チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

愛しすぎた男 37年の疑惑

アンドレ・テシネ監督作「愛しすぎた男 37年の疑惑」("L'Homme qu'on aimait trop" : 2014)[DVD]

ニースの資産家令嬢が交際中の男との不和の後、突如失踪するまでの過程と、その後の顛末を描くドラマ作品。

 

1976年、ルルー家の令嬢アニエスは離婚を機に再起を図るべく故郷のニースに帰還する。ニースでカジノ「パレ」の筆頭株主としてその運営に関与する母親ルネは、アニエスとの久方ぶりの再会を歓ぶ。アニエスは亡き父から相続した株を売ってニースで店を開く意向を示す。ルネはカジノの経営状態が芳しくない為に、すぐには株を買い取れない事への理解を求め、自らが資金を提供する意向を示す。間もなく、カジノで不正が行われて大赤字が出ると同時に、敵対陣営を率いるフラトニがパレを買収するとの観測が浮上する。ルネの顧問弁護士モーリスは、社長ゲランの責任を厳しく問う。ゲランは辞意を示すが、ルネはそれを拒否する。モーリスは警察署長を通じて入手した、不正に関与した四人の男の情報をルネに提供する。

その後、アニエスは街中のテナントを改修して雑貨屋を開業する。アニエスは開店祝いにやってきたモーリスに、子供向けの本を贈る。モーリスは妻子持ちで更に愛人もいながら、アニエスを食事に誘う。その頃、パレの客足は伸び悩む一方で、フラトニのカジノは市とマフィアを味方に付けて繁盛する。ルネは対策を打つ必要に迫られる。モーリスはルネにゲランを解雇して自ら運営に乗り出すよう促す。ルネはモーリスに唆され、株主総会でゲランを辞任に導き、その後任に立候補する。ルネ、アニエスを含む株主八名による採決の結果、賛否同数で拮抗するが、決裁権を持つルネの意向が優先され、ルネは社長に選任される。ルネは右腕になるマネージャーを求める。モーリスは弁護士を休業してパレに専念する意向を示し、マネージャーに自分を推すが、ルネはプロが必要だと難色を示す。モーリスはフラトニがマフィアの資金洗浄を行っており、その金で早晩パレを含む沿岸のカジノを乗っ取るつもりだと説くと、ルネには戦う仲間が必要だと訴える。

アニエスとモーリスは余暇を共に過ごすなどして親交を深める。ある日、アニエスの店にモーリスの恋人で派手な姿の女ズーヌが冷やかしにやってくる。ズーヌはモーリスが恋多き男で、誰よりも自由を愛している事への理解を示すと、モーリスの新しい恋人がどんな女なのかを知りに来たのだと説く。アニエスは恋人を否定する。その後、アニエスはモーリスのツテで見つけた家を借り、一人暮らしを始める。一方、ルネはオフィスの机に置かれた銃弾を見つけると、何者かが侵入して脅しをかけているのだと悟り、モーリスに報せる。モーリスはそれがフラトニの仕業だと疑い、早急に自分を雇うべきだと主張するが、ルネはモーリスの強引な進め方に抵抗感を示す。

一ヶ月後、自宅で妻子と過ごしていたモーリスは、ルネが暴漢に殴られたとの報せを受け、パレに駆け付ける。大事を免れたルネは即座に記者会見を開き、フラトニが隠然と行うマネロンの手口を発表する事で報復に打って出る。アニエスは久しぶりにパレを訪ね、ルネと再会する。アニエスは改めて遺産受け取りの権利を主張すると、株の買い取りを求める。ルネはパレの再建に二年はかかるとの見通しを示し、それどころでは無いのだと説く。アニエスは憤慨してその場を後にする。モーリスはアニエスの家を訪ね、一冊のノートをプレゼントし、好きな事を書くよう促す。

ルネが誕生日を迎えると、モーリスはサプライズパーティを企図し、その際にルネをアニエスに引き合わせる。アニエスはモーリスをマネージャーとして雇うよう強く推すが、ルネはモーリスが身の程知らずの野心家だとこき下ろす。程なく、ルネは経験豊富な男をマネージャーに雇い、モーリスに紹介する。モーリスはこれまで仕事を犠牲にしてまで支えてきた手前、激しく反発し、ルネを傲慢だと詰って決別する。アニエスはモーリスと連絡が取れない為に事務所に押しかける。モーリスはルネと決別した事を明かすと、ルル一家との関わりを拒む。アニエスはモーリスへの好意を露わにし、他に恋人がいても構わない説き、交際を希望する。その日、モーリスはズーヌと過ごした後、アニエスの家を訪ねる。アニエスは裸でモーリスを招き入れ、セックスする。

モーリスはルネの運営では早晩パレの株価が下落する見込みを示すと、相続を急ぐようアニエスに促す。アニエスはモーリスに相続への助言を請う。モーリスは自分を雇う事を求め、フラトニを巻き込む事を提案する。程なく、モーリスはフラトニの屋敷を訪ね、面会の機会を得る。フラトニはアニエスへの資金提供と引き換えに、株主総会でルネに反対票を投じるという条件を課す。モーリスはアニエス法定相続分300万スイスフランを提案する。フラトニは直ちに送金する意向を示す。後日、モーリスはアニエスを連れてフラトニの食事会に出席する。アニエスはモーリスへの愛に溺れていく。

ルネはアニエスの店を訪ねると、アニエスがモーリスと懇ろになり、フラトニの家にまで行った事を窘める。アニエスは自分の勝手だと反発する。ルネはモーリスが妻子を持ち、金目当ての欲深い男だと諭す。程なく、モーリスが主導して急遽株主総会を開催する。ルネは経営方針を維持する必要性を説き、自らの再任を願い出る。ゲランは楽観的過ぎると反発し、体制の一新を希望する。採決でアニエスが反対に回った事で、ルネの再任は否決される。アニエスは新聞で母への裏切りだと指弾され、苦悩を深める。その後、モーリスはアニエスを連れてバイクで山を超え、スイスの銀行へと赴く。二人はフラトニから送金され、それぞれの口座に分配された300万スイスフランを、互いに引き出せるよう手続きを行って帰路に就く。

ルネがパレを去ると、フラトニは直ちに商事裁判所へパレの破産申請を行う。フラトニは従業員を集めると、破産を一方的に報せ、ルネの運営で悪化した為だと説く。従業員は一斉にブーイングを浴びせる。一方、モーリスは露骨にアニエスに冷たい態度を取る様になる。フラトニはそれを知ってモーリスを窘めるが、モーリスはアニエスが常に自分と一緒にいたがる為に苦慮している事を明かす。ある時、アニエスは今の関係では満足できないとモーリスに訴える。モーリスは束縛される事を嫌い、アニエス程には愛していない事を明言すると、愛し過ぎぬよう諭す。

モーリスと会えない寂しさに耐えかねたアニエスは、モーリスの息子が通う幼稚園の前に押しかけ、息子を迎えに来たモーリスに見つかる。モーリスは度が過ぎるアニエスの行動に憤慨し、謝罪を強要する。アニエスは落涙しながらそれに応じる。程なく、アニエスはかつてモーリスから貰ったノートに「近づきないよう我慢する、自由に生きて欲しい、何も求めない」というモーリスへの思いの丈と共に、「自分の道はここで終わり、あとはモーリスに任せる」と綴り、モーリスに電話で死を仄めかした後、睡眠薬で自殺を図る。心配したモーリスの通報によってアニエスは発見され、一命を取り留める。アニエスは病院に面会に来たルネを拒絶する。程なく、退院したアニエスはモーリスを家に招くと、激しく体を求めるが、モーリスはそれを拒み、静養するよう諭す。アニエスは週末の旅行を提案し、もう馬鹿な事はしないと約束する。

その直後、アニエスは失踪する。モーリスはスイスの銀行に赴き。アニエスの口座の金を全額自分の口座に移す。資産家令嬢アニエスの失踪は巷で大きな話題となる。やがてフラトニによる議決権の買収に絡み、モーリスに投票操作と職権乱用で執行猶予付きの有罪判決が下る。

アニエスの失踪からおよそ20年後、モーリスによるアニエス殺害を確信するルネは、警察の怠慢によって事件の解明が成されず、モーリスのパナマへの逃亡を許したのだと考え、警察を告訴する。警察はルネを呼び出すと、事件の担当者が定年退職しており、無駄になるとの見通しを説く。ルネは遺体が見つかっていない事から時効にはならないはずだと説き、再審請求を切望する。それから更に10年後、ルネの再審請求が認められ、モーリスは裁判に出廷する為にパナマから帰国するが、マスコミに対して自らの事件への関与を否定する。

間もなく裁判が始まる。提出された証拠に鑑み、アニエスを殺して300万スイスフランを横領した計画的殺人の疑いが陪審にかけられる。証人として出廷したズーヌは、アニエス失踪直後のアリバイ工作の偽証をモーリスに頼まれた件について、愛するモーリスを喜ばせたくて応じたのだと証言する。しかし、モーリスはそれを否定する。ルネは原告として、30年来の悲願だった再審を実現する為に全てを捨てた事を明かすと、モーリスこそが犯人だと主張する。モーリスは口座の金を移した件について問われ、アニエスから贈与された金をルネの横領から守る為だったと答えると、アニエスが死んだ証拠も自分が殺した証拠も無いと主張する。陪審員推定無罪の原則に拠り、モーリスに無罪判決を下す。ルネは失意して退廷する。

その一年後、ブーシュ=デュ=ローヌ県の重罪院がモーリスを召喚し、殺人罪で懲役20年の有罪判決を下す。2013年、欧州人権裁判所自由権侵害でフランス裁判所を非難する。モーリスは有罪判決の理由に納得しなかったが、2014年の三回目の裁判で息子がモーリスを告訴し、再び懲役20年の有罪判決が下される。

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