本多猪四郎監督作「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964)[DVD]
宇宙より襲来した凶悪な怪獣キングギドラから地球を守るべく、ゴジラ、モスラ、ラドンが力を合わせて戦いに臨む様を描く怪獣作品。
世界中で異常現象が頻発し、日本では真冬の1月にも関わらず、28度を越す異常気温が観測され、また各地で流星現象が相次ぐ様になる。一方、左右両陣営の紛争に巻き込まれているセルジナ公国から、サルノ王女が非公式に来日する事になり、警視庁刑事課の刑事、進藤は、その護衛を課長の沖田から命じられる。外務省の筋によれば、王位継承者である王女は、反対派による暗殺の危機に晒されている事から、一時退避するのが来日の目的だという。
反対派の黒幕の男は、側近のマルメスに王女の暗殺を命じ、マルメスは王女の乗る特別機の爆破を企図する。その夜、王女は機内から窓外の夜空に煌々と光り輝く物体を目撃すると共に、女の声で機内から逃げる様に命じられる。王女は航行中の機内からハッチを開けて機外へ飛び出し、光と共に姿を消す。その直後、機体は空中で爆発する。
時を同じくして、北アルプス黒岳の谷間に隕石が墜落する。帝都工大の村井助教授率いる調査団は、早速黒部ダムを訪ねると、気流が悪くてヘリも近づけない場所という、墜落現場のカスミ沢へと向かう。道中、方位磁針が狂うという奇妙な現象に見舞われながらも、村井達は沢に到達し、そこで巨大な隕石を発見する。村井達はキャンプを設営し、調査の準備を始めるが、その矢先に隕石が強力な磁場を発している事が判明する。一方、進藤は沖田から王女の乗った特別機爆破の報せを受ける。
テレビ局の報道部に勤める進藤の妹、直子は、目下、新番組「20世紀の神話」開始を目前に控え、上野に予言者の女が現れたとの報せを受け、取材に赴く。金星人を自称するその女は、群がる大勢の野次馬達の前で、地球が滅亡の危機に晒されようとしており、まず九州阿蘇に異変が起きると主張する。しかし、阿蘇では何ら兆候は見られず、女は軽侮される。直子は並行して、東京に戻った村井と接触し、隕石の取材を行う。その夜、バラエティ番組にインファント島から小美人がゲストとして招聘される。小美人は双子のモスラの内、一体が死んでしまった事を明かすと、子供のリクエストに答えて、モスラを呼ぶ祈りの歌「幸せを呼ぼう」を聴かせる。
進藤は新聞に掲載された予言者の女に関する記事を見て、その容姿が写真で見た王女と酷似している事に気付く。一方、セルジナの黒幕も日本の新聞を見て、王女の生存を疑い、マルメスを詰問する。マルメスは女が王位継承者の印たる黄金の腕輪をしていない事から、王女とは断定できないと弁解する。黒幕はマルメスに日本へ出向き、任務を完遂する様に厳命する。
「20世紀の神話」制作班では金星人と予言をテーマに追求する方針が固まり、直子は女を見つけ出して独占契約を結ぼうと意気込む。進藤は沖田に予言者と王女が酷似している事を報告する。沖田は外務省筋の話として、王女が黄金の腕輪を外す事は無いはずだと訝るが、進藤はそれが金星人と自称する件も含め、反対派の目を逸らす為だと主張し、自分に捜査を担当させる様に申し出、沖田の許可を得る。
その後、直子は進藤と共に村井と落ち合う。村井は調査の為に再び現地入りする意向を示すと、隕石が分析の上では普通の岩でありながら、原因不明の吸引力を保持している事を明かす。その時、阿蘇火口に予言者の女が出現したとの一報が入る。女は登山客に直ちに下山する様に呼びかけると、地核に溜まった火山ガスでラドンが復活すると訴えるが、登山客達は女を気違い扱いして嘲笑する。その直後、火口を破ってラドンが出現し、阿蘇を飛び立つ。一方、マルメスは手下を率いて秘密裏に入国し、王女の捜索を開始する。隕石の調査を続ける村井達は、光が次第に強くなる一方で、吸引力が失せていく事に気付く。
小美人は島に帰るべく、船に乗り、マスコミの取材を受ける。そこに予言者の女が出現し、出航してはならないと警告する。女は乗員に下船を命じられるが、そこに居合わせた直子が女を連れ出す。一方、進藤は古道具屋に持ち込まれた黄金の腕輪を入手する。持ち込んだ漁師は、海に漂流していた女を救助し、所持品と腕輪を交換した後、港に着いた途端に女が姿を消したと明かすと、その女の風貌が王女と予言者の双方の写真と一致する事を証言する。また、村井達は隕石の異変を懸念し、引き上げ時を見極め始める。
その夜、直子は港から程近い馴染みのホテルの一室に女を連れ込む。そこへ小美人が現れ、女の主張に同調する。その頃、小美人が乗る予定だった船が、海上に現れたゴジラに襲われる。女は、自らの使命が一人でも多くの人に地球の危機を知らせる事だと主張する。直子は進藤に呼び出しを受け、部屋に女を残してロビーに向かう。その隙に女の居場所を嗅ぎ付けたマルメス達が部屋に侵入する。女は王女との指摘を否定し、立ち去る様に促す。マルメスは王女の父を殺した短剣を突き付け、腕輪の在り処を問い質す。一方、進藤は女が王女だと明かすと、保護し、治療した上で帰国させる意向を示し、部屋に案内する様に直子に要求する。女は腕輪が役に立たなくなる為に、憐れな男にくれてやったと明かす。それを聞いたマルメスは短剣で女を殺そうとする。その時、小美人が部屋の電気を消す。そこへ進藤が駆けつけ、マルメス達と銃撃戦を繰り広げる。マルメス達が女を残して逃走すると、進藤と直子は女をホテルから連れ出そうとする。その時、ゴジラが港に出現する。程なくして更にラドンが飛来し、ゴジラの上空を旋回し始める。
進藤は精神科の大家で、懇意にしている塚本博士の研究所へ女を連れて行く。検査の結果、女の脳に異常は見当たらず、塚本は催眠剤を試す意向を示す。女は、現在の地球よりはるかに高度な文明を有した金星を根こそぎ破壊した宇宙怪獣キングギドラによって、地球が滅亡すると警告し、既にギドラが地球に来ている事を明かす。塚本は俄にそれを信じられず、女を休ませる。ゴジラとラドンは箱根から富士山麓に向かい、やがて闘争を始める。一方その頃、隕石が轟音と共に割れ、爆炎の中からギドラが出現し、松本市上空を飛び去る。
翌日、総理を筆頭に大臣が列席した国防会議が開かれ、村井が招聘される。ゴジラ、ラドンに加え、ギドラへの対応が協議される中、防衛大臣は、核兵器を使用するに能わず、ただ撃滅に尽力する意向のみ示す。村井は議長の許可を得て、小美人を紹介する。小美人は塚本研究所で予言者の女と一緒にいる事を明かす。その中継を見たマルメス達は、直ちに研究所へ急行する。村井は、モスラがかつてゴジラに勝利した事を挙げ、今回もモスラに協力を請う事を提案する。小美人はモスラ単独ではギドラには太刀打ちできないものの、ゴジラ、ラドンと協力すれば勝機を見いだせると説くと、モスラを呼んでゴジラ、ラドンの説得を試みてもらう意向を示す。その時、東京にギドラが襲来し、光線で見境なく都心を破壊し始める。小美人は直ちにモスラを呼ぶ様に議長に請われ、それに応じて祈りの歌でモスラに働きかける。モスラはそれに呼応し、インファント島を発つ。
ゴジラ接近に伴い、塚本は職員を退避させると、女に催眠を施す。女は、自らの祖先が5000年前の金星滅亡の日に地球に脱出した一人であり、地球人と同化する内に才能が退化し、予言の能力だけが受け継がれてきた事を明かす。塚本は更に確証を得るべく、電圧ショック療法を試す事を決意する。ゴジラは研究所に程近い下落合に到達する。マルメス達は研究所に侵入すると、密かに装置の電圧を最大まで上げ、手を下さずに女を殺そうと企てる。塚本が女に電圧をかけようとしたその時、ゴジラとラドンの闘争により送電塔が倒壊し、停電が生じる。進藤は設備の様子を見に行く途中で、マルメス達と遭遇し、再び銃撃戦となる。そこに村井と直子が駆け付けると、マルメス達は撤退する。進藤達は女を連れ出し、迫り来るゴジラから退避する。
闘争を続けるゴジラとラドンの前にモスラが現れる。モスラは両者に糸を噴きかけ、力を合わせてギドラから地球を守る様に説得を始める。ゴジラとラドンは共に、自分達を虐げている人間を助ける道理は無いと説き、協力の要請を拒む。一方、ギドラの光線による落石がマルメス達の乗った車を直撃し、マルメス以外の全員が死ぬ。
モスラは地球が人間だけの物では無く、皆の物であり、それを守る為に戦うのは当然だと主張するが、ゴジラ達と物別れに終わる。そこにギドラが現れると、モスラは独りで戦いを挑むが、ギドラの光線の前に手も足も出ず、退けられる。見かねたゴジラとラドンはモスラに加勢し、互いに協力しあってギドラに立ち向かう。一方、高台に避難し、怪獣達の闘争の行方を見守る進藤達の元から、女が姿を消し、一同は捜索に向かう。
女は崖際に立ち、金星の業火より地球を救う様にと祈る。その時、対岸にマルメスが現れ、ライフルで女を狙撃し始める。そこへ進藤が駆け付け、拳銃で反撃するが、女は崖下に転落する。女は頭部を打って負傷した際に、王女の記憶を取り戻す。進藤は崖下に降りると、身を挺して王女を狙撃から守ろうとする。その時、ゴジラ達の闘争で生じた崩落にマルメスが飲まれ、進藤達は窮地を切り抜ける。そこに村井達が駆け付け、進藤達を崖から引き上げる。ゴジラがギドラの注意を引きつけている隙に、ラドンはモスラを背中に乗せ、モスラは空中からギドラに糸を噴きつける。ゴジラは、身動きの取れなくなったギドラを投げ飛ばし、ギドラは退散する。
後日、王女は晴れて帰国する事になり、空港で会見に応じる。王女は金星人を自称していた時の記憶を失っていながら、進藤に三度助けられた事だけは覚えており、その事を一生忘れないと進藤に深く感謝の意を伝える。進藤達は空港で王女の帰国便を見送る。一方、小美人はモスラに乗ってインファント島に帰っていく。ゴジラとラドンがそれを見送る。