チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

博士と彼女のセオリー

ジェームズ・マーシュ監督作「博士と彼女のセオリー」("The Theory of Everything" : 2014)[BD]

理論物理学の大家スティーヴン・ホーキングが、妻の支えを得る事で困難を乗り越え、偉業を成していく様を描く伝記ドラマ作品。

 

1963年、ケンブリッジ大学。宇宙物理学を専攻し、宇宙を簡潔に描写する方程式を追求するスティーヴン・ホーキングは、親友ブライアンと共に訪れた学内パーティで、言語学を専攻するジェーンと出会い、意気投合する。

デニス・シアマ教授の研究室に所属し、博士号の取得を志すスティーヴンは、シアマにその類稀なる素質を見出され、早期に研究テーマを決める様に促される。シアマはテーマを模索するスティーヴンを、かつてトムソンやラザフォードが使用した研究室に招く事で触発し、更にロンドンで行われるロジャー・ペンローズの講義へ同行する様に促す。

スティーヴンはジェーンが日曜日に教会へ礼拝に通っている事を知り、ジェーンを教会に迎えに行くと、自宅での家族とのランチに招待する。その後、スティーヴンはジェーンを舞踏会に誘い、より親交を深めると、星空の下で口づけをする。

スティーヴンはシアマや同行した学生達と共にロンドンへ赴き、ペンローズの講義を聞く。恒星の崩壊からブラックホールが形成され、やがて時空の特異点が出現するという、ペンローズの理論に感銘を受けたスティーヴンは、その特異点理論を宇宙全体に適用すれば、時間の始まりと、宇宙の誕生について究明できるのでは無いかという示唆を得る。シアマはその理論を追求する様にペンローズに勧める。

その一方で、スティーヴンは手足の自由が顕著に利かなくなっていくのを自覚する。ある時、スティーヴンは大学敷地内で躓いて転倒し、病院に搬送された後、精密検査を受ける。その結果、スティーヴンは運動ニューロン疾患、すなわちALSをを患っており、脳からの命令が筋肉に伝わらない為に全身の筋肉が衰え、やがて随意運動を制御する能力が失わる事が判明する。治療法が無く、余命が二年半だと知らされたスティーヴンは、ショックを受け、寮室に塞ぎ込む。

スティーヴンからの連絡が途絶え、心配したジェーンは寮室にスティーヴンを訪ねるも会う事ができず、ブライアンから事情を明かされる。ジェーンはスティーヴンを発見するも、自らを遠ざけようとするスティーヴンに愛を伝え、長い間で無くとも一緒にいたいという真摯な気持ちを訴えかける事で、スティーヴンの理解を得る。

スティーヴンは研究テーマを「時間」に決めた事をシアマに報告する。スティーヴンの父フランクはジェーンを自宅に招くと、スティーヴンの病が闘う余地すら無く、耐え難い敗北が待っているだけだと説く事で、交際の翻意を促すが、ジェーンはスティーヴンへの愛を訴え、共に寄り添って病と闘う決意を告げる。程なくして、スティーヴンとジェーンは結婚し、両者の家族に祝福される。やがて二人は第一子ロバートを儲ける。

スティーヴンは自らが提出した博士論文に対する評価をシアマ、ソーン、ペンローズから受け、時間の誕生とブラックホール、時空の特異点に関する論述において、卓越した理論だと称賛される。スティーヴンは時間の始まりを一つの方程式で証明する事を、次の目標として掲げる。

スティーヴンは博士号の取得を喜ぶ一方で、病態が悪化していく事に苦悩する。ジェーンはスティーヴンの心情を慮り、車椅子を用意し、更にベッドを寝室からダイニングに移す事で、スティーヴンの心労の緩和を図る。やがて二人は第二子ルーシーを儲ける。

ある時、スティーヴンは閃きを得て、ブラックホールが熱エネルギーの放射で質量を失い、やがて大爆発を起こして消滅するという旨の理論を証明すると、ホーキング放射として発表し、賛辞を受ける。

スティーヴンは家族と共にフェロー用住宅へ移ると、電動車椅子の使用を始め、家族と共に快適な生活を送る。その一方で、ジェーンは快活な子供達の世話と、いつとも知れず危機的状況へ陥りかねないスティーヴンの介助に限界を感じ始め、疲弊する様になる。ジェーンは子供達の為にも手助けが必要だとスティーヴンに訴えるが、スティーヴンはそれに同意せず、ジェーンはストレスを抱える。

ある時、その様子を見兼ねたジェーンの母親ベリルはジェーンに教会の聖歌隊に入る様に勧める。ジェーンは教会を訪ね、聖歌隊を指揮するジョナサンと出会う。誠実で面倒見の良いジョナサンはロバートのピアノ教師を買って出る。白血病だった妻と死別後間もないジョナサンは、スティーヴンら家族と親交を深めていく。ジョナサンは寂しさに堪えられず目的を失っていた時の救いが音楽だった事を明かすと、一家の手伝いをスティーヴンに申し出る。スティーヴンはジェーンに手助けが必要であり、ジョナサンがそれになり得る事を理解する。一家がジョナサンと親交を深める内に、ジェーンとジョナサンは次第に気脈を通じていく。

やがてスティーヴンとジェーンは第三子ティモシーを儲ける。フランクはスティーヴンに、介護士を雇って家族の負担軽減を図る様に強く促すが、スティーヴンはそれに反対する。ジェーンはスティーヴンの母親イゾベルからティモシーがジョナサンの子供だと疑われ、明確に否定する。しかし、ジョナサンは親族の間であらぬ噂が囁かれる事を忌避し、一旦、ジェーンから距離を置く事を決断する。ジェーンは翻意を促し、二人は互いに好意を伝え合うが、ジョナサンは一家の元を離れる。

ある時、スティーヴンはボルドーのオペラに招待される。スティーヴンは飛行機嫌いのジェーンに、車で現地合流する事を提案し、ジョナサンを誘って道中で子供達とキャンプをしてくる様に促す。スティーヴンは自ら教会を訪ね、再びジェーンの手助けになる様にジョナサンに請う。

計画どおり、スティーヴンが先に飛行機で出発し、ジェーンとジョナサンは子供達と共に陸路でボルドーを目指す事になる。オペラの公演中、スティーヴンは突然発作を起こし、病院に緊急搬送される。ジェーンはキャンプでその一報を聞くと、ジョナサンと共にボルドーへ急行する。

スティーヴンは肺炎を起こしており、一命を取り留めたものの、生命維持装置を取り付けられる。病院に駆け付けたジェーンは、医師から人工呼吸器を外すか否かの選択を迫られる。無事に麻酔から覚醒しても、呼吸器を取り除いた後に気管切開を行い、呼吸装置を取り付ける為に声が失われるという。ジェーンは有無を言わさず同意し、スティーヴンはケンブリッジの病院にヘリで搬送される事になる。ジョナサンはジェーンから身を引く事を決意し、二人は互いに想い合いながらも別れを選択する。

ジェーンは、声を失ったスティーヴンにスペリングボードでのやり取りを促す。程なく、ジェーンは講師エレインを自宅に招き、更に最新の電子音声による発話装置を導入する事で、スティーヴンと円滑な意思の疎通を図ろうとする。スティーヴンはエレインと過ごす時間が多くなり、次第に気脈を通じていく。スティーヴンは新たに「時間小史」と題する著書の執筆に取り掛かる。スティーヴンは甲斐甲斐しく自らの面倒を見てくれるエレインと親密な関係となり、それに伴ってジェーンは疎外感を募らせていく。

執筆を終えたスティーヴンは、米国で行われる授賞式にエレインを同行させる事を決め、その事をジェーンに伝えると共に、自分の元から解放する意向を示し、二人は別れを選択する。程なく、ジェーンは教会にジョナサンを訪ねる。ジョナサンはジェーンの気持ちを受け入れる。

「時間小史」が出版され、ベストセラーになると、スティーヴンは市民を集めて講演を開く。スティーヴンはその中で自らの人生哲学について語り、人間の努力に境界が無く、命ある限り希望があるのだと説き、喝采を受ける。

その後、スティーヴンはジェーンや子供達と共に宮殿に招かれ、エリザベス女王に謁見し、名誉勲位を授かる。宮殿の庭に出ると、ジェーンは自分達の関係が素晴らしいものだったと振り返る。スティーヴンは我々が創り上げたものを見てごらんと、子供達を指し示す。

「時間小史」(ホーキング、宇宙を語る)は全世界で1000万部売れ、スティーヴンは今も「万物の理論」を追求している。ジェーンもまた中世スペイン詩で博士号を取得し、夫ジョナサンと幸せに暮らす。スティーヴンとジェーンは今もよき友人であり、三人の孫がいる。

 

 

一応、理系畑で物理学を専攻していた僕だが、ホーキングの人となりについてはほとんど知らなかったので、本作はなかなか興味深く鑑賞した。若くしてALSを発症し、余命二年と宣告されながらも、妻を始めとする周囲の人達の献身的なサポートを得ながら、その天賦の才能を開花させたのだから凄い。頭脳は明瞭でありながら、身体だけが不自由さを極めていくのだから、想像を絶する苦悩や困難の連続だっただろうが、本作を見る限り、かなりポジティヴな人だった事が窺える。ジェーンに対する時に無神経にも見える態度は、本当にそういう性分なのか、或いはただの天然気質なのかよく分からない。尤も事実をベースにしているだけだから、その辺の真偽の程は定かではない。エディ・レッドメインはこの難しい役どころを巧みに演じきっていて、本当に障害を抱えているかの様なその迫真の演技は確かに称賛に値すると思う。子供が一人、二人、三人と淡々と増えていく様子はちょっと笑ってしまった。

f:id:horohhoo:20160206165933j:plain

f:id:horohhoo:20160206165936j:plain

f:id:horohhoo:20160206165947j:plain

f:id:horohhoo:20160206165951j:plain

f:id:horohhoo:20160206165956j:plain

f:id:horohhoo:20160206170001j:plain

f:id:horohhoo:20160206170023j:plain

f:id:horohhoo:20160206170039j:plain

f:id:horohhoo:20160206170044j:plain

f:id:horohhoo:20160206170050j:plain

f:id:horohhoo:20160206170122j:plain

f:id:horohhoo:20160206170128j:plain

f:id:horohhoo:20160206170132j:plain

f:id:horohhoo:20160206170136j:plain