チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

FAKE

森達也監督作「FAKE」(2016)[DVD]

聴覚障害者の作曲家として脚光を浴びながら、ゴーストライター騒動で苛烈なバッシングに晒された佐村河内守に密着取材し、真実に光を当てる様を描くドキュメンタリー作品。

 

2014年の冬。佐村河内守に係るゴーストライター騒動が勃発し、およそ九ヶ月が経つ頃、佐村河内は妻の香、そして愛猫と共に、都内の自宅マンションで世間から身を隠す様にひっそりと暮らす。監督の森達也は、佐村河内に一連の騒動をドキュメンタリー映画にして世に問う事を打診し、佐村河内の了解を得た後、マンションを訪ねて撮影を開始する。撮影には常に香が同席し、手話通訳を担う。

森は佐村河内と「共犯」関係にあった音楽家の新垣や、週刊誌と著書で佐村河内を痛烈に批判したジャーナリストの神山とは面識が無く、佐村河内に対する個人的な怒りが無い事を明かし、佐村河内と香の二人の悲しみを撮る事を求める。当時、新垣は佐村河内と出会ってから18年に渡って、指示されるままにゴーストライターとして作曲してきたものの、その間に佐村河内の耳が聴こえないと感じた事は一度も無いと証言しており、それによって佐村河内は世間から稀代の極悪人の様な扱いを受ける事になった。佐村河内は問題の本質はゴーストライターなどでは無く、共作を黙っていた事だと主張し、その点に関する贖罪意識を吐露すると、マスコミの誤解に基づく報道、とりわけ聴覚障害が嘘だと喧伝される事に悲哀し、嘆息する。佐村河内はABR検査の結果、感音性難聴と診断されており、客観的且つ確定的な証拠たる診断書を会見時に配布しているにも関わらず、マスコミが肝心な部分を伏せて報道したその姿勢について、誤った報道をさせた自らへの報復では無いかと疑う。同時に佐村河内は、付き合いが長い新垣が、耳が聴こえる事を口止めされていた云々という嘘を付く理由を計り兼ね、ただただ困惑する。香もまた、佐村河内の難聴が結婚後に徐々に悪くなっていく過程を見てきた事から、その事実を世間に理解してもらえない事への悔しさを滲ませる。

撮影中、佐村河内の元へフジテレビの社員達が番組の取材依頼に訪れる。佐村河内は会見で配布したものと同じ資料を提示した後、同局で放映したあるドラマの演出が、自分を当て擦る様な趣旨に見える事を批判する。局側はその様な意図が無いと弁解する。佐村河内はテレビに対し、新垣こそ本当に良い人間なのかどうか疑いを抱く事、また自らの名誉の回復に努める事を要望する。それから程なく、今度は共同テレビの社員達が、大晦日のバラエティ特番への出演依頼に訪れる。局側は番組に笑ったり弄ったりする趣旨は無く、佐村河内の今後の音楽活動への前向きな話を聞きたいのだと説く。佐村河内は再び会見の資料を提示すると、新垣の主張は作り話だと訴える。局側は佐村河内が出演し、自身の言葉で誤解を払拭する様に促す。佐村河内は出演を断った場合に、報復される事への不安を吐露する。局側は佐村河内を笑い飛ばす様な趣旨の番組では無い事を重ねて約束する。その後、佐村河内は報道特別番組のインタビューに応じる一方、バラエティ番組への出演は断る。

佐村河内は香を同伴し、久しぶりに外出すると、弁護士事務所を訪ねて、興行会社からの訴訟への対応策を協議する。弁護士は、新垣に話し合いの場を持つ事を打診しているものの、新垣が逃げ回っている事、新垣による名誉毀損の余地が多分にある事を明かす。その一方、佐村河内の部屋の傍にある消火器が投げ捨てられるという嫌がらせが相次ぐ。

年末、佐村河内が断ったバラエティ番組に新垣が出演する。佐村河内との約束は反故にされ、番組では新垣の一方的な主張が伝えられる事で、佐村河内は大嘘つきの様に仕立て上げられる一方、新垣はまるでスターの様な扱いを受ける。佐村河内はその放送を見て失意に暮れる。

年が明けて間もなく、佐村河内の両親が訪ねてくる。佐村河内の父は原爆投下直後の広島での体験談を語ると、森の要請を受けて被爆手帳を提示し、巷で嘘だと思われている被爆二世の件を立証する。父は神山の著書の影響で、唯一の親友ですら離れていった事を明かす。その後、森は雑誌ジャーナリズム賞のプレゼンターを依頼され、大賞受賞者が神山と知って応諾する。しかし、授賞式当日、神山は欠席する。森は神山に取材を申し込むが、多忙などを理由に断られる。

ある日、佐村河内の知己の視覚障害者の女性が訪ねてくる。女性はかつて住んでいた施設に佐村河内がボランティアとして来ていて、そこで親しくなり、15年来の付き合いが続いている事を明かす。女性は出演に応じた理由が、謂れのないバッシングを受けている佐村河内を助けたいからだと説くと、佐村河内が障害者いじめをしていたというのは嘘であり、自分に対して実の娘の様に接してくれる命の恩人だと訴える。その後、佐村河内は香を同伴し、聴覚障害者のメンタルコーチである前川の元を訪ねる。先天性の聴覚障害者の前川は、佐村河内騒動におけるメディアのあり方、とりわけ神山の佐村河内を煽り立てる様な会見での態度を痛烈に批判する。

程なく、佐村河内はトランクルームで発見した、未だ音源化されていない交響曲の指示書を森に提示する。佐村河内は、自らの夢を達成する為に、香にも秘密にして新垣と共作を続けている間に、香に発覚する恐怖に絶えず苛まれてきた事、また、騒動の発覚後、香に別れを切り出したものの、香から終わった事は仕方ないと言われた事を明かす。香はその理由を森に問われ、愛しているから一緒にいたいだけであり、後悔は無いと説く。

佐村河内は米国の著名なオピニオン誌"The New Republic"の記者に取材を受ける。記者は佐村河内に対し、楽譜の読み書きを覚えようとしなかった理由、新垣との会話の方法、新垣が作曲した音源が指示と一致しているか確認する方法など、騒動の核心を突く質問を矢継ぎ早にぶつける。記者は佐村河内の返答に一定の理解を示すも、佐村河内が作った音源が一つも無い事から確証を求め、佐村河内本人による演奏が見られれば一目瞭然だと説く。佐村河内は楽器を捨ててしまい、長らく弾いていないと弁解し、その理由として部屋が狭かった事を挙げる。記者は読者の信頼に答えるには音源の類が必要だと説く。後日、森は新垣の著書出版サイン会を訪ね、その場で取材を打診する。後日、森は改めて新垣に取材を申し込むが、事務所から断られる。

撮影が終盤に近づく頃、森は佐村河内に発破をかけ、作曲をやってみる様に促す。それを受け、佐村河内はシンセサイザーを購入し、自室で作曲に打ち込む。やがて佐村河内は交響曲を完成させ、森にそれを披露する。その曲は本作のエンディングの挿入曲として採用される。佐村河内は、自分を信じて作曲へと導いてくれた森に深く感謝する。撮影終了直前、森は佐村河内に対し、嘘をついたり、隠したりしている事は無いかと尋ねる。

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