デヴィッド・ゴードン・グリーン監督作「セルフィッシュ・サマー」（"Prince Avalanche" : 2013）[DVD]
山林の道路で整備作業に従事する２人の男が、自然の中で共に過ごす内に、互いを理解していく様を描くコメディ・ドラマ作品。
1987年、テキサスで発生した大規模な山火事は山林を焼き尽くし、大きな被害を出した。１年後、道路整備作業員のアルヴィン（ポール・ラッド）は、恋人マディソンの弟ランス（エミール・ハーシュ）に声をかけ、２人で山林の道路の整備作業を行う事にした。アルヴィンらが行うのは、道路上に等間隔で中央線を引いたり、道路沿いに反射板や標識を立てるといった単純作業だった。彼らは焼け落ちて間もない、閑散とした山林の中、連日テントでキャンプ生活をしながら、協力し合い、黙々と作業をこなしていった。
アルヴィンは孤独を愛するやや気難しいタイプの男で、人里離れた山中でのキャンプ暮らしに慣れ親しんでおり、空いた時間にはドイツ語の勉強に励んだり、マディソンへの愛の手紙を認めたりしていた。一方、ランスは四六時中、女の事ばかり考えるタイプで、作業が休みとなる週末に町へ戻るのが何より楽しみだった。不平ばかり口にし、使えないランスに、アルヴィンは呆れがちで、時折口論になることもあった。ある時、作業を行う２人の前に、トラックに乗った老運転手が現れ、気前よく２人に酒を分け与えた事で、運転手と互いに顔見知りとなる。
週末が訪れ、ランスは女と会う為に町へ戻り、アルヴィンはいつも通り、山に残る事になった。アルヴィンはランスに、認めてきた手紙と仕事で蓄えた金をマディソンに渡す様に託す。孤独にテントで寝泊まりするアルヴィンは、山中で焼け落ちた屋敷の跡を発見し、そこで遺品を探す１人の老女と出会う。週が明け、ランスが町から戻ってきたが、その様子は少し変だった。聞くと、狙っていた女マギーと良い雰囲気になったものの、結局マギーは元カレになびいてしまったらしい。アルヴィンは傷心気味のランスを励まし、気晴らしに川で遊んでくる様に促す。アルヴィンは、マディソンからの返事の手紙をランスから受け取り、意気揚々と目を通す。ランスは川で遊んでいる内に、我を失ってしまう。
翌朝、テントで目を覚ましたランスは、どこにもアルヴィンの姿が無い事に気付く。ランスはマディソンの返事を盗み見し、それが別れを告げる内容であった為に、アルヴィンの身を案じる。アルヴィンの帰りを待つランスの元に、再びトラックの老運転手が現れ、酒を振る舞う。トラックの中から、アルヴィンが出会った老女が降りていくが、老運転手はその存在に気付かなかった。
程なくして、アルヴィンが戻ってくる。アルヴィンはマディソンの元へ電話を掛けに町まで行っていた。電話口でアルヴィンとマディソンは衝突し、２人の関係は終わってしまったのだった。ランスは、昔寝た事のある年増の女キャシーに、妊娠を告げられ、産ませないように伝えるつもりでいる事を打ち明ける。荒れるアルヴィンは、姉弟揃ってどうしようもない奴らだとランスを詰り、２人に諍いが生じる。アディソンがランスにクビを宣告すると、ランスは怒ってレンチを手に取り、アディソンを追い回す。ランスを誂うアディソンは逃げる時に調子に乗って、高台から飛び降り、腰を強打してしまう。ランスに救出されたアディソンは、話し合いを通じてランスと和解する。
その日、２人は運転手に貰った酒で泥酔し、仕事そっちのけで暴れまくる。夜、アルヴィンはキャシーに子供を産ませて、できる限りのサポートをすべきだとランスに諭し、ランスもそれに納得する。翌日、２人の前に、再びトラックに乗って運転手が現れる。そこへどこからともかく例の老女が現れ、トラックに乗り込む。どうやらその老女は２人にだけは見えて、運転手には見えないらしい事が分かる。トラックを見送ると、アルヴィンはランスと共に、新たな女との出会いを求めて、町へ繰り出すのだった。
性格の異なる凸凹コンビが、淡々と道路整備に従事する傍ら、時に啀み合い、時に慰め合いながらも、互いに人生観を見つめ直していくハナシ。２人が山中で出会う謎の老女は、山火事で死んだ後も屋敷周辺を彷徨い続ける亡霊らしい。アルヴィンが奇行に及んだり、ランスが意識を喪失するシーンは何やら意味ありげだが、遂には明示されなかった。僕はひょっとしてそれらが山火事と関係あるのでは？と穿ってしまった。フワッとした雰囲気の作品。
