世間様は3連休の初日。この良き日に布団ミノムシで思いっきり二度寝をかましてしまって、ようやく睡魔が晴れた時にはもう正午前だった。起床時間を管理しようと、携帯にバイブ付きアラームを設定した上で、がっちり握りしめながら眠りに就いているのだが、慣れてしまうとスヌーズを無意識に解除してしまうのでイケない。骨の髄まで腑抜け状態だから、痛みを感じない程度の電流を流すくらいでないと覚醒できないかも知れない。
昔、大学で化学の実験中に、機器への不意な接触で感電してしまった事がある。大した電流では無く、咄嗟に手放したから事なきを得たのだが、瞬発的に全身を揺さぶる程の電流の勢いを、15年以上経った今でもよく覚えている。あれくらいの感触なら目覚ましにはアリかも知れない。あるいは、最近はどうか知らないが、バラエティ番組なんかでよく使われていた低周波治療器みたいなのも良さそうだ。とにかく刺激がないともはや満足に覚醒すらできない。ひょっとしたら、こういう欲求が昂じて、覚醒剤に手を出してしまうヒトもいるかも知れない。睡眠の管理は、現代を生きる人間にとって根源的で重要な要素に違いない。
電気を利用した目覚まし時計という発想自体、極めて平凡なアイデアで、技術的には学生でも作れそうだし、試作品くらいそこら中に転がっていそうだ。それでも実用化されていないのは、やはり何かしら障害があるんだろう。いつか科学の力で、睡眠を自在に制御できる日が来て欲しい。理想はもちろん永眠だが・・・。
映画鑑賞記
中島哲也監督作「渇き。」(2014)
突如行方を晦ました娘の捜索に乗り出した父親が、娘の謎に満ちた実像に肉迫していく様を描くバイオレンス・スリラー作品。
藤島昭和(役所広司)はその粗暴な性格が災いし、妻の桐子(黒沢あすか)と離婚、娘の加奈子(小松菜奈)は桐子の元へ残り、昭和は家を出た。その後、昭和は刑事の職を辞し、警備会社に勤める傍ら、精神科に通院し、酒浸りの荒みきった暮らしをしていた。ある日、桐子から加奈子が失踪したので探して欲しいと請われる。加奈子の所持品から薬物を発見した昭和は、元刑事であることを悪用し捜索に乗り出す。加奈子は高校3年であったが、昭和はその近況について全く関知しておらず、加奈子と付き合いのあった者達にその消息を訪ねて回るのだが、そこから見えてきたのは薬、暴力、売春などが氾濫する闇社会に、加奈子が関与しているのではないかという疑惑であった。時を同じくして、昭和の近辺では陰惨な殺人事件が相次ぎ、昭和は容疑者の一人として警察にマークされていた。ところが、その被害者達もまた加奈子と繋がりのある人物である事が分かり、昭和は苦悩を深め、次第に倒錯していく。警察や闇の勢力の妨害を受けながら、尚も昭和は加奈子の発見に死力を尽くすのだった。
思いの外、エログロなんでもありな感じの超絶ハイテンションなバイオレンス・スリラー。父が娘を探すハナシってくらいの事前知識しか入れてなかったから、このドギツイ中島ワールドに初っ端から面食らってしまった。主人公の昭和は言ってしまえばキ印そのもので、痛々しく暑苦しい、とにかく正視に耐えない程のクズ野郎。そんなキ印昭和を演じるのが役所広司で、その熱演怪演ぶりがとにかく凄まじい。殴り殴られ文字通り血だるまになり、加奈子の行方を追いながら、彼女の謎に満ちた素顔に肉迫していく。もうほとんど役所のワンマンショー状態。当の加奈子もそんな昭和の影響を受けたもんだから、見事にキ印属性で、凶悪な闇社会の勢力にドップリ浸かっているという、予想はしていたけれど、まるで救いの無い展開ですな。中島作品とはいえど、ちょっと演出過剰じゃないかと思うシーンが多く、胸焼けしそうな要素がてんこ盛りで、観る人を選ぶ作品であるかなと。やり過ぎでコメディライクになってるし、ハナシ自体よく出来ているのだから、もう少しストイックな作りの方が良かったと思うんだけどなぁ。加奈子役の小松菜奈は新人らしいけど、本作だけではポテンシャルが分からないかな。脇役ながらも橋本愛の存在感は良かったよね。