チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

フォックスキャッチャー

ベネット・ミラー監督作「フォックスキャッチャー」("Foxcatcher" : 2014)[BD]

デュポン財閥の御曹司にしてレスリングを愛するジョンが、金メダリストであるシュルツ兄弟(デイヴ、マーク)の自チームへの招聘を経て、やがてデイヴを殺害するに至るまでの経緯を、実話を元に描くドラマ作品。

27歳のレスリング選手マーク・シュルツは、1984年LA五輪において兄デイヴと共に金メダルを獲得する。しかし、その功績に対する報いは乏しく、マークは講演料で細々とした収入を得ながら慎ましく暮らし、コーチであり、最大の理解者であるデイヴが営むジムで、来たる世界選手権に向けたトレーニングを重ねる日々を過ごす。しかし、デイヴが選手としてのみならず、コーチとしての才能をレスリング協会に評価される一方で、マークはデイヴ無しでは見向きもされない事に苛立ちを覚える。

ある夜、マークはデュポン財閥の秘書から連絡を受け、御曹司ジョン・E・デュポンが邸宅のあるフォックスキャッチャーで直接会って話をしたいと望んでいる事を知る。デュポンの存在自体を知らないマークは、その真意を訝るが、求めに応じて飛行機とヘリを乗り継ぎ、フォックスキャッチャーへ赴く。

ジョンはマークを邸宅に迎え入れると、トロフィー室に招く。ジョンはマークに選手権に向けたトレーニングの様子を尋ねると、自らをレスリングのコーチと称して、レスリングに対する愛情を語り、試合で勝つには自信を持つことが大事だと説く。マークはジョンの問いかけに対し、世界選手権を制し、ソウル五輪で金メダルを取る事が望みだと応える。ジョンはソ連が国を挙げてレスラーを支えているのに対し、米国はレスラーの功績に報いていない事を憂い、マークに同情すると、敬意を払うべき者を無視するのは問題だと主張する。ジョンは自らが鳥類学者であり、愛国者である事を明かすと、国を羽ばたかせたいという希望を告げる。ジョンはマークを最新設備の整ったチーム・フォックスキャッチャーのジムへ招き、二人で偉業を成し遂げようと告げ、マークにチーム入りを要請する。

マークはこれ以上無いチャンスに意気込むと、デイヴの元を訪ね、デュポンの信条を代弁して伝える。マークは年俸が2万5000ドルという破格の条件で、ジョンが同時にデイヴのスカウトも希望している事を伝える。ジョンの真意を訝るデイヴに対し、マークはそれが米国の勝利だと告げ、夢見ていたチャンスだと説いてスカウトに応じる様に請うが、デイブは妻子との生活を優先する事を希望し、また協会と契約をした責任もある事から、ジョンの申し出を固辞する。マークがデイヴの練習のパートナーのままでいる事に反対すると、デイヴはマークを慮り、一人でもやっていけると背中を押す。

マークは早速荷造りを終えると、フォックスキャッチャーへ向かう。マークは秘書ベックと面談を終えた後、滞在用にジム近くのシャレーを与えられる。ジョンのアシスタントのジャックは、敷地内の馬がジョンの母親の物であり、近づかぬ事と、母親に関わらぬ事をマークに厳命する。マークはデュポン財閥の歴史を収録したビデオを見て、デュポンの何たるかを知る。その夜、ジョンが訪ねてきて、マークに快適かどうかの確認をする。ジョンはマークに双眼鏡と自著を与え、鳥の観察を促すと、残り二ヶ月足らずの選手権までの期間をトレーニングに励む事を期待する。

その後、マークは招集されたチームメイト達と合流し、トレーニングを始める。ジョンはデイヴが加わる事を希望するが、マークは家族を優先するデイヴの意向を伝え、金の問題では無いと理解を求める。マークはジョンの勝利にかける執念を悟り、ジョンを失望させぬ為により一層トレーニングに力を入れる。

1987年、フランス、クレルモン・フェラン世界選手権の日を迎え、マークはジョンと共に現地へ赴く。その時、マークは初めてデイヴをデュポンに引き合わせる。マークはデイヴの的確な指導を得て、選手権を優勝し、ジョンは甚く喜ぶ。

フォックスキャッチャーに戻ると、ジョンはトロフィー室にチームを集めて祝勝会を開く。ジョンは母親の馬術大会のトロフィーを撤去させると、そこに選手権で獲得したメダルを飾る。ジョンは馬が如何にくだらない下等生物かを説くと、自らもレスリングをしたかったと嘆き、結果を出したマークを称える。

ソウル五輪まで残すところ一年余りとなり、ジョンはトレーニング中のチームに発破をかける。ジョンはマークの功績に対して1万ドルの報酬を与える。マークは多額の報酬に困惑するが、ジョンはマークがデイヴの弟では終わらないと説く。ジョンはデイヴを素晴らしいレスラーであり、マークに刺激を与えてきたメンターだと評価しながらも、兄だからこそ弟が追い越すのを許さないと説き、兄の影に隠れて生きてきたマークが今度は脚光を浴びる番だと鼓舞する。マークはジョンの言葉に我が意を得て、自分の出してきた結果が全てデイヴの手柄の様に言われてきた事を明かす。ジョンはマークがデイヴ無しでどんな事でも達成できると告げ、自らを友人として接する様に求める。

ある夜、マークはジョンが主催する行事で行うスピーチの紹介役として帯同する。その道中、マークはジョンにコカインを勧められ、それに応じる。それから程なく、デイヴは疎遠となったマークの近況を知るために連絡する。マークは酒やコカインで身持ちを崩し始めていたが、選手権の予選を控えてトレーニングに励んでいる事を伝える。

ある夜更け、マークは突然ジョンに呼び出され、ジョンの練習の相手役を求められる。以後、ジョンはコカインを常習しながら、ジョンの世話役に甘んじていく。ジョンはかつて一人だけ幼馴染の友人がおり、後にそれが母が金を渡す事で雇われた友達だと分かった事を明かす。

程なくして、ジョン後援の年配者向けのレスリング大会が催され、ジョンが優勝する。ジョンは早速それを母親に報告すると、自らがチームを率いて指導している立場であり、選手に夢を与え、またアメリカに希望を与えていると主張するが、母親はそれを意に介さず、トロフィー室の馬のケースを使わぬ様に命じ、レスリングに対する嫌悪感を露わにする。

その直後、ジョンは練習せずに寛いでいるチームを叱責し、リーダーのマークの責任を問うと、デイヴの加入を希望する。マークはそれが無理だと理解を求めるが、ジョンはマークに平手打ちを浴びせ、恩知らずのサルを選び失敗だったと詰り、デイヴ獲得に金に糸目は付けないと告げる。

程なく、デイヴが妻子と共にフォックスキャッチャーに招聘され、デイヴがマイクに取って代わり、チームの指導に当たる事になる。不貞腐れたマークは、ジョンに対して反抗心を露わにする。デイヴはマークに選手権の為の助言を行おうとするが、マークが頑なに拒絶する為、ジョンとの関係について尋ねる。

ある時、ジムにジョンの母親が訪ねてくると、ジョンは自ら体を張って指導に当たる様子を見せつける。しかし、母親はその様子を忌避してジムを後にする。

1988年、フロリダのペンサコーラで五輪予選が開催される。マークはコーチ無しで第一ピリオドに臨むが敗れてしまい、ホテルに戻ると、悔しさの余り、自暴自棄になって過食する。そこへデイヴが駆け付けると、マークを叱責すると同時に抱擁する。デイヴはマークに嘔吐と全力運動をさせる事で、軽量までに体重を元に戻させようとする。ジョンがマークの様子を窺いに来ると、デイヴはそれを制止し、理解を求める。マークはデイヴのコーチを得た事で最終ピリオドを制し、予選を通過する。一方、ジョンは最終ピリオドを前に母親の急逝の報せを受け、邸宅に戻る。ジョンは母親の管理していた馬達を野に解き放つ。

ジョンにドキュメンタリー番組の密着取材が入る。ジムを訪れたジョンに、デイヴは母親の訃報についてその心中を察するが、ジョンはデイヴが欠かせぬ存在だと説くと、金メダルへの執着を明かして更なる飛躍を期待する。ジョンはマークの精神面が不安定な事を懸念し、対処する様にデイヴに命じると、デイヴと連携してチームを仕上げていく意向を示す。デイヴは露骨にジョンに反抗するマークを宥める。

ジョンはフォックスキャッチャーを五輪代表の公式練習場にする事と、その支援として協会に毎年50万ドルの寄付を行う事を、レスリング協会に提案する。ジョンは若い選手に指導を通じて、自らが人生で学んだ事を浸透させる意向を伝えると、アスリートが手本を求めており、尊敬する人物が必要であると説き、コーチが父親でありながらメンターでもある偉大な力を有する、アスリートにとって重要な存在だと主張する。

マークはデイヴにフォックスキャッチャーを離れる意向を伝え、兄弟揃って大学に移籍する当てがある事を明かす。デイヴは家族と共に留まる意向を示すが、マークは自分には無理だと応える。デイヴは兄弟が子供の頃に両親が離婚し、落ち着く場所も無く、明日の見えない日々を送った事を述懐すると、家族に安定した生活をさせたいという希望を告げ、勝つ事に集中する様にマークに促す。

その後、デイヴは番組のインタビューに応じ、ジョンの哲学について尋ねられるが、指導者としてのジョンを称える様な台詞を要求されて、言葉に窮し、意に反してメンターであると証言する。

程なく、デイヴはマークと共にチームを離れる意向をジョンに伝える。ジョンの慰留に対し、デイヴはチームに留まる条件として、マークが離れた後も経済的な支援をする様に要求する。デイヴが五輪で結果を出す事を約束すると、ジョンはその条件に応じ、その見返りとしてマークのコーナーに入る事を希望する。

1988年、ソウル五輪。マークは苦戦を強いられた後、惨敗する。マークはフォックスキャッチャーからの退去を求められる。以後、デイヴの指導によるチームのトレーニングが続く。

ある日曜日、家族と過ごすデイヴの屋敷にジョンが訪ねてくる。デイヴは休暇だとジョンに理解を求める。その冬、完成した番組を観終えたジョンは、その直後にジャックに車を用意させ、一緒にデイヴの屋敷に赴く。ジョンは休暇を過ごすデイブの前で停車するや否や、車内からデイヴに拳銃を突き付け、自分に不満でもあるのかと尋ねた後、突然発砲する。銃撃を受け、逃れようとするデイヴに対し、ジョンは執拗に更に二発の銃弾を浴びせ、走り去る。デイヴの妻が通報した後、駆け寄るも、デイヴはそのまま息絶える。ジョンは程なく敷地内で逮捕される。

デイヴは死後、レスリングの殿堂入りをし、妻と二人の子供達が残される。ソウル五輪後に引退したマークは、元メダリストの肩書を引っ提げ、金網デスマッチに転向した後、現在、オレゴン州レスリング教室を開催する。ジョンは2010年12月9日に獄中で死ぬ。

 

 

大富豪による金メダリスト殺害事件を実話を基に映画化した作品だが、そもそもこんな出来事があった事すら露ほども知らなかった。実話ベースだと自ずと最初から非現実的な展開になり得ない事が分かっているワケで、更に財閥についてもレスリングについても疎いものだから、個人的にはやや退屈だと思った。本作に登場するデュポン財閥が、あの化学の国際企業デュポンの事を指しているのだと、劇中で触れられて初めて二つが一致した。それくらい無知だから仕方ない。一般に米国人がレスリングにどれだけ通じているのか知らないが、やはり米国とその他の国では基本的なバックボーンが異なるから、作品から受けるインパクトも変わってくるんじゃないかな。それにしても、ジョンを演じるスティーヴ・カレルの特殊メイクは凄くて、誰が演じているのかパッと見では分からない程だ。ジョン本人にクリソツに似せてあるらしく、演技は称賛されたらしい。母親にニグレクトに近い扱いを受けた事でサイコ染みているジョンの言動は、作品全体にスリラーな雰囲気を醸し出している。カレルはこんな路線でも真価を発揮するんだなぁ。

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