ジェシー・ネルソン監督作「クーパー家の晩餐会」("Love the Coopers" : 2015)[BD]
それぞれに苦悩や問題を抱えた大家族の面々が、毎年恒例のクリスマス晩餐会の為に一堂に会し、衝突を重ねながらも蟠りを解消し、絆を深めていく様を描くコメディ・ドラマ作品。
クーパー夫妻はクリスマス休暇を目前に控え、結婚40年目にして離婚を決意する。夫サムが新婚当初から希望しながらも多忙で延期を繰り返している内に機を逸し、退職後ならと計画していたアフリカ旅行を、妻シャーロットに改めて提案したところ、シャーロットがそれを拒んだのがきっかけである。夫妻はそれぞれ離れて暮らす息子ハンクと娘エレノアがいるが、二人とは別に娘リンジーを若くして病死で失っており、その件が長らく蟠りになって現在まで尾を引いている。夫妻は例年同様、自宅に家族を招いてクリスマスパーティを祝う手筈を整えながらも、離婚については時期を見計らって打ち明ける事で合意する。
クリスマスイブ当日、夫妻はハンクから幼い孫マディソンを預かると、愛犬ラグズと共にサムの叔母で認知症を患うフィッシーが暮らす老人ホームを訪ねる。夫妻は老人達と交流した後、フィッシーを連れ出し、スーパーに買い出しに訪れる。その最中、夫妻はいつ離婚を切り出すかで揉める。シャーロットは今年が一家団欒を楽しめる最後のチャンスであり、離婚は最後まで伏せ、完璧な思い出を作る事を希望する。サムは子供達が理解してくれるはずだと説き、騙し討の様な事はせず、事前に話すべきだと主張する。その後、夫妻はマディソンと共にスノースライダーに興じた後、昔話に花を咲かせながら帰途に就く。帰宅した夫妻は料理の準備に取り掛かる。サムは改めて旅行を提案し、それが互いを取り戻す旅になると説く。シャーロットは子供達への心配を理由に断る。サムはリンジーの事もあり、シャーロットが目を離した隙に問題が起こる事を恐れているのだと諭す。シャーロットはアフリカ旅行が今の自分には無意味だと説く。サムは子育てでシャーロットが変わってしまったと詰る。
元デパートのカメラマンのハンクは妻アンジーと離婚して間もなく、更に失業が重なった事で、養育費の支払いにも事欠いている。ハンクは失業を両親に伏せつつ、新年までになんとか再就職する為に面接を繰り返すも連敗が続く。一方、シャーロットの父バッキーは早くに妻を亡くしており、若いウェイトレスのルビーに会うために、5年間毎日同じレストランに通っている。不遇の幼少期を過ごしたルビーは人と交わるのが苦手だが、理解者のバッキーに唯一心を開いている。ところが、バッキーはその日を最後にルビーが店を辞める事を、ルビーと他の客との会話を通して知る。ルビーは言い出せなかったのだと弁解すると、バッキーの人生をやり直せるという言葉に触発され、新天地のミシシッピでやり直す意向を示す。バッキーはルビーが自分に相談一つしてくれなかった事に気分を害し、変えるべきは場所では無く人に心を許さない孤独なルビー自身だと説き、臆病者だと叱って店を後にする。その後、バッキーは花屋でハンクと落ち合う。バッキーはハンクに失業の件を両親に話す様に促すと、離婚は人生の一端に過ぎず、次の相手を探す様に勧める。バッキーはレストランに戻り、ルビーに和解を申し出るが、その際にルビーの手首にリストカットの痕を見つける。バッキーはルビーが臆病では無く、勇敢で美しく豊かな心を持っており、生きる哀しみや違う人生への憧れは誰もが抱いているものであり、いつか遠い過去になると説くと、ルビーが素晴らしい存在であり、その為に毎日通っていたのだと明かす。
作家を営むエレノアは空港に到着するも、婚約者に捨てられた傷が未だ癒えず、また自分を不良品の様に憐れむ両親に会う時間を極力減らすべく、バーで時間を潰す。エレノアはそこで、到着先の空港が大雪で閉鎖されて立ち往生する、軍人ジョーと出会う。ジョーはエレノアとは宗教観や政治信条など真逆の性格だが、エレノアはそんなジョーと意気投合する。エレノアは既婚者の恋人がいる事を明かすと、自らには結婚願望が無く、その理由が愛は色褪せるからだと説く。ジョーは既婚者との交際で人生を無駄にしない様に諭す。エレノアはそれに反発し、父を喜ばせる為に戦地に行く方が無駄だと詰る。ジョーは気分を害して、その場を後にする。程なく、エレノアはジョーを探し出すと、言い過ぎた事を詫び、和解する。エレノアは欠航が当分続くと見込まれる事から、ジョーに自分の恋人を装って実家に来る様に頼み込み、ジョーは難色を示しながらもそれに応じる。エレノアはジョーを連れて、列車で実家に向かう。エレノアとジョーは、馴れ初めなどの設定を考える内に互いの事をより知っていく。その際、エレノアは妹を病気で失った事や、自分が愛されない人間であるが故に人間関係に躓く事を明かす。
シャーロットの妹エマは幼い頃からずっとシャーロットと折り合いが悪く、毎年パーティに参加する事に辟易している。モールに訪れたエマはシャーロットに贈るプレゼントを物色するが、その際に魔が差して安物のブローチを盗む。犯行は警備員に直ちに発覚し、エマは駆け付けたウィリアムズ巡査に引き渡され、パトカーで連行される。エマは自らが夫と三人の子供達と暮らす普通の主婦だと主張し、温情を求めるが、ウィリアムズは冷徹に対応する。エマはロボットの様に寡黙なウィリアムズに対し、自らが精神科医だと明かし、悩み事を聞き出そうとする。ウィリアムズは気持ちを伝えるのが苦手であり、また同性愛者である事を明かす。エマはウィリアムズが本当の自分を隠し、型通りに生きる内に孤独になっていったのだと説くと、家族がいるという話は嘘であり、自らもこれほど寂しい人生を送るとは思わなかった事を明かす。ウィリアムズはエマが嘘を付いた事に気分を害し、会話を打ち切る。エマは万引きを素直に認め、それが姉へのプレゼントだった事、また三人の子供は自らの願望であり、姉に対する劣等感や嫉妬に苛まれてきた事を明かす。混み合う街中をしばし走った後、ウィリアムズはパトカーを再びモールに戻すと、エマを温情で解放する。エマは精神科医でも無い事を明かす。ウィリアムズは姉に一番高価なプレゼントを買い、一番なりたい自分になる様にエマに促す。
ハンクの息子で高校生チャーリーは、弟のボーを連れてモールに訪れる。チャーリーはアンジーが家を出て以来、自分が不用品になった様な気がしており、両親に反発している。ボーはそんなチャーリーを昔の様に戻す為の素敵なプレゼントを探そうとモール内を奔走する。チャーリーはモールでバイトするクラスメイトのローレンに好意を抱いており、声をかけ、店から連れ出す。チャーリーはローレンに促されるままに、初めてディープキスをする。そこに性悪のブレイディが冷やかしに現れ、チャーリーを殴りつける。ボーは結局プレゼントを買えず、チャーリー共々、失意のまま帰途に就く。
日が暮れる頃、サムとシャーロットが口論しているところへ、エレノアがジョーを連れて家に到着する。ジョーは恋人を装うエレノアの意に反して、自らが婚約者だと紹介してしまう。程なく、ハンクが子供達を連れて、またバッキーがルビーを連れてやってくる。更にアンジーもやってくる。一同は居間に集まり、クリスマスソングの数々を歌い合って楽しむ。その後、一同は豪勢な料理が集まる食卓を囲む。結局、クーパー夫妻は離婚を切り出せずに乾杯の音頭を取り、一同は遅れているエマを待たずに食事を始める。程なく、エマがやってきて、家族が揃うと、シャーロットは例年同様に新年の抱負を語る様に皆に促す。エマはそれに茶々を入れ、バッキーは姉妹の思い出話を始める。一方、アンジーがハンクを詰ったのをきっかけに二人は口論を始める。ボーは二人に喧嘩をやめる様に叫ぶ。シャーロットは一年に一度のクリスマスだと説き、その場を執り成そうとする。その矢先に一時的に停電が生じる。エレノアとジョーはその機に乗じてキスをする。電気が復旧すると、一同はバッキーが意識を失っている事に気付く。
バッキーは救急搬送され、一同はラグズを残して病院へ駆け付ける。ルビーはバッキーにキスをしてICUへと送る。シャーロットは対応した医師モリシーとエレノアの様子を見て、二人が恋仲だと疑うと、エレノアに関係を問い質す。エレノアはシャーロットが予想通りの憐れむ様な反応を見せた事に辟易し、自らが望む様な娘では無いと主張する。シャーロットはそれを否定し、エレノアにジョーと幸せになる様に促す。エレノアはジョーが偽物の恋人役だと明かす。
バッキーはICUでの処置を終え、病室に移る。エマとシャーロットは眠るバッキーを間に挟み、些細な事で口論を始める。エマはなんでも手に入れ、家族と幸せに暮らす幸せ者のシャーロットには、自分の惨めさが理解できないのだと詰る。シャーロットは自分やその孫達は家族では無いのかと問い質す。
一同はバッキーの回復をラウンジで待つ。そこへモリシーがやってきて、バッキーが軽い脳卒中であり、心配が要らない事を伝える。ジョーはモリシーのエレノアに対する接し方を見て、二人が恋仲だと確信すると、エレノアに不倫を止める様に諭す。エレノアがそれに反発すると、ジョーは愛想を尽かして帰っていく。モリシーはエレノアを別室に招き二人きりになろうとする。エレノアはそれを拒み、ジョーを引き留めに行く。エレノアを待っていたジョーは、エレベーターに乗り遅れたエレノアを見て誂う。エレノアは神がどん底の自分を救う為にジョーを送ってくれのだと説き、キスをする。一方、ボーが機転を利かせて送ったメールを元に、ローレンがチャーリーに会いにやってくる。チャーリーとローレンはディープキスを始める。ハンクとアンジーはその様子を微笑ましく見守る。アンジーは恋人の家族の家に行く意向を示す。ハンクは幸せになる様に告げて見送ると、一人で佇むルビーの隣に座る。
シャーロットは子供達を二度と失うまいと思う余り、必死で子供達に掴まっている内に、自分自身を見失ってしまったのだと嘆く。サムは情熱の対象が変わっただけで、シャーロットは昔と変わっていないと諭し、二人は精一杯生きてきたのだと説く。シャーロットは翻意してアフリカ旅行を希望する。サムはそれを喜ぶが、ハンクの失業を知り、無茶はできないと説き、代わりに高級ディナーを提案する。二人は和解し、家族の前で熱烈なキスを交わす。フィッシーはその様子を見て、人生は短く、良い事だと説く。それを聞いたエマは売店を訪ね、一番高価な商品を求める。一同はラウンジでパーティを仕切り直す。エマは買ってきたシャワースツールをシャーロットに贈る。病室からやってきたバッキーは家族の和やかな様子を見守る。一同は館内BGMに合わせてダンスに興じる。サムはシャーロットと、エレノアはジョーと、ハンクはルビーと、チャーリーはローレンと、エマはボーとペアを組む。エマは自らも大家族の一員だと自覚する。バッキーは大事な物は目の前にあるのだと呟く。一方、留守番をするラグズは残されたごちそうをがっついた後、欠点だらけの家族であっても自分にはそれで十分だと心の中で独り言つ。