チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

白鯨との闘い

ロン・ハワード監督作「白鯨との闘い」("In the Heart of the Sea" : 2015)[BD]

メルヴィルの著した「白鯨」において語られる事の無かった、捕鯨船の乗組員達が経験した秘められた真実を描く歴史ドラマ作品。

 

1800年代、鯨油が街灯の燃料として重宝される様になり、世界的に需要が急増すると、男達は捕鯨船に乗り込み、未知なる大海を目指した。ところが、ある頃から海への畏怖を誘う怪物の存在が噂される様になった。1850年2月、新鋭の作家ハーマン・メルヴィルは、怪物「白鯨」についての噂を聞くと、自らの新作小説に活かすべく、捕鯨の一大拠点ナンタケット島に暮らす元船乗りのニカーソンの元を訪ねる。ニカーソンは妻と共に宿を営んでおり、メルヴィルは一晩で三ヶ月分の宿代に当たる全財産を投資と称して支払う事で、捕鯨船エセックス号の乗組員における最後の生存者となったニカーソンが経験した真実についての証言を請う。ニカーソンは船が座礁したのが実相であるかの様に説き、メルヴィルに帰る様に促す。メルヴィルは無駄足だと悟り、帰ろうとする。夫人はメルヴィルを引き止め、ニカーソンが今も過去に囚われたままで苦悩しており、真実について自分にさえも話してくれないのだと明かし、救ってやる様に請うと、ニカーソンに対して毎日酒浸りで宿を自分任せにしている事を責め、メルヴィルの依頼に応じる様に諭す。ニカーソンは渋々応じる事にし、エセックス号に関する語られぬ真実、二人の男、ジョージ・ポラード船長とオーウェンチェイス一等航海士について、重い口を開く。

ナンタケット生まれではないチェイスは、捕鯨船において「よそ者」扱いを跳ね除ける程の目覚ましい功績を上げ、ついに船長への昇格が決まる。チェイスは身重の妻ペギーを残し、再び捕鯨船に乗って大洋へ出航する事が決まる。エセックス号の出航準備が整うと、船主のメイソンとフラーは家柄を理由にチェイスとの約束を違え、ナンタケットの名家出身で父親が出資者でもある、新人ポラードを船長に据える意向を示し、チェイスに一等航海士として乗船する様に命じる。チェイスは憤慨するが、メイソン達はその分だけ利益配当を増やす事と、更に鯨油2000樽を持ち帰ったら今度こそ船長へ昇格させる事を約束する。

チェイスは已むを得ず応じるが、自分の捕鯨船を持って独立する決意を新たにする。ペギーは、チェイスの身を案じ、危険な捕鯨船乗りでは無く、商船乗りとして家にいる時間を増やす様にチェイスに望む。出発間際、ペギーは自らのペンダントをチェイスに託し、チェイスは無事に戻ってくる事を約束する。一方、ポラードはナンタケットの捕鯨の道を開いた先祖の名の誉れとなるべく、父にその意気込みを示す。

ポラード、チェイスチェイスと気心の知れた盟友の二等航海士ジョイを筆頭に、乗組員達はエセックス号に乗船し、ナンタケットを出港する。14歳の孤児ニカーソンは、下っ端の雑用係として初航海を迎え、一人前の証である鯨ピンに憧れを抱く。出航早々トラブルが生じると、チェイスは機転を利かせてこれを回避し、乗組員達の信頼を集める。ポラードはそれに反感を抱き、チェイスの出自を論って罵る。チェイスは意に介さず、2000樽を鯨油で満たし、速やかに帰港する意向を示す。チェイスは不慣れなニカーソンに目をかけ、辛くとも自分達が家族代わりだと励ます。

ポラードは船長としての威厳を示すべく、補助帆を張って速力を増し、遅れを取り戻す様にチェイスに命じる。間もなく、進行方向に嵐が接近すると、チェイスは縮帆を進言するが、ポラードは頑としてそれを拒み、針路を維持する様に命じる。その後、船は激しい暴風雨と荒波に見舞われ、乗組員と船体が危険に晒される。チェイスは帆を切り離す事でその難局を切り抜ける。ポラードは修理の為にナンタケットに引き返す意向を示すと、自らの決定に問題が無かったと主張し、逆に自分に逆らって乗組員を危険に晒した事への謝罪をチェイスに求め、辞表を出す様に命じる。チェイスは鯨油を持ち帰らずに帰るのは自分と、ポラード家の名をも汚すと説き、決断をポラードに委ねる。ポラードは翻意し、航行を続ける。

出航から三ヶ月後、船は南大西洋沖で初めてマッコウクジラの群れと遭遇する。チェイスとポラードは早速捕鯨ボートを出し、鯨の捕獲に向かう。一行は苦難の末に一頭の鯨を仕留めると、本船に引き上げ、解体と鯨油採取作業に取り掛かる。ニカーソンは体が小さい事を見込まれ、体内に入って油を汲み上げる過酷な作業を命じられる。

その後、船は鯨と遭遇できぬまま、更に南へと針路を取り、ホーン岬を回って太平洋入りする。しかし、その後も状況は好転せず、一年経っても船倉が空の状態が続き、帰港の目処は立たない事から、ポラードとチェイスの緊張関係は極限に達する。やがて船はエクアドルのアタカメスに寄港する。ポラード達はそこで、船を壊されながらも生還したというスペインの船長から話を聞く。その男は、赤道沿いに2600海里の遠海漁場に想像を絶する数の鯨がいる事、更に大理石の様に白い肌をした30メートル大の悪魔と称する鯨にやられ、船と仲間、更に左腕を失った事を明かす。ポラードは樽を鯨油で満たし、半年で帰港できると色めきだち、チェイスも賛同する。

アタカメスから赤道沿いに西へ針路を取った船は、やがてその海域に到達するも、鯨と遭遇する事は無く、一行の希望は不安に代わり、苛立ちとポラードへの猜疑心が募っていく。出航から14ヶ月後、船は夥しい数のマッコウクジラの群れと遭遇する。一行は意気揚々とボートで捕獲に向かう。その矢先に白い肌をした巨大なマッコウクジラの「怪物」がその姿を現し、チェイスの率いるボートに襲いかかる。チェイスは破損したボートを修理する為に本船へ引き返す。ポラード率いるボートがそれに気づかず、捕鯨を続ける内に、怪物は本船に執拗に体当たりを繰り返す。チェイスは怪物への挑戦を決意し、銛綱を怪物に投擲する。怪物は銛綱が突き刺さったまま、船体を激しく引き回す事で、船底に穴を開け、マストを全てへし折った後、姿を消す。本船は甚大な損害を被り、更に鯨油に引火して炎上する。チェイスは船を捨てる決断を下し、マストと帆、食料、水を三隻のボートに積み替えさせ、全焼する船から辛うじて脱出する。船は沈没し、一行は南米西沖2000海里で遭難する。

一行はボートに立てたマストに帆を張り、天測を頼りに来た方向の東を目指す。やがてボートは激しい嵐に見舞われる。その最中、再び怪物が翻弄するかの様に一行の前に姿を現し、消える。嵐による転倒の衝撃で、ジョイが頭部に重傷を負う。餓死に直面する乗組員達は、死にゆく者に食料や水をやる事への不満を募らせていく。

ニカーソンは、悪魔に魂は売れないと説き、そこで話を打ち切ろうとする。メルヴィルは、悪魔が好むのは語られぬ秘密であり、心の奥底にある苦悩だと説くと、自らがホーソーンの様な文豪では無いながらも、心奪われた噂の真実に肉迫する決意を示し、話を続ける様に請う。

漂流から30日余り。窮乏する一行は、デューシー島と思しき島を発見する。その矢先に再び怪物が姿を現し、体当たりで襲いかかる。チェイスは手斧による一撃を見舞うが、その甲斐虚しく、三隻のボート全てを破損させられ、一行は命からがら島に漂着する。チェイスはペギーにもらったペンダントが無くなっている事に気付き、悲嘆する。ポラードは島に自生する食料で生き長らえ、沖を通過する船に助けを求める決断を下す。チェイスは島内の洞窟で、同じ様に島に留まる決断をしたと思われる者達の白骨遺体を発見し、救助の見込みが無い事を悟る。

その夜、チェイスエセックス号沈没の原因が自分だとポラードに打ち明ける。ポラードは自らが父から後を継いだだけの取るに足らない船長だと説くと、神の逆鱗に触れたのが鯨の方であり、人間は神に似せて作られ、この星を預かる様に命じられた存在だと主張する。チェイスは人間がちっぽけで無力な存在だと応える。ポラードは夜明けに島を出発する意向を示すと、死ぬ運命なら神の恩寵をもって潔く死なせてくれるはずだと説く。

翌朝、ボートの修繕が終わり、出発の準備が整うが、ジョイを含む4名は島に留まる意向を示す。チェイスはジョイに翻意を促すが、ジョイの諦めを確認すると、迎えの船を寄越す事を約束し、別れを告げる。乗組員達は再び三隻に分乗して島を出発する。

半月余り経った頃、チェイス達はポラード率いるボートと逸れた事に気付く。程なく、チェイスのボートに乗るピーターソンが力尽きると、チェイスは生き延びる為に糧にする決断を下す。チェイス達は遺体を解体した後、縫い合わせて海に流し、葬る。

ニカーソンは苦悩の原因がその「恥ずべき秘密」であり、妻の愛を失う事を恐れる余り、話せなかった事を明かす。夫人はニカーソンが十分苦しんできた事への理解を示し、変わらぬ愛を伝えると、ニカーソンは涙する。

一方、ポラードのボートでもまた、糧となる者が必要とされ、くじ引きの末にポラードが選ばれる。ポラードはこれまで軽侮してきたコフィンに、自分を撃つ様に請う。コフィンはそれを拒み、自分の頭を撃ち抜く。

やがてチェイス達は再びポラード達と合流するが、今度は三隻目と逸れ、それっきりとなる。程なく、またしても怪物が姿を現す。チェイスはポラードに仕留める様に促され、ヤスを構えるが、目の前に現れた怪物の瞳に見つめられて立ち尽くし、怪物は姿を消す。潮に流され、チェイス達はポラード達と再び逸れる。漂流から87日目、ポラード達は航行中の船に発見され、救助される。

漂流から90日目の1821年2月18日。チェイス達4名は窮乏の末に憔悴しきった状態で、チリのマス・アフェラ島沖に到達し、救助される。それから三ヶ月後、チェイス達は船で帰郷の途に尽き、ナンタケットに帰還する。住民に幽霊の様に迎えられたチェイス達は皆、「恥ずべき秘密」に関して知られる事を恐れ、旅の詳細について口を噤む。チェイスはペギーと幼子フィービー・アンの出迎えを受けた後、直ちに事務所に呼び出される。メイソン達はポラードとの協議の末に、怪物や「恥ずべき秘密」に関する真実を公にすれば、捕鯨産業全体に影響を及ぼしかねないとの合意に達した事を明かすと、船の沈没の原因が座礁であり、乗組員は溺死したという事で収束を図る意向を示し、チェイスに船長にするという条件と引き換えに応じる様に要求する。チェイスはそれを拒否すると、ポラードにもそうする様に促し、事務所を後にする。その後、チェイスはニカーソンに鯨ピンを譲り、別れを告げる。

翌日、ポラードは審問会における聴取に臨み、有力者達の前で怪物に関する真実を証言する。その後、ポラードは再び捕鯨船に乗るが、怪物は見つからず、ハワイ沖で座礁した事で海を諦める。一方、チェイスは約束通りにデューシー島に戻るも、ジョイは既に他界しており、奇跡的に生存していた三名が救助される。その後、チェイスは家族と共にベッドフォードへ移り、商船の船長として再出発を果たす。

夜明けが訪れ、全てを語り尽くしたニカーソンは、真実が詳らかになる事への躊躇いを見せる。メルヴィルは新作が真実を元にした「小説」であり、全てを書く必要が無いと説き、ニカーソンの意を汲む。期せずして、ペンシルバニアで石油が出たという報せが伝わる。メルヴィル1850年に小説「白鯨」を執筆し、その翌年に出版する。ホーソーンは「白鯨」が、ホメロス叙事詩の様だと賛辞を送る。

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