チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

エール!

エリック・ラルティゴ監督作「エール!」("La Famille Bélier" : 2014)[BD]

自分以外の全員が聾唖者一家の少女が、歌唱の能力を見出された事を機に音楽の道を志望する様になり、苦悩を抱えながらも成長する様を描くコメディ・ドラマ作品。

 

マイエンヌのラセ村で酪農を営むベリエ家は、長女で高校生のポーラを除き、父ロドルフ、母ジジ、弟カンタンが皆、聾唖者の家族でありながら、障害を物ともせず、手話を通じて朗らかに暮らしている。ポーラは自転車とバスを乗り継ぎ、高校に通いながらも、牧場作業と市場での自家製チーズ販売の手伝いをこなし、聾唖の家族に代わって対外交渉や接客をも担っている。新学期に入ると、ポーラは好意を寄せるパリ出身の洗練された容姿の男子ガブリエルと同じコーラスの授業を、親友マチルドと共に選択する。一方、ラセ村は三ヶ月後に村長選挙を控えており、現職のラピデュスが再選を目指して出馬を表明し、ベリエ家に対して障害者支援に手を尽くす意向を示す。

音楽家のトマソンは、かつてポップ界のスターと仕事をするなど、華々しい世界で活動してきたものの、10年前の失態が原因で、学長により都会からラセ村に飛ばされ、高校の音楽教師に甘んじている。ポーラはマチルドと共にコーラスの授業の初回選考に臨む。マチルドが第一声で即座に選考から外されると、それに反感を抱いたポーラはトマソンに悪態をつく。トマソンはポーラのその声を聞いただけでアルトに編入する。

ラピデュスは工業化プロジェクトと称して、村に大規模な食品工場や商業施設を建設し、雇用創出を図る意向を表明する。ロドルフはラピデュスが農地を奪おうと企図している事に反発し、自ら村長選に立候補し、計画を阻止する事を決意すると、家族に協力を求める。ポーラは障害者には荷が重いと消極的な意見を示すが、ロドルフは障害も個性だと主張し、早速立候補の届け出を済ませ、選挙活動の準備を開始する。

ポーラはコーラスの初回の授業に臨む。トマソンはグループにミシェル・サルドゥの合唱曲の練習を課す。ポーラはトマソンに発声の指南を受け、その際に思いも寄らぬ歌唱能力に目覚め、当惑する。トマソンはポーラに素質を見出すと、担当をソプラノに変更すると同時に、実力者のガブリエルとデュオを組み、年末の発表会で歌う様に促す。トマソンは二人にデュオの課題曲「愛の叫び」のテープを渡し、練習する様に命じる。ポーラはコーラスを始めた事を家族に伏せる。

市場でラピデュスがベリエ家の元へ敵前視察に訪れる。ポーラは、本心では聾唖者を軽侮するラピデュスに敵意を露わにする。ロドルフは近隣で農家を営む知己の面々を集め、支持を呼びかける。賛同者はラピデュスが住民を買収しており、勝ち目は薄いと説くが、ロドルフはそれでも戦う意向を示す。

ポーラとガブリエルは、トマソンの指示の下、本番を意識したデュオの練習を始める。トマソンは互いに恥じらう二人に不満を抱き、楽曲のイメージに合わせて情熱を駆り立てる様に命じる。ガブリエルは、父が忙しい舞台監督で自分を村に住む祖母の元に預けた事に不満を抱いており、パリで国営ラジオが催す歌の学校の試験に合格し、村を脱出する意向をポーラに明かす。その日の放課後、ポーラの家をガブリエルが訪ね、デュオの練習を行う。ポーラはガブリエルに歌を褒められ、気分を良くするが、その直後にポーラは初潮に見舞われる。それを知ったジジは歓喜し、シミの付いたズボンを家族に見せびらかす。ガブリエルはその様子に困惑して帰る。ポーラは無神経な両親に憤慨する。

翌日、ポーラはクラスメイトにシミの件で嘲笑され、ガブリエルが吹聴したのだと悟ると、コーラスの授業開始直前にガブリエルに平手打ちを浴びせ、罵倒する。ポーラが怒りを吹っ切る様な声量で歌い上げると、トマソンは黄金の歌声だと高く評価し、パリで歌を学ぶべきだと説く。トマソンは国営ラジオの試験が狭き門だとしながらも、ガブリエルと組めば合格の見込みがあると説き、合格すればパリのオペラの合唱団に入り、高校に通いながら名教師の指導を受けられる事を明かすと、三ヶ月後の試験に挑戦する様に促す。ポーラは家族や牧場の仕事を投げ出せず、トマソンの勧めを断る。その後、ポーラはマチルドに相談し、絶好の機会を逃すべきではないと励まされるが、家族には打ち明けられず、一人で悩み抜いた末に、トマソンに受験の意向を伝える。トマソンはガブリエルが今年の受験を見送った事を明かすと、試験まで毎日欠かさず自分のレッスンを受ける様に命じる。

その日からポーラは、学校と牧場の手伝い、ロドルフの選挙の応援と並行して、トマソンの自宅を訪ね、レッスンに励むが、試験の事を両親に切り出せず、苦悩する。そんな折、ベリエ家はテレビ局の取材を受ける事になり、ポーラはレッスンの時間をふいにする。取材が終わると、ポーラはトマソンの家を訪ね、遅れた事を弁解するが、トマソンに真剣さに欠けると咎められる。一方、ジジはポーラが遊びを優先していると考え、非協力的だと詰る。ポーラはコーラスを始めた事と、パリでの受験の意向を打ち明け、家族を見捨てると思われたくなくて言い出せなかったと弁解する。ジジは牧場の仕事と選挙をどうするつもりなのかとポーラを問い詰める。ロドルフは、ポーラがコーラスを始めたばかりでいずれ諦めると高を括るが、ジジは合格した場合を懸念する。ロドルフは使用人を雇う事を提案する。

翌日、カンタンがマチルドに基本的な手話を教え、市場の手伝いを頼む事になる。トマソンはガブリエルが歌から遠ざかり、デュオをやめた事を明かし、ポーラに一人で歌う様に促す。マチルドの手話が至らなかった為に、市場でチーズが全く売れず、ジジは神経性の湿疹を発症する。ポーラは両親の努力が足りないからだと詰る。

翌朝、ポーラは、父に反目して学校をサボろうとするガブリエルに、コーラスをどうするつもりなのか問い質すが、ガブリエルに意欲が無い事を知り、一人で練習に明け暮れる。ジジはそんなポーラに冷たく当たる様になる。ロドルフはジジに、ポーラ無しで生きる術を身に付ける意向を示す。

翌夜、ロドルフは市場に支援者を招いて選挙演説会を開く。ポーラはレッスンを終え、会場に駆け付ける。ロドルフは支援者の要望に対し、御用聞きでは無いとそれらを突っぱね、顰蹙を買う。一方、カントンはマチルドと自宅で留守番をする間に成り行きでキスをし、セックスに及ぼうとするが、ゴムアレルギーを起こし、倒れる。ジジとポーラは連絡を受けて急遽帰宅すると、医者を呼び、カントンは大事を免れる。

その後、ジジは泥酔し、家族の大切さを教えてきたのにポーラにはそれが通じず、子育てに失敗したのが自分の責任だと嘆く。ポーラはそれを否定し、受験の選択は両親の導きがあったからこそだと説く。ジジはポーラが誕生し、聾唖では無いと分かった時に、育てる自信が無くて泣いたが、ロドルフがポーラにも聾唖者の心が備わっていると説き、慰めてくれた事を明かすと、それでも歌おうとするポーラを責める。ポーラは一生チーズを売るだけの人生を拒否する。

翌日、ポーラはトマソンに受験を止める事を伝える。トマソンは翻意を促すが、ポーラはそれが自分の人生だと説く。ガブリエルはポーラに触発され、歌を再開する事をポーラに伝え、試験は無視して発表会でデュオで歌う様にトマソンに頼まれた事を明かす。ポーラはマチルドに促され、デュオで歌う事を決意する。

コーラス発表会の日を迎え、会場に生徒達の父兄が集まり、ポーラの家族も駆け付ける。合唱曲の後、ポーラとガブリエルによるデュオが披露され、万雷の拍手で喝采を浴びる。ロドルフとジジは、ポーラがいかに称賛されているかを悟る。ポーラとガブリエルは舞台袖でキスを交わす。会場からの帰り際、トマソンはポーラを呼び止め、翌日10時の試験にまだ間に合うと説き、改めて受験する様に強く促すと、家族にも応援を要請する。トマソンはそこでポーラの家族が皆、聾唖者という境遇を知る。

その夜、ロドルフはデュオで歌った楽曲「愛の叫び」の内容についてポーラに尋ね、ポーラの声帯に手を当てた状態で歌ってもらう。ロドルフは早朝まで考え抜いた末に、ポーラを起こし、受験する様に促す。ジジも折れ、一家は車でパリへ急行する。ガブリエルはポーラから連絡を受けると、ポーラの受験の意向をトマソンに報せ、二人もまたパリへ急行する。

ポーラは試験会場のホールに遅刻して到着し、最後の志願者として受験に挑み、一家は客席でそれを見守る。ポーラはサルドゥの「青春の翼」の歌唱を希望するが、楽譜を持参しておらず、試験官からアカペラによる歌唱を命じられる。そこにトマソンが駆け付け、伴奏を申し出る。ポーラは家族に向けて、手話を交えて、旅立ちの決意を告げるその歌「青春の翼」を堂々と歌い上げ、家族は感動する。

後日、ポーラは試験に見事合格し、村を離れる日がやってくる。家族はポーラを抱き寄せ、笑顔で送り出す。ポーラはトマソンと共にパリへ出発する。

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