スティーブン・C・ミラー監督作「サイレント・ナイト 悪魔のサンタクロース」("Silent Night" : 2012)[DVD]
クリスマス・イブに小さな町に現れたサンタ姿の殺人鬼による惨劇を止めるべく、保安官達が奮闘する様を描くスラッシャー・ホラー作品。
クリスマスを目前に控えた、ウィスコンシン州の小さな町クライヤー。廃れた空き家の一室で、サンタの衣装と覆面を着けた殺人鬼が泣き喚く女を殺す。次に殺人サンタは地下室に向かい、椅子に電飾で縛り付けられ、女と情を通じた事の赦しを請う男を殺す。
イブの朝、保安官オーブリーは事務所の所長クーパーから連絡を受け、代番のジョーダンが失踪したとの理由で突然の出勤を命じられる。オーブリーは同じく保安官の夫ジョンを亡くして間もなく、両親と穏やかに過ごす予定だった事から、斟酌を請うが、クーパーは問答無用で出勤を命じる。クーパーは元保安官の父と母に翌朝までの勤務を伝えて家を発つ。同じ頃、殺人サンタは民家を訪ね、素行不良の少女をモリで刺殺する。
オーブリーはチャペルに寄った後で事務所に着く。オペレーターのブレンダはジョーダンが駆け落ちした可能性を指摘する。間もなく、同僚のジャイルスがやってくる。その時、旅回りのサンタが子供を泣かせたとの通報が入る。オーブリーはクリスマスの準備で賑わう町を抜け、広場に到着すると、サンタの衣装を着て、子供を誂って弄ぶジムに尋問する。ジムは子供に真実を教えているだけだと説き、オーブリーに悪態をつく。オーブリーは憤るが、ブレンダ経由で空き家で悪臭がするとの通報を受け、現場に向かう。その頃、事務所には男がやってきて妻アラナの失踪を届け出る。
オーブリーは外まで悪臭が漂う空き家に立ち入り、地下室で黒焦げになって死んでいるジョーダンを見つける。オーブリーはそれをブレンダに報せると、銃を構えて二階へ向かい、血だらけの部屋でバラバラになった女の惨殺死体を見つける。そこへクーパーが駆けつけ、その死体が男漁りの好きなアラナだと確認し、床に残ったブーツの跡から犯人が大柄な男だと推測する。間もなく、アラナの夫にはアリバイがある事が判明し、容疑者から外れる。クーパーは四人だけで解決する意向を示す。
一方、町のモーテルの一室では、アダルトサイトを運営するフランクとゴールディが、モデルを使ってポルノビデオを撮影する。町長の娘ティファニーは、撮影を終えると謝礼を貰って部屋を出る。ティファニーと入れ違いで殺人サンタがやってきて、ゴールディとフランクを立て続けに惨殺する。撮影中だったモデルのマリアは、裸のまま浴室の窓から飛び降りて脱出すると、住宅街を駆けずり回った末に、緑地に逃げ込む。殺人サンタはマリアを捕まえると、傍にあった樹木粉砕機に押し込んで殺す。間もなく、モーテルと、更にモアウッド夫人から事務所に通報が入る。クーパーは夫人宅へ、オーブリーとジャイルスはモーテルへ向かう。
日が落ちる頃、オーブリー達はモーテルに到着し、フランクとゴールディの死体、更にブーツの跡を発見する。一方、クーパーはモアウッド夫人宅で、串刺しにされた夫人の娘の死体を確認する。オーブリーはモーテルに押し入った形跡が無い事から、犯人がフランク達に面識のある人物だと推測し、最後の電話相手ミスター・スノーの関与を疑うと同時に、ビデオカメラを押収する。オーブリー達は事務所に戻ると、ビデオを再生し、犯人がサンタ姿の大柄な男だと確認する。一方、閑散としたチャペルでは好色で俗物的な牧師が、その本性をおくびにも出さずに、クリスマスの本質が罪にあるとの旨の説教を行う。殺人サンタは牧師をナイフでめった刺しにして殺すと、傍にいた老女に、牧師がくすねた寄付金を手渡して立ち去る。
パレードの開始を目前に控え、オーブリー達は町に繰り出し容疑者を捜索する。オーブリーはレストランでバーガーを貪るサンタ姿の大柄な男を見つける。オーブリーは、元製材所勤めで、犯行現場とは別のモーテルで暮らしているというその男カーソンについてクーパーに報せると、その場で尋問を始める。カーソンはミスター・スノーとの関与を否定すると、人伝に聞いたというイブに纏わる怖ろしい逸話を紹介する。ある男が退屈だと詰られ、妻に逃げられた。妻は遊び慣れた男とパーティへ行った。男はサンタの衣装を纏い、自作の火炎放射器を携え、会場に乗り込むと、一目散に逃げようとした妻の愛人を焼き殺し、更に赦しを請う妻をも焼き殺した。その男は、今でも「悪い子」を罰する為に、毎年違う町に現れるのだという。オーブリーはそれが都市伝説だと一蹴すると、ミスター・スノーの番号に電話をかける。するとカーソンの携帯が鳴る。カーソンは憤激して店の裏口から逃走を図る。オーブリーはカーソンを追いかけるが、不意打ちを食らってナイフで手を切りつけられる。そこにクーパーが駆けつけると、カーソンは咄嗟に姿を消す。
オーブリーは自宅の父に電話をかけ、保安官に向いていないのかも知れないと心情を吐露する。父は自分を信じて本能に任せるように促す事でオーブリーを励ますと、悪いサンタと戦うのが我が家の宿命なのだと説く。クーパーは町を封鎖してでも、朝までに犯人を捕まえる意向を示す。オーブリーはヤクの売人のカーソンには犯行の動機が不十分だと犯人説に疑義を呈すと、真犯人が不倫やポルノに腹を立て、罰を与えているのだという見立てを示す。クーパーはそれを退け、町中を隈無く捜索する様に命じる。
オーブリーは広場でジムから押収したノートの中に、五年前の12月26日にモンタナの田舎町で起きた連続殺人事件を報じる記事と共に、ジムが当時そこにいた記録が残っている事に気付き、ジムが真犯人の可能性をクーパーに報せる。オーブリーとクーパーは、ジムが寝泊まりするトレーラーハウスに押し入るが、手掛かりは掴めず、空振りに終わる。
クーパーは電話で町長に殺人鬼の出没を伝えようとするが、その矢先に町長の家に殺人サンタが現れ、町長を絞殺する。殺人サンタは屋内に侵入し、今まさにセックスに興じようとしていたティファニーを鹿の角で串刺しにして、恋人デニスを頭部を斧で叩き割って惨殺する。殺人サンタはティファニーの幼い妹に、血塗れのキャンディを手渡し、その場を後にする。
オーブリー達はパレードで賑わう通りでジムを発見し、逮捕すると、事務所の留置場に入れる。ジムはイブに誰もが楽しそうにしている一方で、自分には幸せな事が何一つ無いとその不遇を嘆き、容疑を否認する。オーブリーはジムによる犯行も不自然だと訝るが、クーパーはそれを認めず、モーテルに戻って証拠を探してくる様に命じる。
オーブリーはモーテルに出入りするカーソンを見つけると、銃を構え、両手を上げる様に命じる。カーソンもまた銃をオーブリーに向ける。オーブリーはカーソンの額を撃ち抜いて射殺する。その時、オーブリーはそこにある小さな包みを見て、いずれの殺害現場にも同じ包装のプレゼントがあり、それを出勤前の自宅でも見た事を思い出す。オーブリーはそれを直ちにクーパーに報せ、自宅に急行する。クーパーはデスクに置かれたプレゼントを開封し、中に入っていた石炭の欠片を見て、その真意を計り兼ねる。その時、殺人サンタは、帰ろうとしたジャイルスを不意を突いて鎌で殺し、事務所を停電させる。殺人サンタは事務所に侵入するや否や、クーパーを火炎放射器で焼き殺す。
オーブリーは自宅の居間で、椅子に据わったまま腹を切り裂かれて死んでいる父を発見し、慟哭する。オーブリーは隠れていた母を見つけると、犯人を捕まえる決意を示して、事務所に向かう。一方、ブレンダは殺人サンタから逃れ、密室に身を潜める。殺人サンタは斧を携え、押し入ろうとする。その時、所内全てのスプリンクラーが作動する。殺人サンタは喚き声で留置場のジムに気付くと、ジムを牢から出す。ジムは殺人サンタを殴りつける。殺人サンタは抵抗するジムをメリケンサックで殴り殺す。
間もなく、オーブリーはショットガンを携え、事務所に戻り、クーパーとジムの死体を見つけると、ブレンダを探す。オーブリーは殺人サンタの斧による襲撃を退けると、非常用の斧で応戦するが、窮地に陥る。オーブリーは、殺人サンタが手放した火炎放射器を奪うと、殺人サンタを火達磨にする。オーブリーはブレンダを連れて、燃え盛る事務所から脱出する。殺人サンタは覆面を残して行方をくらます。
後日、顔面に大やけどを負った男が、煙突掃除サービスのトラックを町外れの路上に停め、父親に思いを馳せる。その昔、現役の保安官だったオーブリーの父は、火炎放射器で妻を焼き殺したロナルドの前に駆け付けると、投降に応じないロナルドを銃撃した。その拍子にタンクのオイルに引火し、ロナルドは火達磨になって死んだ。ロナルドの息子はその一部始終を傍のトラックで見ていたのだった。殺人サンタの正体、ロナルドの息子はトラックで町を離れる。