チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

アリス・クリードの失踪

J・ブレイクソン監督作「アリス・クリードの失踪」("The Disappearance of Alice Creed" : 2009)[DVD]

男二人組が身代金目当てに若い女を誘拐し、監禁するも、女の抵抗に遭い、やがて三者による駆け引きへと発展していく様を描くスリラー作品。

刑務所で意気投合したヴィックとダニーは、若い金持ちの女を誘拐して身代金を奪取する計画を立案する。二人は盗んだバンで諸々の資材を調達すると、廃墟と化したアパートの一室の改造に着手する。二人は、壁には防音素材を敷き詰め、窓は遮蔽し、ドアには堅牢な鍵を取り付け、監禁部屋を作り上げる。

手際良く準備を整え終えた二人は、覆面をすると、ターゲットに決めた良家の娘アリス・クリードをバンで誘拐し、監禁部屋に連れ込む。二人はアリスを手錠とロープでベッドに縛り付け、衣服を剥ぎ取って裸にし、口に猿ぐつわを付けると、今日付の朝刊と共に証拠写真を撮り、ジャージを着せる。ヴィックは写真をアリスの父親に送信すると、アリスに大人しく従うように命じ、水を飲ませて、トイレ時の合図を伝える。

二人は食事を摂り始めるが、ダニーが食欲の無い事を訴え、食事を拒むと、ヴィックはそれが不安を感じているからだと一蹴する。ヴィックはダニーに迷いが生じ、決意が揺らいでいると喝破すると、そんな考えを捨てて、有無を言わさず食事を摂る様に命じる。アリスが小便を要求すると、二人が監視している前で尿瓶に小便をさせる。

ヴィックはダニーに計画に集中して待つ様に命じて、外出する。ダニーはヴィックに手下の様に扱われる事に不満を抱く。程なくして、ヴィックは父親に脅迫電話をかけて部屋に戻る。ヴィックは父親が翌朝一番で銀行に行き、金を用意する手筈となった事を明かすと、警察が動き始めている事をダニーに伝え、動揺を抑える。

ヴィックは父親が金を確実に払う様に念押しする為、アリスが命乞いする動画の撮影に臨む。アリスはヴィックに脅迫されるままに、金を払わなくても、また、警察が動いても、犯人は本当に自分を殺すつもりであり、身代金を払って欲しいと、カメラの前で父に向けて哀願する。

ヴィックは動画をPCで編集し終えると、ダニーに寝ないように命じて再び外出する。その直後、アリスは大便を要求する。ダニーは想定外の事態に困惑するも、バケツを持参し、その中にする様に命じる。アリスは見られていたら無理だと訴え、ダニーはやむを得ず後ろを向く。アリスは不意を突いてダニーをバケツで殴り付け、銃を奪い取ると、ダニーに銃口を突き付けて解放する様に命じる。アリスが勢い余って引き金を引き、発砲すると、ダニーは覆面を取り、アリスの恋人だと打ち明ける。

ダニーはかつてアリスが、父親に勘当されて遺産を相続できないから、奪う方法が無いものかと話していた事を聞き、これがその憎い父親から金を取る方法で、二人の為になると説得を試みる。アリスはダニーが自分を誘拐した上、辱めた事を詰る。ダニーは相方ヴィックがただの刑務所仲間で、二人の関係を知らず、自分がアリスを勧めたものの、利用されているとは夢にも思わないと説くと、ヴィックに悟られぬ様にリアルに行う必要があったと理解を求める。ダニーはアリスを心から愛していればこその計画だと説き、200万ドルを要求している事を明かして、自分と手を組むように請う。そこへヴィックが戻り、ドアの解錠を求める。ダニーがヴィックに二人の関係を知られたら殺されると懇願すると、アリスは提案に応じて銃をダニーに返し、再び拘束される。

ヴィックが不信感を露わにすると、ダニーはアリスの大便の世話をしていたと応じる。ヴィックは父親に動画を見せ、計画が順調に進んでいる事を明かすと、翌朝、父親が金を引き出し次第、指示を出す事を伝える。ヴィックはアリスの見張りを自分に任せて、ダニーに明日に備えて眠る様に勧める。

翌朝、目覚めたヴィックは思わずうたた寝してしまった事に気付き、ダニーと共に慌ててアリスの様子を窺いに行く。ヴィックはアリスの無事を確認すると、朝食のスープを用意して食べさせる。その最中、ダニーは昨夜、アリスが発砲した際に落ちたままの薬莢を見つける。ダニーは既の所でヴィックに悟られぬ様に薬莢を回収する。ヴィックはダニーの動揺を察知すると、大事な相棒だと心配する。

その直後、ダニーは小便ついでに薬莢を便器に流そうと試みるが、何度水を流しても吸い込まれないため、ヴィックが異変を察知して、ダニーに呼びかける。痺れを切らしたヴィックがトイレに押し入ると、ダニーは止むに止まれず、薬莢を飲み込む。ヴィックはダニーを心配し、二人で大金持ちになって幸せになれると諭すと、抱擁と口づけをし、二人の愛を確かめ合う。

ヴィックは父親が銀行に行くのを確認する為に外出する。その後、ダニーはアリスに請われて、拘束を解く。ダニーはアリスに誘拐するに至った経緯を尋ねられ、大金持ちとして父親が新聞に載り、そこにアリスの名前もあった事から、その記事を読ませてヴィックも賛同した事を明かす。アリスはヴィックが金を独り占めする事の懸念を伝える。ダニーはアリスを解放後、ヴィックから金を奪い、アリスと再会して高飛びする手筈だと伝える。

アリスはダニーに愛を告げて、セックスに持ち込むと、隙を突いてダニーを手錠でベッドに繋ぐ。当惑するダニーに、アリスは勝手な計画に乗らないと告げる。アリスは鍵が無いと外に出られない事を知ると、ヴィックの携帯で警察に通報し、誘拐された事を伝える。しかし、外の様子が覗えない為に場所を伝えられず、アリスは携帯で現在地を特定する様に頼む。その時、アリスは置きっぱなしの銃を見つけると、それをダニーに突き付け、鍵の在り処を問い質す。ダニーは傍にある上着のポケットに入っていると白状する。アリスが上着から鍵を抜き取ると、ダニーは不意を突いてアリスから銃を奪い、鍵を取り返す。ダニーはアリスを昏倒させて、何事も無かった様に再びベッドに拘束する。ストレスに耐えかねたダニーは便器に嘔吐し、薬莢を吐き戻す。ダニーは良心の呵責に苛まれるも、再び薬莢を飲み込む。

程なく、ヴィックが戻り、父親が金を引き出したのを確認し、あとは場所の指示だけだと伝える。二人はアリスを倉庫へ移す為に、準備に取り掛かる。アリスが目を覚まさない為に、ヴィックは猿ぐつわで窒息したと心配し、薬品を使って、アリスの目を覚まさせる。ダニーが弱気になったヴィックを奮い立たせると、ヴィックはバンを玄関に回す様に命じる。

ヴィックはアリスのジャージから転げ落ちた携帯を見つけ、どうやって持ち出したのか問い質す。更に履歴から通報した事を知ると、激昂したヴィックはアリスを殴り付け、追求する。アリスがダニーに助けを求めると、ヴィックは名前を知っている理由を尋ね、ダニーの裏切りを悟る。ヴィックは壁の銃痕を見つけ、アリスに理由を追求すると、アリスは事の経緯を白状する。アリスはダニーがヴィックを裏切っており、自分に取引を持ちかけ、それに同意したと明かす。アリスは、逆にダニーを騙してやれば、金を独り占めできるとヴィックを唆すと、自分は無事に帰してくれればそれで良いと哀願する。ヴィックは自分の名をダニーから聞いたか否かをアリスに尋ねる。アリスはそれを否定するが、ヴィックは名が知られたと確信する。

戻ったダニーは、素っ気ないヴィックの態度から異変を察知する。ヴィックは密かに携帯のSIMカードを便器に流す。ヴィックはアリスを勧めた理由を改めてダニーに問い質し、二人の関係を疑うと、自分を愛していると告げさせた後、行動を開始する。

二人はアリスを鎮静剤で眠らせると、バンに乗せ、街から離れた廃倉庫の地下室に運び込んで拘束する。ヴィックはダニーから鍵を回収すると、訝るダニーにアリスの元に残るはずだった当初の計画の変更を伝え、金の回収場所に自分と同行する様に命じる。

予め森の中に作っておいた金を入れる為の穴に近づくと、ヴィックはダニーに確認してくる様に命じる。ダニーが穴が空だと伝えると、ヴィックは父親に騙されたのでは無く、自分が別の場所に指定した事を明かし、ダニーに銃を突きつける。ヴィックは命乞いをするダニーに、アリスに自分の名を教えたのか問い質す。ダニーはヴィックと出会った時からの愛を語り、二人きりで幸せになれると訴える事でヴィックの翻意を促すと、咄嗟にヴィックに襲いかかり、逃走を図る。ヴィックはダニーを銃撃すると、安否の確認に向かうが、ダニーを見失う。

ヴィックは別の場所で金を回収すると、別の車に載せ替えた後、人知れずバンを焼却し、隠滅工作を図る。その後、ヴィックは倉庫に戻ると、アリスを運び出そうとする。そこに重傷を負ったダニーが現れ、ヴィックに襲いかかって銃を奪う。ヴィックはダニーの身を案じ、病院に行くように促すと、互いに愛し合っているのだと説く。ダニーはヴィックの胸を撃ち抜き、車の鍵を奪うと、助けを請うアリスを解放せず、その場を後にする。

ヴィックが死ぬ間際に鍵を差し出すと、アリスはそれを手繰り寄せて拘束を解き、倉庫から脱出する。やや離れた場所まで歩いたアリスは、停止した車内で事切れたダニーを発見する。アリスはダニーを引きずり下ろして車に乗り込むと、しばし慟哭した後、大金のバッグと共に走り去る。

 

 

登場人物は三人だけという非常に潔いスリラーなのだが、脚本が風変わりで面白いからグイグイ惹き込まれる傑作。低予算でもこうやって痛快な作品が作られるんだなと感服。特筆すべきはやはりアリス役のジェマ・アータートンで、迫真の演技に加え、ほぼフルヌードに近い肢体まで晒しており、女優としての胆力を感じずにはいられなかった。正直、アリス役はこの人じゃないと、この作品自体が成立しなかったのでは無いかと思える程の熱演ぶりで、より一層、好きになってしまった。マジで素晴らしい女優だ。犯人の男同士の関係がこれまた微妙なところで、ヴィックは同性愛だろうが、ダニーに関しては不確かで、しかしながらそんな二人が突然ディープキスを始めるから、面食らってしまった。EDはルサンチマンを晴らす様なオチが爽快で良かった。

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