チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ペット 檻の中の乙女

カルレス・トレンス監督作「ペット 檻の中の乙女」("Pet" : 2016)[DVD]

動物保護施設に勤務する男が、一方的に好意を抱いた女を拉致して檻に監禁し、懐柔を図る内に、女の秘めたる真実に翻弄されていく様を描くサイコ・スリラー作品。

 

動物保護施設に勤務する内向的な中年男セスは、動物達の世話や掃除、死骸の処理などに薄給で従事しながら、これといった目的も無く、安アパートで慎ましい生活を送っていた。ある日、セスは帰宅途中のバスで、高校の一学年下だった女ホリーを見つけ、声をかける。ホリーはセスを認知しておらず、困惑しながら、ウェイトレスをしながら作家を志望している事を明かすと、セスを素っ気なくあしらう。

ホリーに好意を抱いたセスは、ホリーのSNSを通じてその近況や人となりを探る。後日、セスはホリーが勤めるレストランに客として訪れると、好意を露わにして、ホリーの好きなアーティストのコンサートに誘う。ホリーは恋人がいると伝えるが、セスはそれが嘘だと指摘する。ホリーはセスに嫌悪感を示し、拒絶する。セスはホリーをアパートまで尾行する。ホリーはそれを察知するが、同居人のクレアに被害妄想だと窘められる。そこへ元カレのエリックから連絡が入るが、ホリーはエリックの浮気を許せず、連絡を断ち続ける。

後日、レストランにホリーの好きなバラの花束が告白のメッセージと一緒に届く。送り主がエリックだと考え、気を良くしたホリーは、その夜、エリックがバーテンとして勤めるバーを訪ねる。エリックは花束に関知していない事を明かし、困惑するが、ホリーに復縁のチャンスを求める。ホリーは浮気について詰ると、気分転換の為に、店の外へ煙草を吸いに行く。ホリーを尾行してきたセスは、そこへ姿を現し、花を送った事を明かす。ホリーは目的を問い質す。セスはホリーをバスで見かけて特別なものを感じ、それを確かめたいのだと訴え、ホリーに迫る。ホリーはセスを突き放し、店に戻ると、エリックに助けを求める。エリックはセスを殴り飛ばして店の外に追い出す。セスはホリーがバッグから落としたノートを持ち帰ると、そこに綴られた日記を夜を徹して読み耽る。

セスは施設内の施錠された立ち入り禁止区画へ忍び込み、その一室に長らく使用されていない地下室を発見する。セスはそこに自作の檻を作成すると、施設から麻痺薬を盗み出す。夜、セスはホリーがアパートに一人の時を見計らって窓から侵入すると、麻痺薬を注射してホリーを昏睡させる。セスはホリーをダンボールに詰めると、警備のネイトに上司から頼まれた荷物だと偽って、ダンボールを地下室へ搬入し、ホリーを檻に監禁して帰宅する。間もなく目覚めたホリーは悲鳴を上げるも、犬達の鳴き声に掻き消される。翌日、セスは檻に簡易トイレのみを設置し、何食わぬ顔で業務に戻る。その後、セスはホリーに水と食べ物を差し入れる。ホリーは立ち去ろうとするセスの脚にしがみつく。セスはまず関係性を築くところから始める意向を示す。ホリーはクレアの幻覚に惑わされる。

それ以後、セスは毎日地下室にやってくる。ホリーはセスに監禁の目的を尋ねる。セスは監禁がホリー自身の為だと答え、誰にも見向きもされない自分にとって、ホリーが如何に特別な存在かについて説くと、ホリーを救う為に最善を尽くす意向を示す。また、セスはホリーがノートに綴った愛に対する考え方について、否定的な見解を示し、本当の愛を手に入れるには努力と犠牲が必要なのだと主張する。ホリーはそう考えるのは、まさにセスの様に孤独で落ち込んでおり、自分を嫌いすぎて愛される希望が持てず、愛を買えると思い込んでいる連中だと反駁する。

セスはホリーが一人二役で日記に登場するクレアと会話している様子を目の当たりにすると、ホリーが病気に蝕まれていると指摘する。日記によると、かつてホリーはエリックと婚約していたが、クレアがエリックと浮気している事を知ると、食事が喉を通らなくなり、不眠症にまで陥った。ホリーは許しを請うクレアを、事故を装って殺害したのだった。ホリーはそれがフィクションだと弁解する。セスは日記の記述を確かめる為に、敢えて通報せず、ホリーを数日間尾行し、ホリーが毎晩の様に殺人を犯しているのを目撃した事を明かすと、日記を書いているのは実は捕まって罰を受ける為では無いかと推察し、監禁は罰では無く、救いなのだと説く。ホリーは自分を救って欲しいとセスを唆す。セスはホリーが人を殺さずに済む様にすると約束する。

セスはホリーと対話を続ける。セスは殺人を続ける様になった理由をホリーに尋ねる。ホリーはクレアの殺害で自らの才能に気付いた事を明かす。セスは本来のホリーが夢を持ち、優しく、孤独を怖れていたはずだと指摘する。ホリーはセスが尚も自分に好意を抱いているのを確認すると、愛する対象なら自由にすべきだと訴えるが、セスはそれを拒む。ホリーは突然、顔を檻に打ち付け、自傷すると、自分が死んだらセスも終わりだと説き、主導権を握り返そうとする。セスはホリーへの対処に苦慮する。そんな折、セスは上司に怠慢を咎められ、次で解雇だと警告される。

セスは思案に暮れた挙句、意趣返しとしてホリーに食事を減らす意向を示す。ホリーはセスの歓心を買う事で翻意を促す。セスはそれを受け、自販機に菓子を買いに行く。その時、巡回中のネイトは、セスが立ち入り禁止の部屋から出てくるのを目撃する。ネイトはその部屋から地下室に降り、檻の中のホリーを見つけて当惑する。ホリーはネイトに鍵を壊す様に請う。そこにセスが戻ってくる。ホリーはネイトの気を逸しつつ、セスに目配せし、ネイトを殺す様に唆す。動転したセスは、携帯ナイフでネイトを滅多刺しにし、ネイトはその場に倒れる。ホリーはセスに止めを刺す様に促す。セスはブロックでネイトの頭を潰す。ホリーはセスに死体の処理と証拠の処分について事細かに指示する。セスはそれに従い、内臓は犬の餌に供し、他の部分は焼却炉で処理した後、上司にネイトが外出したきり戻らないと報告する。

セスはホリーに、殺人では無く事故だったと主張する。ホリーは殺人の醍醐味が自分の人生を支配できた気分になる事であり、その感覚が失われる度に自分は特別では無いと思い知り、取り戻す方法は無いかと考え始めるのだと説くと、セスに本当の自分を受け入れるのは恥では無いのだと諭す。セスは尚も事故だと言い張る。ホリーはセスが監禁の対象に自分を選んだのは偶然では無く、天性の才能だと説くと、セスに通報しなかった理由を問い質す。セスはホリーが人を傷つけるのを見ていられなかったのだと答える。ホリーはセスが心の奥底で、他者の生死を決める力を求めていたのだと説く。セスは改めてホリーを救わせて欲しいと請う。ホリーは逆にセスを救う為に、セスの手を自らの股間に宛てがって誘惑する。セスはそれを拒絶する。間もなく、施設に刑事が捜査にやってくる。セスはネイトの同僚として聴取に応じる。刑事はセスの証言の矛盾を指摘し、疑義を呈す。

ホリーは食事を拒否し始める。セスは苛立ちを募らせる。ホリーは誰も自分を救えないのだと嘆くと、檻に入れるのが愛では無く所有だと説き、セスは何も与えず、奪っただけだと詰る。ホリーは愛の証拠としてセスに指一本を要求する。セスはそれを突っぱねる。ホリーは子供の頃に、本当の自分を知られたら家族や友人さえも逃げると気付き、自分を偽る術を得て孤独から逃れる様になったものの、セスの様な男が必ず現れると考えを改め、自分を受け止めてもらおうと身を委ねる度に、失望させられてきた事を嘆く。ホリーは自分がペットでしか無いなら戻ってこないで欲しいと哀願する。

セスはしばし悩んだ末に決心を固め、地下室に戻ると、ホリーの前で左手の人差し指をナイフで切り落とす。ホリーはセスが悶えている隙に乗じてナイフを奪い取ると、それを自分の首に押し当て、檻を開ける様に命じる。セスはそれに応じる。ホリーはセスに歩み寄り、救ってくれた事への謝意を示すと、愛していると告げてキスをし、セスの首を切り裂く。

後日、ホリーは日記を元にした小説を自費出版して好評を得ると共に、エリックと復縁する。程なく、ホリーはエリックの浮気を察知するが、殺害への衝動を抑える。ホリーは貸倉庫の檻に監禁したセスの元へ訪れると、セスへの愛を思い出し、幸せを感じる事で、衝動が抑えられるのだと説く。

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