チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ミツバチのささやき

ビクトル・エリセ監督作「ミツバチのささやき」("El espíritu de la colmena" : 1973)[DVD]

純粋無垢な少女が、映画に登場する怪物の存在を信じた事で、現実と空想の間を体験する様を描くドラマ作品。

1940年頃、スペインのカスティーリャにある小さな村オユエロスに暮らす、ある一組の家族。養蜂を営む父フェルナンドは仕事人間で、帰宅後は書斎に篭もり、執筆作業に没頭する事が多い。妻テレサは、内戦で別れた大切な人に対し、届く当ての無い手紙を認め送っては、悲しみを募らせ、無気力に陥っていく。夫妻は互いを顧みる事が少なく、その間には隙間風が吹いている。夫妻には二人の幼い娘がいる。姉イサベルはお転婆で悪戯好きな子、翻って妹アナは物静かで純粋な子で、二人はとても仲が良く、同じ学校に通っている。一家は使用人ミラグロスを雇っている。

ある日、村に映画「フランケンシュタイン」の興行がやって来る。会場となる公民館には、我先にとばかりに子供達を先頭に村人が集まり、アナとイサベルも鑑賞する。アナは劇中に登場する怪物がなぜ少女を殺したのか、またなぜ怪物も殺されたのかが分からず、その場でイサベルに理由を尋ねるがはぐらかされる。

その夜、再三、アナに理由を尋ねられたイサベルは、映画の中の出来事は全て嘘で、怪物も少女も殺されていないと説く。更にイサベルは、その怪物が生きているのを見たと明かし、それが村外れに隠れて住んでおり、夜に出歩く為に他の人には見えないと嘘を付く。更にイサベルはその怪物が精霊であり、身体を持っていない為に殺されないのだと説く。アナは夜しか出歩かない精霊にイサベルがどうやって話したのか尋ねる。イサベルは友達になれば精霊といつでも話せると説き、目を閉じて「私はアナです」と精霊に呼びかける方法を教える。

翌日の放課後、イサベルはアナを連れて、精霊が隠れ住むという村外れの小屋を訪ねる。アナはイサベルが小屋の中に入っていくのを離れた場所から見守る。その後、アナは一人で小屋に訪れ、小屋の中や傍の井戸の様子を覗う。その最中、アナは小屋の傍で大きな足跡を発見する。帰宅したアナは、精霊と会えなかった事をイサベルに伝える。

後日、フェルナンドは姉妹を散策に連れ出すと、キノコの良し悪しについて説き、祖父がキノコの園と呼んだ、最高のキノコが取れる場所が山の向こうにある事を明かす。更にフェルナンドは、食べたら必ず死ぬという、一番危険なキノコを二人に教え、それを踏み潰す。

ある日の放課後、アナは再び小屋を訪ね、精霊と接触しようと試みる。イサベルはその様子を覗き見し、アナが自分の話を真に受けていると知る。

程なくして、イサベルは屋敷で悪巧みを思いつく。イサベルの叫び声を聞きつけたアナは、窓際の割れた鉢植えの傍で倒れるイサベルを発見する。アナはそれが嘘だと悟り、イサベルに起きる様に促すが、イサベルが目覚めない為に、精霊の仕業を疑う。アナは精霊が去った事をイサベルに伝えるが、尚も目覚めぬイサベルに不安が昂じ、ミラグロスを呼びに行く。その後、同じ場所にアナが戻ると、イサベルは消えており、アナは困惑する。イサベルはアナの不意を突いて、背後から驚かせると、アナはイサベルに腹を立て、涙ぐむ。

その夜、皆が寝静まった後、アナは無断で家を抜け出す。明朝、村を通過する汽車から一人の脱走兵の男が飛び降り、村外れの小屋に逃げ込む。アナは明け方に帰宅するとベッドに戻る。イサベルはどこへ行っていたのかアナに尋ねるが、アナはそれに答えず、眠りに就く。

小屋で脱走兵と遭遇したアナは、家から持ち出した食べ物やフェルナンドの上着を与え、甲斐甲斐しく世話を焼く。男は上着に入っていたフェルナンドの愛用品である、音楽の鳴る懐中時計を取り出し、アナにそれを見せる。その夜、男は治安警察の急襲を受け、射殺される。

翌朝、男の所持品からフェルナンドが関係を疑われ、警察に呼び出しを受ける。フェルナンドは公民館に安置された男の遺体を確認し、関知しない事が判明すると、所持品が返却される。帰宅したフェルナンドは姉妹の前で懐中時計の音楽を鳴らし、それを聞いたアナの様子を見て、関与を疑う。

その後、アナは再び小屋を訪ね、男がいなくなっている事を知り、男が座っていた場所に血痕を発見する。そこにフェルナンドが現れ、アナに事情を尋ねようとするが、アナは咄嗟に村の外へ逃げ出す。

夜になってもアナが戻らない為、フェルナンドと共に村人達が夜を徹して捜索に当たる。アナは夜の林道で、かつてフェルナンドから教わった毒キノコを見つけ、手を伸ばす。その頃、テレサは認めた手紙を火に焚べ、やり取りを止める事を決意する。

アナは林道の川面を覗き込み、そこに映画で見た怪物が映ると、後ろを振り返り、怪物を目の当たりにする。怪物はアナに近づくと、映画と同じ様にアナに手をかけようとする。アナは目を閉じ、意識を失う。

翌朝、廃墟の傍らで眠っているアナが発見される。衰弱していたアナは、帰宅後、医師の診察を受ける。テレサはアナが眠らず、食べず、口も効かず、更に光を嫌がると医師に訴え、アナには自分達が存在しない様だと心配する。医師は時が経てば少しずつ忘れていき、回復するのだと諭す。その時、ミラグロスはアナがようやく眠った事を伝える。

その後、テレサは心を入れ替え、フェルナンドを気遣うようになる。アナは夜中に目を覚まし、窓を開けると、月明かりの下で「私はアナです」と精霊に呼びかける。

 

 

僕はこの作品を知らなかったのだが、40年以上も前の作品で発掘良品としてリマスターされていたので、どんなもんかしらと鑑賞してみた。結論から言うと、人生観を変える程のインパクトがある、本当に素晴らしすぎる作品だった。ストーリー自体は全体的にフワッとしていて、淡々と進行していくのだが、昔の作品ならではの画面から伝わってくる味わい深さが心地良い。何より特筆すべきなのが、主人公アナの魅力そのもので、この子が文字通り死ぬほど可愛らしい。こんなに可愛らしい子役をこれまで見たことが無い。まるで天使の様だ。1000年に一人の逸材かも知れない。このアナが悪戯好きな姉のイサベルに誂われて、怪物=精霊の存在を信じてしまい、疑いもせずコンタクトを取ろうとするのだが、その姿は純粋の結晶そのものである。おっさんの僕は終始アナに釘付けとなり、そんなキラキラした目で見つめないでくれ~とばかりに、何度もキュン死させられてしまった。シーンごとに当時のスペインの国情を反映させた意味付けがあるそうだが、それが分からなくても十分楽しめるし、遅ればせながらこの名作に出会えてよかった。これは是非BDが欲しい。

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