チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ゼロの未来

テリー・ギリアム監督作「ゼロの未来」("The Zero Theorem" : 2013)[BD]

人生の目的を探求する孤独なエンジニアが、会社により命じられた「ゼロの定理」の証明に明け暮れる日々の顛末を描くSF作品。

マンコム社の存在意義リサーチ部のエンジニア、コーエン・レスは、マンコム独自の計算システムを用いたエンティティ解析に日々忙殺される。保険会社から買った古い教会を自宅にするコーエンは、いつか人生の目的を教えてくれる電話がかかってくるという強迫観念に囚われており、その一方で自分の死が近いと妄執する。コーエンは医者に労働不能休暇の申請を出すと同時に、上司のジョビーに対して通勤時間が無駄だと主張し、自宅勤務を要望する。ジョビーがそれを拒否すると、コーエンは社を統括するマネジメントに直訴する意向を示す。

病院を訪ねたコーエンは、医師に死にそうだと訴えるが、休暇の申請は却下され、代わりに精神科医プログラムのシュリンク・ロムを提供される。職場に戻ったコーエンは、ジョビーからマネジメントに会わせるという誘い文句で、仮装パーティーへの参加を求められ、コーエンは渋々了承する。

その夜、パーティに訪れたコーエンは、居心地の悪い会場内を彷徨う内に、偶然入り込んだ物置部屋で、読書に興じるマネジメントと遭遇する。何が問題かを尋ねるマネジメントに、コーエンは自宅勤務の優位性を説き、電話を取り損ねる心配も無くなると訴える。マネジメントはイカれていると告げ、程なく姿を消す。その後、コーエンは会場に客として訪れていたベインズリーに窮地を救われる。ベインズリーはコーエンに興味を抱き、誘惑すると、連絡先を教える。コーエンはそのまま会場を後にする。

後日、ジョビーは、マネジメントが「ゼロの定理」を証明できる者を探しており、コーエンがその任務に選ばれた事を明かし、コーエンの自宅勤務が許可される。ジョビーは解析したデータが格納されるニューラル・ネット・マンクライヴにコーエンを案内し、それらがマネジメントの頭脳の中枢だと明かす。そこでコーエンは、夏のインターンとして訪れている、ハードウェアのプロと称するボブを紹介される。ジョビーはコーエンに解析用のソフトウェアを手渡し、毎週新しいデータが届く事を伝える。

自宅勤務に移行したコーエンは、ゼロの定理を証明すべく、日夜、孤独な解析作業に没頭する。社に解析データを頻繁に要求され、精神的に疲弊したコーエンは、シュリンクの診断を受け、何も喜びを感じないと訴える。作業は遅々として進まず、コーエンは解析が不可能だと嘆く。

ある日、コーエンはストレスに耐え兼ねて、端末と電話を金槌で破壊する。その後、ジョビーが現場調査に訪れる。ジョビーは、疲弊しきったコーエンに、マネジメントから新たなチャンスを与えるように仰せつかってきた事を明かし、端末を修理する。コーエンはゼロの定理が証明できないと訴えるが、ジョビーはリラックスする様に告げて帰っていく。

その夜、ジョビーの依頼と称して、ベインズリーが訪ねてくる。ベインズリーはトラブルシューティングが仕事だと明かし、コーエンを言葉巧みに誘惑する。シュリンクはベインズリーが父親に捨てられ、問題を抱える女だと指摘する。ベインズリーはセックスの代わりに遠隔的タントラ・インターフェイスが得意だと主張し、コーエンに悩みを話す様に促す。コーエンは普通とは違うユニークな感覚を持ちたかったのに、客観的に見れば命令に従うだけの有り触れた存在に過ぎない自分を嘆く。更に、ある夜にかかってきた電話から強烈なパワーを感じ、人生の意味と存在の理由を明らかにしてくれると確信するに至った経緯を打ち明ける。ベインズリーはコーエンの力になると告げ、神経終末に作用し、脳のシナプスと同期するVRスーツを持参する。ベインズリーは真夜中にそれを着て自分のサイトにアクセスする様にコーエンに告げ、帰っていく。

翌朝、突然ボブが訪ねてくる。ボブは父であるマネジメントから協力する様に頼まれてきた事を明かすが、コーエンはもう燃え尽きてしまい、辞めると決めた事を告げる。ボブはコーエンもジョビーもベインズリーもマネジメントの道具に過ぎず、ベインズリーに至っては雇われのコールガールだと明かす。ボブはゼロの定理探求の見返りに、電話をかけさせると約束する。

その夜、コーエンはスーツを着てベインズリーのサイトにアクセスする。コーエンはVRプログラム内の夕刻のビーチで水着姿のベインズリーと出会う。コーエンはベインズリーの慰めを受け、互いに心を通わせる。

ボブが再び訪れ、マネジメントがコーエンに夢中で電話がなんとかなりそうだという事を伝える。ボブはゼロの定理は宇宙が無意味である事を示しており、いずれブラックホールにすべてが飲み込まれると主張し、かつてボブ自身も探求に携わっていたものの、道具では無いと思うに至り、探求を断った事を明かす。

その夜、コーエンは再びVRプログラム内でベインズリーと会う。ベインズリーはコーエンに愛を打ち明け、助けたいと告げる。触発されたコーエンはベインズリーへの愛だけに生きると発奮し、社を辞めると言い放ってベインズリーに乗りかかるが、その途端アクセスが解除される。ボブが再訪し、コーエンの仕事を手助けすると告げ、スーツを持ち去る。その夜、コーエンはスーツ無しでサイトにアクセスするが、他の客に対してストリップを行うベインズリーを目の当たりにし、その後、アクセス拒否される様になる。

翌日、再訪したボブは、電話が想像の産物だと告げ、それが自らの魂から発しており、魂に接続する行為だと説く。そこへベインズリーが訪れ、コーエンに協力すればVRスーツが着られるとジョビーに唆された事を打ち明け、詫びる。ベインズリーはコーエンを思う気持ちは確かだと告げ、自分と一緒にどこか遠くへ逃避しようと提案する。コーエンはそれを頑なに拒絶し、ベインズリーはコーエンの元を去る。

ボブは気分転換にコーエンを外へ連れ出す。コーエンが離婚歴を明かすと、ボブは15歳にして人生に死ぬほど退屈していると嘆く。帰宅するや否や、ボブが高熱で倒れ、コーエンは介抱に当たる。その最中、コーエンは偶然、鏡の中に監視カメラを発見し、更に自宅内の至るところにカメラが据え付けられている事を知り、すべて破壊する。その後、ボブが迎えに引き取られると、コーエンの責任が問われる事になる。程なく、ジョビーがやってきて、コーエンのせいで解雇された事を明かし、激しく罵倒する。

コーエンはボブが改良を施したスーツを着て、端末に接続する。その途端、コーエンはニューラル・ネット・マンクライヴに転送され、そこでマネジメントと対面する。マネジメントはボブが入院し容態が良くない事を明かす。起きている事の虚実に当惑するコーエンに、マネジメントはそれらが神経ネットの一部に過ぎないと告げる。コーエンは生きる目的を尋ねるが、マネジメントは尋ねる相手が間違っていると告げ、自分が崇高な存在でも電話の主でも無く、真実を求める只の人間だと明かす。マネジメントは真実が封じ込められた混沌だと主張する。コーエンがなぜすべてが無だと証明したいのかと問い質すと、マネジメントは混沌こそがすなわち商機となり、金になる鉱脈だと明かし、マンコムはそれを採掘して儲けるのだと説く。マネジメントはコーエンが自分のプロジェクトとは正反対の、信念の人間だから選んだ事を明かすと、真実を伝えるという電話を待ち続けて人生を無意味にしたコーエンがもう必要では無いと突き放す。激昂したコーエンは、システムの破壊を企て、金槌で一突きすると、システムが崩壊を始める。コーエンは眼下に現れたブラックホールに身を投じ、ベインズリーと過ごしたVR空間のビーチに転送される。コーエンは沈まぬ夕陽に作用を及ぼし、夜を招く。

 

 

ストーリー、世界観、登場人物、徹頭徹尾全てがギリアム節で彩られており、こういう感じの妙ちくりんなSF好きにはたまらないだろうなぁという印象の作品。コーエンの行うエンティティ解析は、テレビゲームの様なインターフェイスで、傍から見ると何がどうなって結果を導いているのかさっぱり分からない。とにかくコーエンは強迫神経症に苛まれながら、孤独な解析作業に没頭するナードで童貞っぽい根暗男で、僕の様な人間はかなり親近感が湧いてしまう。クリストフ・ヴァルツがこの愉快なおっさんを熱演しており、坊主頭を含め、ものすごく濃ゆいキャラ作りを実現している。このコーエンと良い関係になるのがベインズリーで、彼女を演じるメラニー・ティエリーの事は知らなかったのだが、むっちりした色香満点の30代女子で甚く気に入った。それにしてもキーパーソンとしてマット・デイモンがしれっと登場しているのには驚いた。

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