チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作「ボーダーライン」は文字通り血で血を洗う復讐譚だった。

今年一番の期待作、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作「ボーダーライン」(Sicario)を観てきた。米国とメキシコを舞台に、米国捜査当局の捜査官らが凶悪な麻薬組織を壊滅に導くべく、無常感漂う地獄の様な場所を行き来し、奮闘する様を描いた超絶硬派なクライム・スリラーだ。エミリー・ブラントジョシュ・ブローリンベニチオ・デル・トロというアツい名優達がキャストに名を連ね、これだけで見応えたっぷりなのだが、ドゥニ・ヴィルヌーヴの活写する麻薬抗争の陰鬱さは一味も二味も違っていて、終始緊張感が途切れる事が無く、手に汗握りっぱなしだった。作風としては、ブラント演じるFBI捜査官ケイトが、その手腕をブローリン演じるCIAの特別捜査官マットに買われた事で、新たに台頭してきたメキシコの麻薬組織を壊滅するチームの一員に加わる事になるのだが、観る側はこのケイト同様に、捜査の詳細について多くを明かそうとしないマット、そして素性の良く分からないデル・トロ演じるアレハンドロに翻弄され、ケイトに生じる苛立ちや恐怖、絶望を共有する様にできている。終盤のデル・トロの怪演ぶりが鮮烈に記憶に焼き付く事は間違いなく、ある意味、彼が主役と言える。凶悪な麻薬組織との戦いを描いている割には、目を背けたくなる様な残虐な描写は少なく、極めて抑制的に描いているが、そこに厳然と存在する地獄を垣間見るには十分だった。脚本、演出、演技、どれを取っても非の打ち所の無い面白さだったから、続編が決定したのも頷けるし、ブラント、ブローリン、デル・トロの三者も続投するそうだから、今から期待が膨らんでしまう。それにしても満足した。いやはや、この監督の作品は間違いが無いな。

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