チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

私はゴースト

H・P・メンドーサ監督作「私はゴースト」("I Am a Ghost" : 2012)[DVD]

生前の記憶を失い、屋敷に留まり続ける幽霊の女が、霊媒師の助力を得て、因果を解き放ち、成仏を図る様を描くホラー作品。

 

とある二階建ての屋敷で死んだエミリーは、その後、幽霊と化し、成仏する事無く屋敷に留まる。彼女には自らが幽霊だという自覚が無く、毎日同じように目覚め、食事を取り、雑務をこなし、買い物へ出かけ、遺品に思いを馳せる、といった行動を日課の様に延々と繰り返す。

ある時、エミリーは母親の寝室に違和感を覚え、程なく、雇われの霊媒師と称するシルヴィアが呼びかけてきて、外に出てはいけないと説く。エミリーは姿の見えないシルヴィアに当惑する。シルヴィアはエミリーの良く知る子守唄を歌った後、「私は幽霊」と繰り返す様に命じると、記憶を亡くしたままではずっと成仏ができない事を明かし、因果を解く必要性を説く。エミリーはその部屋で、顔を憎悪に歪ませた、青白い肌の恐ろしい大男にナイフで何度も刺されて、殺された事を思い出す。シルヴィアは数日ぶりの交霊であり、前回はエミリーが部屋から飛び出して失敗した事を明かすと、雇い主の家族の為に今度こそ除霊を成功させる意思を伝える。エミリーは自らが祓われる運命の幽霊だと自覚する。シルヴィアはエミリーの辿ってきた繰り返しの行動が、どれも生前の様子であり、霊とは消え残った情念の記憶だと説くと、因果を説いて成仏する方法が、死を自覚させた後、幽霊がシルヴィア本人の体を通り抜ける事だと明かす。エミリーはシルヴィアの立っている場所を聞くと、それを試そうとするが、直前になって慄き、部屋から逃げ出してしまう。

その後、エミリーは再び生前の記憶の追体験を繰り返す。やがて、エミリーは再び母親の寝室に訪れ、シルヴィアと対峙する事で、自らが幽霊だと思い出す。シルヴィアはエミリーの母がよく歌っていた歌を、エミリーの記憶を揺り起こすスイッチとして用いる。エミリーは自分を殺そうとして置き去りにした母に対する憎悪を露わにする。シルヴィアはエミリーを慮り、依頼とは関係なく、成仏させてあげたいのだと諭すと、自分のいる絨毯の上に来るように促し、エミリーはそれに応じる。すると、エミリーに変化が生じ、苦しみの末に、記憶を取り戻す。エミリーはその部屋で凄まじい痛みと共に血塗れになった事と共に、かつて手を血塗れにして妹の首を絞めていた事、そんな自分を母が悪魔憑きだと考え、お祓いにかけようとした事、父が治療を望んだのに対し、母は自分を湖に捨てようとした事、父の死後、母が見切りをつけ、妹を連れて家を出て行った事を思い出す。シルヴィアは自らもまたその特異な能力ゆえに母に森に捨てられた事を明かし、エミリーの不遇に同情する。エミリーはシルヴィアに信頼を寄せ、シルヴィアはきっと成仏できると諭す。

エミリーが家の外に出たがると、シルヴィアは因果が既に解けており、どこに行くのも自由としながらも、家の外には出ない様に勧める。エミリーは玄関のドアを開けると、その先に漆黒の虚無が広がっているのを目の当たりにし、絶叫する。更にエミリーは家の至るところで追憶の自分の姿と遭遇する。シルヴィアは、因果が解けて霊的に覚醒した為に、生前の記憶を客観視できる様になったからだと説き、それらがエミリー自身の残響だと明かす。エミリーは自分が殺される姿を見る事に対する怖れを訴える。シルヴィアは改めて調べた結果と称して、エミリーの死因が殺人では無く自殺であり、エミリーが解離性同一性障害を患っていた事を明かすと、残った因果が自殺の記憶を封じているのだと指摘する。エミリーは当惑し、それを否定する。シルヴィアはエミリーが怪物と一体だった為に、自殺を図った事で2つの魂が解放されたのだと説くと、エミリーのみならず、怪物の方の魂も祓う必要があると諭す。

怪物の記憶は追体験できず、エミリーは手掛かりが無いと訴える。シルヴィアはエミリーが足を向けようとしない、螺旋階段の上の屋根裏について問い質す。エミリーはそこが母の折檻部屋で入った事が無いと明かすが、シルヴィアに促され、意を決して屋根裏に向かう。エミリーはその埃にまみれた何も無い場所を目の当たりにし、怒りや恐怖、悲しみが溢れてくるのを自覚する。

その後、シルヴィアと交信できなくなり、エミリーは屋内を探し回った末に再び螺旋階段から屋根裏を見上げる。すると、上から青白い体の男が降りてきて、エミリーに襲いかかる。エミリーはシルヴィアに助けを求めて、屋内を駆けずり回り、浴室に逃げ込む。男はドア越しに語りかける。「お前は知らずとも俺は知っていた。臆病者のお前が決して知ろうとはしない、知ったところでどうにもならないその答えを、ずっとお前の中にいて教えてやろうとした。お前の名で呼ばれるのが嫌になった俺は脱走を図ったが、お前に邪魔された。俺は怪物だが犠牲者でもあるのだ。お前を殺せば自由になれると思ったが、屋根裏の折檻部屋に囚われた挙句、悲惨な記憶だけを延々と追体験させられれた。しかし、遂にお前を見つけた。逃がすものか。」

男は浴室に押し入り、エミリーの首を絞めて殺そうとする。その瞬間、エミリーがこれまで目を伏せてきた数々の自傷の追憶が蘇る。エミリーは浴室から脱出するも、母の寝室に追い詰められた後、男に腹を包丁でめった刺しにされる。エミリーはその様子を客観視する。その時、シルヴィアの「死者よ、立ち去れ!光へと導かれよ!」という掛け声が繰り返し響き渡る。屋敷からエミリーの残響が消えると共に、男もまた因果から解き放たれ、同時に部屋を闇が覆い始める。為す術も無く当惑するエミリーの前に、エミリーが自らの手で腹をめった刺しにする光景が広がる。エミリーは「私は成仏できる。私は幽霊。」と繰り返し呟く。

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