チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

チャイルド44 森に消えた子供たち

ダニエル・エスピノーサ監督作「チャイルド44 森に消えた子供たち」("Child 44" : 2015)[BD]

戦後間もないソ連で、子供の連続殺人事件の真相を究明すべく、命を掛けて捜査に臨む男の姿を描くミステリー・スリラー作品。

 

1933年、スターリン政権がウクライナに招いた大飢饉ホロドモールは多くの孤児を生んだ。ウクライナのある孤児院から脱走した一人の少年は、程なく、ソ連軍の将校に拾われ、レオと名付けられた。1945年、軍人として成長したレオは、アレクセイ、ワシーリーらと共にベルリン侵攻に参加し、武勲を上げる。終戦後、モスクワでMGB捜査官となったレオは、教師のライーサを妻に迎える。

1953年、レオは同僚アレクセイ、ワシーリーら共に、スパイ容疑のかかった獣医ブロツキーの捜索を行い、逃亡先の農場で逮捕する。その際、レオの意に反して、ワシーリーがブロツキーを匿っていた農家の夫婦を射殺し、更にその娘姉妹をも手に掛けようとする。孤児院で育った経験から、子供には多分に同情的なレオは、ワシーリーの凶行を制止すると、激しく叱責する。かねてからレオの言動に不満を抱いていたワシーリーは、レオに対する敵意を更に募らせていく。

程なくして、アレクセイの息子ユーラが失踪した後、線路付近で死体として発見される。レオは上官のクズミン少佐に呼び出され、殺人だと主張するアレクセイに、列車による轢死だと説得する様に命じられる。スターリン政権下では「殺人は資本主義の病」だとされ、殺人を主張する事は反逆的行為だとみなされるのである。レオはアレクセイの自宅を訪ね、悲嘆に暮れる親族を前に、検視結果が事故死である事を伝える。アレクセイの妻はユーラが裸で見つかったのに、検視結果が着衣と改竄されている事を指摘し、殺人を主張するが、レオは反逆罪に問われかねないと咎め、アレクセイに妻の説得を促す。アレクセイがユーラを連れた男を目撃した女の存在を伝えると、レオは事件の真相を訝り、検視報告書の再調査を始める。

一方、拷問にかけられたブロツキーは、スパイ容疑に関して全面的に自供した後、処刑される。クズミンは、ブロツキーの挙げた名の中にライーサが含まれている事をレオに明かし、捜査を担当する様に命じる。同時にクズミンは、レオがユーラの事件の再調査を行っている事を戒める。

レオは育ての両親にライーサの件で相談する。父親はライーサを庇えば一家全員が殺されると説き、一人の死か、或いは四人の死かの判断をレオに迫る。そこにライーサが訪れ、四人は夕食を共にする。ライーサは皆の前で妊娠を打ち明け、レオは感極まる。

レオはライーサの不在時に、自宅でスパイの証拠を探す。そこにクズミンの命を受けたワシーリーが、捜索の手伝いと称して訪れ、家捜しを行う。その日、ライーサの同僚が反逆罪で逮捕される。レオは帰宅したライーサに、スパイ容疑が掛けられており、上に告発する様に求められている事を明かして、真偽を問い質すが、ライーサは否定する。

レオは医師から、新たに列車事故を装って殺害された少年の死体が発見された事を伝えられる。医師は、ユーラの死体に目の内出血と肺の水による溺死の形跡、拷問の様な切開跡と外科的な正確さで胃が切除された跡があった事を明かす。その後、レオはライーサにスパイ容疑を裏付ける証拠が無かった事をクズミンに報告し、無罪を主張する。その夜、アレクセイが率いる捜査官達が自宅に押しかけ、レオとライーサは強制的に署に連行される。その後、レオはMGBの出世コースから外され、郊外の町ヴォリスクの民警へと降格させられる。

レオとライーサは列車に乗り、ヴォリスクに到着する。二人はモスクワでの暮らしとは打って変わって粗末なアパートの部屋を用意され、レオはヴォリスク民警の署長ネステロフ将軍の下に付き、一方、ライーサは学校で清掃婦を強いられる。ネステロフはエリート捜査官の異例の降格の真意を訝る。

レオは就任早々、少年の死体が発見された現場へネステロフと共に赴く。レオは死体の状態がユーラと酷似している事に気付くと、死因が溺死である事と、殺人の根拠となる特徴についてネステロフに進言する。ネステロフはレオがヴォリスクに来た真意を問い質し、身勝手な言動を戒める。程なく、死んだ少年が50キロ東のX州の学生だと判明し、更に発見者のアレクサンドルにホモセクシャルの疑惑が浮上する。

一方、ライーサはワシーリーから電話で密かに連絡を受ける。ワシーリーは、レオを捨ててモスクワに戻り、自分と一緒になる様にライーサに強要する。ライーサは要求に抗えず、一人で列車に乗って、モスクワに戻ろうとする。それを察知したレオは駅に駆け付けると、ライーサさえいればどんな境遇でも平気だと訴え、乗車直前のライーサを止める。ライーサは、モスクワでレオと両親が、スパイ容疑のかかった自分の処遇を話し合っていたのを立ち聞きし、妊娠が身を守る為に咄嗟に付いた嘘だった事を打ち明ける。更にライーサは、妊娠していなかったとしても自分を庇ったか問い質すと、MGBのレオのプロポーズを受けたのは断るのが怖かった為だと打ち明ける。

ネステロフはアレクサンドルに、ホモセクシャルの秘匿と引き換えに、少年と関係を持つ者の名を挙げる様に強要する。その後、名の挙がった者達が民警に逮捕されると、アレクサンドルは自殺する。レオはユーラとヴォリスクの殺人犯が同一だとライーサに明かし、証明するべきだと主張する。ライーサは真相を追求すれば粛清されるとの危惧を伝える。二人はネステロフの自宅を訪ねる。レオは死体の発見現場がいずれも線路の近くである事から、犯人が旅行者だと推理すると、党の言いなりで真相を闇に葬れば更に犠牲者が出て、犯罪へ加担している事になると主張し、ネステロフに協力を請う。レオはモスクワの目撃者に話を聞きに行く事を要望し、ネステロフには子供の死亡記録を広く集める様に依頼する。

ネステロフは早速、署の保管庫で記録の収集を開始し、ロストフで更に一件の類似事件が起こった事を知る。ネステロフの調査の末、44人に及ぶ犠牲者が9歳から14歳の子供で、全て線路沿いの森か公園で見つかっており、いずれも裸で切開した傷跡があり、死因が溺死である事、更にどの事件も個別に犯人が逮捕され解決している事が判明する。

ネステロフはロストフへ、レオはモスクワへとそれぞれ調査に向かう事が決まる。レオはライーサに同行を請い、休暇を装う事でMGBに悟られぬ様にモスクワに潜入する。レオはアレクセイの元を訪ねると、ユーラの死が事故では無く、連続殺人犯によるものだと伝え、法の裁きにかけるべきだと主張する。アレクセイはそれに異議を唱え、犯人を殺す様に命じるが、レオは殺せば真相が闇の中だと説き、目撃者の紹介を請う。しかし、目撃者のガリーナは党への反逆を問われる事を怖れて口を噤む。一方、ネステロフはロストフで9人の子供が一連の事件と同様の死に方をしていた事を知る。

レオ達はモスクワからの脱出が困難である事を悟ると、ライーサの元同僚イワンに協力を請う。レオはイワンに事情を伝え、殺人犯が野放しになっていると説く。イワンは知り合いに二人の脱出の手助けを請うべく電話を始めるが、レオはイワンが禁書を餌にして反体制派を暴くMGBで、密告をしていると察知し、絞殺する。二人はMGBの捜査網を掻い潜り、モスクワから脱出する。

夜、ヴォリスクに戻ったレオは、モスクワでの調査が不振に終わった事をネステロフに伝える。ネステロフはロストフこそが事件の要であり、ヴォリスクが犯人の行動範囲の東端だと説く。ヴォリスクには自動車工場、ロストフにはトラクター工場がある事から、二人は犯人が工場関係者だと疑う。帰宅したレオは、待ち受けたワシーリー率いるMGBに捕らえられた後、拷問を受ける。また、ネステロフにも捜査の手が及ぶ。ワシーリーはライーサに改めて要求を突き付けるが、ライーサはそれを拒絶する。

翌日、レオとライーサは強制労働収容所行きの列車に乗せられる。道中、二人はワシーリーの息の掛かった男達の襲撃を受け、窮地に陥るが、辛うじて撃退すると、走行中の列車から脱出して森に逃げ込む。ワシーリーはクズミンに不手際を叱責され、自分が失脚すれば無事では済まないと告げられる。

ワシーリーはアレクセイを呼び出し、レオがモスクワに来た意図を問い質す。アレクセイはレオとの接触を否定するが、ワシーリーは家族に危険が及ぶ事を示唆すると、アレクセイはレオの向かうであろう場所がロストフだと伝える。ワシーリーはその場でアレクセイを射殺する。

レオとライーサはロストフのトラクター工場へ辿り着く。レオは従業員に扮して工場内に侵入すると、管理者のセルゲイを脅して管理事務所へ入る。レオは持参した書類と従業員の出張記録をセルゲイに突合させ、日付と地域が一致する者を探す様に命じ、該当者がマレヴィチに絞られる。レオは工場内にマレヴィチの姿を確認すると、帰路に就くマレヴィチをライーサと共に尾行する。一方、工場からの通報により、ワシーリーはレオ達の関与を確信し、現地に急行する。

マレヴィチは尾行を察知すると、車を乗り捨てて森の中に逃げ込む。レオはマレヴィチを追い詰めると、銃を突き付ける。マレヴィチはレオの事を把握しており、自らも孤児院育ちである事を明かすと、戦争が転機となり軍医から怪物へと堕し、抑えられない子供殺しへの衝動を告白する。その時、ワシーリーが駆け付け、マレヴィチを射殺すると、ライーサを人質に取り、レオに銃を捨てさせる。ワシーリーはレオとライーサを処刑しようとするが、レオはワシーリーの虚を突き、格闘の末に撲殺する。駆け付けたMGBの捜査官に対し、レオはワシーリーが連続殺人犯を捕まえようとして非業の死を遂げた英雄だと証言する。

その後、体制が一新されると、レオはモスクワに復帰し、クズミンは失脚する。レオは上官から新しい保安組織への任用を打診されるが、それに伴い、ドイツの捕虜収容所にいたマレヴィチが、転向した末にナチの手先として入国し、ソ連社会が怪物を生んだ様に西側が仕向けたという筋書きに納得する様に求められる。レオはそれに疑義を呈すが、マレヴィチが西側に毒されたという筋書きを飲む事と引き換えに、モスクワ殺人課を新設し、その責任者に自分を任用するに要望する。レオはまたネステロフを新設部署に迎える事を希望する。

その後、レオとライーサは孤児院を訪ね、かつてブロツキー逮捕の際にワシーリーが殺した夫妻の娘姉妹エレーナとタマーラと面会し、同意を得た上で養子に迎える。

 

 

てっきり現代劇だと思っていたのだが、舞台は半世紀以上前のソ連という事で、やや取っ付き難い感は否めない。それに加えて、登場人物がロシア人の設定なのに皆、米英サイドの俳優で思いっきり英語を喋っているのは違和感が大きい。もちろんロシア語が理解できるワケでは無いのだが、どうしてもその点が気になって没入できない。ロケーションが当時のソ連らしさをリアルに再現しているだけに、英語ベースなのが余計に際立つ。まぁそれは置いておくとして、スターリン政権下ならではの重苦しく、ピリついた世情がひしひしと感じられる作風になっており、そんな中で「楽園に殺人は存在しない」という社会通念というか党是というか、いわば常識に真っ向から反対し、連続少年殺人事件の捜査に孤軍奮闘する熱血漢レオをトム・ハーディが演じている。ちょっと暑苦しすぎるかなぁという嫌いが無いワケでは無いが、ノリにノッているハーディだからこんなのも良いだろう。ただ、もう少し犯人の素性に肉迫しても良かったな。ワシーリーがあっさり殺してしまうから。

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