリンゴは看護師と共謀してカラカスを欺き、射殺する。母親は肝臓が戻った息子の無事を確認する。グリンゴと母親は看護師に扮する事で兵士達を欺き、少年を搬出する。その途中、グリンゴは大金を詰めたバッグを回収すると、母親と共に少年を乗せた救急車に乗り込み、脱獄する。

しばらくした後、回復した少年が退院すると、グリンゴは隠しておいた大金を持ち出し、三人でビーチに身を寄せ、残りの夏を満喫する。

 

 

メキシコの悪名高い刑務所を舞台に、マフィアから強奪した金を巡って激しい抗争が繰り広げられるのだが、純粋なアメリカ映画とは一味違う、少しクセのある作品という印象。小さな町と称される通り、刑務所内にいわゆる独房は無く、囚人達が自由気ままに服役しており、脱獄以外の犯罪が平然と横行している。序盤はそのメキシカンなノリに付いて行けず戸惑ったのだが、徐々に作品の趣向が理解できてきて、後半はなかなか面白かった。セットなのか、或いは本物なのかも知れないが、刑務所内の様子はリアルだ。メル・ギブソンと生意気な少年のやり取りが軽妙で可笑しかったが、少年が慣れた手つきでスパスパと煙草を吸っているのがどういう仕掛けか気になった。それとフランク殺しに出所した後の、クリント・イーストウッドのくだりが唐突過ぎて意味が分からなかった。フランクを爆殺するシーンまではちょっと強引過ぎるよなぁ。

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