本州を縦断しそうな台風18号を絶対安全圏から見守る朝。確か、高知の方では今夏の台風で大きな被害が出たのではなかったか。このところ例を見ない様な天災が相次いでいるから、先に起きたものからどんどん記憶の片隅に追いやられ、次第に忘れていってしまう。被災当事者の方にはホントに申し訳ないハナシだが。
台風はさておき、目下、僕が憂いているのは、歯の痛みである。以前から冷たいモノが染みる症状は出ていたのだが、食事時以外は気にする必要もなかったので、長らく放置してきた。最初は左上の臼歯(調べたら第二小臼歯というらしい)に痛みがあっただけで、左で噛めない時は右で噛めばいいじゃないとか、そうやって安穏としているうちに、右上の同じ臼歯まで痛くなってきてしまった。
いよいよ歯科で診てもらおうという思い立つも、こちらに移住してから掛かるのは初めてだから、まずネットで検索してみた。都市部でもないのに、あちこちに点在する歯科医の数々。徒歩で通える範囲に絞っても選べるほどある。近年、コンビニ以上に歯科が乱立しているといわれるが、それも納得。これだけあると、どこで診てもらうべきか、逆にアタマを抱えてしまう。技術レベルもピンきりだろうし、予後の事を考えるとデキる人が良い。実際に前回(4~5年前)に世話になった歯科医は、お世辞にも上手とは言えなかった。
でも、当然そういうのは実際に治療してもらうまでは分からないのよね。そうなると、前段階としては、少なくとも自前のHPくらいもっているところが良いとか、スタッフの写真を見て雰囲気が良さげなところが良いとか、ストリートビューを見て医院の門構えが良いとか、もうそういう見た目の部分で判断するしかないワケで。いま、一件だけ目星をつけたところがあり、今週にも行ってみようかと思っているが、予定は未定。アラホーになっても歯医者は気が進まないわ。
読了記
娼婦と国内に点在する色街の文化について、その歴史的な背景と興亡の経緯を丹念に追った渾身のルポ。いわゆるじゃぱゆきさん(出稼ぎの為に来日した外国人娼婦)、からゆきさん(出稼ぎの為に外国に渡った日本人娼婦)に焦点を当て、国内外の性風俗に対する価値観の共通点や相違点などに肉迫する。
かつて、じゃぱゆきさんの活動拠点だった横浜黄金町や、三重県渡鹿野島、沖縄真栄原といった、今はもう色街としてはすっかり寂れ、廃れてしまった街を、著者が歩き、証言を集めていく。どれも、既に絶滅したか、あるいは絶滅寸前の色街であり、悲哀に満ちているのだが、逆に繁盛した頃の様子を綴った文面からは、当時の熱気が有り有りと伝わってくる様である。日本経済が成長期にあり、世情が華やかりし頃、ちょんの間などの裏風俗のメッカが隆盛を極めるのだが、その後、街の美化や健全化を求める市民感情は急速に高まり、娼婦や業者に対する警察による度重なる摘発が、各地の色街を廃止に追い込んでいったらしい。
著者はまた、青森県住宅供給公社巨額横領事件で一躍有名となったアニータの近況を知るため、その消息も分からぬままにチリへと飛ぶ。なんとアニータは、じゃぱゆきさんの類まれなる成功事例として、チリ国内で今なおホットな話題を提供し続ける存在だった。芸能人さながらに彼女が有名だった事も手伝って、著者は彼女との出会いを果たす。彼女の人となりについて詳しくは知らなかったが、想像していたより朗らかで裏表のない女性という印象。アニータに限らず、じゃぱゆきさんというのは一般的に家族愛が非常に強く、他ならぬ家族の為ならカラダを売ることさえ厭わない。アニータも当時幼子だった娘の為に、借金を背負ってまで単身日本に渡ったじゃぱゆきさんである。
一方で、かつてのからゆきさん達も、貧しい農村漁村生まれで働こうにも仕事がなく、女衒を通じ、娼婦として国外へと出稼ぎに行った。当然、好き好んで行ったわけじゃないし、中には騙されて売り飛ばされた人もいただろう。単純な善悪では推し量れない、厳たる現実がそこには存在した。しかし、そんな彼女達を国が窮乏する時は外貨獲得の商品の如く礼賛し、一度国が豊かになると、今度は逆に国の恥だと断罪する。それが日本である。
僕は本書を読むまで、件のじゃぱゆきさん、からゆきさんという言葉すら知らなかったし、当然、その様な娼婦達が織りなす風俗事情、歴史的経緯についても全く知らなかった。男達が集えば、そこには金銭を対価にその欲求を満たそうとする性風俗が群がるのは必定であって、それを取り締まったところで、風俗産業は巧みに姿形を変えて、より実態を掴めない状態で存在し続ける。深く潜れば潜るほど、自ずと、闇社会の勢力が根を張り巡らしやすい環境が整ってしまう。著者は最後に秋葉原に辿り着くが、昨今そこで繰り広げられているJKなんちゃらこそ、色街の変貌した姿だと喝破する。どこかで折り合いをつけ、色街の存在にある程度は寛容な社会の方が、より健全ではないかという著者の意見に、僕は賛同する。
ま、かくいう僕は、風俗はおろか、女性に触れたことすらないDTだから、全て想像で補完するより他なかったのだが。しかし、非常に面白く有意義な一冊であった。
映画鑑賞記
デヴィッド・トゥーヒー監督作「リディック」("The Chronicles of Riddick" : 2004)
凶悪犯罪者リディックが、宇宙を支配する勢力に立ち向かう様を描くSFアクション作品。「ピッチブラック」の続編。
凶悪犯罪者であり脱獄囚でもある、孤高の男リディック(ヴィン・ディーゼル)。彼がジャックとイマムを救出してから5年が経っていた。お尋ね者として常にその首を狙われているリディックは、ヘリオン第1惑星のニューメッカに居を構えるイマムにジャックを託した後、宇宙の果ての氷で閉ざされた星に潜伏していた。ある時、リディックの元に賞金稼ぎのグループがやってきて、これを撃退すると、グループの依頼人がイマムだと分かり、リディックはイマムを問い質すべく、ヘリオン第1惑星に向かう。リディックはニューメッカでイマムと再会するが、そこにジャックの姿はなかった。彼女はリディックを慕う余り、犯罪者を志向し、既に星を離れていたのだった。そこへイマムに賞金稼ぎを派遣させた預言者エアリオン(ジュディ・デンチ)が現れる。彼女の狙いは、宇宙を支配せんとする勢力ネクロモンガーをリディックに討伐してもらう事だった。直後、ネクロモンガーの大艦隊がヘリオン第1惑星に襲来し、ニューメッカは制圧されてしまう。リディックはネクロモンガーを率いるロード・マーシャル(コルム・フィオール)と会い、やがてその因縁の間柄を知ることになる。
前作「ピッチブラック」を観たので、最後までシリーズを見届けようと思い、2作目である本作鑑賞。前作を大幅に上回るスケールで繰り広げられ、壮大なSFサーガの様相を呈している。世界観や画作りが様変わりしていて、前作と同じ監督の作品とは思えないほど。VFXを始め、とにかく一見してカネかかってるなぁという印象。凶悪犯罪者としてその名を馳せるリディックは、実はフューリア人とかいう一族の末裔であることが分かる。なるほど、それで彼は強靭な肉体やら研ぎ澄まされた感性やらを持っているのねと。うーむ、後付感は拭えんが(笑)フューリア人はその昔、ネクロモンガー率いるロード・マーシャルに滅ぼされていたということが明らかとなり、リディックは死んだフューリア人の記憶に導かれるようにして、ロード・マーシャルと対峙する事になる。その前にあっちこっち宇宙を駆けまわるワケだけど、前作で救出した純朴そうなジャックが、今作ではリディックばりに身体能力の高い犯罪者の女に変わり果てていたのは驚き。続編ありきで製作されたのか分からないが、EDは消化不良だったかな。