チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

誰よりも狙われた男

アントン・コービン監督作「誰よりも狙われた男」("A Most Wanted Man" : 2014)[DVD]

対テロ秘密機関の職員が、他の諜報機関の介入を躱しながら、テロに繋がる犯罪スキームを、隠密裏に暴くべく奔走する様を描くスリラー作品。

米国911テロの首謀者モハメド・アタはハンブルクで犯行計画を企てていたが、情報機関はそれを察知できなかった。以後、ハンブルクでは各国の情報機関が前轍を踏まぬ様にと、躍起になって諜報活動を続ける。

ドイツ対テロ秘密諜報機関のリーダー、バッハマンは、平和主義者として、難民への支援活動に取り組むイスラム教信者アブドゥラ博士の動向に目を光らせていた。ある日、チェチェン出身のカルポフが港から密入国を図り、ハンブルク市街地に現れた事を、機関が察知し、バッハマンは調査を開始する様に命じる。バッハマンはアブドゥラの息子ジャマールと秘密裏に接触を図っており、適宜アブドゥラの情報を得ていたが、アブドゥラの渡航履歴から不自然なキプロスへの乗り継ぎが判明する。バッハマンは、キプロスの海運会社セブン・フレンズに、アブドゥラが裏から金を流していると疑う。一方、カルポフがハンブルクに来た目的が銀行家に会うためだと判る。カルポフはトルコ人のメリク夫妻の元へ身を寄せる。

ドイツ治安当局のモアが、カルポフの件を掴んだ事で、事態への介入を企てるが、バッハマンはカルポフを泳がせ、その目的を探りたいと主張し、モアに邪魔せぬようにと要請する。また、CIAベルリン支局のサリヴァンも介入の機を覗い始める。モアはカルポフをチェチェンイスラム過激派と断定し、バッハマンにすぐに逮捕すべきだと要求する。しかし、バッハマンはカルポフをイスラム共同体に送り込み、偵察を続け、銀行家に会う目的を探りたいと主張する。バッハマンはかつてベイルートで手痛い失敗を犯している事から、72時間の猶予を与えられる。

人権派弁護士のリヒターはメリクの依頼を受け、カルポフに会って事情を聞く。カルポフはロシア人から拷問された傷跡を見せると、銀行家ブルーへの連絡と調整を依頼する。機関の調査で、カルポフの父がチェチェン駐在のロシア軍大佐で、生前に組織犯罪に関与しており、母親は不明だと判明する。

リヒターはカルポフの代理人としてブルーと会い、カルポフから伝えられた番号を提示する。ブルーはその番号から金庫を調べ、カルポフの父名義の口座に、1000万ユーロを超える莫大な遺産が保管されているとリヒターに伝える。バッハマンはブルーと接触し、事態の掌握に乗り出す。

ブルーはカルポフの元を訪れ、カルポフの父が遺した手紙を確認する。そこにはブルーの父とカルポフの父との間で交わされた約束が記されていた。しかし、カルポフ本人の身分を証明する物が無く、ブルーは預金の引き出しを躊躇う。サリヴァンはバッハマンがアブドゥラを追っている事を察知する。しかし、CIAもアブドゥラを経由した金の一部がどこに消えるのかまでは掴めていなかった。サリヴァンはCIAと組む様に要請するが、バッハマンは過去の因縁からCIAを信頼できずにおり、それを拒む。バッハマンは再びジャマールと接触する。父のスパイから降りたいと告げるジャマールに、バッハマンは正義の為だと説得する。

バッハマンはブルーに、カルポフの預金引き出しに応じる様に要請し、ブルーはリヒターに応諾を伝える。リヒターはカルポフの身の安全を図る為に、改装中のアパートに匿い、バッハマン達は追跡するが振り切られる。一方、カルポフを追うモアの部隊がメリク夫妻を逮捕する。

カルポフは父の汚い金は受け取らないとリヒターに主張する。バッハマンはサリヴァンと会い、セブン・フレンズがアルカイダフロント企業となり、アブドゥラの支援団体の金が流れるスキームを明かした上で、手がかりであるリヒターを泳がせる為に、CIAが邪魔をせぬ様に依頼する。アブドゥラを利用すべきだと考えるバッハマンと、排除すべきだと考えるサリヴァンとで意見が対立する。

バッハマン達はリヒターを拘束し、イスラム過激派と肉迫している現実を諭し伝える。バッハマンはカルポフを救うために協力する様に要求し、リヒターは応じる。機関はカルポフが匿われている部屋に侵入し、監視盗聴機器を取り付ける。再びサリヴァンと会ったバッハマンは、ベイルートの件がCIAの介入により失敗した事を知らされる。バッハマンは前轍を踏む事だけはなんとしても避けたい意向を伝える。

カルポフは父が母を犯し自らが誕生した事を憎んでいると知ったバッハマンは、リヒターを通じ、カルポフに遺産を善行に使用すべきだと誘導し、カルポフは応諾する。ブルーはバッハマンの指示に基づき、アブドゥラの元へカルポフの申し出を伝えに行く。ブルーは高額の申し出に訝るアブドゥラを言葉巧みに揺さぶり、アブドゥラは金を支援団体に寄付する意向を示す。アブドゥラはカルポフと面会し、遺産を寄付する真意を確認すると、ブルーに支援先リストを提示する。バッハマンはアブドゥラがキプロス経由のスキームを使うはずだと上層部を説得し、協力の見返りにアブドゥラにドイツ国籍を与えるべきだと主張する。バッハマンはジャマールと会い、作戦が終了し次第、姿を消す様に告げる。また、バッハマンの手配で、カルポフにはドイツへの永住を許可する証明書が渡る。

ブルーの銀行で、アブドゥラは預金の送付手続きを行う。一部始終をバッハマンの機関が監視盗聴を行っており、予想通り、アブドゥラは送金先の一つをセブン・フレンズへと変更する。手続きの終了後、バッハマンがアブドゥラの身柄を確保するが、その直後、モアとサリヴァンが強制介入し、アブドゥラとカルポフは逮捕される。欺かれたバッハマンは激昂し、打ちひしがれたまま、独りで現場を後にする。

 

 

主演フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作は、ハンブルクを舞台にした対テロ諜報戦をテーマに描いた硬派なスリラー。その存在を公式に認められていない秘密機関で、テロを未然に防ぐべく、日夜スパイ活動に従事している者達の孤独な戦いが、抑制的なトーンでリアリスティックに表現されている。彼らが戦うべき主たる対象は、もちろんイスラム過激派などのテロ集団だが、他の諜報機関とのせめぎ合いも苛烈で、方針の違いから互いに干渉や介入が日常茶飯事の様子。表面的な部分から察すれば、バッハマンはウェット、モアやサリヴァンはドライという事になるのだろうが、対テロ作戦は結果が全てなのだし、どちらが優れているとは一概に言えないところ。一般市民からすれば、一致団結して事件に対処して欲しいものだが。最後のバッハマンの激昂シーンが胸に響く。享年46歳って若すぎるだろ・・・

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