チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ダークレイン

イサーク・エスバン監督作「ダークレイン」("Los Parecidos" : 2015)[DVD]

嵐の夜にバスステーションに集まった男女が、謎の感染症に襲われた上に外へ出られなくなり、その原因を巡って争い合う様を描くSFホラー・スリラー作品。

 

1968年10月2日0時半過ぎ、メキシコシティから車で5時間ほど離れたバスステーション。メキシコは激しい嵐に見舞われており、到着予定のバスは四時間以上遅れている。ラジオでは、トラテロルコで学生達による反政府デモが激しさを増す一方で、世界各地もまた原因不明のハリケーンに襲われていると伝えられる。鉱山作業員のウリセスは、メキシコシティの病院に入院する妻マリアの出産に立ち会う為にバスを待つが、一向に到着する気配が無いために痺れを切らし、券売所で働く定年間近のマルティンを責め立てる。そこへ妊婦イレーヌが取り乱した様子でやってくる。イレーヌはバスが遅れている事を知ると、公衆電話でタクシーを呼ぶ。ウリセスは目的地が同じだと知って相乗りを提案する。イレーヌは夫を殴って家を飛び出した事を明かし、逃げなければ殺されると怯える。待合所の端で眠っていたシャーマン風の老女ロベルタは、目を覚ますや、意味不明な言葉を喚き始める。ウリセスはまじないを始めたロベルタに声をかけるが、ロベルタが必死に訴えかける言葉の意味が分からずに困惑する。

マルティンは不調を来して事務所に引き上げ、そこで倒れ込む。イレーヌはトイレに行く。そこへ住み込みの女ローザが現れ、イレーヌの体を気遣うと、外に出ると死ぬと警告する。イレーヌは意に介さず立ち去ろうとし、ローザと揉み合いになる。ローザは突然、泡を吹いて倒れ、痙攣する。一方、ウリセスは公衆電話で病院で待つ義父に連絡し、双子が無事生まれたものの、病院で異変が起きていると知らされ、狼狽する。そこへロベルタがやってきてまじないを始めると、ウリセスはロベルタを追い払う。

ウリセスはイレーヌに助けを求められ、トイレに同行するが、マリアの身を案じて悲嘆する。そこへタクシーでやってきた医学生アルバロが現れ、ローザの容態を確認する。ウリセスとイレーヌは直ちに出口に向かうが、タクシーに乗り遅れる。待合所にはいつの間にかゲルトルディスと、病気で吸入器を着けた八歳の息子イグナシオがおり、ゲルトルディスはタクシーの運転手が妙な病気に罹っており、乗らなくて幸いだったとウリセス達に伝える。トイレから戻ってきたアルバロは、ローザの髪型や顔が変わっており、遺伝子異常の様だと説く。そこへ包帯で顔をぐるぐる巻きにしたマルティンがやってきて、それが悪魔の仕業であり、ウリセスが悪魔の遣いだと詰ると、猟銃を持ち出し、ウリセスに突きつける。ウリセスは自らがただの鉱山作業員だと明かし、命乞いする。その時、ロベルタが泡を吹いて倒れる。ウリセスはその隙を見計らってマルティンから猟銃を奪う。ゲルトルディスはウィルスが蔓延しているのだと恐れる。

間もなく、イグナシオが「水が押し寄せてくる」などと喚き始める。ゲルトルディスはイグナシオを宥めようとするが、それが無理だと悟ってイグナシオに注射を打つ。一同は誰がウィルスを持ち込んだのかを巡って言い争う。ロベルタは痙攣を起こした後、髪の毛が抜け落ちる。その矢先に、マルティンとトイレにいるローザが悲鳴を上げ、間もなく両者ともウリセスと酷似した、黒々とした頭髪と髭を生やした風貌に変化する。アルバロはウリセスが当局の人間か或いはソ連の手先であり、何某かの人体実験を行っているのだと考え、猟銃をウリセスに突きつけて問い質す。ウリセスは誤解だと答え、財布のIDを確認する様に促す。しかし、財布にはウリセスの写真は無く、アルバロは説明を求める。その最中にロベルタもまたウリセスと同じ風貌に変化する。アルバロはウリセスを詰問するが、イレーヌはウリセスには何が起きているのか見えていないのだと指摘する。アルバロはウリセスを柱に縛り上げる。一方、絶望したローザはトイレでハサミを喉に突き刺して自殺を図る。

アルバロはウリセスの所持品を漁る。イレーヌはアルバロに疑いを抱く。そこで一同は改めて互いの素性を明かし合う。その時、イグナシオが再び「水がこっちに来る」などと喚き始める。ゲルトルディスは、雨が降るとイグナシオがいつもこの様になり、水を怖がる余り、風呂にも入れない事を明かすと、再び注射を打とうとする。アルバロはそれを取り上げ、向精神薬を子供に打つ理由を問い質すが、ゲルトルディスは口出しを拒む。ラジオではメキシコ気象研究所の教授が、雨に未確認物質が含まれている事から、外出を控える様に警告する。

間もなく、イレーヌにも変化が生じ始める。アルバロは感染者を一箇所に集合させると、ゲルトルディスに感染する前に一緒に逃げる様に促すが、ゲルトルディスはそれを拒む。アルバロは一人で出ていこうとするが、ドアも窓も鍵が閉まって開かず、更に銃撃で破ろうにも通用しない事を知って途方に暮れる。イレーヌは外も同じ状況だと考えうる証拠があると説き、アルバロを連れて事務所に向かう。二人はそこに数多ある写真、ポスター、雑誌のグラビア、置物の彫像などの、ありとあらゆる人物の顔がウリセスと同じ風貌になっているのを目の当たりにする。一方、イグナシオはトイレでローザの死体を発見し、悲鳴を上げる。そこにゲルトルディス、マルティン、ロベルタがやってくると、イグナシオは三人を閉じ込め、待合所に向かい、助けを求めるウリセスの口をさるぐつわで塞ぐ。ゲルトルディスは、イグナシオが雨に影響する不思議な力を宿している事を明かし、遊びのつもりで全員を殺してしまうと怖れる。

イグナシオは母が読み聞かせてくれた愛読漫画「類似」を自らのバッグから取り出すと、それを朗読する。『雨に紛れて地球にやってきた「彼ら」は、街を破壊する事も人をさらう事も征服する事も無く、人間らしさを奪っていった。個性を失った人間は「彼ら」が来た事を忘れてしまい、人間がアリを見てもその違いに気付かない様に、自分達が同じ顔になった事に気付かないのであった。』概してそういう話である。イグナシオはウリセスに鍵の持ち主を殺す様に唆し、縄を解いてやる。そこへアルバロとイレーヌが二人の不穏な行動を察知して駆け付けると、ウリセスは不意を突いてアルバロから猟銃を奪い返し、アルバロを柱に縛り付ける。ウリセスはイレーヌに一連の現象がイグナシオの仕業だと説くと、トイレに押し入り、マルティンから鍵を奪う。ウリセスはそれで出入り口のドアを開けようとする。イグナシオは鍵の主を殺すという約束についてウリセスに問い質す。ゲルトルディスは注射を返す様にアルバロに請うが、アルバロの手中には無く、イグナシオはいつの間にか奪った注射を踏み潰す。ゲルトルディスは、過去に同様の事件を起こした際にもう操られないと約束したはずだとイグナシオを諭す。イグナシオはそれを否定し、ゲルトルディスを蹴り飛ばす。

アルバロはイレーヌに縄を解いてもらう。イグナシオはウリセスに約束を破るつもりなのかと問い質す。ウリセスはイグナシオに猟銃を向ける。ゲルトルディスは恐ろしい事が起きると警告する。イグナシオは、約束を破った為に鍵は渡さないと告げる。次の瞬間、ウリセスが持っていたはずの鍵がアルバロの口の中から現れる。ウリセスはイグナシオを撃とうとする。イグナシオは手元の人形を操る事で、猟銃をマルティンの元へ移動させ、マルティンにウリセスを撃たせる。ウリセスは致命傷を負い、その場に崩れ落ちる。

ラジオで、街のありとあらゆる人が髭のある同じ顔に変貌し、パニック状態に陥っていると報じられる。間もなく、イレーヌ、アルバロが発作に見舞われ、ウリセスと同じ風貌に変化する。また、ゲルトルディスにも変化の兆しが現れる。アルバロとイレーヌは瀕死のウリセスの元へ駆け寄る。アルバロ達は、ウリセスが二人を認識できない為に、試みに鏡で自分の顔を見せてやる。ウリセスは映った顔が自分とはまるで違うと告げ、息絶える。アルバロ達はウリセスの財布の中に、本当のウリセスの姿を収めた写真を見つけ、ウリセスもまた感染していたのだと知る。アルバロ達は、ウリセスが二人を認識できなかった理由について、感染して完全に髭の姿に変化すると本来の姿が見える様になり、感染途中、或いは死に際にはその作用が働かず、髭の姿に見えるのでは無いかと推測する。ゲルトルディスは一連の現象が、かつて自分がイグナシオに読み聞かせた漫画に基づく物語だと明かすと、イグナシオが現実の世界を物語の世界に作り変えてしまった事で、個性を失った人間は同じ顔に見えなくなり、やがてその経緯を忘れ、自分の顔も普通に見えてしまう様になるのだと説くと、イグナシオを怒らせない様に皆に促す。

朝が近づく。ゲルトルディスはイグナシオに止める様に哀願する。イグナシオは「奴ら」に操られており、止められないのだと答える。イレーヌは「奴ら」が誰なのか詰問する。その直後にイレーヌは激しい陣痛に見舞われる。アルバロは出産を介助し、髭を生やした子を取り上げるが、イレーヌはその直後に命を落とす。一方、ゲルトルディスも発作の後にウリセスと同じ風貌に変化する。マルティンは鍵を持ってドアに近づく。イグナシオは持参した車の模型を人形にぶつける。その途端、外から車がドアを破って突っ込み、マルティンを轢き殺す。イグナシオは続けて人形を操作する事で、アルバロと赤子を車内に閉じ込める。その矢先にイグナシオは卒倒する。ロベルタはイグナシオにまじないを施した後、イグナシオが強いエネルギーを持つ巨大な存在と接触していたが、世界に影響が及ぶとは思いもよらなかったのだろうと説く。

やがて、イグナシオを除く全ての人間が完全に個性を失うと同時に、それに至った経緯を忘れる。朝、バスステーションに警察が殺人事件の捜査にやってくる。街に向かって車で暴走していたところを見つかったアルバロは、五人殺害の犯人として逮捕される一方、赤子は無事病院に搬送される。イグナシオは何食わぬ顔でゲルトルディスと一緒にメキシコシティ行きのバスに乗り込む。周りには、個性を失いながら、同じ顔になった事に気付かない客達が座っており、イグナシオだけがそれに気付いている。そこへロベルタが現れ、「トラテロルコの医者に行ってはいけない、たくさんの人達が危険な目に遭う」と警告する。ゲルトルディスはロベルタを追い払う。

イグナシオはこの星に潜む不思議な危険の一つに過ぎない。闇の力を知る者は無く、止められる者もいないのである。

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