チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ランダム 存在の確率

ジェームズ・ウォード・バーキット監督作「ランダム 存在の確率」("Coherence" : 2013)[DVD]

彗星接近の夜に夕食会に集まった八人の男女が、相次いで起こる不可解な出来事に翻弄される内に、現実世界から分岐した別の世界に迷い込んでいく様を描くSFスリラー作品。

 

ミラー彗星が地球に最も接近する夜。マイク、リー夫妻は自宅に友人のエミリーとその恋人ケビン、ヒューとその妻ベス、アミールを招いて食事会を開く。アミールは予期せずケビンの元恋人ローリーを連れてくる。エミリーは到着直前に携帯が故障し、その原因が彗星の接近だと疑う。ベスはローリーが来る事で落ち着かないエミリーの心情を慮り、自らが調合したというケタミンを含有した特効薬を勧める。ケビンはエミリーにベトナムへ赴任する話を伝え、付いてくるよう促すが、エミリーは躊躇う。

集まった一同は挨拶を済ませると、食卓を囲むが、間もなく携帯の電波が届かない事が判明する。エミリーはそれも彗星のせいだと指摘すると、過去にも同様の不可解な事例があった事を明かす。一同は近況を伝え合うなどして談笑に耽るが、その最中にヒューは携帯がエミリーと同様に故障している事に気付く。ヒューは物理学者と親交のある弟から妙な事が起きたら連絡するよう求められていた事を明かすが、ネットも使えない事が判明し、戸惑う。その直後、突然停電が生じる。一同は直ちにキャンドルとスティックライトを用意し、明かりを灯す。一同は周辺一帯の家が全て停電しているのに、少し先の一軒だけ電気が灯っている事に気付き、外へ様子を観に行くと、発電機を使用しているのだと推察する。一同は上空を通過する彗星に目を見張った後、屋内に戻る。

ヒューは弟から、彗星が通過する際に異変が起きたら、外には出ず、どうにかして自分に連絡するように言われていた事を明かし、向こうの家を訪ねてみる意向を示す。ベスは心配し、皆は翻意を促すが、ヒューはアミールを連れて出ていく。程なくして、ドアが外から叩きつけられる。ケビンはバットを構えてドアを開けるが、そこには誰もおらず、マイクは発電機を動かして電気を回復させる。ベスは戻らないヒュー達を心配し、全員で探しに行く事を提案するが、ローリーは迷った際には留まるのが鉄則だと反論する。そこへヒューがこめかみを怪我した状態で、またアミールが箱を持って帰ってくる。アミールは向こうの家にあったその箱をヒューが置いて走り出した為に、持ってきたのだと説くが、ヒューはそれを否定する。エミリーは向こうで何があったのか問い質す。アミールはヒューが家の裏手に回って何かを見た後、音を立てたのだと答える。ヒューはその箱に絶対に関わるべきでは無いと説く。二人のやり取りが要領を得ない為、マイクは箱の鍵を開ける。その中から、卓球ラケットと、封に収められ、裏側に番号が記された全員の写真が現れる。ヒューは家の窓越しに中の様子を見たところ、こちらと全く同じ様に食卓に八人分の食事が用意されていた事を明かす。一同は激しく動揺する。ヒューは向こうの家へ電話を借りに行き、誰もいなければメモを置いてくる意向を示すと、紙にメッセージを書き始める。その時、ドアの外で物音が生じ、一人の男が今まさにヒューが書いた携帯を借りたいという旨のメッセージを記したメモと全く同じ物をドアに貼り付けていく。

一同は写真の裏側に記された1~6の数字の意味を推し量る。アミールは自らの写真がその家の中でいつの間にか撮られた物だと指摘する。一同は困惑を深める。また、エミリーは数字が自分の筆跡だと悟り、狼狽える。マイクはそのままでは埒が明かない事から、向こうの家に自分達がいるのか確かめに行く意向を示す。リー、ベス、ヒュー、アミールを除く5人は、青いスティックライトを携え、向こうの家の様子を覗いに行く。周辺には人の気配が無く、向こうの家はマイクの家と全く同じ作りだと判明する。マイクは窓から中の様子を窺う。その時、一同は人が来る気配を感じて逃げ出す。その途中、一同は赤いスティックライト以外はこちらと同じ姿格好の四人組と遭遇する。向こうの四人組が咄嗟に逃げ出した為、一同も元の家に逃げ戻る。

エミリーは他よりも一段と暗い奇妙な場所を通った事を明かすと、彗星に関する本が無いかマイクに尋ねる。ベスはヒューの弟が忘れていった本が車に置きっぱなしになっている事を明かす。ヒューとケビンはそれを車から取ってくる。その本「重力:最新の研究概論」の中には、大学で教鞭を執る弟の授業計画のメモが挟まれており、ヒューはそこに記されたデコヒーレンス(共存の崩壊)とシュレディンガーの猫について簡単に説明する。弟によれば、デコヒーレンスの後も二つの状態は別々に存在し続け、各結果に基づいて新たな現実世界を形成し、異なる結果が互いに独立した現実を生じさせ、彗星が通過している間は共存が続き、その後は完全に分離して結果が確定するのだという。一同は向こうがこちらに接触を図ってくる理由や写真の意図について測りかねる。マイクはこちらが既に向こうに関わった事で現実が崩れる事を危惧し、その前に向こうの人間を殺してやろうと気色ばむ。ヒューは取ってきた箱を返すべきだと主張し、ケビンは向こうの家にいるのは自分自身だとマイクに諭すが、マイクは酔った自分が手に負えない為、向こうの自分が酔った勢いで殺しに来る事を心配する。マイクは向こうの家を覗いた際にアミール、ヒュー、リーの姿を見た事を明かす。こちらの家ではリーが仮眠中でいない為、一同はこちらと向こうでは同一では無く、向こうではベスが仮眠しており、それ故に向こうは本を見ていないのだと推察すると、向こうの車から本を奪うべきだという結論を導く。ヒューは向こうに関わるべきでは無いと主張し、車の鍵を渡す事を拒む。

マイクはケビンに対し、向こうが本を見るのを阻止する方法として、これまで隠してきたベスと過去に浮気した件で自らを脅迫する手紙を置いてくる事を密かに提案する。ケビンは翻意を促す。仮眠から戻ったリーは、ベスに貰った調合薬で眠っていた事を明かす。エミリーはそれを料理に加えていないかベスに問い質す。アミールは全員が幻覚を見ているとすれば説明が付くと説く。一同はベスを非難する。ベスはそれを真っ向から否定し、安全な薬だと主張する。その直後、エミリーはベスとリーが交わした会話が、家に到着した時のそれと全く同じ事に気付き、訝る。マイクは密かに向こうに置き手紙をして戻ってくると、本が向こうの車内にあり、窓を割って取ろうとしたが止めた事、往復で小一時間かかった事を明かす。ケビンはせいぜい10分程度だったと指摘するが、マイクはそれを否定する。一方、ヒューとアミールは箱、写真、本を持ち出して姿を消す。間もなく、一同はそれに気付く。ローリーは二人がむこうから戻ってきて以来、様子がおかしかった事から、こちらの人間ではない可能性を指摘する。

一同は手掛かりを失い、途方に暮れる。エミリーは箱の中にあった写真を撮ったのがマイクである事から、保管してあるはずの写真を探すようマイクに頼む。間もなく、マイクは写真とハサミを取ってくる。一方、ローリーは密かに廊下でケビンと接触を図ると、ベトナム赴任への同行を迷うようなエミリーは相応しくないと説き、復縁を迫るが、ケビンはそれを拒む。ベスはそれを盗み見ると、直ちにエミリーに報せる。エミリーはそれについてケビンに尋ねる。その直後、再び停電が生じ、一同は外でガラスが割れる音を聞く。一同は外へ様子を観に行き、ヒューの車の窓ガラスが割られている事に気付く。エミリーは自分の車の様子を観に行き、その際にケビンから貰った指輪を持ち出し、嵌める。そこへケビンが現れると、エミリーは互いの愛が変わらない事を確かめようとするが、ケビンの様子からそれがこちらのケビンでは無いと悟り、家に戻る。そこには既にケビンがおり、エミリーは外にいたのが向こうのケビンだと確信する。

一同はヒューの車が荒らされた理由を測りかねる。間もなく、ヒューとアミールが本を持って戻ってくる。ヒューは向こうに電話を借りに行き、中を覗いたら皆の顔が見えたので驚いて転倒し、こめかみを打った事を明かす。リーは先に自分が貼った絆創膏の種類と違う事を指摘する。ヒューはメモをドアに貼った事を否定した為、一同はこちらと向こう以外に別のヒューがいるのだと悟る。アミールは箱が向こうの目印だったのだと説くと、一同は向こうと同じように目印となる箱を用意する事で合意する。アミールはその場で自らの写真を撮影する。それぞれの写真に、サイコロで出た目の数字を向こうとは違う色のペンでエミリーが記す事で、分岐を幾重にも生じさせる。アミールはMFA(多要素認証)の役割を果たす、無作為で選んだ物を入れる事を提案し、鍋敷きが選ばれる。目印となる箱が完成した事で一同は俄に安心する。

エミリーは最初の箱の写真の数字を全員に尋ねる。その結果、エミリーはその家に元々いたベスとリー以外は他の家から来ており、更にヒューとアミールは更に別の家から来ている事に気付く。エミリーはそれをマイクに報せると、暗い場所を通過する際に無作為に別の現実に送り込まれ、元の家に戻れなくなるのだという仮説を示し、彗星が通過する前に元の家に戻る方法を見つけないと、ここに永遠に取り残されてしまうのだと訴える。酒に酔ったマイクは戻る事を諦観する。

ケビンとヒューが箱を設置して戻った直後、ドアに紙が差し込まれる。それはマイクが置いてきた脅迫文と同一の物であり、目を通したヒューは憤ってマイクとベスに詰問する。ケビンはヒューを宥めようとするが、ヒューは自分以外の全員がマイクとベスの浮気について知りながら黙っていた事を知って激昂する。マイクはこの家が自分達の家では無く、ヒューもまた別の家の人間だと弁解する。一同はヒューの携帯が壊れておらず、またヒューの世界で最初の箱に入っていたMFAも違っている事を聞き、そのヒューが別の家のヒューだと確信する。マイクは自分の世界のベスと浮気したのだと開き直り、ヒューに殴られる。そこへ別の世界のマイクが押し入り、マイクを殴り飛ばして逃走する。ベスはショックで鼻血が止まらなくなり、その血が肩に付着したローリーは血液恐怖でパニックに陥る。ケビンはローリーを抱き締めて宥める。エミリーは狂乱する皆の様子を見るや、その家と決別し、一人で出ていく。

エミリーは別の世界の家々の自分の姿を見て回り、いずれの家でもいがみ合うなどして自分が不幸せな境遇に置かれている事を知るが、ある家で和やかに談笑し、幸せそうに過ごす自分の姿を見つける。エミリーはその家からベスの薬を持ち出すと、ヒューの車の窓を割って全員を外へ誘き出す。エミリーは自分の車の様子を観に来たその世界のエミリーを襲い、薬で昏睡させた後、その世界の自分に成り済まし、仲間の輪に加わる。その直後、エミリーはその世界の自分が目を覚まして這い戻ってきた事に気付く。エミリーはその世界の自分を浴室で殴り殺し、浴槽に隠す。その際、エミリーは嵌めていた指輪を失くした事に気付き、その世界の自分から奪い取る。エミリーは浴室から出た直後に気絶する。

翌朝、居間で目を覚ましたエミリーは、昨夜の出来事に気付いていない様子のリー、ベスと対面した後、外へ様子を観に行く。そこへケビンが現れ、エミリーが倒れた事を伝えると、浴室で見つけた指輪を返す。その時、ケビンの携帯にエミリーから着信が入る。ケビンはそれに応答すると、そこにいるエミリーを怪訝な面持ちで凝視する。それにより、二人のエミリーが存在する現実が確定した事が示唆される。

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