チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ファング一家の奇想天外な秘密

ジェイソン・ベイトマン監督作「ファング一家の奇想天外な秘密」("The Family Fang" : 2015)[DVD]

子供の頃から芸術家を自称する両親の即興劇に参加させられてきた姉弟が、久方ぶりの一家集結後に突如失踪した両親の捜索の過程で、秘められた真実を知っていく様を描くコメディ・ドラマ作品。

 

ニューヨーク州、スパーキル。芸術家を自称するファング夫妻、ケイレブとアニーは、1970年代から神出鬼没の即興劇を仕掛け、人々を驚かせる事で俄に注目を集める。夫妻は娘アニーを儲けると子供Aとして、息子バクスターを儲けると子供Bとして、即興劇に参加させ、一部始終をカメラで撮影し、作品として残していく。例えばBが銀行の受付で拳銃を見せてキャンディを要求する。そこへ父扮する警官が駆けつけると、Bは警官目掛けて発砲する。客を装った母はシロップでできた血糊を撒き散らして流れ弾が当たった様に振る舞い、母の娘役のAは悲鳴を上げるという具合である。ファング一家の意欲的で挑戦的な即興劇は、美術評論家の間では賛否両論に分かれる。

それから数十年を経て現在。ロサンゼルスで活動する落ち目の女優アニーは、キャリアの危機を打開する為に、監督の要求を飲んで初めてのヌードシーンを演じる。一方、ニューヨーク州で暮らす作家バクスターは、三作目「子供達の穴」の執筆が停滞していたところ、出版社から雑誌への寄稿を依頼され、農村にポテト大砲の取材に出かける。バクスターは三人組の男達が作ったポテト大砲で遊んでいる内に、左耳にポテトの直撃を受けて鼓膜を損傷し、入院を余儀なくされる。バクスターはナースが財布を調べて両親に連絡し、両親が迎えにやってくる事を知る。一方、アニーは衝動制御障害を患っている事から、両親に興味を持って取材に来たジャーナリストの男と一晩を共にする。翌朝、バクスターはアニーに両親が来る件について知らせ、助けを求める。アニーはマネジャーのサリーに、自らが紹介したジャーナリストと寝た事を咎められ、次の仕事が来るまで自分を見つめ直すよう促される。

アニーはニューヨーク州へと旅立ち、空港でバクスターと、迎えに来た両親と再会し、久方ぶりに実家に帰省する。ケイレブは待ち侘びていた一家の再集結を祝い、一家は昔の作品を鑑賞して楽しむ。翌日、姉弟は両親に誘われて新作の撮影の為に遊園地へ出かける。道中、ケイレブはチキンサンド無料券の偽物を配って、レジでそれがバレて怒った客を焚き付け、店員を襲わせるという計画を示し、姉弟に出演を促す。アニーとバクスターはそれを非難し、出演を拒む。ケイレブはしがない女優と作家が芸術家に戻るチャンスだと唆す。アニーは近年の両親の作品の酷評ぶりを伝えて反論する。気分を害したケイレブは姉弟の出演を拒み、撮影だけを依頼する。遊園地に着くと姉弟はサンドイッチ店からほど近い場所で待機する。そこへバクスターの高校の同級生スザンヌが現れ、予てから打診している執筆の講師について改めて要請する。バクスターは検討する意向を示す。間もなく、タダ券を貰った客達が店にやってくる。店員は疑いもせずにチキンサンドを提供していく。想定外の事態に、ケイレブは責任者を呼びつけると、券が偽物だと明かし、確認もせずに提供している事を詰る。店員は警察に通報すると応じる。憤慨したケイレブは即興劇を中止し、姉弟にも八つ当たりする。アニーはケイレブが正気を失っている事を慮り、手を貸すべきでは無いかとバクスターに問う。バクスターは何の解決にもならないと答える。両親は二人きりでマサチューセッツ州バークシャーへ数日旅行に出かける意向を示す。

アニーは実家に戻ると、自室のクローゼットに隠された、奇妙かつ繊細な絵の数々を見つけ、バクスターに知らせる。そこへ出発直前のカミーユがやってきて、それが自らが描いた絵であり、かつて画家志望だったがケイレブに出会って止めた事、今でも描いている事が知られれば裏切ったと思われる為に隠している事を明かすと、姉弟に数枚を渡し、自らがケイレブより先に死んだら捨てて欲しいと請う。両親は姉弟を残して車で出かけていく。

翌朝、アニーは自分達が自立している事を両親に気付かせ、普通の家族になる事をバクスターに望む。その直後、姉弟は保安官事務所に呼ばれ、両親の車がパーキングエリアに放置され、車内に争った痕跡と大量の血痕が残っていた事を伝えられる。保安官は、車が放置されていた道路沿いでこれまでに発生した誘拐事件の被害者が全員殺されており、類似点が多い事から、両親が犯罪に巻き込まれた可能性を懸念する。アニーはそれが両親の芝居であり、どこかに隠れているはずだと疑う。バクスターは両親の死亡説に傾倒する。

アニーは自分達が即興劇への参加を拒否した罰として、両親が殺人事件に乗じて失踪劇を計画したのだと主張すると、それがケイレブの独断であり、カミーユ不本意だった為に絵をわざと見つかる場所に隠したのだと推測し、死んだと考えるのはケイレブの思う壺だとバクスターを詰る。アニーはどこかで録画しているはずだと考え、カメラを躍起になって探すも見つからず、両親の捜索を決意する。アニーはさながら警察の捜査の様に、コルクボードに情報を貼り付けていくが、バクスターは捜索に難色を示す。アニーは家族を演じるのでは無く、本物の家族である為に捜すのだと説き、協力を求める。

その昔。アニーは高校最後の舞台「ロミオとジュリエット」でジュリエットを演じ、バクスターは監督を務める運びとなった。当日、ロミオを演じる男が事故に遭って出られなくなり、バクスターは教師デラノからキスシーン無しを条件に代役を命じられた。ところが本番では二人は観劇していた両親を喜ばせる為にキスを演じてみせた。終演後、デラノは責任を取ってクビになったが、事前に両親と話し合っていた事を姉弟に明かすと、最高の芸術には代償が付き物であって、大学時代から憧れの前衛芸術家の作品に参加できた事が光栄だと喜ぶ。また、デラノはロミオ役には両親の計らいでカネを払って降板してもらった事を明かす。姉弟はその日を以って、両親との関係に不和を生じさせたのだった。

バクスターは気晴らしの為にサリーの要請に応じて大学で講師を務め、学生達に創作過程について開陳する。アニーはそれを聴講する。その後、鑑定の結果、車内の血痕がケイレブのものだと判明する。アニーはケイレブが作品の為に何でもする事から真に受けず、手掛かりを求めて一人で過去の作品を鑑賞する。アニーはその過程で、かつて両親が師事していたホバート教授の存在を知る。アニーはホバートが両親の行方を知っているかもしれないと考え、バクスターと共にホバートの邸宅を訪ねる。ホバートは両親と何年も前に絶縁している事を明かすが、理由については口を噤む。ホバートは家族と芸術の関係が縺れるだけだと説き、両親を捜さぬよう促すと、両親から自由の身になった事を感謝すべきだと説く。ホバートはアニーが家を出てから両親の作品は低迷していた為、自らがドキュメンタリーの制作を提案し、これまでを振り返って一度終止符を打てば前へ進めると諭した事を明かすと、お蔵入りになったドキュメンタリーが収められたDVDを手渡す。その中で、ケイレブはアニーが生まれて芸術を続ける事に絶望したが、ある時にそれを考え直す出来事があって、逆に子供が欲しいと気付いたと述懐する。

アニーはカミーユの個展を開いて、隠れた芸術性などと打ち出せば、ケイレブが激怒して罵倒しに来るのではないかと、バクスターに提案する。バクスターは捜査ごっこに辟易し、アニーが事実と向き合おうとせずに逃げているだけだと詰ると、両親の狂言なら死んだと思われたがっているのであり、捜すべきでは無いと説き、もはや普通の家族にはなれず、自分を変えるしか無いのだと諭す。

姉弟は心機一転を図るべく、実家の家財道具をヤードセールに出す。その最中、バクスターはBGMにかけていたCDの「親を殺せ」という曲が、過去の即興術でアニーが作詞した曲だと気付く。一家しかしらないその曲を歌っているのが、ジャケットからマサチューセッツ在住14歳の兄弟だと判明し、姉弟は早速その家を訪ねる。姉弟は丁度帰宅した兄弟に、音楽雑誌の記者を装って取材を申し込む。アニーが兄弟に話を聞いている間、バクスターは屋内を物色し、ケイレブが自らの腕を切って出血し、車に塗りつける様を収めたビデオを見つける。アニーは「親を殺せ」について、誰かに教わって書いたはずだと兄弟に詰問する。そこへデラノとケイレブが買い物から戻ってくる。アニーは憤激し、ケイレブに真実を話すよう求める。ケイレブはデラノが妻だと明かす。姉弟はケイレブにカミーユの元へ連れていくよう命じる。

ケイレブはカミーユとはそれぞれ別の身分で何年も過ごしている事を明かし、カミーユが知り合いと暮らす郊外のキャビンに姉弟を導く。姉弟は両親に一連の出来事の意図を問い質す。ケイレブはそれが自分達の存在を定義付け、過去の功績を曇らせる程の大作の為だと強弁し、姉弟がそれに価値を感じない為に隠してきた事を明かす。更にケイレブはデラノがそれに喜んで参加し、成り行きで二人の子供を儲けた事を明かす。カミーユはケイレブを愛しているが故に、当初離縁を望んでいたケイレブと家族で幸せに暮らす方法があるなら何でもすると、アニーが生まれた時にそう約束した事を明かす。ケイレブは姉弟に対し、親は子供を傷つけるものだと開き直ると、感情に任せて最後の大仕事をぶち壊さず、このまま秘密に留めて欲しいと訴える。姉弟は両親に愛想を尽かして応諾すると、作品の異議を最後まで説こうとする両親に決別の意向を示して立ち去る。その後、アニーは女優として活躍を続ける一方、バクスターは「子供達の穴」で成功を収め、両親から解放された二人が手を取り合って生きていく様子が示唆される。

f:id:horohhoo:20180321115345j:plain

f:id:horohhoo:20180321115352j:plain

f:id:horohhoo:20180321115358j:plain

f:id:horohhoo:20180321115404j:plain

f:id:horohhoo:20180321115411j:plain

f:id:horohhoo:20180321115417j:plain

f:id:horohhoo:20180321115424j:plain

f:id:horohhoo:20180321115429j:plain

f:id:horohhoo:20180321115433j:plain

f:id:horohhoo:20180321115437j:plain

f:id:horohhoo:20180321115441j:plain

f:id:horohhoo:20180321115445j:plain

f:id:horohhoo:20180321115449j:plain

f:id:horohhoo:20180321115454j:plain

f:id:horohhoo:20180321115458j:plain