チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ギヴァー 記憶を注ぐ者

フィリップ・ノイス監督作「ギヴァー 記憶を注ぐ者」("The Giver" : 2014)[BD]

荒廃の後に築かれた、記憶と感情を喪った平等社会で、記憶の器に任命された少年が、社会の欺瞞と真実に気付き、ありのままの社会の姿を取り戻すべく奔走するSFドラマ作品。

 

荒廃を経験した人類は、その後、境界に守られた新しい社会「コミュニティ」を創り上げ、完全に平等な社会を再建した。コミュニティには差異が無く、勝者と敗者がいない為に争いが起きる事もなく、また誰も過去の記憶を持たず、恐れ、苦痛、妬み、憎悪といった言葉が消し去られている。コミュニティの住人は幼年期から以下の規則を刷り込まれる。すなわち、正しい言葉の使用、指定服の着用、毎朝の投薬、門限の厳守、嘘をつかない事である。コミュニティでは、人々は家族ユニットという単位を構成し、住居に暮らしている。

16歳のジョナスは、両親と妹リリーからなる家族ユニット共に暮らしている。ジョナスは、一生の仕事が任命される儀式を翌日に控え、自分だけ見える世界が他の人と違っている様だと自覚するが、幼馴染の親友であるフィオナーやアッシャーにもそれを明かせず、不安を抱く。三人はどんな未来が待ち受けていても友情が永遠だと誓い合う。ジョナスはフィオナ達と共に養育センターで赤子の世話をする奉仕活動に従事しており、そこで発育が遅れている赤子ゲイブの存在を知る。ジョナスは儀式への不安を両親に漏らす。両親は長老委員会が本人を観察した上で、その適性を見定めて決めるのだと説き、心配が無用だと諭す。

翌日、ジョナスは他の青年達と共に儀式に臨む。主席長老は挨拶の場で、かつて世界が無秩序で混沌とし、苦悩と苦痛に満ちていた事を明かし、混乱や憎しみを経てコミュニティという美しく調和の取れた理想郷を構築したのだと説く。その後、主席長老は「解放の儀式」すなわち美しい社会づくりに貢献した老年者達の旅立ち、「新生児の儀式」すなわち遺伝学者による管理の元、出産母が生産した新生児が家族ユニットに登録される、「9歳の儀式」すなわち9歳を迎えた者に自立と責任の象徴として自転車が支給される、を執り行う。続けて、任命の儀式が行われ、アッシャーはドローンのパイロットに、フィオナは養育係に任命される。ジョナス以外の全ての青年の任命が終わった後、主席長老はジョナスに知性、誠実さ、勇気、更に彼方を見る力があると説き、10年前の失敗を受けて慎重に選んだ事を明かすと、ジョナスを次なる記憶の器「レシーヴァー」に任命する。ジョナスは任命証を受け取るが、失敗の話に疑義を抱く。

ジョナスは任命証に示された規則、すなわち、訓練の内容はレシーヴァーが指示する事、他の規則の適用を除外する事、朝の投薬以外で薬を使用してはならない事、訓練の内容を口外してはならない事、嘘を許可する事を把握すると、レシーヴァーの訓練を受ける為に、コミュニティの外れにある、記憶を注ぐ者「ギヴァー」の住処を訪ねる。

老夫ギヴァーは全世界の過去の記憶の全てをジョナスに伝える事が訓練の目的であり、記憶から叡智を学び、人々に知恵を貸す事が務めだと説くと、長老委員会への助言を与える役を担っている事を明かす。ギヴァーはジョナスを傍に招くと、ジョナスの両手を取って記憶の伝達を始める。ジョナスは雪深い森の中でソリを見つけて滑走した後、一軒の小屋に辿り着き、その中から歌が聞こえてくる記憶を見る。ジョナスはこれまで体験した事の無い世界に当惑する。ギヴァーはかつて悪天候が物資の輸送を困難にし、飢饉や餓死が起きた為に、コミュニティでは天候制御により雪が降らない事を明かす。更にギヴァーはジョナスが見た物が住居では無く、家だと明かす。ジョナスは気懸かりだった前任者のレシーヴァーについて尋ねるが、ギヴァーはその答えをはぐらかす。

その日、ジョナスの家族ユニットでゲイブを預かる事が決まる。ジョナスはゲイブの右手に自分と同じ痣を見つけると、ゲイブが自分と同じ様に選ばれる時が来ると悟る。

ジョナスはその後も連日、ギヴァーの住処に通い、記憶の伝達を受け続ける。ジョナスはビジョンの中でコミュニティには存在しない、人間以外の生き物と遭遇し、更に初めて色彩を知覚する。ギヴァーは肌の色と人種の差異が怒りや憎悪の感情を生む為に、人々は差異の無い社会を作り、色彩を手放した事を明かす。

色彩を取り戻したジョナスはフィオナの美しさを自覚すると、同じ気持ちをフィオナと共有しようと試みるが、フィオナには記憶を伝達できない事を知る。一方、ドローンの訓練中のアッシャーは、コミュニティを覆う霧の向こうの飛行禁止区域方面に三角形を成す岩があった事をジョナスに明かす。ジョナスはフィオナに自分がビジョンで経験した様子を伝えようとするが、家族ユニット以外との人間との接触は規則違反であり、監視カメラ越しにシステムから注意される。

ギヴァーはジョナスが几帳面で好奇心が強く、訓練に積極的だと主席長老に報告する。主席長老はジョナスの違反を問題視しており、前任者の時の様な失敗をせぬ為に、慎重に事を運ぶ様にギヴァーに命じる。

ジョナスはギヴァーの住処の本に挟まっていた、コミュニティの外の様子を記した地図を拾い、その中にアッシャーが見たという三角岩を見つけ、更にその遠方に記憶の境界と記された場所がある事を知る。ジョナスは境界が記憶を守っているのなら、そこを超える事で封印が解けるかもしれないと主張する。ギヴァーは地図を仕舞うと、ジョナスを別室に招き、聴こえる記憶と称してピアノを弾いて聴かせる。ジョナスは初めて聴く音楽に感動する。ギヴァーは毎朝の投薬が感情の抑制剤である事を明かし、感情が感覚と異なり、心で感じる物だと説くと、人々が音楽に興じる記憶をジョナスに注ぐ。

ジョナスは帰宅後、家族ユニットに覚えたてのダンスを披露する。そこに主席長老がホログラフで現れ、レシーヴァーの訓練が監視対象にされない為に無謀な事をしていないか、懸念を抱いている事を伝えると、ジョナスに訓練の様子を尋ねる。ジョナスは座ってギヴァーと話をし、時間になれば帰宅する、その繰り返しだと伝える。ジョナスは細工を施す事で朝の投薬を免れ、外出する様になる。

ジョナスはギヴァーの元で訓練を続け、記憶の中の光景に心を奪われていく。その中でジョナスは命の誕生に最も感銘を受けると同時に、世界に人間以外の多様な生物がいた事を知る。ギヴァーは人間が動物の命を奪う、残酷な光景を見せ、ジョナスはその様子に衝撃を受ける。

ジョナスはフィオナに対する感情を日増しに募らせていく。ある夜、ジョナスは生まれて初めて夢を見た事をギヴァーに明かす。それはフィオナとの結婚式であり、ギヴァーはそれが失われた感情、すなわち誰かを思う気持ちであり、非論理的で簡単には消えない、愛だと説く。

その後、ジョナスはギヴァーから戦争の記憶を注がれる。ジョナスは兵士として人を殺す記憶を経験すると、その衝撃から訓練に耐えかね、ギヴァーの制止を振りきって住処を飛び出す。その後、ジョナスは戦争の残酷で悲惨な記憶に囚われ続け、コミュニティから戦争の記憶を消し去った理由を悟る。

フィオナはジョナスの異変を察知し、気遣う。ジョナスは社会のおかしさを説き、レシーヴァーを辞める意向を伝えると、フィオナに投薬を止める様に勧める。フィオナはそれに応じる事で、ジョナスに翻意を促し、ジョナスは再びギヴァーの元に戻る。

ギヴァーは、前任者ローズマリーが記憶で覚えたピアノをギヴァーに教える過去のホログラフを、ジョナスに見せる。ギヴァーは痛みの記憶の伝達を急かされた為に、ローズマリーに母と引き離される喪失の記憶を注いだところ、翌朝、ローズマリーが無断で長老に「解放」を要求した事を明かす。ギヴァーは「解放」の意味がよそへ移る事だと認識しているジョナスに、ジョナスの父親が成長の遅れた赤子を投薬で安楽死させる様子をホログラフで見せ、「解放」の真実を教える。ギヴァーは父親が殺人という言葉すら知らないのだと説くと、フィオナもやがて「解放」の訓練を受ける事になると明かす。ジョナスはレシーヴァー達が殺人を知りながら、それを黙認してきた事を責めると、感情を持てないのなら生きる意味が無いと主張する。

ジョナスはフィオナを監視の目の届かない場所へ呼び出すと、フィオナにキスをする。投薬を止めて感情を抱き始めたフィオナは戸惑う。帰宅したジョナスは、ゲイブがいない事に気付く。父親はゲイブが発育不良の為に養育センターに戻り、「解放」される事を明かす。ジョナスは長老が名を変えた殺人を行っている事に憤り、深夜、ゲイブを救うべく、密かに住居を抜け出す。アッシャーはそれに気付くと、規則違反を理由にジョナスを止めようとするが、ジョナスはアッシャーを殴って、ギヴァーの家を訪ねる。

ジョナスはゲイブに危険が迫っている事をギヴァーに伝えると、記憶を取り戻す為に境界を探し出して超える意向を示す。ギヴァーはジョナスの様な者が現れるのを待っていた為にこれを好機と捉え、ジョナスに境界を超えて記憶を解き放つ様に促す。ギヴァーは前任者である自らの実娘ローズマリーの望みも同じであった事を明かすと、ジョナスに境界への道程を伝える。

ジョナスの母親は主席長老に呼び出されると、ジョナスに不安と怒りを確認した事を報告する。主席長老はギヴァーにホログラフで連絡を取り、ジョナスの行方を尋ねるが、ギヴァーはジョナスを匿い、答えをはぐらかす。ジョナスは夜、ゲイブを連れてコミュニティを発つ決意を固めると、ギヴァーはジョナスに地図を託し、必ず戻るように告げ、最後の記憶と称して強さを授ける。

ジョナスはコミュニティ内で手配され、主席長老による捜索班が向けられる。主席長老はジョナスが不適格だった事を認め、ジョナスの反乱を阻止し、見つけ次第「解放」する様に捜索班に命じる。夜、ジョナスは養育センターに駆け付け、夜勤のフィオナにゲイブの所在を尋ねる。フィオナはジョナスを立ち入り禁止フロアへ招く。

ジョナスはゲイブと共にコミュニティを発つ意向をフィオナに伝え、同行を求めるが、フィオナは難色を示す。ジョナスはやり遂げたら迎えに戻ると約束すると、最後にフィオナとキスをする。フィオナは空の保育器を持って囮になり、その隙にジョナスはゲイブを抱えてセンターから脱出し、バイクで逃走する。ジョナスは追手から逃れ、霧に覆われたコミュニティの外へ飛び降りる。捜索班は追跡を終了する。

フィオナは拘束された後、投薬される。主席長老は監視カメラの記録からジョナスの違反の数々を確認すると、その目的を確信し、ギヴァーを拘束する。その後、主席長老はジョナスの喪失の儀式を行う。しかし、主席長老はアッシャーにジョナスの喪失が見せかけである事を明かすと、ドローンで密かにコミュニティ外を捜索し、ジョナスを発見次第、喪失する任務を与える。

ジョナスは境界目指して荒野を走り抜けるが、程なくバイクのバッテリーが尽きてしまい、徒歩で先を急ぐ。やがて山岳地帯に差し掛かり、ジョナスは地図に表記された三角岩に到達するが、そこでドローンに発見される。アッシャーはジョナスに喪失を宣告するが、ジョナスは永遠の友情を説き、自分を信じる様に請う。アッシャーはドローンでジョナスを捕捉した後、滝壺に落とし、任務を終えた事を主席長老に報告する。

ゲイブと共に危機を脱したジョナスは、境界の存在を信じて更に歩みを進める。フィオナはジョナスの母親に「解放」を宣告されると、自分達には何かが奪われていると指摘し、ジョナスがそれを知っており、それが素晴らしい物だと説く。

ジョナスは雪深い山の中を進み続けるも、境界らしき場所が見当たらず途方に暮れる。その頃、フィオナは「解放」の儀式へ連行される。ギヴァーは人を愛した経験があれば、喪失の深い悲しみが分かると説き、主席長老に翻意を促す。しかし、主席長老は餓死や戦争の悲惨さを説き、自らの正当性を主張する。ギヴァーは愛の可能性を見出した事を明かし、愛が信念と希望に変わると主張するが、主席長老は愛が移ろいやすいもので、凌辱や殺人の原因になると反論する。ギヴァーは未来は選べると説得を試みるが、主席長老は人間が弱くてずるい生き物であり、選択の自由を与えれば間違った答えを出すと主張する。

ジョナスは雪山で力尽き倒れるも、そこに記憶の中で見たソリを見つける。ギヴァーは感情が抑える事はできないものであり、ジョナスとフィオナが愛を知ったと説くと、この世界が幻影であり、模倣であり、輪郭の無いものだと主張する。ジョナスは記憶で見たのと同じ様にソリに乗って斜面を滑走し、フィオナの「解放」が行われる直前に境界を超える。その瞬間、コミュニティ全域に記憶が注がれ、皆は奪われていた記憶と感情を取り戻す。ジョナスは楽しげな音楽が鳴り響く家に辿り着き、傍に歩み寄る

 

 

ありそうで無い感じのディストピア系近未来SF。メリル・ストリープジェフ・ブリッジスという名優二人が脇を固めている事から、大作感を醸し出しているものの、イメージとは裏腹に内容は薄くてB級的。管理社会と化したコミュニティで、記憶を奪われた住民がそれを自覚する事無く生活を送っているという設定だが、このコミュニティというのがどの程度の規模で、どうやって政治的、経済的に機能しているのかが良くわからないので、序盤からモヤモヤする。登場する地図には他のコミュニティの存在を示唆するようなマークがあったから、この手のコミュニティ単位が世界にいくつか存在するのかも知れないが、それにしても境界を超えたら全ての人に記憶が戻ってくるというのもイミフ過ぎて釈然としない。もうちょっと説得力のある展開を期待していただけに残念。ジョナスが記憶の器となり、ギヴァーから記憶を注がれるに連れて、画面の色彩が白黒から徐々に色付いていくという演出は面白い。なぜかテイラー・スウィフトが出演していて、演技する様子をこの度初めて見た。

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