チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

大統領の執事の涙

リー・ダニエルズ監督作「大統領の執事の涙」("The Butler" : 2013)[BD]

ホワイトハウスで執事として30年以上勤務したアフリカ系アメリカ人の半生を描く歴史ドラマ作品。

1926年、ジョージア州メーコン。7歳のセシル・ゲインズは両親と共に、白人が地主の綿花農場で働いていた。ある日、セシルの母が地主にレイプされた事に父が反抗した為に、セシルの目の前で父は地主に殺されてしまう。セシルは地主の祖母に同情され、農場働きから屋敷内の下男(ハウスニガー)に回される。セシルは屋敷で熱心に働き、地主の祖母に気に入られるが、成長するにつれ、このままではいつか地主の男に殺されると悟る。

1937年、セシルは正気を失った母と、地主の祖母に別れを告げ、農場を去る。しかし、他に身寄りの無いセシルに行く宛は無く、路頭に迷う。空腹に苦しんだセシルは、夜中に一軒の店に押し入り、食べ物を貪っているところを、黒人の店番の男に発見される。男はセシルの事情を察して大事にせず、仕事を欲したセシルを雇い入れる。セシルは男の元で給仕の基本を学んでいく。ある時、ワシントンDCのホテルから男の元に執事職のオファーが来るが、男は若いセシルを推薦する。

セシルは単身DCに移り、高級ホテルの執事として勤務し、やがてメイドのグロリアと結婚、長男ルイスと次男チャーリーを儲ける。セシルは南部と比べ、差別の少ないDCで穏やかな暮らしを送っていた。

1957年、セシルの元にホワイトハウスの執事のオファーが来る。ホテルで給仕したホワイトハウスの事務主任ウォーナーに、働きぶりを見込まれたのだった。セシルは筆頭執事のファローズの面接に臨み、採用が決まる。セシルは同僚のウィルソン、ホロウェイらと共に、大統領に仕える執事として精力的に活躍していく。時はアイゼンハワー政権、セシルは大統領のすぐ傍でその働きぶりを目の当たりにし、大統領が世の中を変えてくれると確信し、仕事に専念していく。ルイスが高校を卒業し、テネシーのフィスク大に入学する為に、DCを離れる。しかし、セシルはルイスを南部に送る事に反対だった。ルイスは人種差別撤廃活動に共鳴していた。

1960年、フィスク大でルイスはキャロルと出会い、公民権運動の研究会に参加し、その考えに傾倒していく。ルイスはキャロルと共に、非暴力の座り込み運動に参加し、逮捕される。セシルはルイスの逮捕を知り、拘留されたルイスの元へ赴き、叱り飛ばす。しかし、ルイスは自分達の行いは黒人に対する認識を変える為の、革新的な運動だと主張する。一方、セシルが仕事で家を空ける事が多いために、寂しさの余り、グロリアが酒に溺れ、夫婦の間に隙間風が吹き始める。

1961年、ケネディ政権が誕生する。ルイスはフリーダム・バスの活動に参加し、アラバマへ向かう途中、KKKの襲撃に遭い、命を落としかける。セシルはルイスの無事を知り、戻ってくる様に諭すが、ルイスは権利への戦いを続ける事を告げる。各地でデモ隊と警察が衝突し、デモ隊が強制的に排除されていく様子を目の当たりにしたケネディは憤る。セシルはケネディから、ルイスがキング牧師と共に拘留されている事を知らされる。ケネディはセシルに差別撤廃の決意を表し、その後、公民権法案を提出する。しかし、その直後、ケネディは射殺される。セシルはケネディの付けていたネクタイを、婦人から形見にと譲り受ける。セシルはケネディの死に激しく落胆するが、グロリアは家族の方が心配だと主張する。セシルはグロリアの気持ちを察し、夫婦仲を取り戻す。

1964年、ジョンソン政権。キング牧師の活動が活発化すると共に、活動家が殺される事件が多発する。1965年にはマルコムXが台頭し、やがてアラバマ血の日曜日事件が起こると、ジョンソンは投票権法の可決を促す。その後、ベトナム戦争が泥沼化し、ジョンソン政権への批判が強まる。

1968年、テネシー州メンフィス。ルイスはキング牧師らと活動を共にしていた。セシルは執事に就いて初めて、ウォーナーに給与の改善と昇進の機会が与えられる様に要望するが、拒否される。キング牧師が暗殺され、各地で暴動が発生する。その後、ルイスはキャロルを連れて、DCへ帰宅する。キング亡き後、ルイスとキャロルはブラックパンサー党で活動している事を明かす。セシルとルイスの間で口論となり、セシルはルイスを家から追い出す。その直後、ルイスは警官へ暴行を働き、逮捕される。チャーリーはルイスに、海兵隊に入隊しベトナムへ行く決意を明かす。

1969年、ニクソン政権。オークランドのブラックパンサー党本部の集会に参加したルイスは、殺人も厭わないその方針に反対し、党から離れ、キャロルとも別れる。セシルとグロリアはチャーリーが戦死した事を知らされる。チャーリーの葬儀にルイスは列席しなかった。

1974年、第二期ニクソン政権。ルイスは大学で修士号を取り、正しい道を歩んでいたが、セシルとは絶縁状態にあった。その後、ルイスは下院議員選挙に出馬するが落選する。グロリアはセシルにルイスと和解する様に促す。

1986年、レーガン政権。セシルは再びウォーナーに待遇の改善を申し出る。ウォーナーは突っぱねるが、レーガンの後押しで改善は実現する。レーガン婦人がセシルを客としてパーティに招いた事で、セシルはグロリアを初めてホワイトハウスに連れて行く。しかし、それはあくまで形式的なものであり、セシルは相変わらず白人と黒人の間に隔たりがある事を痛感する。レーガンは人権保護法案を潰し、一貫して南アのアパルトヘイトを支持してきており、また米国人は未だに自国の歴史の暗部に目を瞑っている。そう感じ取ったセシルはそれ以降、執事の仕事にやり甲斐を見出だせなくなり、辞職する。その頃、ルイスは反アパルトヘイト運動を展開し、マンデラの釈放を訴えていた。セシルはルイスの元を訪れ、職を失う事よりルイスを失った事の後悔を告げる。2人は和解する。

2008年、グロリアが先立ち、その直後にオバマが大統領に当選する。セシルはその中継をルイスと共に見ながら涙する。ホワイトハウスに招かれたセシルは、ケネディのネクタイにジョンソンから譲り受けたピンを付け、オバマとの面会に臨む。

 

ホワイトハウスで34年間執事として勤務したアフリカ系アメリカ人の実話に着想を得た作品らしい。執事の実務内容はそこそこに、多くは黒人差別問題が歴史的にどう推移し、時の大統領がどの様に対応したかが、主人公セシルの視点で語られ、そこへ更に、親に反対してまで差別反対活動にのめり込む長男ルイスとの関係が描かれる。いまだ根強く残る黒人に対する差別を、扇情的に表現しているワケでは無く、寧ろ淡々と、時系列に沿って描かれており、徒に人種間対立を誘引しない配慮が感じられた。歴代大統領には錚々たるベテラン俳優が配役されており、程々に雰囲気を似せていると僕は思ったが、賛否が別れるかも知れない。フォレスト・ウィテカーは役作りの為にかなり体重を落としたのだろうか、別人の様だ。

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