チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

フィッシュマンの涙

クォン・オグァン監督作「フィッシュマンの涙」("돌연변이" : 2015)[DVD]

記者志望の男が臨時採用されたテレビ局で、製薬会社の臨床試験中の事故によって魚人間に突然変異した青年の密着取材を命じられ、韓国社会を揺るがす騒動に巻き込まれていく様を描くSFブラック・コメディ作品。

 

2009年の冬。記者を志望するサンウォンは、地方大卒でコネも無い為に働き口を見つけられずに燻っていた。ある時、サンウォンはダメ元で大手テレビ局ABSの面接に挑む。応対したドンシクは、社員がストを行っていて人手が足りない事を明かし、サンウォンに魚人間事件に関する取材を局名を伏せて行うよう命じ、その仕事ぶりを見て採用を検討する意向を示す。なんでも、恋人が臨床試験に参加して魚人間にされたとネットで主張する女がおり、轟々の非難を浴びてもその女は引き下がらないのだという。

サンウォンは早速その女ジンが住むアパートを訪ね、取材を申し入れる。気の強いジンは、魚人間パク・グとの出会いから語り始める。ジンはエキストラのバイトでグと知り合い、酔った勢いでセックスした。程なく、雨の夜にグが魚人間と化して訪ねてきた。グは薬を飲むだけで30万ウォンが貰える、カンミ製薬の臨床試験に応じて間もなく、体に異変が生じ、実験台にされるのを恐れて逃げてきたが、行く宛が無くてジンの家に身を寄せたのだった。しかし、ジンはカンミ製薬に連絡し、報酬と引き換えにグを引き渡したのだという。サンウォンはジンの話を俄に信じられず困惑する。ジンは証明する意向を示し、サンウォンにカンミ製薬への同行を求める。二人は出前を装ってカンミ製薬への侵入を図り、サンウォンはおかもちにカメラを忍ばせて盗撮を決行する。二人は研究開発部の前でスプリンクラーを作動させると、職員がパニックに陥って飛び出した隙に乗じて室内に押し入る。二人はそこで実験台にされていたグを見つける。サンウォンはグを自宅に居候させる。

間もなく、サンウォンが撮影した素材を元に、ABSは独占取材として魚人間について大々的に報じ、カンミ製薬の臨床試験に参加した若者が魚人間に突然変異し、監禁されて非道な実験が行われていた事が世に知れ渡る。ドンシクはサンウォンの働きを高く評価し、臨時採用に応じると、来年には正社員にすると約束し、更に取材に奮起するよう激励する。それを受け、サンウォンは取材活動に精を出し、グが元来ごく平凡な青年であり、卒業後も平凡過ぎて就職できず、失敗し続けた結果、公務員試験を目指していた事を知る。サンウォンはジンを同席させ、自宅でグにインタビューを行う。その最中に、グの父親が押しかけ、グを殴り倒す。グの父親はサンウォンのドキュメンタリー取材に不快感を示し、更に大学を中退したジンの生意気な態度に憤慨し、勉強して公務員を目指すよう説教する。

一方、臨床試験の責任者ピョン博士は、研究開発部を代表して謝罪会見を行う。ピョンの研究は、体内で無限に増殖するタンパク質を作成する事で、食糧難の解決やがん細胞の抑制などを目指すものであり、ピョンは国内屈指のカンミ製薬と提携する事で、製品化に向けて臨床試験を行っていたのだった。ところがその会見により、ピョンがノーベル賞クラスの研究者だと逆にその名が知れ渡る事になる。サンウォンはピョンに何度も取材を申し入れるも断られ、ジンの協力を得て、会社の駐車場でピョンに直撃取材を決行するが逃げられる。

時が経つに連れ、世間のグへの関心が高まる一方、カンミ製薬は批判に晒される。グは困窮し危機に陥った若者の象徴として一躍人気者になり、社会現象を巻き起こし、巷では社会の病弊を巡る議論が勃発する。そんな折、人権派弁護士として活躍するキムが、グのカンミ製薬に対する裁判を無償で引き受ける運びとなり、ピョンに懲役四年、カンミ製薬に営業停止九ヶ月の判決を勝ち取る。キム達は控訴に備えて事務所で協議する。グの父親は高額の賠償金を要求する意向を示す。ジンはグの父親が儲けたいだけだと非難する。二人は激しく口論する。

グは精密検査に臨み、魚化が進行している事が判明するが、医学界はグの治療に匙を投げる。グは落胆を深める。サンウォンらは藁にもすがる思いでグをいかがわしい宗教施設へ連れて行くが、何一つ成果を得られず、帰路に着く。道中、グの父親はジンを責め立て、ジンがそれに反発した事から二人は再び口論する。激昂したグの父親は車を強引に止めると、ジンを車外へ引きずり出し、愛しているなら魚人間のグと結婚できるのかと問い質す。ジンはグに降りて一緒に来るよう促す。グの父親は降りたら絶縁すると言い放つ。グは黙したまま車内に留まる。グの父親はサンウォンにジンを置き去りにするよう命じる。

程なく、新聞がピョンを擁護する記事を掲載し、逆にグ側に根拠のない非難を浴びせ始める。ピョンはABSの番組にて、臨床試験に応じた1000人の中で突然変異はグだけであり、本件を早急に解決しなければ、競合する他国に追い越され、エネルギー産業の主導国になる好機を逃してしまうと訴える。ドンシクはサンウォンに取材を中止し、資料と映像を全て持ってくるよう命じる。更にその後、グの臨床試験中の看護師へのセクハラがでっち上げられる。時を同じくして、大企業オグァンがカンミ製薬を買収し、ピョンに大金を投資する意向を示し、政府もカンミ製薬への支援を表明する。グはセクハラを否定するが、裁判で敗訴する。

グの支持者はロウソク集会を開いて糾合する一方、反対する勢力も勢いを増す。両者のデモは過激化し、グを巡る分断と対立が深まっていく。その最中、グは「自分がいなくなればいい」と父にメモを残して失踪する。サンウォンはグを心配し、グの父親と捜索を行うが、ドンシクからは正社員登用と引き換えに再三取材を中止するよう命じられる。グは思案の末に素材を局に持ち込もうとするが、局の前で正社員に覆面記者だと気付かれ、差別的な扱いを受けた末に素材を全て没収される。帰宅したサンウォンは、忍び込んで風呂に浸かっている傷だらけのグを見つける。グは行く宛がなく彷徨っている内に、中学生に気持ち悪いと詰られ、殴られた事を明かす。グは高校の修学旅行で生まれて初めて海を見た事を明かすと、それ以降一度も見ていない海を見に行く事を希望する。またグは、普通に就職し、結婚して子供を儲ける、そんな平凡な人間になるのが願いだと明かす。サンウォンは国民に真実を知らせ、社会の不条理を正し、弱者を守る、そんな正義の存在たる記者になりたかった事を明かす。

翌日、サンウォンはキムに会いに行った際に、キムがカフェでピョンと密会している現場を目の当たりにする。帰宅したサンウォンは、首吊り自殺を図ったグを見つけ、救急搬送する。グはロープがエラにかかっただけで大事に至らずに済む。キムは病院に押しかけると、サンウォンが実は記者だとネットで噂になっている事を明かし、サンウォンが局に密かに情報を流していたのだと責め立てる。サンウォンは逆に、キムがピョンと密会し、取引していた事について問い質す。キムはそれを認めると、グの父に裁判には勝ち目がないと説く。グの父は、グが人間らしく暮らせるだけの和解金が手に入ればそれで手打ちにする意向を示す。サンウォンはそれに反発する。

退院したグは、ジンの元を訪ねる。公務員試験の勉強に着手していたジンは、グに訪ねてきた理由を尋ねる。グは謝りたかったのだと答える。ジンは自らがグを売り渡し、利用する最低な女だと卑下する。グはジンに金を手渡すと、何かをしてあげたいが思いつかないと説く。ジンは涙ながらにグを好きではないと告げる。グは知っていると答え、立ち去る。

その後、グは自らカンミ製薬に身柄を委ねる。グは研究開発部で、研究員らに苦痛を伴う人体実験を強いられる。その結果、新薬が完成するが、ピョンはそれが自らの希望に沿う物では無いと知ると、会長に直談判し、新薬の目的が飢餓を克服する事であり、高額では富裕層しか買えないと訴える。会長はそれを歯牙にもかけず、欲望こそが価格を決めるのだと言い放つ。その後、ピョンはグに謝罪する。間もなく、グは死去し、葬儀がしめやかに行われる。サンウォンは参列後に、正社員にレコーダーの提供を要求されるが、憤激してその場でレコーダーを叩き壊す。

グの父はグが望んだ通り、海に遺骨を撒く。サンウォンとジンはそれを浜辺で見守る。程なく、キムはピョンがグを人間に戻す技術を隠匿していた事実を発表する。それを受け、ピョンには裁判の末に殺人幇助罪で七年の実刑判決が下される。一方、議員となったキムはオグァンから賄賂を受け取っていた事が判明する。グの父は人が変わったように奉仕活動に精励し、またジンは試験に合格して公務員となる。サンウォンは正社員に登用されるが、記者ではなく文化部に配属され、不本意な仕事に従事し、また同僚からは差別的な扱いを受ける。

グの死去から五年後。サンウォンはグのドキュメンタリーを諦めきれぬまま、不本意な仕事を続けていた。ドンシクは今や誰も興味を持たない魚人間に執着せぬようサンウォンに諭す。そんな折、ジンが局にサンウォンを訪ねてくる。ジンはサンウォンにドキュメンタリーを諦めないよう励ますと、一枚の写真を託して立ち去る。その写真は、グの父親が遺骨を撒く様子を、離れた場所で見届けるグの後ろ姿の一部を偶然収めたものであり、サンウォンは直ちに服役中のピョンに面会し、写真について問い質す。ピョンは、グに謝罪した際に人間に戻せる技術がある事を伝えたが、グが魚人間として生きていく事を希望した為に、贖罪意識からグを海岸へ連れ出し、グが海原へ旅立つのを見届けた事を明かす。ピョンはグが別れ際に最後の頼み事と称し、サンウォンが訪ねてきたら真相を話すよう望み、その理由を尋ねたところ、真相を知りたがるのは真の記者の証だと答えた事を明かす。サンウォンは感極まり、涙しながら局に戻る。サンウォンの帰りを待っていたジンは、サンウォンに一本のビデオテープを手渡すと、サンウォンなら自分とは違う何かができる様な気がすると説き、立ち去る。サンウォンは編集室でテープを再生する。それは南国の海でダイビングを楽しむカップルのプライベートビデオで、サンウォンはカップルの後方に悠然と泳ぐグの姿が写り込んでいるのを確認する。サンウォンはクビを覚悟の上でカメラを持ち出し、意気揚々とドキュメンタリーの取材に出かける。

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