アレックス・プロヤス監督作「ノウイング」("Knowing" : 2009)[DVD]
大惨事を的中する予言を手にした男が、間近に迫る人類滅亡を回避すべく奔走する様を描くSFスリラー作品。
1959年、マサチューセッツ州レキシントンのウィリアム・ドーズ小学校は創立記念日を迎える。記念式典には、生徒ルシンダの発案で、生徒達が各自で未来の絵を描き、タイムカプセルの中に入れて地中に埋め、50年後に開封する事になった。担任のテイラーはルシンダが絵では無く、用紙一面に数字の羅列を書き連ねているのを見て、最後まで書き上げさせず回収する。生徒らが見守る中、タイムカプセルが封印された後、ルシンダが忽然と姿を消す。教員らは学内を捜索し、テイラーが体育館の物置に踞っているルシンダを発見する。ルシンダは爪でドアを引っかき、数字を刻みつけていた。
それから50年後の2009年。マサチューセッツ工科大学で宇宙物理学を教える教授ジョンは、息子のケイレブと共に暮らしていた。ケイレブは予てから耳に雑音が生じる症状で、補聴器を付けていた。ジョンは妻を亡くした喪失感から未だ立ち直っておらず、ケイレブが母を求める気持ちがよく分かった。
ケイレブの通うウィリアム・ドーズ小学校で、創立50週年記念式典が開かれ、テイラー立会の元、タイムカプセルが開封される。生徒達に50年前の生徒の描いた絵が手渡される中、ケイレブはルシンダの書いた数字の紙を受け取る。その直後、ケイレブは遠方に黒服の男を見かける。ケイレブは数字に意味があると感じ取り、自宅へ紙を持ち帰る。帰宅後、ジョンはケイレブが持ち帰った紙を見つけ、返却する様に促す。しかし、その後、ジョンは紙に書き連ねられた数字の一並びが、同時多発テロの日付と犠牲者数を表している事に気付く。数字に規則性を見出したジョンは、全ての並びについて調べを進め、どの数字も50年間に発生した事故や災害といった大惨事に符合する事が判明する。更に、その1つにはジョンの妻が巻き込まれて死んだホテル火災まで含まれており、ジョンは驚愕する。
翌日、ジョンは同僚のフィルに相談し、これから3日間、大惨事が立て続けに起こりうる事を主張する。しかし、数字の中には意味が不明な並びも数多くあり、フィルは飛躍しすぎだと反論する。その後、ジョンはルシンダに関する情報を得るべく、テイラーを訪ねる。テイラーはルシンダが記念日の日に物置で妙な数字を爪で刻んでいた事を伝え、更にルシンダが既に死んでいる事を明かす。自宅に戻ったジョンは、ケイレブが軒先で車に乗った黒服の男と接触するのを目撃し、注意する。ケイレブは男から黒い小石を受け取る。その頃、太陽フレアが活発化している事が、専門家の間で物議を醸し始める。
翌日、数字によれば何かが起こる日であり、ジョンは気が気でなかった。ジョンはケイレブを迎えに学校へ向かう途中に渋滞に嵌る。ふとカーナビの座標に目をやり、意味不明だと思っていた数字の並びが全て座標を示している事に気付く。ジョンのいる場所がまさに何かが起こる場所だと察知した直後、目の前に航空機が墜落し、多くの犠牲者が出る。自宅に戻ったジョンの元にフィルが心配して訪ねてくる。ジョンはあと2つ大惨事が起こると、改めてフィルに説明するが、フィルは関わるべきでないと告げる。その夜、ケイレブは黒服の男から、大地が炎に包まれ焦土と化すビジョンを見せられる。
翌日、ジョンはケイレブを連れ、ルシンダの娘ダイアナと接触を図る。ダイアナは離婚し、一人娘のアビーと共に暮らしていた。ジョンは単刀直入に事情を打ち明け、協力を請うが、ダイアナに拒絶される。ジョンはその日に起こるのがテロでは無いかと考え、座標付近の警備を強化する様に警察に連絡する。更にジョンは、ケイレブを妹のグレースに預け、自らも座標地点であるビル街へと急行する。ジョンは地下鉄が怪しいと睨み、犯人と思しき男を追い詰めるが、その直後、駅に入構してきた車両が脱線、横転し、多数の犠牲者を出す。
ジョンは辛うじて難を逃れ、帰宅すると、ダイアナが訪ねてくる。数字の最後の日付である10月19日は母から死ぬ日だと教えられてきた為、信じたくなかったという。ジョンとダイアナは子供達を連れ、かつてルシンダが1人で暮らしていた家に向かう。ダイアナはふと最後の犠牲者を表す数字が33の反転では無く、EEでは無いかと疑う。家に到着すると、ダイアナは、ルシンダが父から病気扱いされた為に引き離された事、その後、自らが9歳の時にルシンダが自殺した事を打ち明ける。室内にはエゼキエル書の絵や聖書があり、ルシンダが死んでいたという寝室には黒い小石が散らばっていた。不審に思ったジョンは、ベッドの裏に無数にEVERYONE ELSEと刻まれているのを発見し、EEが人類絶滅を意味していると悟る。その頃、子供達が黒服の男達に連れ去られそうになる。ジョンは男達を追いかけるが、男達は光で目を眩ませ、その場から消える。ケイレブとアビーは共にささやき声が聞こえると主張する。
翌日、スーパーフレアが地球を襲い、あらゆる生物が絶滅すると確信したジョンは、数字の予言が自分に地球を救わせようとしているのだと悟る。ジョンとダイアナは助かる可能性を信じ、洞穴へ向かう事にする。ジョンは長らく仲違いしていた父に連絡し、預言を伝え、隠れる様に促すが、父は死を受け入れると応じる。ジョンはかつてルシンダが数字を刻んだ物置のドアの事を思い出し、小学校に赴き、ドアを持ち出す。塗料を剥がし、ドアの数字を確認しようと必死なジョンに痺れを切らし、ダイアナはケイレブとアビーを連れ、先に洞穴に向かう。ジョンはルシンダが刻んだ数字から座標を発見し、その場所がルシンダの家だと判明する。
政府は緊急警報を発令し、太陽フレアが接近し、地球に危機が迫っている事を伝え始める。ジョンはダイアナ達の後を追いながら、ダイアナにルシンダの家に向かう様に伝えるが、ダイアナは頑なに洞穴に向かおうとする。給油に止まったガソリンスタンドで、黒服の男達に子供達が連れ去られ、ダイアナは後を追うが、途中で事故に遭う。ジョンはその現場に到着し、ダイアナの死を看取る。
ルシンダの家に着いたジョンは、車の後を追い、黒い小石が敷き詰められた場所に辿り着く。ケイレブは男達が自分達を迎えに来たのだと説明する。そこへ空から宇宙船が降り立つ。ケイレブは自分達が人類の再スタートに選ばれたと告げるが、男達はジョンを制止する。ケイレブはジョンと離れ離れになるのを拒むが、ジョンはケイレブを送り出す。男達は異星人の姿を露わにし、ケイレブとアビーを連れ、船内に入ると、宇宙船は地球を離れる。世界の各地でも同じ様に、無数の宇宙船が飛び立っていく。その後、フレアが地球に近づき、大地が次第に高熱に晒されていくと、人類は秩序と統制を完全に失う。ジョンは両親とグレースの待つ実家で、最期の時を待つ。程なくして地球は爆炎に包まれる。一方、ケイレブとアビーは、新天地の星に降り立つ。そこは豊穣の大地が広がる世界だった。
ディザスター映画というよりは、スリラーあるいはミステリーの色合いが強い作品。数字の預言はまさに天啓の様なモノで、どうやっても避けられないのに、ジョンはなんとか未然に防ごうと頑張ってしまう。妻を失った喪失感から解放されず、男手1つで息子を育てる悲哀も描かれている。ケイレブが耳に障害らしきモノを抱え補聴器を付けているのは、やや蛇足感を覚えたが、最後の別れ際のシーンでちょっと感動的な手話の演出を入れたかったんだなと解釈した。ルシンダが書いた数字は日時・犠牲者数・座標がワンセットとなっており、ドンピシャで大惨事の発生を予言しているのだが、犠牲者数なんてどの時点で確定するかで変わるんじゃないかとモヤモヤした。異星人はちょっとドキッとする様なビジュアルだった。あれがいわゆる神か。なかなかの良作。