チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

マンチェスター・バイ・ザ・シー

ケネス・ロナーガン監督作「マンチェスター・バイ・ザ・シー」("Manchester by the Sea" : 2016)[BD]

兄の急逝により思いがけずその息子の後見人に指名された男が、未だ断ち切れぬ悲惨な思い出が残る郷里の街に戻り、葛藤しながらも兄の息子と心を通わせていく様を描くドラマ作品。

 

2015年の始め、ボストン。リーは倉庫の様な狭い部屋で独り暮らしをしながら、アパートの修理作業やゴミ出し、雪かきなどを担う便利屋として働いているが、無愛想で態度が悪い為に客から苦情を受け、雇い主から叱責される。またリーは酒に酔うとしばしば殴り合いの喧嘩を始める。リーは数年前まで妻子と暮らしていたマンチェスター・バイ・ザ・シーで起きた悲惨な出来事の思い出から今も尚立ち直れずにいた。

ある日、リーは、予てからうっ血性心不全を患い、余命を伝えられていた兄ジョーが入院中のビバリーの病院で危篤に陥ったとの報せを受ける。リーは仕事の代番を頼むと、直ちに車でビバリーに向かう。リーは病院に到着するや、ナースからジョーが一時間前に心停止で死んだと伝えられる。ジョーの親友ジョージは、船の点検中にジョーが倒れたのに気付き、通報した事を明かすと、ミネソタに住む叔父ドニーとリーの元妻ランディにジョーの訃報を伝える意向を示す。リーは遺体安置室でジョーの遺体と対面する。

リーはジョーの息子で高校生のパトリックに訃報を伝えるべく、彼が暮らすマンチェスターに向かう。リーはパトリックが幼い頃から親交があり、ジョーを交えて釣りに出かけたりしていたが、リーがマンチェスターを離れてからは疎遠になっていた。リーはパトリックがグロスターでホッケーの練習試合に出ていると知り、会場を訪ねると、パトリックにジョーの訃報を伝え、病院へ連れて行く。パトリックは動揺もそこそこに、遺体を一瞥しただけで病院を後にする。

夜、リーはパトリックを家まで送っていく。パトリックは恋人のシルヴィと男友達二人を呼び、ジョーについての思い出話に興じる。パトリックはリーにシルヴィを泊める許可を求め、同じ部屋で寝る事へのシルヴィの親への口裏合わせを頼む。リーはジョーがそれを了解していたと知って認める。パトリックはジョーの元妻で酒癖が悪くて離婚したエリースに訃報を伝えるべきか尋ねるが、リーはエリースがどこに住んでいるのか知らないと答える。しかし、パトリックはエリースとメールで密かに連絡を取り合っており、ジョーの訃報をエリースに伝える。

翌日、リーは葬儀社に連絡する。パトリックはホッケーのコーチから数日練習を休むよう促される。放課後、リーはパトリックを連れて、弁護士の事務所へジョーの遺言を聞きに行く。弁護士はジョーがリーをパトリックの後見人に指名していた事、パトリックの養育費、リーのマンチェスターへの引っ越しと生活が落ち着くまでの経費の支給など、綿密に計画を立てていた事を明かす。リーは相談も無く決められていた事に困惑し、後見人になる事に難色を示す。リーがマンチェスターで再び暮らす事を拒むのには理由があった。

数年前まで、リーはマンチェスターでランディと幼い娘スージーとカレン、産まれたばかりの赤子スタンと幸せに暮らしていた。ある夜、リーは家に気の置けない男友達を大勢連れ込んで、酒を飲みながら馬鹿騒ぎに興じていたが、ランディに咎められ、集まりはお開きになった。皆が帰り、ランディが寝た後、リーは酒を買いに酔った状態でコンビニに出かけた。リーが帰宅すると、家は火事で全焼しており、ランディは救出されて九死に一生を得たものの、二階の寝室にいた子供達は全員焼け死んだ。リーは警察の事情聴取に対し、外出する前に暖炉を付けたものの、スクリーンをするのを忘れた為に、薪が転がり出たのだろうと証言した。警察はリーの過失を認めるも、誰でも犯しうる行為であり、罪には問わない意向を示した。リーは衝動的に傍にいた警官から拳銃を奪い、自殺を図るも制止された。程なく、リーはランディと離婚し、マンチェスターからボストンに移り住んだのだった。

リーはパトリックに自らが財産を管理する後見人になった事を伝えると、ジョーが所有する船の維持費が高額な事から売却に言及する。二人はジョージの元を訪ね、ジョーの船の具合について尋ねる。ジョージは船のモーターが壊れかけており、修理にも金がかかる一方で、係留しておくだけでも維持費がかかる事を明かす。パトリックは船の売却とボストンへの移住を頑なに拒否すると、エリースと連絡が取れる事を明かす。リーはパトリックを連れてビバリーの葬儀社を訪ね、その墓地での埋葬を手配する。リーは寒い為に春を待って埋葬し、それまでは遺体を冷凍庫で保管する意向を示すが、パトリックはそれに反発する。パトリックはバンドの練習の為に二股をかけている別の恋人サンディの家に送ってもらう。バンドの練習後、パトリックはサンディの部屋で宿題をすると偽り、セックスしようと企てるが、母親のジルに邪魔される。パトリックを迎えに来たリーは、ジルから夕食に誘われるが断る。その夜、ランディが連絡を寄越し、葬儀への参列を希望すると、新しい夫ジョシュとの間にできた子を妊娠しており、出産が近い事を明かす。リーは戸惑いを覚える。

程なく、葬儀の日を迎える。ランディはジョシュと参列する。教会での葬儀と家でのパーティが恙なく終わると、パトリックはシルヴィを呼ぶ許可をリーに求める。リーはシルヴィへの嫌悪感を示し、それを拒むと、直ぐにもボストンに引っ越す意向を示す。パトリックはどこでも働けるリーがマンチェスターに移り住むよう求めると、自らにはマンチェスターに友人、彼女、ホッケー、バンドがあり、またジョージの船でバイトしており、ジョーの船のメンテもしたいのだと訴える。その夜、パトリックは冷凍庫を開けた際に飛び出した冷凍チキンを見て、パニック発作を起こして泣き出す。リーはパトリックの身を案じる。パトリックは部屋で落ち着くと、ジョーの遺体を冷凍したくないのだと訴える。リーはジョーの意向であり、それしか方法が無いのだと諭す。

翌朝、リーはパトリックに今学期までマンチェスターに留まる事を認め、その間にボストンでの受け入れ態勢を整える意向を示すが、パトリックは自らの意見が反映されない事に反発する。パトリックはジョージの船でバイトした金をモーター新調の為に貯めている事を明かす。その後、リーは一旦ボストンの自宅に戻り、私物をジョーの家に持ってくる。リーは衝動に駆られてジョーの部屋の窓ガラスを叩き割る。そこへエリースから電話が入るが、リーは返事をせずに切る。間もなく、それを知ったパトリックは電話を切った事を非難すると、エリースがエセックスに住んでおり、婚約者を紹介したいと伝えてきた事を明かす。パトリックはリーに最悪の後見人だと詰ると、酒を止めたエリースが一緒に暮らしたいと望んでおり、自分もそれに応じれば生活を変えずに済むと説く。リーはそれを否定すると、エリースがまともになっていたら会う意向を示す。

リーはマンチェスターで当座過ごす夏の間の仕事を探し始める。リーはパトリックに頼まれ、再びサンディの家まで送っていく。パトリックはジルがリーに好意を持っている事を明かすと、サンディと二人きりで過ごす妨げになるジルを世間話でもして引き止めるよう請う。リーは渋々それに応じるが、ジルは寡黙なリーと間が持たずに音を上げる。パトリックはサンディとのセックスの機会を不意にする。

後日、リーはパトリックを連れてエセックスのエリースの家を訪ねる。エリースはパトリックとの久しぶりの再会を歓ぶと、婚約者ジェフリーを紹介する。リーは挨拶だけを交わしてパトリックを置いていく。エリースはパトリックにランチを振る舞うが、緊張して互いに打ち解けぬまま、パトリックは失意の内にリーと帰路に就く。リーはエリースがまともになっていた事を認めるが、パトリックはリーが自分をエリースに任せて追い払おうとしているのでは無いかと問い質す。その夜、ジェフリーがパトリックにメールを寄越し、此度の訪問に感謝する一方で、エリースに母親を求めるのは時期尚早だと説き、訪問の際には自分に連絡するよう促す。

リーはパトリックの心情を慮り、ジョーの所有する銃を売ればモーターを買えると提案する。パトリックは早速モーターを新調し、船にサンディを乗せて楽しむ。その後、リーは家でパトリックとサンディを二人きりにしてやる。リーは散歩で時間を潰している内に、偶然ランディと出会す。ランディは産まれたばかりの赤子ディランを紹介すると、二人きりでランチをして話し合う事を希望するが、リーは難色を示す。ランディは火事の後にリーを酷く責めた事を心から詫び、もう恨んでおらず、今でも愛していると涙ながらに訴える。リーは激しく動揺しながらも、その言葉で救われたと説くと、ランディが幸せになるよう願って、その場を後にする。リーはその足でバーに寄ると、客と大喧嘩を始め、偶々居合わせたジョージに助けられる。顔を怪我したリーは、ジョージの家で妻ジャニーンに介抱してもらい、すすり泣く。

翌日、リーは調理中にソファでうたた寝し、スージーとカレンに燃えていると伝えられる夢を見て飛び起き、大事を免れる。リーは再びジョージの家を訪ね、パトリックの処遇に関する重大な決断について要請する。後日、リーはパトリックに、夏からボストンに戻って再び便利屋として働く事、ジョージの息子達が巣立つのに合わせてパトリックはジョージの家で養子として暮らす事、家と船は貸し出し、家はパトリックが成人になったら、船は免許を取ったらどうするか考えれば良い事、ジョーが用意した経費はジョージに譲る事を今後の方針として伝える。パトリックは逃げるのかと詰る。リーはパトリックをマンチェスターに残す為だと答える。パトリックはリーがここに住めば良いと訴えるが、リーは過去を乗り越えられない為に無理なのだと説く。リーは涙するパトリックを抱き締める。

やがて春になり、親族でジョーの埋葬が執り行われる。その後、リーとパトリックは散歩しながら今後の事について語り合う。リーはパトリックがジョージの家に七月に移る段取りを伝えると、パトリックがボストンの大学へ進学して遊びに来た時の為に、新しい部屋を探しているが見つからない事を明かす。パトリックは進学を希望していない事を明かす。その後、二人はジョーの船で釣りに出かけ、親交が続く様子が示唆される。

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