ダニエル・S・ハマーメッシュ著「美貌格差 生まれつき不平等の経済学」(2015)
- 作者: ダニエル・S.ハマーメッシュ,Daniel S. Hamermesh,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: 単行本
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美貌すなわち容姿の良し悪しが、経済活動や結婚などの諸問題にどの程度影響を及ぼすのか、経済学の観点から検証した一冊。有り体に言えば、美形はどれほど得をし、反対にブサイクがどれほど損をするのかというハナシだ。
この問題について真正面から取り組んだ研究は少なく、大規模調査なども限られた事例でしか行われていない為、結論を導けるレベルには至っていないのが残念だが、少数ながらも特定のカテゴリで行われた調査結果は、美形であるほど得だという事を示唆している。当然と言えば当然なのだが、容姿という恣意的な評価に左右される属性が、例えば就職のしやすさだったり、結婚のしやすさに繋がっている事が、定量的に明らかにされるのは、なかなかグロテスクではある。
その根っこには社会に厳然と存在する容姿差別があるワケだが、著者はそれを他の差別、例えば人種差別と比較し検証しているのが面白い。例えば、米国社会では未だにアフリカ系アメリカ人が、いろんな面で差別的な扱いを受けている事が分かっている。就業に係る収入や待遇などはその最たるモノだ。それを踏まえた上で、救いようの無いレベルのブサイク(本書の指標で言えば5段階評価の1クラス)が経済的に被る損失は、アフリカ系アメリカ人が被る損失に近いという結果を導き出しており、これは非常に興味深い。ここまで来ると、救いようのないブサイクには、他の差別(例えば人種や障害など)と同じ様に、なんらかの保護がなされて然るべきだと著者は結んでいる。致命的なブサイクには社会的な手当が必要なのである。