チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

美しい星

吉田大八監督作「美しい星」(2017)[BD]

平凡な四人家族の父が火星人、息子が水星人、娘が金星人として覚醒し、一家がそれぞれの使命に基づき人生の転換を図っていく様を描くSF作品。

 

ニュース番組で天気予報のコーナーを担当する気象予報士の大杉重一郎、専業主婦の妻・伊余子、フリーターの一雄、大学生の暁子は都内に暮らす平凡な中流家庭。2016年1月、日本では季節外れの暖かさが続き、温暖化の影響が懸念される中、大杉は予報を外す日が続き、番組キャスターの今野に冷やかされる。ある夜、大杉はアシスタントの予報士・玲奈とホテルで密通した後、車で高速を走行中、閃光を発する円盤に異常接近する。

翌朝、大杉は田んぼのど真ん中に埋もれた車内で一人きりで目覚める。大杉は局に戻ると、平然と代打の出演を終えた玲奈にどう帰ったのか問い質すが、玲奈は昨晩の件について関知しておらず困惑する。大杉は取材中に渋滞にハマって戻れなかったと今野に弁解し、その後も出演を続けるが、予報を外し続ける。大杉は空を見る為に屋上へ上がり、空飛ぶ円盤を捜しているADと遭遇する。大杉はADに円盤を見て記憶を失くした事を話す。ADはアブダクションで偽の記憶とすり替えられ、体内にインプラントが施されている可能性を指摘すると、大杉にUFOに関する本を貸す。大杉はその話を真に受け、心配し始める。程なく、NASAが火星表面に存在する水の観測に成功し、生命発見の可能性が高まる。大杉は出演の待機中にそのニュースを見るなり、感極まって落涙する。

野球選手の夢を諦め、大学卒業後にフリーター落ちした一雄は、現状に不満を抱えながらメッセンジャーのバイトに精を出す。ある時、一雄は自転車で走行中に車に轢かれそうになり、その車を追いかけていって非難する。それは参議院議員・鷹森の公用車であり、一雄は鷹森から正式に謝罪してもらった上に名刺を貰い、改めて連絡するよう促される。その後、一雄はナンパした女とプラネタリウムに訪れると、強引に体を求めて拒絶される。不貞腐れた一雄は、スクリーンに映し出された水星に圧倒される。伊余子はセレブな女・丸山が開いた会合に参加し、ボトル入りの天然水「美しい水」を販売する会員制ネットワークビジネスに勧誘される。伊余子は丸山の甘言に翻弄され、自宅に大量の水を仕入れる。暁子はその見目麗しい容姿ゆえに、構内で言い寄られる事に辟易し、孤独に過ごす。暁子は広告研究会の栗田にミスコンへの参加を強く勧められるが拒む。その夜、暁子はストリートミュージシャン・竹宮の演奏に惹かれ、その場でCD「金星」を購入する。竹宮は明日金沢に帰る意向を示す。

大杉はUFOや宇宙人の本を読み耽る。伊余子は水の販売に励む。暁子は金沢まで竹宮のライブを観に行き、料亭での食事に誘われる。暁子は金星を聴いて懐かしく感じた事を明かす。竹宮は金星を作る過程で空飛ぶ円盤を目撃し、自らが金星人だと自覚するに至った事を明かすと、暁子も同じ金星人だと指摘する。竹宮は暁子が自分の美しさを憎んでいる事を看破すると、地球の美しさの基準が自分達によって作られたのに、それがあらゆるところで歪められ、混乱している為に負い目を感じてしまうのだと説く。竹宮は円盤が現れるという浜辺へ暁子を連れて行く。竹宮が空へ向かってジェスチャーを始めると、暁子もそれに倣う。間もなく、空の彼方に二機の円盤が出現し、空を舞う。同じ頃、一雄は鷹森の秘書・黒木に呼ばれ、後援会の手伝いを頼まれる。一雄はエレベーターで鷹森、黒木と移動中、拳銃を持った男に襲撃される予知夢を繰り返し見て当惑するが、鷹森の暗殺を阻止する。一方、大杉は自宅上空にやってきた閃光を発する円盤と遭遇する。三人は三様の覚醒を果たす。

翌日、大杉は自らの出演時に、太陽系連合の火星人としての立場から、地球規模の温暖化が進行して被害が拡大している現状を変えるべく、地球人に行動に移すよう訴えかけ、最後に火星人のジェスチャーでアピールする。予定外の大杉の行動は局員らの顰蹙を買い、今野とプロデューサーは大杉を窘める。大杉は意に介さず、温暖化の勉強に躍起になる。伊余子は水の販売に腐心する一方、大杉の奇行を心配する。暁子は歪んだ美しさを元に戻すべく、栗田にミスコンへの出演を申し出る。一雄は環境問題に熱心に取り組む鷹森に気に入られ、秘書の一人として事務所で働き始める。

二月に入っても暖冬が続く。大杉は出演時に温暖化による被害を熱弁し、地球人に危機意識を持つよう訴えかけ続ける。ある夜、一雄は忘れ物をして事務所に戻ると、執務室で鷹森が黒木に足蹴にされ、許しを請うている様を目の当たりにする。黒木はそれに気付くと一雄を念動力で吹き飛ばす。一雄が目を覚ますと、黒木は自らが水星人で、鷹森を利用しており、地球人が決められない事を決めてやるのが使命である事を明かし、一雄もまた水星人として覚醒したはずだと指摘する。一方、伊余子は会員の集いで販売成績を賞賛される。ゲストに招聘された鷹森は、地球の美しさが環境破壊で危機に晒されていると訴える。黒木は伊余子に挨拶に現れ、大杉の番組での姿勢を高く評価すると、高い位置から地球の未来を見ているという点で自分達と火星人の大杉とは共通していると説き、大杉との意見交換の機会を求める。

大杉の言動により、番組の視聴率は跳ね上がり、局内でも好評を博す。大杉の後釜に就く事が内定していた玲奈はそれが面白くなく、大杉を非難した上で決別する。一方、暁子は処女にも関わらず妊娠の兆候に気付く。伊余子はそれを知るなり暁子を病院に連れて行く。暁子は自らが金星人であり、金沢で見つけた仲間と繋がっているのだと主張する。伊余子は暁子が妊娠の言い訳に金星人を使っているのだと邪推する。一雄は伊余子に連絡を受けて暁子と会う。一雄は暁子が金星人だと知ると、自らが水星人だと明かし、この偶然には意味があるはずだと説く。暁子は兄妹でなぜ違う星なのか問う。一雄は地球での使命が違うのだろうと推察する。

IPCCの新たな決定を受け、鷹森は今野の番組にゲスト出演する。鷹森はIPCCの考えを真っ向から否定し、温暖化は人為的ではなく、長期に渡る気候変動サイクルだという見地から持論を展開する。大杉はその場に乱入すると、人類の危機を放置せず、今すぐ手を打つべきだと訴える。鷹森はそれを一蹴する。一雄は黒木と一緒に、食堂のテレビでその模様を見守る。黒木は、人間が自らを自然の一部だという事実を理解できず、自然を支配できると思っており、気候変動さえも勝手に責任を感じて無駄に大騒ぎしているのは思い上がりだと侮蔑し、自然とは地球と宇宙のエネルギーを交換するプロセスと結果に過ぎず、人間には関与する余地などないと説くと、一雄もまた太陽系連合の仲間なのかと尋ねる。一雄がそれを否定すると、黒木は一雄の希望を尋ねる。一雄は自らが将来選挙に立つ時のバックアップを請う。黒木は一雄が鷹森の娘婿として後継者になれる見込みを示す。一雄は鷹森より上手くやれると自負する。スタジオから退いた大杉は、主調整室に押し入って映像をジャックし、自らの主張を訴えかける。鷹森は憤慨してスタジオを後にする。

大杉は番組を追われる。伊余子は大杉の奇行が災いして、一雄が水星人と言い出し、また暁子が金星人の子供を産むと言い出したのだと責め立てる。大杉は暁子の妊娠について竹宮に質すべく、金沢のライブハウスに赴くが、竹宮が行方を晦ました事を知る。バンドメンバーのイズミは、竹宮が方々でカネを借りまくっている女たらしであり、「金星」も自らが作った曲だと明かし、竹宮を人間のクズだと評する。東京に戻った大杉は、竹宮が暁子と生まれてくる子の健康を祈ると伝言を残して金星に帰ったと、暁子に嘘をつく。伊余子は暁子の出産に反対する。

伊余子は自らが主催するセミナーの場で、会員から採水工場が捏造であり、その実態が無い事を指摘される。伊余子はその場から遁走すると、丸山の元へ確認に行くが、丸山が既に廃業しているのを目の当たりにし、全てが嘘だった事を知る。一方、大杉は局から鷹森との訴訟トラブルに対する責任を追求される。暁子は失意の内に、半年後のミスコン本番用の衣装合わせに臨み、妊娠三ヶ月を明かす。

今野は番組で謝罪し、大杉もそれに続いて謝罪する。立会人の黒木は、太陽系連合が捏造であり、実在しない団体だとするカンペを読ませるよう指示する。大杉はそれを拒否し、火星人として地球が破滅に向かうのを放っておけないのだと主張する。それを受け、黒木は一雄を向かわせる。一雄と大杉は本番中にも関わらず、それぞれの立場から主張をぶつけ合って口論する。黒木は大杉の言動を理解しかね、本当の目的を尋ねる。大杉は太陽系連合として地球を危機から救いたいのだと訴える。黒木が地球を救うか救わないか、そもそも救う価値があるのか話し合いで決める事を提案すると、地球の何が美しいのか質す。大杉はあらゆる自然だと答える。黒木は地球人が科学技術で自然から逃れる事ができ、そのせいで増えすぎたのだと説く。大杉は方向転換すべきだと応じるが、黒木は目先を変えて解決した気になるのは地球人的な発想だと説く。黒木は、自然が美しいのではなく、人間が美しいと感じるのであり、人間がその自然に自らを含めない事を批判すると、究極の美しい自然には人間が存在せず、滅びる事が自然のサイクルの一部に過ぎないと、人間も気付き始めたのだと説く。黒木はボタンスイッチを取り出し、本当の意味で美しい星の為に、これを押して手助けする意向を示すと、滅びたとしても新しい人類の為に化石燃料に生まれ変わるだけであり、未来を考えるとはそういう事だと説く。大杉は太陽系連合としてそれに真っ向から反対する。黒木は連合の意志を証明するよう求める。大杉は円盤がその証拠だと主張し、屋上へと駆け出す。大杉は、風雲急を告げる空に向かって火星人のジェスチャーを繰り返し、円盤を到来させようと躍起になる。間もなく落雷が生じ、大杉が力尽きると、黒木は時間切れだと告げてボタンを押す。大杉は吐血して倒れる。黒木は一雄にボタンを投げ渡すと、カウントダウンが始まったと告げ、大杉に駆け寄る。

鷹森は突然離党し、新党を結成する。一雄は秘書の職務を解かれ、病室の大杉を見舞いに訪れる。一雄は病室を出るとボタンスイッチを解体し、空っぽだと知ってすすり泣く。一雄は遅れてやってきた暁子に、大杉に病気の事を話さぬよう釘を刺す。暁子は竹宮が金星に帰ったのが本当なのか大杉に質す。大杉は捜しても見つからなかったと答える。暁子は嘘をついていたら地球人になってしまうと諭し、真実を語るよう求める。それを受け、大杉は竹宮が地球人の女たらしであり、クスリを飲ませて眠っている間に事に及ぶ常習犯だと明かすと、暁子もまたその被害に遭ったと推察する。暁子は開き直り、地球で金星の子を産むには竹宮という触媒が必要だったのだと結論付けると、大杉に末期がんで余命一ヶ月という真実を伝え、ここで死ぬのは地球人の体だと慰める。

間もなく、茫然自失する大杉は、目の前に玲奈が現れ、チャンスを与えようかと尋ねられる幻覚を見る。見舞いに来た伊余子は、水の販売を止めた事、家族で海外旅行に行くことを願って手を出した事を明かす。その後、一家は大杉の意志を汲み、夜中に大杉を病院から連れ出すと、円盤が来るという福島県の山中へ車で向かう。車を降りると、一雄が大杉を担ぎ、一家は険しい森の中を彷徨い歩く。道中、一頭の牛が現れ、一家を山頂へと導く。山頂に円盤が来ている事を知ると、大杉は一人で円盤へと駆け出す。次の瞬間、大杉は円盤の中に移動する。船体から発せられる声は、大杉の任務終了を労い、本当の家族が待つ故郷の火星へ帰ろうと促す。大杉はそれに応えず、窓から遥か彼方の地球を見下ろし、山頂で自分自身を含む一家四人が、寄り添って空を見上げている様を眺める。

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