ベニー・サフディ，ジョシュア・サフディ監督作「グッド・タイム」（"Good Time" : 2017）[DVD]
文無しの男が自らの不手際で逮捕された、知的障害を抱える弟を保釈させる為のカネを用意すべく、犯罪を重ねていく様を描くクライム作品。
2016年3月、ニューヨーク。知的障害を抱えるニックは、祖母から精神科病院の医師ピーターに預けられる。ピーターはオフィスでニックに簡単な検査を始める。ニックはその途中で混乱を来し、祖母に虐げられている事などを訴えて涙する。そこへ病院への収容に反対する兄コニーが押しかけ、ニックを強引に連れ出す。コニーは仲間は自分だけだとニックに諭す。間もなく、コニーは現金強盗を企図し、ニック共々変装を施して銀行を訪ねると、受付で武装していると脅して65000ドルを要求する。コニー達は現金を詰めたバッグを持って銀行を出ると、予め手配しておいたドライバーと合流し、逃走を図る。その矢先に、現金から強盗対策の染料が吹き出す。染料まみれになったコニーとニックは車を捨て、近所のファストフード店のトイレに駆け込むと、上着を脱いで体の染料を洗い流す。コニーは天井裏に現金を詰めたバッグを隠す。二人は店を出て間もなく、パトカーに乗った警官に呼び止められる。ニックはパニックを起して走り出し、コニーは慌ててその後を追う。ニックは追ってくる警官から逃れる内にコニーと逸れ、ガラス戸に突っ込んだ末に逮捕される。
ピーターは弁護士を同伴してニックと面会すると、責任が無い事を証明する為にコニーについて話すよう促すが、ニックは口を噤む。逃げ果せたコニーは改めてファストフード店のトイレに出向き、バッグを回収する。コニーは保釈保証人の元にカネを持ち込み、ニックの保釈申請を依頼するが、大半の札が染料で汚れていて使い物にならず、一万ドルを要求される。一方、ニックは収監された刑務所内で他の囚人らと揉め事を起こし、袋叩きにされて顔に重傷を負う。
夜、コニーは恋仲のコリーの元を訪ねる。母親ローレンのアパートに居候するコリーは、ローレンからコニーとの交際について詰られ、口論して出かける。コニーはニックが虐待してきた療法士を傷つけて逮捕されたと偽り、金欠の為に保釈金をローレンのカードで建て替えて欲しいと懇願し、保釈保証人の元に連れて行く。コリーは一万ドルという額に躊躇うが、コニーは訴えが取り下げられ次第戻ってくると誑かして、支払いを強いる。保釈保証人の問い合わせにより、ニックは刑務所では無く、病院に入院しており、回復するまで裁判所に召喚されない事が判明する。一方、コリーが提示したカードはローレンによって無効にさせられた事が判明する。コニーはコリーと別れ、病院に向かう。
コニーは囚人が入院する病院の六階に忍び込むと、病室の前で見張りを担う警官が離席した隙に乗じて、顔面を包帯で覆った昏睡状態のニックを、車椅子に乗せて連れ出す。コニーはニックを障害者専用の送迎バスに乗せて病院を離れると、同じバスに乗り合わせた老婦人アニーの後を追って、その家を訪ねる。コニーは家の鍵が見つからない為に電話を貸して欲しいと請う。アニーは快諾し、コニーとニックを招き入れる。コニーは夜勤で働く母に連絡する様に見せかけ、母が朝まで帰ってこないと嘘をつく。見かねたアニーは空いている部屋を二人に貸すと、孫のクリスタルに二人を任せて先に休む。コニーは洗面所で染毛剤を見つけ、それを無断で使用した後、コリーに連絡してタクシーで迎えに来るよう命じるが、コリーは朝５時までアパートから出られないと答える。
コニーはクリスタルとテレビを見て時間を潰す。その最中、コニーはニュースで自分の顔が報じられると、咄嗟にクリスタルにキスをして注意を逸らす。コニーはそのまま寝室にクリスタルを連れ込んでセックスしようとする。その矢先に元の部屋でニックが喚き始め、駆けつけたコニーは別人のレイを連れてきたのだと知る。コニーは、状況が分からずに動転して騒ぎ続けるレイを押さえつけ、経緯を伝えて鎮める。コニーはアニーが車を持っている事を知ると、クリスタルにキーを持ってこさせる。コニーはクリスタルと同乗を求めるレイを連れ、車で病院に向かう。
病院の前はパトカーだらけで近づけず、コニーは近くのファストフード店に停車すると、クリスタルを買い物に出す。レイは昨日、仮釈放で二年ぶりに出所したばかりの身であり、刑務所に戻される事への恐れを訴えると、病院に収容されるに至った経緯を語る。レイは出所した直後に親友カリーフに連絡し、酒とクスリでラリった状態でLSDの運び屋トレバーの家を訪ねた。その後、レイ達はゲームセンターを訪ね、客にクスリを売っていたところ、トレバーの友人が電気店に押し入って強奪してきた現金を持ってきた。間もなく、警察がやってきた為、レイ達は慌てて逃げ出し、遊園地に忍び込むと、園内に現金を隠したもののレイ以外は皆掴まった。レイは逃走中にタクシーを見つけて乗り込むも、持ち合わせがない為に家に着いたら払うと弁解した。運転手は憤慨し、警察に向かい始めた為、レイは走行中の車から飛び降りて顔面に重傷を負ったのだった。コニーはその遊園地がそこから目と鼻の先だと知ると、二人でカネを見つけて山分けにする事を提案する。そこへクリスタルが戻ってくると、コニーはレイを家まで送ると偽って遊園地の傍でレイを降ろす。コニーは更にトイレを借りてその後で病院に戻ると偽り、クリスタルを車に残して、レイと共にフェンスを超えて遊園地に忍び込む。
二人はゴーストハウスでカネを捜すが、暗くて難航する。その最中、レイはカネと一緒に隠したLSDの瓶を見つける。そこへ監視カメラで侵入を察知した警備員がやってくる。レイは警備員に見つかって事務所に連行され、拘束される。逃走を図ったコニーは追ってきた警備員を傷めつけ、レイを助け出すと、警備員をゴーストハウスの中に引きずり込んで、カネの捜索を再開する。間もなく、警備員の通報を受けた警察が駆け付ける。コニーは昏睡している警備員から制服を剥ぎ取り、レイは警備員にLSDを飲ませる。コニーは警備員を装って警察に対応し、昏睡した警備員を侵入者として報告する。警察はLSDで錯乱する警備員を連行する。コニーは警察の命令に従い、園内の全ての電気を入れる。それに気付いたクリスタルは車から降り、様子を見に行こうとするが、警察に侵入者の仲間と疑われて補導される。
警察が去ると、コニーは事務所から病院に連絡し、ニックについて問い合わせるが拒まれる。コニーは監視カメラのHDDを壊し、身を潜めていたレイと遊園地を後にする。二人は警備員の車を奪い、警備員のアパートへ向かう。二人は警備員の部屋に番犬しかいないと知って忍び込む。コニーはレイに病院から助け出した恩を着せ、LSDを換金する宛を問い質す。レイは渋々カリーフに連絡する。
やがて夜が明ける。二人は互いの境遇を巡って口論する。間もなくカリーフがやってくる。LSDの瓶を手にしたコニーは番犬を盾にし、カリーフに15000ドルを要求する。レイはイカれたコニーとそれ以上関わるのを忌避し、穏便に片を付けるようカリーフに促す。カリーフは銀行でカネを用意してくると答えると、レイに銃を手に入れて戻ってくる意向を示して出かける。その直後、コニーは取引を中止し、LSDを持って部屋を出る。レイはLSDを取り戻そうとするが、コニーに番犬をけしかけられ、部屋に退く。間もなく、警察が到着し、コニーはアパートの前で逮捕される。レイはその直前にコニーが投げ捨てたLSDの瓶を回収するようカリーフに伝えると、部屋までやってきた警察から逃れる為に、窓から壁を伝って移動を始めた矢先に転落死する。コニーはそれを見届けた後、パトカーで連行される。
ニックは祖母に付き添われ、再びピーターの元に預けられる。ピーターはニックを障害者クラスに登録し、ニックはクラスメイトらとレクリエーションに参加する。
