アンナ・ボーデン，ライアン・フレック監督作「ワイルド・ギャンブル」（"Mississippi Grind" : 2015）[DVD]
多額の借金を抱え、妻にも捨てられたギャンブル狂の男が、カジノで出会った男と意気投合し、人生を賭けたギャンブルの旅に出かける様を描くドラマ作品。
アイオワ州ダビューク。ギャンブル狂の不動産屋ジェリーは、妻に捨てられ、多額の借金を抱えながらも、ギャンブル漬けの日々を送っていた。ある晩、ジェリーは行きつけのカジノでポーカーに興じる。そこへ陽気で多弁な男カーティスが現れ、ゲームに加わると、気前良くジェリーに酒を奢る。カーティスは旅の途中のデトロイトで会った、ニューオーリンズで胴元をやっているギャンブル依存症のトニーという男について饒舌に話し始める。その後、ダーツバーに移ったジェリーは、偶然にもカーティスと再会する。二人は酒を飲み交わし意気投合する。カーティスはニューオーリンズへトムに会いに行く意向を示す。
酔いつぶれたジェリーは、翌朝、カーティスの女友達の家で目を覚ます。カーティスはジェリーをドッグレースに誘う。カーティスはそれを断って一旦は仕事へ向かうが、カーティスからメールで再度の誘いを受け、レース会場へ向かう。ジェリーは最初のレースこそものにするが、カーティスの助言を聞かずに引き際を誤り、有り金を全て磨ってしまう。夜、二人はプールバーで酒を飲む。カーティスは明日旅に戻る意向を示してジェリーと別れる。その直後、ジェリーは駐車場で暴漢の恐喝に遭う。ジェリーが金を磨ったと訴えると、暴漢はジェリーの腹をナイフで刺して逃走する。
翌日、ジェリーは金貸しのサムに会い、返済を催促される。ジェリーは腹の傷を見せ、強盗に襲われて金を盗られたと欺くと、二週間の猶予を求める。サムはそれを認めず、明日までの返済を要求する。その夜、ジェリーはバーを訪ねると、カーティスに電話をかける。そこへ偶然にもカーティスがやってくる。ジェリーはそれが天啓だと説くと、トニーのゲームへの参加を希望する。カーティスは参加には25000ドルが必要だと伝える。ジェリーは自分の車に乗って二人で金を稼げる場所に立ち寄りながら、ミシシッピを目指す計画を提案すると、カーティスが幸運の鍵だと説き、儲けを折半にする条件で元手となる500ドルを貸して欲しいと請う。カーティスはそれを承諾し、2000ドルを用意する意向を示す。
翌日、ジェリーは愛猫を自宅に残し、会社からくすねた金を携え、カーティスと共にダビュークを出発する。セントルイスに着くと、カーティスはコンパニオン業を営む恋人のシモーネの元へジェリーを招く。二人はそこで服を借りると、船上カジノを訪ねる。シモーネはカーティスが七ヶ月も疎遠にしていた事を責める。ジェリーはポーカーで大勝すると、上機嫌でカーティス、シモーネ、シモーネの元で働くバネッサとバーで酒を飲んだ後、ホテルに行く。カーティスはシモーネに一緒に旅に出かける事を提案するが、シモーネはそれを拒む。ジェリーはバネッサと同じ部屋で泊まる。バネッサは手品を披露すると、ジェリーにも特技を見せるよう請う。ジェリーはそれに応じてピアノを弾く。ジェリはバネッサの寄せる好意に気付くと、リトルロックに元妻と娘がいる事と借金を抱えている事を明かす。バネッサは何かを成し遂げたいと考えている事を明かす。
翌日、ジェリーとカーティスは旅を再開する。ジェリーはカーティスにバネッサと寝たか問われ、そんな気分になれなかったと答える。カーティスは元妻に戻ってきて欲しいと考えているのだろうと指摘するが、ジェリーはそれを否定する。その夜、二人はメンフィスに着くと、カーティスはバーを訪ね、ジェリーはカジノでポーカーに挑む。ジェリーは道中で知人に頼んでおいた、大学バスケの賭けに負けた事を知り、更にポーカーで大敗する。その矢先にサムの部下ティムから愛猫を人質に取ったとの脅迫メールが届く。ジェリーはポーカーで大勝したとカーティスに偽ると、元妻ドロシーに会って話をする為にリトルロックに寄る事を提案する。カーティスはそれを快諾する。
翌日、ジェリーはドロシーの元を訪ね、偶々近くに寄ったのだと偽る。ドロシーは再婚した事を明かすと、ジェリーが娘に会いに来るどころか電話すらかけてこない事を責める。ジェリーはトイレを借りると嘘をつき、ドロシーの寝室のタンスからへそくりをくすねようとする。ドロシーはそれに気付くと、ジェリーを追い出す。その際、ジェリーは六歳の娘ウェンディの写真を持ち出す。その夜、ジェリーは金を全て磨った事をカーティスに打ち明けると、必ず取り戻すと息巻く。カーティスは潮時だと説き、アイオワに戻るよう促すが、ジェリーは手ぶらでは帰る事を拒む。二人はモーテルに泊まる。ジェリーはカーティスに足の小指が無い理由を尋ねる。カーティスは八歳の時に妹と祖父母の家に預けられた際に、芝刈りを任され、周囲をうろついていた妹の足を轢いて指を三本失わせてしまい、祖父から制裁を下された事を明かす。それに応じて、ジェリーはドロシーから金を盗もうとして見つかった事を明かすと、自分がカーティスとは違ってダメな人間で、カーティスは幸運を導く妖精であり、自分とは運命共同体だと説く。
翌日、ニューオーリンズに到着すると、ジェリーは車を売って資金に変え、カーティスと競馬場を訪ねる。カーティスはミシシッピ・グラインドを推すが、ジェリー穴馬のトドス・リベンジを譲らずに押し通す。結局、ミシシッピ・グラインドが勝利し、ジェリーは全額を失う。カーティスは終わりにすべきだと諭すと、バス代100ドルを与え、アイオワに帰るよう促す。ジェリーは再度穴馬に賭けて金を取り戻し、トニーに会いに行く事を望むが、カーティスはそれを断る。ジェリーは一人で競馬場を後にする。カーティスはジェリーに内緒でミシシッピ・グラインドに賭けた払い戻し5000ドルを受け取る。
夜、カーティスはバーに向かう途中で、バスケに興じるグループに絡んで、殴り飛ばされる。ジェリーはトニーの住所を調べ、カーティスの友人と称して訪ねると、ゲームへの参加を希望するが、トニーに殴られて門前払いされる。 カーティスはミュージシャンの母が演奏するバーを訪ねると、数日前に過ぎた母の誕生日を祝う。母は独り身でフラフラしているカーティスに説教すると、演奏を聴いていくよう促す。カーティスは曲の途中で、競馬で得た金を全て母に残して店を出る。一方、ジェリーはカジノを訪ね、ルーレットで金を増やし、ポーカーに挑む。そこへカーティスがやってくる。ジェリーはカーティスに金を奢り、二人で順調に勝ちを重ねていく。調子を取り戻したジェリーはダイスゲームで金を増やし、最後に一か八かの勝負に挑んで50万ドル余りを獲得する。カーティスはジェリーにダメ人間だと思ったが、ヒーローだったと労うと、借金を返したらどうするつもりか尋ねる。ジェリーはウェンディに何かしてやりたいと答える。
翌朝、ホテルで目を覚ましたカーティスは、ジェリーが金庫に入れた金の半分を引き出し、かつてカーティスが話した気合を入れる時の掛け声に因んで「マチュピチュタイムだ、ぶちかまそうぜ」と書き置きをして、先に出ていった事に気付く。カーティスはチェックアウト時にフロントで行き先を問われ、自宅に戻らずにペルーへ旅立つ意向を示す。その言動からシモーネとの決別が示唆される。ジェリーは車を買い戻し、娘の写真をサンバイザーに挟むと、CDプレーヤーを再生し、日頃から愛聴するCD「ポーカーの法則」が入っている事を確認する。
