チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

紙の月

吉田大八監督作「紙の月」(2014)[BD]

銀行に勤める平凡な主婦が、学生との逢瀬をきっかけに、巨額の横領に手を染めていく様を描くサスペンス作品。

1994年、みどり銀行に勤務する梅澤梨花は、パートから契約社員に登用され、外回りの営業を担当する事になる。梅澤は商社に勤務する夫、正文と2人暮らしの、手に職の無い平凡な主婦だったが、その真面目な勤務態度は顧客からも評価されつつあった。

ある日、梅澤は得意先である顧客・平林の家に訪れ、前任者の今井ができなかった国債の契約を取り付ける。梅澤はその時、孫の光太と出会う。平林からの契約を次長・井上は高く評価する。梅澤は契約社員に登用された記念に、夫婦でペアのやや高価な時計を購入する。しかし、正文は気が利かず、適当にあしらう。また、正文は梅澤自身の事にも無頓着であり、セックスレスが続いている事に梅澤は内心、気を揉んでいた。

今井が異動を断り、退職する事になり送迎会が開かれる。その帰り道、梅澤は光太と駅で偶然、再会する。梅澤は光太の寄せる好意を察知する。後日、梅澤は顧客の名護の元に営業に訪れる。名護は家賃収入で得た金を無駄遣いしがちな老婦だった。帰社前、梅澤は美容品店で散財するが、会計で手持ちが不足し、名護から預かった金で一時的に補う。退社後、梅澤は駅で再び光太と出会い、そのままラブホテルに入ると、関係を持つ。梅澤が朝帰りした直後に、正文が中国への出張から戻るが、無頓着が幸いし、梅澤の言動に疑いを抱かない。正文は土産のカルティエの時計を梅澤にプレゼントする。梅澤が出社すると、若手社員の相川が目ざとく、梅澤の時計に気が付く。梅澤は相川が不倫している事を知る。

梅澤は光太と逢瀬を重ねる内に、次第に服や化粧などが華美になっていく。程なくして、正文の上海への転勤が決まり、正文は梅澤の気持ちなどお構いなしに、銀行を辞める様に促す。梅澤は顧客で資産家の小山内夫妻を訪れた後、再び平林の元を訪ね、預入現金の200万円を受け取る。梅澤は家族が金を集ってくる事を愚痴る一方、光太に借金がある事を暴露する。平林の家から出た梅澤は、光太と出会い、借金の額と使途を問い質す。光太は父がリストラされた為に、学費の支払いとして150万円をサラ金で借りた事を打ち明ける。大学の中退を考えている光太に、梅澤は援助を申し出るが、光太は断る。

銀行に戻った梅澤は平林の2年満期の手続きを相川に頼むが、その時、平林から電話が入り、光太の事を非難した上で、構わないようにと告げる。梅澤は光太に同情する余り、衝動的に平林の200万をキャンセル扱いとして処理する。梅澤はこの時初めて、証書を書損扱いにし、現金を手元に残すスキームに手を染める。書損処理は本来、相川が行う業務であり、梅澤が代行した事をベテラン行員の隅が怪しむが、梅澤は証書と200万を手にする。梅澤は正文に上海に行かない旨を伝え、正文が梅澤の仕事を軽んじている事に憤る。翌日、梅澤は平林に証書を手渡し、その後、光太に200万を2年で完済する様にと無利子で貸し与える。

1995年、正文が上海へ転勤すると、梅澤は光太との関係を更に深め、同時に金遣いが荒くなっていく。梅澤は認知症の始まった名護を利用し、300万を横領すると、自らの口座に入金し、カードを作る。梅澤はその金を使い、週末にホテルのスイートで光太と2人で過ごし、高級品を買い漁る。会計の額に驚いた梅澤は、更に小山内夫妻の積立金を横領し、自宅に機材一式を揃えると、証書の偽造を始める。また、顧客への取引明細書を回収する事で、発覚しない様に工作するが、隅に挙動を不審に思われる。

梅澤は光太との生活の為に、BMWを購入し、高級マンションを借り、休暇を過ごす。隅に母店への異動の話が来るが、隅は業務が回らなくなると主張し、直近の女子行員の業務ミス件数を井上に提示すべく、履歴を調べ始める。光太が大学を辞めたと打ち明け、梅澤は理由を問い質す。光太はフリーランスで働く意思を告げるが、梅澤は自身が光太をスポイルしている事を危惧する。

梅澤は相川から隅の異動の話を聞き、更に、相川が井上と関係を持っている事を打ち明けられる。相川は、子店の成績を水増ししたい井上の意向を受け、架空伝票を打たされていたのだった。隅は業務ミスの調査の過程で、平林の証書が保管されていない事に気づき、井上に報告する。

翌朝、井上が梅澤を呼び出し、問い質す。梅澤は金を返却する意思を告げた上で、狼狽える井上に相川との関係を知っている事を明かし、脅す。怯んだ井上は公にする事を諦め、隅に追求しない様に命じる。しかし、梅澤は証書の偽造が嵩んだ事で、自転車操業に追い込まれていく。一方、光太は仕事をろくにせず、梅澤への返済も滞る様になる。そんな折、梅澤は相川が突然、寿退職した事を知らされる。その夜、マンションを訪ねた梅澤は、光太が女を連れ込んでいる現場に遭遇し、自宅へ逃げ帰る。追いかけてきた光太に、梅澤は関係の終わりを言い渡す。

隅と偶然、昼食を共にする事になった梅澤は、隅が梅澤の犯行を確信していると知る。梅澤はカードが停止した事で、いよいよ支払いにも困る様になる。そこで、架空の商品広告を偽造した梅澤は、平林の元を訪ね、色仕掛けで契約を取り付けようと試みるが、平林に窘められる。一方、隅は梅澤の顧客リストを洗い始める。

正文が出張から一時帰国するが、梅澤の変化には気付かず、子作りの願望を打ち明ける。梅澤は光太の去ったマンションで、尚も広告の偽造を続ける。井上は梅澤による証書の大量偽造を報告し、隅は小山内の元へ裏付け調査に訪れる。梅澤は偽広告を配布する最中、隅と出会い、犯行に終止符が打たれる。

梅澤は独自に付けていた記録ノートを井上に提出する事で、計画の全容が知れ渡る。隅は全額返済すれば刑事告訴を免れる可能性を告げるが、梅澤は惨めな人間だから優しくするのかと、隅に対して憤る。隅は、自由を満喫し、やりたい事をやり尽くした梅澤こそが隅を惨めに見ているのでは無いかと反論する。梅澤は、光太と初めて関係を持った夜明け前、指で三日月を掻き消した時の話をする。それはいつか終わる幸せ、全てが偽物である事を示唆していた。

かつて梅澤の通っていた学校では、愛の子供プログラムという、個人から個人への寄付を仲介する事業に取り組んでいた。梅澤はその活動趣旨に感銘を受け、長らく5歳の男の子に寄付を続けていたが、受けるより与える方が幸せという理念を履き違え、親の金をくすねてまで大金を寄付する様になった。その事が原因で、活動は打ち切られ、梅澤は校長に叱責されたのだった。

隅は金では自由になれないと梅澤を突き放す。その言葉を聞くや否や、梅澤は窓を破り、銀行から逃亡する。後日、銀行が平穏を取り戻した頃、梅澤は外国に渡り、かつて自らが寄付したと思しき男と出会す。

 

 

人気作家・角田光代原作のサスペンス。原作は未読だから分からないが、映画化に当たって、若干、物語の構成が変わっているらしい。バブル崩壊直後という、一昔前の時代を描いているワケだが、普通に現代劇と相違ない雰囲気で、携帯やらスマホやらが登場しないのもさほど違和感が無かった。銀行員の横領はしばしば事件として発覚するが、普通に考えたらいつかバレルだろうに、やはり金の魔力に取り憑かれてしまうと、分別が付かなくなるのだろうか。まず前提として、愛のプラグラムがあり、そして自分本位の夫との退屈な日常を経て、自分に好意を寄せてくれる若い男との逢瀬で、見境を無くしてしまうってのが、熟女萌えにはたまりませんなぁ。宮沢りえ42歳の色香、イイですよ。実にイイ。しかし、あんなに巧妙な証書偽造の技術を、いとも容易く身に付けたのはちと苦笑してしまった。最後の窓ガラスをぶち破る演出は映画館だとかなり効果的だったろうな。

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