チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

おみおくりの作法

ウベルト・パゾリーニ監督作「おみおくりの作法」("Still Life" : 2013)[DVD]

民生係の職員として、地域で孤独死した住民の身寄り探しから葬儀の手配までを手掛ける男が、解雇の憂き目に遭い、最後の案件を全うする為に奔走する様を描くドラマ作品。

 

ロンドン・ケニントン地区の民生係に20年以上勤務する職員ジョンは、孤独死した住民の身寄り探しから葬儀の手配までを一人で手掛けている。44歳独身で友達付き合いすらしないジョンは、不器用だが几帳面な性格で、愚直に故人と向き合い、徹底した調査と世話を行う事を信条にしており、案件を終える度に故人の写真を自らのアルバムに移植し、保管している。ジョンは故人の身寄りを見つけると、葬儀への参列を求めるが、遺族からはしばしば故人への関わりを拒まれる。そういう時、ジョンは遺族に代わって遺品等から故人の人となりを推察しては弔辞をしたため、故人が公営合同墓に埋葬されるまで、一人で丁寧に見送っている。その一方でジョンは、墓地の中でも一際見晴らしが良い場所を、既に自分が物故する時の為に備えて購入している。

ある時、ジョンの元に、死後数週間経った状態で見つかったという故人ビリー・ストークに関する連絡が入る。ジョンはビリーのアパートを訪ね、そこが自分のアパートの真向かいでありながら、これまで面識が無かった事を知る。ジョンは大家と共に、酒瓶などで散らかったビリーの部屋に入ると、遺品の中から身寄りに繋がりそうな物を探し、娘と思しき少女の写真の数々を収めた古いアルバムを見つける。間もなく、ジョンは上司のプラチェットに呼び出される。プラチェットは部署がダリッチ地区と合併するのに伴い、ジョンの業務を後任ピルジャーが引き継ぎ、経費削減の為にジョンが解雇される運びとなった事を伝える。プラチェットはジョンが個別の案件に時間を掛け過ぎだと説くと、最後の案件を三日で終えるよう命じる。それを受け、ジョンは早速ビリーの身寄り探しに着手する。

ジョンはアパートの前で廃棄直前だったビリーのレコード集を持ち帰り、その内の一枚からネガの束を見つける。ジョンは現像した写真の中に、若かりし頃のビリーがオーカム製パンの帽子を被っているのを見て、直ちに列車でオーカムへと向かう。パン工場を訪ねたジョンは、ビリーを良く知るというシャクティから話を聞く。シャクティはビリーが酷く短気な性格で、会社と組合の双方と悶着を起こした末に社員の休憩時間を増やして突然辞めてしまい、その際にパイに使う豚肉に小便をしていった事を明かし、兄同然の親友だった時期もあったと述懐する。ジョンはアルバムの写真の少女について、ビリーの愛娘では無いかと尋ねるが、シャクティは関知しておらず、ビリーが辞めた後にフィッシュ・アンド・チップス店の女とウィットビーへ越した事を伝える。ジョンは葬儀への参列を打診するが、シャクティは難色を示す。

ジョンはロンドンに戻らず、プラチェットに病欠と連絡して、バスでウィットビーへ向かう。ジョンは町のフィッシュ・アンド・チップス店を手当たり次第に回る内に、20年ほど前にジョンと一緒に越してきたメアリーが営む店を見つける。メアリーはジョンが過去について何も話さなかった事、船の仕事を廃業してからは店を手伝っていたものの、飲んだくれて当たり始める内に出ていった事を明かす。また、メアリーはアルバムの写真の少女について関知していないものの、それとは別にビリーが知らない娘と孫がいる事を明かす。ジョンは葬儀への参列を打診するが、メアリーはそれを拒む。

ロンドンに戻ったジョンは、ピルジャーがまだ調査の済んでいない故人の遺体を次々に火葬し、散骨する様を目の当たりにする。プラチェットはピルジャーの働きぶりを評価すると、葬儀は死者の為のものでは無く、弔う者がなければ不要だとジョンに諭す。ジョンはビリーの案件について、数日の猶予をプラチェットに願い出る。プラチェットはジョンが自分の時間を割いて行う分には構わないと答える。

ジョンはビリーの消息を探るべく、刑務所を訪ねる。責任者はビリーが浮浪や暴力で短い服役を繰り返していた事、公文書館には面会記録が無かった事を伝える。ジョンは内務省を訪ねると、ビリーの娘ケリーによる面会記録を探し当て、彼女の住所を知る。ジョンはビリーのアルバムの写真を新品のアルバムに丁寧に移し替えると、列車でケリーが暮らすトゥルーロへ向かう。

ジョンはケリーが働くドッグ・シェルターを訪ねると、ケリーにビリーの訃報を伝え、アルバムを手渡す。ケリーは動揺しながらも、ビリーが手紙すら寄越さない為に腹を立てていた事、ビリーが出所前に誤解を解いて謝りたいというので、八年ぶりに母と面会に行き、身勝手に家族を捨てた事を責めたところ、ビリーが憤怒して出ていってしまい、それ以来会っていない事を明かす。ケリーはジョンを自宅に招くと、フォークランド紛争のパラシュート部隊で親友だったというジャンボとビリーが一緒に撮った写真を見せ、ジャンボが10年前にビリーを捜していると連絡してきた事、また三年前に母が死んだ事を明かす。ケリーはジョンに謝意を示しながらも、葬儀への参列には難色を示す。ジョンはロンドンに戻ると、老人ホームで暮らすジャンボを訪ねる。ジャンボはビリーが乱暴でありながら、命の恩人だと述懐すると、除隊後にホームレスになった事を明かす。ジョンはビリーを知るという二人組のホームレスに話しを聞きに行く。二人はビリーに何年も会っていなかったとしながらも、ビリーに関する思い出話を語る。

ビリーの身寄りの調査を一通り終えたジョンは、自腹で立派な墓石を購入し、更に自分の墓地を譲渡し、葬儀の手配を済ませる。ジョンはオフィスの片付けを終え、退去しようとした矢先に、ケリーから葬儀へ参列する意向を伝えられ、途中の駅で会う約束をする。ジョンはプラチェットの車に小便をかけて役所を後にすると、普段より小洒落た格好でケリーに会いに行く。ジョンはケリーに墓地や葬儀について熱を込めて説明する。ジョンの姿勢に好感を持ったケリーは、駅で別れる際に、葬儀後改めて会いたいとジョンに申し出る。ジョンは快諾する。ジョンはロンドンに戻るや、雑貨屋で犬の絵柄がプリントされたカップを二つ購入する。その直後、ジョンは店の前の道路を渡る際に、浮かれていていつもは必ず行う目視を怠り、バスに撥ねられて死ぬ。

後日、教会で一人の参列者もない中で、ジョンの葬儀がひっそりと行われる。期せずして、その日はビリーの葬儀も行われ、ジョンが呼びかけたケリー、メアリーと娘と孫、シャクティ、ジャンボ、ホームレスら全員が参列する。ケリーはジョンが姿を見せない事を不思議に思う。ジョンの亡骸は教会関係者によって公営合同墓に埋葬される。その直ぐ傍の小道を、ケリー達はジョンの死を知る由も無く、和やかに語らいながら通り過ぎていく。間もなく、ジョンが生前に手厚く葬ってきた、ビリーを始めとする無数の故人の霊達がジョンの墓の周りに続々と集まってきて、ジョンを弔う。

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