ティモシー・リン・ブイ監督作「アンダーテイカー 葬る男と4つの事件」（"Powder Blue" : 2008）[DVD]
ストリッパーのシングルマザー、葬儀屋の青年、人生に絶望する神父、長期服役を終えた男、それぞれ苦悩を抱える四人がクリスマスを目前に控えた街で迎える運命の行く末を描くドラマ作品。
12月20日、ロサンゼルス。交通事故で妻を喪い、人生に絶望する神父チャーリーは拳銃自殺を企図する。植物状態の息子の回復を信じて待つストリッパーのローズは、医療費に事欠く程に窮乏する。パリでの暮らしに憧れるローズはモーテル暮らしを続けながら、金回りの良い男を捕まえようと躍起になる。そんな折、愛犬ルディが失踪する。葬儀屋を営む青年クワーティは、夜道を霊柩車で走行中、犬を轢いてしまい、その拍子に車まで故障する。クワーティは怪我した犬を自宅に連れ帰り、手当すると、ラッキーと名付けて飼う事にする。25年の刑期を終え、胃がんで余命僅かのジャックは、娘を捜す為に街に戻ると、かつての悪友から娘に関する情報と称して、ストリップクラブ「ワイルド・ベルベット」のリーフと大金を受け取る。チャーリーは路上でトランスジェンダーの街娼を車に拾う。街娼は手術費用を貯めていつか完璧な女になる事を切望する。チャーリーは路地裏に車を停めると、全財産5万ドルの現金を提示して、拳銃で自らの心臓を撃ち抜き、確実に殺して欲しいと請うが、街娼はそれを拒否する。翌日、ローズはルディを見つけるべく、街の方々にルディの捜索チラシを貼り付ける。その夜、ジャックはワイルド・ベルベットを訪ねると、スカーレットことローズがダンスで客を煽情する様を見届けた後、店を後にする。
22日、資金難に陥ったクワーティは月末に差し押さえられる旨の通告を受け、途方に暮れる。閉店間際、チャーリーが訪れ、棺を現金払いで買う意向を示す。チャーリーは自ら棺に収まり、購入を決めると、クワーティに拳銃を差し出し、5万ドルで心臓を撃ち抜くよう哀願する。チャーリーはクワーティが金に困っているはずだと唆すが、クワーティは頑なに断る。チャーリーはその足で行きつけのダイナーを訪ねる。知己のウェイトレスのサリーは、遅い時間にチャーリーがダイナーにいる理由を尋ねる。チャーリーはサリーを自宅まで車で送っていく。サリーは離婚して一年経った事を明かすと、家に寄っていくよう勧めるが、チャーリーはそれを断る。サリーは送ってくれた理由を尋ねるが、チャーリーは分からないと答える。サリーはキスをしてチャーリーに謝意を示す。一方、ジャックは再びワイルド・ベルベットを訪ね、ローズの登場を待つ。ローズは遅刻して出勤するや、オーナーのラリーにクリスマスは息子ビリーと過ごしたいと直訴する。ラリーはイブが寂しい男達が大勢やってくる書き入れ時である事から、来なければクビにすると言い渡す。ローズは店の裏口に出て途方に暮れる。ジャックは通りすがりを装ってローズに声を掛け、節介を焼く。ローズは一年前にサンフランシスコから来た事を明かすと、指名を受けて店に戻る。その後、ジャックはローズを指名して個室に呼ぶ。ローズはジャックを官能的なダンスで誘惑する。ジャックはそれを拒み、会話を希望するが、ローズはそれに応じようとしない為、ジャックは店を後にする。
23日、クワーティはラッキーの散歩中にルディの捜索チラシを見つけ、ラッキーがそれだと気付いて連れ帰る。ジャックはローズを尾行し、玩具屋でローズが万引きするのを目の当たりにする。ローズが店員に呼び止められると、ジャックはその場を取り成し、代わりに玩具を購入する。ジャックは訝るローズを食事に誘う。ローズは成功を夢見てロサンゼルスに来たものの挫折した事、母が最近死に、父は生まれる前に船の事故で死んだと聞いている事を明かすと、夢に見る父に対する好印象を語る。ローズはジャックを信用し、再会を約束する。夜、クワーティは出会い系パーティに恋人探しに出かけるが、発作を起こして倒れる。チャーリーは再びダイナーを訪ねる。サリーはキスの件を詫びる。チャーリーは家まで送ると申し出るが、サリーは元夫に話があると呼ばれて店を後にする。その後、チャーリーは洗車場で一時目を離した間に、5万ドル入りのバッグを置いていた車が盗まれ、当惑する。チャーリーは傍に落ちていた装飾品から盗んだのが街娼だと悟ると、近隣を尋ね回る。街娼にクスリを処方しているという男は、街娼が芸者ダンジョンと称する場所にいる可能性を説く。ジャックは再びワイルド・ベルベットを訪ね、ローズと会うと、プレゼントと称してどこにでも行ける二枚の航空券を提示するが、ローズは困惑する。ジャックはじきに街を出なければならない事を明かすと、25年間の服役中に面会に来るのを待っていた最愛の女が、謝る機会も与えられぬまま亡くなった事と共に馴れ初めを述懐する。ローズはジャックが実の父親だと悟ると、今更会いに来た事に憤慨して追い返す。その後、ローズは不安定な精神状態で病院へビリーに会いに行き、覚醒を諦めないと約束する。その時、ローズはビリーが瞬きした事に気付き、医者にそれを報せるが、医者はそれが反射運動だと説き、手助けできる事は無いと諭す。ローズは医者を詰って病院を飛び出す。ジャックは取り乱した様子で病院を出るローズを見ると、初めてビリーの病室を訪ね、落涙する。一方、クワーティは悩んだ末に犬を返す事を決意し、ローズに連絡する。間もなくルディを迎えに来たローズは甚く感謝する。クワーティはローズを部屋に招き入れると、報酬を断る。ローズはクワーティの手を握り、ハグさせて欲しいと請う。クワーティはそれに応じ、ローズと抱き締め合うと、泊まっていくよう促す。
24日、クワーティは花束を買って帰宅すると、ローズがルディを連れて出ていった事を知り、その夜、ワイルド・ベルベットを訪ねる。クワーティはローズの官能的なストリップダンスを目の当たりにする。ローズはクワーティに気付くや、それ以上踊れなくなり、楽屋へ戻る。クワーティは楽屋に押し入ろうとするが、用心棒に追い出され、ローズのモーテルで帰りを待つ。クワーティは書き置きを残さずに消えた理由を尋ねる。ローズはクワーティも自分の前からいなくなると答えると、自らが子持ちのシングルマザーであり、ストリッパーだと卑下する。クワーティは趣味がパペットで女と付き合った経験が無い事を明かす。ローズは明日になっても何も心配しないで良いと約束して欲しいと請い、クワーティはそれに応じる。チャーリーは芸者ダンジョンを訪ね、街娼を見つけると、拳銃を突き付け、街娼の部屋に連れて行かせる。街娼はチャーリーの命令に従い、金を収めたバッグを返却するが、チャーリーは街娼を憐れみ、金を譲る意向を示す。それを受け、街娼は自殺への協力に応じる意向を示し、チャーリーから銃を受け取る。街娼は車内にあった、チャーリーが妻と撮った幸せそうな写真を見て、愛を失ってどれほど孤独だったかを察し、自殺を企てる理由を理解したのだと説く。街娼はチャーリーに愛が欲しいかと尋ね、心を開くよう促すと、抱きしめてキスをする。チャーリーは思わず仰け反る。街娼はかつてある男を愛し、全てを捧げたのに、その男は満足せずに本物の女を選び、自分を捨てた事を明かすと、望むものを与えられない自分を愛してくれる人はいないと悲嘆し、拳銃自殺する。一方、クワーティとローズは街に繰り出して楽しんだ後、部屋に戻ってセックスする。その頃、ビリーが危篤に陥る。ジャックは病院がローズと連絡が取れない事を知って探しに出かけ、営業を終えたワイルド・ベルベットの前でローズに呼びかける。程なく、ビリーは医師の救命措置の甲斐虚しく、息を引き取る。ジャックは発作を起こして店の前で崩れ落ちる。チャーリーは教会で神になぜ自分をこんな目に遭わせるのか、愛する事は罪なのかと問いかける。チャーリーは夢の中に現れたダイアナに、まだその時では無いと諭される。チャーリーはシスターの声で目を覚ますと、外に出て、夜明けの空から青い粉雪が舞うのを目の当たりにする。ジャックは店の前で雪に埋もれたまま事切れると、ビリーと浜辺で対面し、赤いカイトを飛ばす。ローズは病院からの報せを受けてビリーの亡骸と対面し、号泣する。ローズは看護師から、匿名の男が医療費の支払いを全て済ませた事を聞き、封筒に収められた二枚の航空券を受け取る。チャーリーはダイナーを訪ねると、サリーの誘いに応じる。クワーティはモーテルに連絡し、ローズが去った事を知る。その後、クワーティはクリスマスの集会で子供達に人形劇を披露して楽しませる。ローズはその様子を舞台袖から見守る。集会の後、クワーティは近くのバス停でローズと出会う。ローズはパリ行きの航空券が二枚ある事を伝える。二人はキスをする。
