チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ソロモンの偽証 後篇・裁判

成島出監督作「ソロモンの偽証 後篇・裁判」(2015)[BD]

不可解な死を遂げた生徒の死因を巡り、学校と警察の対応に不満を抱いた生徒達が、学校内裁判を開いて真実を追求していく様を描くミステリー・ドラマ作品。

1991年7月26日、未来は元A組の生徒を騙り、事件の目撃者と称して告発状を送った事を茂木に連絡し、マスコミの力で裁判を止める様に請うが、口を滑らせて樹理の名を出してしまう。後日、茂木は涼子の前に姿を現し、その事を伝える。涼子は森内が告発状を受け取っていなかったという証拠を突きつけ、番組に真実が何一つ無かった事を責めると、森内が茂木を訴える意向だと伝える。涼子は樹理の家を訪ね、未来に茂木から聞いた話を伝えるが、未来はそれを否定する。涼子は未来の制止を振り切り、樹理に告発状の件を問い質すと、証人としての出廷を頼み、連絡先を手渡す。未来は樹理を守りたい一心で涼子への連絡を禁じ、樹理は激しく反発する。

程なく、勝が保険金目当てに自作自演で放火を行った容疑で逮捕される。また同日、共謀した会社の社員も逮捕される。神原は佐知子から事情を聞き、柏木が死んだ夜、大出家に逮捕された社員が訪れていた事を知る。神原はその社員が大出と会った事を証言すれば、大出のアリバイが立証できると主張し、剛に社員の出廷を要請するが、剛はそれを拒否する。

その夜、涼子も重ねて社員の出廷を哀願する。涼子は大出達による樹理と松子に対する苛めを目撃しながら、助けに入れず、柏木に面罵された事、そして言い訳する自分を嫌悪すると同時に柏木が消える様に願った事を、剛と邦子に打ち明ける。剛は柏木の死が涼子の責任では無いと諭すと、涼子の気持ちを汲み、できる限りの手を尽くす決意をする。

神原と野田は再び大出の元を訪ね、アリバイが証明可能である事を伝える。悪態を付く大出に神原は母親を安心させられると説くが、その言葉に大出は憤り、人殺しの息子らしい卑怯な真似だと激しく反発する。神原がそれを認めると、大出は父親の様な人殺しになる前に死んだ方が良いと神原を詰る。神原は将来に怯える時間は無く、あるのは今だけだと反駁し、自分からは弁護人を辞任しないと告げる。

大出の出廷が不確かな事から、裁判の参加者一同は動揺しながらも準備を進める。程なく、北尾は佐知子から大出が出廷する意向を聞き、一同に報告する。一同は裁判の開催を確信し、歓喜する。

涼子達は柏木の両親の元を訪ね、柏木が死んだ夜の通話記録を受け取る。記録には発信元不明の4本の通話が存在し、それぞれが都内の別々の公衆電話から、午後4時過ぎから7時半までの間に、およそ1時間置きに掛けられていた事が判明する。皆は手分けして電話周辺の店を訪ね、当夜に電話していた人物の様子を探る。7時半過ぎにかけられた公衆電話の前にある電気店を営む小林が、電話をかけていた少年に話しかけており、それが大出達では無かったと証言する。

その直後、アパートを引き払う為に荷造りをする森内が、突然訪ねてきた垣内に瓶で殴られ、重傷を負う。涼子達は森内が搬送された病院へ駆け付ける。涼子は茂木に垣内の事を話した為に恨みを買ったと自責の念に駆られるが、調査事務所の河野はそれを否定し、茂木も垣内に接触できていない事を伝える。神原は検事を降りぬように涼子を励ます。

吹奏楽部だった松子を忍んで、追悼演奏会が開かれる。涼子は演奏会に訪れた松子の両親に、裁判への理解を求める。敏江は協力を惜しまないと約束するが、洋平は不信感を抱き反発する。敏江は涼子が松子の憧れの存在だった事を明かし、松子が学校で愛されていた事を実感する。

樹理は涼子と二人で話をさせる様に未来に訴える。未来は渋々承諾し、涼子を招く。樹理は、自分を告発者だとして誹謗中傷する手紙が多数届いており、それを見て泣いたら声が出る様になった事を明かす。涼子は現場にいた理由を尋ねるが、樹理は真実は裁判で話すと主張し、自分を出廷させる様に請う。

裁判の準備が進む中、涼子は公衆電話をかけた人物についての考えを神原に尋ねる。神原はそれが柏木本人によるもので、自殺を迷い、出先から両親と話そうとしたのではないかという推測を伝える。その後、涼子は小林の元を訪ね、柏木の写真を見せて、当夜の人物と同一か確認させるが、小林は否定する。涼子は神原が柏木の葬儀に訪れていた事を思い出し、茂木の番組を見て知ったという神原の話と矛盾している事に気付く。

神原への疑いを深めた涼子は、裁判の最終リハの直前、神原へ事実を問い質す。神原はまだ話せない隠し事があると認め、裁判で明らかにする意向を示す。

8月15日、学校内裁判の初日。体育館に生徒や保護者達が集う。洋平は生徒達が真実を必死で見つけようとしていると告げ、浮ついた場内を一喝する。判事の井上が裁判の主旨を説明し、開廷する。佐々木が最初の証人として出廷し、神原は大出の不良行為について尋ねる。佐々木は大出の悪行は単純で、深夜に屋上に呼び出して殺す様な事はしないと主張する。涼子は、現場にいなかったという大出の証言に嘘の可能性を考えなかったのかと佐々木に尋ねる。佐々木は大出との信頼関係に依拠し、アリバイを調べもしなかった事を明かす。

16日、裁判二日目。津崎が証人として出廷する。神原は自殺と判断した理由を津崎に尋ねる。津崎は柏木への訪問を繰り返すも、その度に柏木から諦める様に言われていた事を明かし、柏木が生きる気力を失い、人生に悲観している様に見えたと主張する。涼子は学校側の対応が隠蔽だと指摘する一方で、津崎は他の教師と違い、学校の名誉では無く、生徒を守る現実的な対応をし、その後責任を取って校長を辞したと擁護する。津崎が自分の落ち度を認めると、涼子と生徒一同は礼を述べる。次に森内が証人として出廷する。涼子は垣内の一方的な憎しみが常軌を逸した行動を引き起こしたと説き、森内に非はない事を明らかにすると、かつて自らも森内を疑っていたとして詫びる。神原は柏木への印象を森内に尋ねる。森内は初めての担任で常に生徒の目を気にしていた事を明かし、浅はかさを見透かす様な柏木が使いづらく難しい生徒として恐れていた事を認める。森内は柏木の自殺がショックだったものの、安堵したのも事実で、生徒に向き合う覚悟が無かったと告げると、A組の生徒達に対して詫びる。

17日、裁判三日目。樹理が証人として出廷する。樹理の心情を配慮し、一時的に退廷を命じられた大出は憤慨する。神原はその態度が問題だと理解を促す。涼子は当夜について樹理に尋ねる。樹理は当夜外出しておらず、事件を目撃したのが実は松子だと明かし、柏木が大出達に連れて行かれる現場に遭遇した松子が学校の屋上まで尾行し、一部始終を目撃した上で告発状を書いたのだと証言する。涼子は真実を話す様に促すが、樹理は松子から聞いただけで何も見ておらず、それが真実だと告げると、神原による反対尋問を拒否し、退廷する。

18日、裁判四日目。剛の手配により、大出宅の放火に関わった容疑者の弁護士今野を証人として招く。今野は容疑者が事件当夜に勝に放火の打ち合わせで呼ばれ、その時に大出を見たと供述している事を証言する。その後、被告大出に対する本人質問が行われる。場内から大出に対する苛烈なヤジが飛び交う。大出は神原の質問に対し、疑惑を否定し、悪態をつく。井上は評決が陪審員によって下されると告げ、真剣に臨む様に大出に促す。神原はなぜ濡れ衣を着せられているのか、そして告発状についてどう捉えているのか大出に尋ねる。更に神原は大出のこれまでの悪行や苛めの数々を、その内容に至るまで事細かに論い、事実関係の正否を追求する。金と権力で被害届を取り下げた件や、樹理の受けた苛めについて神原が言及すると、大出は激しく動揺する。神原は、大出が勝から暴行を受けた後、自分より弱い者を苛める事で憂さを晴らしていたのだと看破する。大出は神原に気圧され、その事実を認める。神原は、苛められて恨む様になった人の気持ちを考えた事があるかと大出に尋ねると、嵌められたのは暴力に起因していると説き、告発状は命綱だったのだと差出人に理解を示す。樹理は感極まって失神する。涼子は神原の真意を掴めずに戸惑う。

涼子は保健室の樹理を見舞う。神原の意図を問う樹理に対し、涼子は樹理を救いたいのだと推察し、判決が出れば全てが分かると告げ、裁判最終日にも来るように促す。樹理は自分にはもう誰も味方がいないと嘆き、松子の死を回想する。

学校で保護者説明会が開かれた夜、樹理に会う為に自宅を飛び出した松子は、樹理から告発の内容が嘘だと聞かされ、共犯だと責められた。松子は大出達に謝りに行くべきだと主張したが、樹理はそんな事をしたら本当に殺されると反論した。松子は親友の樹理を裏切りたくない気持ちを抱えながらも、母親に真実を打ち明ける意向を示して樹理と別れた。その途端、松子は事故に遭い、樹理はその現場を目撃していたのだった。

涼子は神原の育ての両親と会い、公衆電話のそれぞれが神原と縁のある場所の近くだと知る。

19日、裁判最終日。最終論告と最終弁論に入る前に、涼子が新たに証人を申請し、小林が出廷する。小林は事件当日の夜7時半頃、公衆電話で目撃したのが神原だと証言する。涼子は神原を証人として申請する。井上は涼子と神原に真意を問うが、涼子は真実の究明に神原の証言が必要だと訴える。

涼子は神原が柏木と電話で話した内容について尋ねる。神原はそれが柏木の指示に基き、四ヶ所を順に回って指定された時間に電話をかけるゲームだった事を明かす。

事件当日の直前、柏木は神原を呼び出し、人生に嫌気が差し、死のうと思っている事を明かした。神原が翻意を促しすと、柏木は神原の両親が陰惨な死に方をしたのに、神原自身が平気で生きていられる理由を問い質した。両親の死を忘れたいと願う神原に、柏木は過去から逃げているだけで向き合おうとしてないと告げ、口先だけの偽善者の言葉は心を動かさないと説いた。柏木は神原に家族との思い出の場所を回らせ、どう感じたのか教えたら、自殺を止めると約束したのだった。

柏木の提案に理があると感じた神原は、ゲームに応じた事で、辛かった思い出の他に、今まで心の内に封じ込めていた楽しかった思い出にも触れる事ができたと述懐する。涼子は柏木が神原の落ち込む様子を期待していたのではないかと指摘する。

神原は柏木がゲームを終えると、直接会って気持ちを聞きたいと望み、疲労を訴える神原に自殺を仄めかして、夜11時半に強引に校舎屋上に呼び出した。神原が指示通りに屋上に赴くと、柏木が待っていた。神原が良い事も思い出したと伝えると、それを聞いた柏木は怒り、嘘を付いていると非難し、想定よりもっと悪く救いようが無いと罵った。更に柏木の暴言は、神原が無神経であり、空っぽで鈍い人間は存在自体が罪だと苛烈を極めた。神原はそれでも生きていくと反駁し、ゲームの終わりを告げるが、柏木はそれを認めず、神原も父の様に犯罪者になると主張し、人並みに生きる資格は無いと詰った。神原が絶縁を告げ、立ち去ろうとすると、柏木はフェンスをよじ登り、飛び降りると脅すが、神原は勝手に死ねば良いと告げて立ち去った。その直後、柏木は飛び降りたのだった。

神原は柏木の死を翌日のニュースで知り、それ以来、誰にも打ち明けられずにきた事を明かし、これが全ての真実だと告げる。大出は、神原が最初から自分が関与していなかったと知っていながら黙っていた事に激昂して殴りかかるが、制止される。涼子は大出の弁護人になった意図を神原に尋ねる。神原は濡れ衣を着せられた大出に申し訳無かったからだと明かし、改めて大出の無実を訴える。神原は柏木を見捨てて逃げた自分に殺意があったと主張し、更に松子の死に対する責任も認め、自分を殺人罪で裁くべきだと訴える。

井上は陪審員達に評議に移る様に命じる。評議の結果、陪審員長は大出に評決が無罪だと告げる。井上は裁判を終えようとするが、神原はそれを制止し、皆を欺いて裁判を行う様に仕向けたのが、罰して欲しかったからだと明かし、自分を罰するように請う。井上は誰も罰しない裁判だと告げる。涼子は神原が殺したわけではないと主張すると、苛めに遭っていた樹理や松子を見て見ぬふりをした事を打ち明け、自分も裁かれるべき人間だと訴える。涼子は松子がいたから樹理は自殺せずに済み、自分が勇気を出せば松子も死なずに済んだかも知れないと詫びる。涼子は神原と同じように柏木に面罵されながら、それでも生きていくと決意した事を明かす。更に涼子は、裁判をやらなかったら未来に立ち向かう勇気を持てなかったと、裁判の意味を説き、自分の罪はいつか乗り越えるために自分で背負っていくしかないと、神原を諭す。その言葉を以って、井上は閉廷を告げる。

体育館を出た大出は佐知子に無罪を報告すると、神原と握手を交わし別れる。剛と邦子は涼子達を出迎え、労をねぎらう。樹理は松子の両親の元に赴き、松子の遺影の前で心から詫びる。

上野に話を終えた涼子は、14歳だからこそできた裁判だと述懐する。上野は裁判以後、校内で苛めと自殺が起きていないと明かし、心の声に蓋をすれば、信じたいものしか信じず、見たいものしか見ない様になると説く。涼子は裁判を共にした生徒達と、その後友達になった事を明かす。

 

 

後篇は裁判と銘打つだけあって大半が裁判のシーンに割かれているのだが、なかなかテンポ良く編集されており、退屈さは感じさせない。本作はミステリーと言えばミステリーだが、それぞれ主だった登場人物の家庭環境や心象風景に焦点を当てた群像劇としての色合いの方が濃く、意表を突く様な展開は無かった。と言いながら、僕は終盤まで柏木が他殺だと考えていた。厭世的な柏木が自殺を希望するのは理解できるが、他社に対する言動が苛烈で独善的過ぎるのが気になったんだもの。この辺はどの程度原作に忠実なのだろうか。柏木の両親もそんなに問題がありそうでも無かったし、何があそこまで彼を変えたのかがいまいち分からなかった。主役の藤野涼子は歳相応の女子な印象を受けたが、板垣瑞生は中学生には見えないノーブルな透明感があるな。彼はきっとイケメソ俳優になるだろう。そしてやっぱり石井杏奈は良かった。とまれ、いろいろと得る物が多かった作品だったかなと。成島監督には今後も期待したい。

f:id:horohhoo:20151014182145j:plain

f:id:horohhoo:20151014182148j:plain

f:id:horohhoo:20151014182153j:plain

f:id:horohhoo:20151014182157j:plain

f:id:horohhoo:20151014182202j:plain

f:id:horohhoo:20151014182207j:plain

f:id:horohhoo:20151014182212j:plain

f:id:horohhoo:20151014182218j:plain

f:id:horohhoo:20151014182222j:plain

f:id:horohhoo:20151014182226j:plain

f:id:horohhoo:20151014182230j:plain

f:id:horohhoo:20151014182234j:plain

f:id:horohhoo:20151014182237j:plain

f:id:horohhoo:20151014182241j:plain

f:id:horohhoo:20151014182244j:plain